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過去のトラブルを未来の力に!株式会社キャリアサバイバルが『BiZCON NISHIO 2024』のグランプリを獲得――スタートアップから高校生までが参加した白熱のピッチをレポート

過去のトラブルを未来の力に!株式会社キャリアサバイバルが『BiZCON NISHIO 2024』のグランプリを獲得――スタートアップから高校生までが参加した白熱のピッチをレポート

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愛知県の三河湾に接し、多彩な観光資源を有する西尾市。日本でも有数の抹茶・うなぎの名産地であり、自動車関連のものづくり企業の集積する地域でもある。そんな西尾市が昨年度、スタートさせたのが『BiZCON NISHIO(ビジコン ニシオ)』という地域を活性化させる事業の創出と実装を目指すビジネスプランコンテストだ。

全国の起業家やスタートアップ、市内の高校生などから優れたビジネスアイデアを募り、地域の課題解決や発展を後押しすることを目指している。昨年度に続く2回目の開催となる『BiZCON NISHIO 2024』は、昨年7月にエントリーの受付を開始。その後、書類選考を経て、13のビジネスプラン(一般部門5社、高校生部門8チーム)が通過した。

10月からは、サポーター、事務局などの支援のもと、市内企業等へのヒアリング・実証導入やワークショップを通じて、ビジネスプランとピッチのブラッシュアップを実施。そして、2025年2月11日、⻄尾市のコンベンションホールで最終審査会が開催された。

「一般部門」と「高校生部門」2部門で実施され、一般部門のグランプリには200万円、高校生部門の最優秀賞には10万円、奨励賞(2チーム)には3万円が授与される。TOMORUBAはこの最終審査会を現地で取材。本記事では、その模様をレポートする。

【主催者による開会挨拶】 「単独では難しいことでも、地域全体で取り組むことで実現できる」

各チームの発表に先立って、西尾市 産業部 商工振興課 主査 鈴木裕一郎氏が挨拶をした。鈴木氏は「これから発表されるビジネスプランが、西尾で実現したら、あるいは、自分の目の前で実現したらどうなるかをイメージしながら聞いてほしい」と呼びかけた。

実際、前回の一般部門ファイナリストによるビジネスプランの一部は、西尾市の行政機関や企業に採用され、高校生部門の最優秀賞チームのプランは百貨店での期間限定販売も行われたという。また、「単独の組織やグループでは難しいことも、地域全体で取り組むことで実現を図る。それが、このコンテストの目指すビジョンだ」と述べ、参加者らに期待を寄せた。

▲西尾市 産業部 商工振興課 主査 鈴木裕一郎氏

【一般部門】 栄えあるグランプリは、”過去のトラブル活用システム「KAKO虎」”の株式会社キャリアサバイバルが獲得!

一般部門には59社からエントリーがあり、以下5社がファイナリストに選出された。ピッチの後、審査員の厳正な審査によって1社がグランプリを獲得する。また、サポーター企業・団体からも各賞(各最大1社)が贈られる。

<ファイナリスト5社(一般部門)>

株式会社キャリアサバイバル/ガガプランツ/株式会社ONE TERASU/匠技研工業株式会社/株式会社musbun

<サポーター企業・団体>

西尾商工会議所/一色町商工会/西尾みなみ商工会/西尾信用金庫

<協賛>

愛知県信用保証協会

<審査員>

・西尾市長 中村健 氏

・西尾未来共創拠点 ニコラボ チーフコンサルタント 中村彰収 氏

・株式会社MTG Ventures 代表パートナー 伊藤仁成 氏

・エバーコネクト株式会社 代表取締役 篠原豊 氏

・株式会社Subtitle 代表取締役社長 加藤厚史 氏

・株式会社eiicon 代表取締役社長 中村亜由子 氏

▲西尾市の中村市長をはじめ、経験・知見豊富な6名の審査員が各社のピッチをジャッジした。写真左から中村亜由子氏、篠原豊氏、中村健氏、中村彰収氏、伊藤仁成氏、加藤厚史氏。

