
JAL×JALカード×NTTドコモ、データ連携で「関係人口」創出へ 秘匿クロス統計技術を活用した地域活性化の実証実験を開始
日本航空(JAL)、JALカード、NTTドコモの3社は2025年8月1日から、「関係人口」の創出による地域活性化を目指した実証実験を開始する。JALが持つ顧客データと、ドコモの携帯電話ネットワーク由来の位置・属性データを、秘匿クロス統計技術を用いて安全に統計化し、地域を訪れる人々の関わり方や移動傾向を明らかにする。
人口減少社会における「関係人口」の重要性
人口減少や高齢化が進む地域社会では、定住人口の増加だけではなく、地域と多様な関わりを持つ「関係人口」を増やすことが課題となっているが、これまで関係人口の動向を定量的に把握することは難しかった。JAL、JALカード、ドコモの3社は2022年から研究を進め、2023年には北海道での実証実験により、空港到着後の訪問傾向を統計的に明らかにしている。今回の実証はその発展版で、新千歳・南紀白浜・高松・福岡の4空港とその周辺地域を対象に、地域と人々の関係性を分析する。
実証実験の内容
実証実験では、以下の2つの観点から地域との関わりを統計的に把握する。
訪問・滞在エリアの把握
JAL便で対象空港に到着した人々の訪問・滞在エリアを分析し、繰り返し訪問する人々の傾向を明らかにする。これにより、地域に愛着を持つ層の特徴を把握し、効果的な地域施策の検討に活かす。
ふるさと納税と訪問の関連性
ふるさと納税や物産購入といった地域への経済的な関わりが、将来の訪問につながる可能性を検証する。JALが展開する「JALふるさと納税」のデータとドコモの運用データを組み合わせ、寄付行動が実際の訪問にどう影響するかを探る。
安全性を担保する「秘匿クロス統計技術」
今回の実証を支えるのが、ドコモがNTTと開発した「秘匿クロス統計技術」。この技術では、各社が持つデータを匿名化処理した上で、互いに生データを明かさずに統計を作成できる。人間の目に触れずに機械処理が行われるため、個人情報を特定できない状態で安全にデータ連携が可能となる。
この技術は情報処理学会の業績賞も受賞しており、従来は困難だった大規模な広域データの高速集計を可能にした点で高く評価されている。また「モバイル空間統計」のガイドラインにも準拠しており、利用停止を申請したユーザーのデータは実証に含まれない。
今後の展望
3社は本実証で得られた知見をもとに、移動を通じた人と地域のつながりを深化させ、社会的・経済的な価値を創出することを目指す。JALの移動サービス、ドコモのデータ技術、そしてJALカードの地域サービスを掛け合わせることで、地域振興の新たなモデルを示す狙いだ。「人と地域をつなぐデータ活用」は観光や地域振興の枠を超え、都市と地方を結ぶ社会インフラとなり得る。今回の実証は、その実現に向けた大きな一歩となりそうだ。
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)