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ダイキン×日立、AIで“止まらない工場”へ――設備故障診断AIエージェントの試験運用を開始

ダイキン×日立、AIで“止まらない工場”へ――設備故障診断AIエージェントの試験運用を開始

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ダイキン工業と日立製作所が協創し、工場の設備保全を高度化するAI技術の実用化に向けた動きが本格化している。2025年4月より、ダイキンの堺製作所臨海工場(大阪府堺市)にて、「設備故障診断AIエージェント」の試験運用がスタートした。

この取り組みは、ダイキンが蓄積してきた工場設備のOT(Operational Technology)ナレッジと、日立のITおよびAI技術を融合したものだ。保全技術者が点検時にポンプやバルブなどの異常を発見した際、AIエージェントがその場で原因と対策を提示。10秒以内に90%以上の精度で回答可能であることが、事前の実証実験で確認されている。

OTと生成AIの融合が導く次世代の保全支援

本エージェントは、設備図面などの情報をナレッジグラフとして構造化し、生成AIに学習させることで実現している。加えて、日立が独自に開発し、特許出願中のSTAMP(システム理論に基づく事故分析手法)を基盤とした原因分析プロセスを取り入れることで、熟練技術者に匹敵する診断能力を備えるに至った。

こうした技術の根底には、製造現場で顕在化する人材不足と熟練技術者の減少という課題がある。世界中に90以上の生産拠点を持つダイキンは、特に海外工場における保全技術者の確保と育成に苦慮してきた。今回のAIエージェント導入は、こうした技術格差や属人的な暗黙知を可視化・共有する手段としても注目される。

生産年齢人口の減少が突きつける製造業の転換点

日本をはじめとする先進国では、生産年齢人口の減少により、製造現場の「フロントラインワーカー」たちの負荷が増大している。設備ログや保全記録といった大量のデータが蓄積されていても、それらを効率的に活用できていない現実がある。

こうした中、日立は2023年に「Generative AIセンター」を設立し、生成AIとOTの融合によるソリューション開発を加速。今回の取り組みは、同社のデジタルソリューション群「Lumada」の一環として位置づけられており、将来的には製造業全体への展開も視野に入れている。さらに、設備保全以外の分野にも、同様のAIエージェントを展開していく計画だ。

共創の歴史が生んだ「止まらない工場」構想

ダイキンと日立の共創は今回が初めてではない。ろう付け作業のデジタル化(2017年)、化学品製造プロセスの品質管理のデジタル化(2018年)、そして化学事業における需給最適化支援(2020年)など、製造現場のDXを共に推進してきた実績がある。

両社は今回の試験運用を2025年9月までに完了し、その後はグローバルの生産拠点へAIエージェントを展開予定だ。「進化し続ける“止まらない工場”」という構想のもと、技術伝承や生産性向上、品質の安定化といった多面的な効果を期待している。

AIが保全業務の一端を担う未来は、もはや遠い話ではない。人手不足という現実を前に、製造業の競争力を保つ鍵は、技術と知識の“協創”にあるのかもしれない。

関連リンク:プレスリリース

(TOMORUBA編集部) 

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