――ここからは、グランプリ受賞企業から順に、一般部門ファイナリスト5社のピッチ内容を紹介していく。

■【グランプリ:賞金200万円】 株式会社キャリアサバイバル

タイトル/体験・知識を未来へつなげる、過去トラ活用システム「KAKO虎」

キャリアサバイバルは、製造業を対象に過去のトラブルデータを活用するサービス「KAKO虎」を開発、提供している。同社が着目した課題は、製造業における担い手の高齢化と事業継承者の減少だ。

中小製造業の現場では、属人化している業務やノウハウが多いことが問題となっている。中でも特にベテランに依存している業務が「トラブル対応だ」と話す。代表・松岡氏は「トラブルを管理することが脱属人化の第一歩となる」と考え「KAKO虎」を開発したという。

「KAKO虎」は、トラブル発生時の報告書作成や周知、検索を簡単にするデジタルツールだ。音声入力も可能で、AIが報告書の作成をサポートしてくれる。写真添付も容易で、多言語にも対応。また、ボタン1つで関係者に情報共有できるうえに、過去の報告書も簡単に検索できる。これにより、トラブル対応の脱属人化が図れるという。

代表・松岡氏は、創業60年の町工場の三代目。事業継承に失敗し廃業を経験したことが、このサービス誕生のきっかけとなった。「KAKO虎」は、昨年10月にリリースしたばかりだが、すでに17社に導入されており、そのうち8社は西尾市の企業だという。そこで、名古屋市の本社に加えて、西尾市にも新たな拠点を設け、さらに導入先を増やしていきたいと意欲を見せた。

■【サポーター賞・西尾信用金庫賞】 株式会社ONE TERASU

タイトル/「Shisaly」を活用した産業観光支援事業

ONE TERASUは、島根県と東京都を拠点に、社会課題解決や地域活性化に取り組む企業だ。同社が西尾市において課題をヒアリングしたところ、4つの課題が見えてきた。

それは「観光客数の伸び悩み」「観光客数の繁閑差の大きさ」「滞在時間の短さや消費額の伸び悩み」「中小企業の採用難」だ。この4つに対応するため、同社は「産業観光」の造成を提案する。

「産業観光」とは、地域の産業や現場を見学・体験する観光形態のことをいう。国内では、地域一体となって「産業観光」に力を入れる場所が増えており、全国で50以上の地域が取り組んでいる。この活動から得られる効果は、観光収益の増加、雇用の創出、シビックプライドの醸成などだ。同社はすでに大阪府と連携して「産業観光」の特設サイトを開設。2024年11月以降の申込数は100名を超えているという。

西尾市においても、うなぎや抹茶などの地域資源の情報を集約した特設サイトを開設し、観光客を呼び込むことを提案。さらに、特設サイトと同社の視察予約サイト「Shisaly」を連携し、受け入れ事務や決済管理を効率化することも可能だとした。

観光客の支払い額から手数料を得るビジネスモデルであることから、導入時の初期費用やシステム利用料は不要。西尾市内の協力企業を募集中で、協力企業の発掘も進んでいる。中島氏は「産業観光の造成により、これまでにない新しい価値を創出していきたい」と、共創を呼びかけた。

■【サポーター賞・西尾商工会議所賞】 株式会社musbun

タイトル/「キャリシー」~西尾市の企業に学生があつまる好循環を~

musbunは、興味・共感でつながる新卒採用プラットフォーム「キャリシー」を展開している。同社が着目した西尾市の課題は、若手人材の不足だ。企業は自社の魅力を訴求するのに苦戦している。また、西尾市の学生は地元への愛着が強いものの、市内に大学がなく進学とともに市外へ流出する傾向がある。こうした課題を解決するべく、同社の「キャリシー」を活用するという。

「キャリシー」は、企業が求人募集を掲載し、学生が応募することでマッチングを図る仕組みで、大学1年生から利用が可能だ。特徴は、「学生目線による魅力の再発見」「企業規模や業種にとらわれない訴求を実現」「高校や大学と連携したキャリア教育プログラム」の3つ。月額5万円のサブスクリプション制で企業に提供する。

西尾市ではすでに市内4社にテスト導入してもらい、応募にもつながっているという。導入企業からは「地元に根づいた採用媒体として成長してくれることに期待している」という声も寄せられている。採用セミナーも開催しており、こうした機会を増やしながら、西尾市の企業に学生が集まる好循環を作っていきたいと伝えた。

■ガガプランツ

タイトル/生産者の育て方も届く 観葉植物の産直サービス

ガガプランツの鈴木氏は、植物専門のマーケットプレイス「GAGAPLNT」と植物イベント情報サイト「GAGAPLNT media」を運営している。鈴木氏は、園芸店や花屋での勤務のほか、華道家アシスタントも経験しており、植物の分野に造詣が深い。既存のフリマアプリで、100回以上の植物取引を重ねてきたが、その中で、画像と現物の違い、検索のしづらさといった課題を実感したと話す。

そこで、植物専門のマーケットプレイス「GAGAPLNT」を立ち上げた。こだわったポイントは2つで「メッセージ機能で画像を送信できること」「品種名で検索できること」だという。さらに、開発過程において生産者にヒアリングを行い、販売者の審査制を導入し信頼性を確保。出品作業の手間を軽減するサポートを提供することにした。また、同じ植物でも生産者ごとに育て方が異なるため、「育て方」も一緒に届ける仕組みを整えたという。

ビジネスモデルは、出品者・購入者双方の手数料で収益化を目指す。西尾市内の企業や団体と連携し、植物のEC販売支援なども行う計画で、西尾市内に流通拠点も新設する予定だ。植物市場は、趣味人口は2,500万人、市場規模は園芸と花卉で約1兆円といわれる。若者人気も高まる中、西尾市の新たな魅力として「観葉植物」を発信していく提案も盛り込んだ。

■匠技研工業株式会社

タイトル/「匠フォース」で実現する見積DXフラグシップシティ西尾

匠技研工業は、製造業向けに図面管理から見積までを作成できるオールインワンシステム「匠フォース」を開発・提供している。日本の製造業を支える国内22万社、割合にして99%にも及ぶ中小サプライヤー企業は、「見積業務」に苦慮していると話す。部品加工には定価が存在せず、複雑な算出作業が必要だからだ。また、見積業務は、多くの企業でベテラン社員に依存しているのも現状だ。

こうした課題に対処するのが「匠フォース」である。図面をアップロードするとOCRで図番や品名を自動入力。し、AIが図面を解析して過去の類似案件をレコメンドし、類似品との差分も表示する。原価計算の見える化や案件管理、見積書発行、データ分析までを一括で行えるシステムだ。導入前と導入後の導入支援/伴走支援体制も特徴だという。

導入企業では業務負担が半減し、若手社員への技術継承などの成功体験も生まれている。特に機械加工分野の150名以下の企業での導入例が多いという。料金は初期費用と月額費用のサブスクリプション制。「2027年までに西尾市をフラグシップシティ化」することを目指して、見積課題の認知を拡大していきたいとした。

【高校生部門】 102件もの応募を勝ち抜いて頂点に立ったのは、外国人との交流カフェ「カフェはじめまして」を提案した「にさんがろく」チーム

――ここからは、高校生部門ファイナリスト8チームの中から、「最優秀賞」と「奨励賞(2チーム)」を獲得した各チームの提案内容について紹介する。

<ファイナリスト8チーム(高校生部門)>

■愛知県立西尾高等学校 「サカバンバスピス」

■愛知県立鶴城丘高等学校 「消しゴムマジック」

■愛知県立西尾東高等学校 「IKT」

■愛知県立鶴城丘高等学校 「ファミリートレイン」

■愛知県立鶴城丘高等学校/愛知県立碧南高等学校 「にさんがろく」

■愛知県立西尾東高等学校 「たまごえっぐ」

■愛知県立西尾東高等学校 「西尾革命家」

■愛知県立鶴城丘高等学校 「西尾課外活動部」

■【最優秀賞】 愛知県立鶴城丘高等学校/愛知県立碧南高等学校 「にさんがろく」

タイトル/カフェはじめまして(略して、はじカフェ)

チーム「にさんがろく」は、外国人と日本人が交流できる場所を提供するビジネスプランを発表した。西尾市は全国平均と比べて約3倍の外国人が住んでおり、日本語教室で実施したアンケートでは、約半数の外国人が日本語を話せず、病院などで困っている実情が明らかになった。この問題を解決するため、国内外の人たちがグループで会話を楽しめる「はじカフェ」を運営したいと話す。

誰もが参加しやすいよう、自身の日本語能力をリストバンドの色で示したり、話したい内容を表示する札を用意したりと工夫を凝らす。また、共通言語として初心者でも理解しやすい「やさしい日本語」を取り入れる。定休日のカフェをレンタルし、飲食代で収益化を目指す計画だという。

■【奨励賞】 愛知県立西尾高等学校 「サカバンバスピス」

タイトル/無人島体験ツアー 無人島にイカん?

チーム「サカバンバスピス」は、西尾市の自然と体験を融合させた1泊2日のツアーを提案した。舞台は西尾市吉良町の無人島「梶島」で、ターゲットは小学生高学年の子どもを持つファミリー層。ターゲット層へのアンケートから、夏休みのマンネリ化や、子どもたちの電子機器依存が課題だと分かった。

そこで、ツアーでは底引き網体験や魚捌き、サンドアート、夕焼け鑑賞など、自然と触れ合える企画を盛り込む。また、西尾名物「イカフライのレモン煮」も楽しんでもらう計画だ。参加者からの旅行費用でマネタイズする。ターゲット層の約88%が興味を示しており、需要はあると見込む。このツアーを通じて西尾市の魅力を広めたいと語った。

■【奨励賞】 愛知県立鶴城丘高等学校 「西尾課外活動部」

タイトル/西尾に作ろう 心地よい空間

学生の本質は勉強である。しかし、家ではスマホの誘惑に負け、図書館やカフェでは周囲が気になり集中しづらい。こうした課題を解決するため、チーム「西尾課外活動部」の提案するのが、作業に集中できる場所「Trail」だ。「Trail」では、入店時にスマホをロッカーに預け、集中できる状況を確保。さらに、コーヒーやチュロスといった勉強のお供を購入する。

特長は2つ。1つ目が、現役大学生を店員として雇い、勉強のサポートをしてもらうこと。2つ目が、不要な参考書などの寄付によるブックスペースがあることだ。閉店したコンビニや空き家を活用し、利用者の飲食費で運営する。同チームは「知識の循環でつながる未来へ」をキーフレーズに、「私たち学生が、西尾市を盛り上げていきたい」と締めくくった。

■【敢闘賞・愛知県信用保証協会】 高校生ファイナリスト

最終審査会に向け、事業づくりに尽力してきた高校生ファイナリスト全員に、愛知県信用保証協会より敢闘賞が贈られた。

【中村市長による閉会挨拶】 「チャレンジすることの大切さを西尾市から発信していきたい」

すべてのピッチ終了後、西尾市長の中村氏が閉会のスピーチを行った。中村市長は、このビジネスプランコンテストの特徴について「この発表会がゴールではない」と強調。「これらを地域のサービスに結びつけることによって、地域を良くしていくことが目的だ」と述べ、今後も伴走型支援を続けていく考えを示した。

また、中村市長は「世の中が良くなるためにはチャレンジすることが欠かせないが、今の日本にはチャレンジしにくい風潮がある」と指摘。そのうえで、「今回のコンテスト参加者の皆さまは、チャレンジすることの楽しさや大切さを実感してもらえたのではないか」と話す。さらに、「西尾市に来たら“チャレンジを形にできる”“チャレンジの大切さが分かる”というメッセージを発信していきたい」と語り、次回以降のビジネスプランコンテストも継続していく方針を明らかにした。

▲西尾市長 中村 健 氏

取材後記

西尾市主催のビジネスプランコンテストは、市内の課題解決と地域活性化を目的としている。中村市長のスピーチでも語られたように、「地域を良くしていくこと」が狙いであり、参加者のプランには具体的なアイデアが盛り込まれていた。今後は市職員の協力も得て、地域のサービスと結びつけながら実現を目指すという。『BiZCON NISHIO 2024』発のビジネスプランが地域とともにどう成長していくのか楽しみだ。第3回の開催も予定されているそうなので、興味のある人はぜひエントリーを検討してほしい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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