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ワイヤレス給電、道路環境、リチウムイオン電池、空気コントロールをテーマにした相模原市の共創プログラム――市内を代表するホスト企業4社が採択したビジネスプランとは?

ワイヤレス給電、道路環境、リチウムイオン電池、空気コントロールをテーマにした相模原市の共創プログラム――市内を代表するホスト企業4社が採択したビジネスプランとは?

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リニア中央新幹線の新駅誕生を控え、転換期を迎えつつある相模原市。神奈川県内では、横浜市、川崎市に次いで第3位の人口規模を擁する政令指定都市だ。製造業の集積やJAXA 宇宙科学研究所があることでも知られている。そんな相模原市が現在、注力している取り組みが、オープンイノベーションプログラム『Sagamihara Innovation Gate』である。

『Sagamihara Innovation Gate』は、相模原市内にある企業が全国から共創パートナーを募集し、事業アイデアを形にして社会実装を目指すというプログラム。今年度は相模原市を代表する4社(SWCC株式会社/カヤバ株式会社/大和製罐株式会社/富士工業株式会社)が参画し、実現したいテーマを提示して共創パートナーを募った。

そして、11月30日と12月1日には、4社と応募企業7社が集まり、事業案のブラッシュアップを行うBUSINESS BUILD(ビジネスビルド)が、橋本駅直結の「杜のホールはしもと」で開催された。橋本駅といえば、リニア中央新幹線の新駅建設が進む街である。そんな変化の時を迎える場所で、イノベーションフィールドの構築を目指して実施されたビジネスビルド。その様子を本記事ではレポートする。

2日間のビジネスビルドでは、5つの観点で事業アイデアを磨き込む

2日間のビジネスビルドでは、相模原市内企業4社(ホスト企業)と応募企業7社が会場に集まり、メンターのアドバイスを受けながら事業アイデアを磨き込んだ。初日に注力したのは、①新規性、②市場性、③事業拡張性の3点。

翌日には、④実現可能性、⑤事業趣旨との合致性(オープンイノベーションの内容となっているか)の2つの視点で事業アイデアをさらに洗練し、新しい事業の骨子をつくった。最終的に、応募企業の代表者らが、完成したビジネスプランを審査員の前でプレゼンテーション。①~⑤の採択基準による厳正な審査の結果、社会実装に向けて次のステップに進む共創パートナー4社が決定した。

審査員を務めたのは、各ホスト企業の代表者と相模原市、および次のメンター陣。採択基準は①新規性、 ②市場性、③事業拡張性、④実現可能性、⑤事業趣旨との合致性 の5点とされた。

<メンター(審査員)>

・パラレルキャリアエバンジェリスト/株式会社EBILAB 取締役ファウンダー CTO CSO 常盤木龍治氏(1日目のみ)

・株式会社野村総合研究所 経営コンサルティング部 プリンシパル 徳重剛氏(2日目のみ)

・Two Birds Consulting株式会社 代表取締役 下薗徹氏

・株式会社eiicon 取締役副社長 富田直氏

・株式会社eiicon 執行役員 村田宗一郎氏

・相模原市 創業支援・企業誘致担当部長 井熊直人氏(審査員のみ)

――ここからは、採択が決定したチームの発表から順に紹介する。

【SWCC × パワーウェーブ】 “電界結合方式”によるワイヤレス給電で、医療現場の安心安全を実現

「ワイヤレス給電分野で新しい価値創造」をテーマに共創パートナーを募ったSWCC株式会社(旧・昭和電線ホールディングス株式会社)。特に医療分野でのワイヤレス機器の製造を目指して一緒に取り組めるパートナーを募集し、ワイヤレス給電技術を持つ2社を選出。ビジネスビルドを経て、豊橋技術科学大学発のスタートアップ、株式会社パワーウェーブを採択した。

●株式会社パワーウェーブ

タイトル「医療現場での電界結合方式によるワイヤレス給電プロジェクト」

パワーウェーブは、電界結合方式のワイヤレス給電を得意とする企業で、すでにロボットや、電動キックボード、電気自動車などのモビリティー分野で実績を積んでいる。そんな同社がSWCCとともに解決したい課題は、医療現場における電線アクシデント。現状の有線給電では、電気コードにつまずいたり充電を忘れたりと、医療事故につながるリスクがある。ワイヤレス給電が可能な環境を整えることで、安心安全な医療現場を実現したいと話す。

まず、手術室からの導入を目指すが、手術台周りの床面に20A(100V)送電ユニットを2~4基 配置し、手術台周囲に2kVAの給電環境を整える。SWCCとは受電カップラと送電カップラを共同開発し、医療現場向けの給電システムを完成させる。今後、市場規模調査や医師・看護師などへのユーザーヒアリングを行いながら、プロトタイプの製作を進め、薄型・フリーポジション給電システムの実現性を検証していきたいと語った。

発表後、審査員から「電界結合方式の優位性は?」と尋ねられたパワーウェーブ・阿部氏は、広範囲で給電が可能であることと、装置が発熱しないため安全性が高いことだと答え、自信を見せた。

<ホスト企業・受賞者コメント>

SWCC株式会社 技術開発本部 兼 新領域開発センター長 森下氏は「車の分野で実績があり、非常に期待をしている」と語った。パワーウェーブ ・阿部氏は「ワイヤレス給電への強い期待を感じることができて非常にうれしい」と喜びを伝えた。また同じSWCC株式会社のテーマに参加した2DCの代表とも意気投合し、前日の夜にも食事に行ったことを明かし、「良い出会いができて良かった」と笑顔を見せた。

【カヤバ × セトラス】 “ドラレコアプリ”の活用で、道路保全を含めた安全なまちづくりに貢献

「より安全で使いやすい道路環境の実現」をテーマに共創パートナーを募集したカヤバ株式会社。油圧機器メーカーとして製造販売型のビジネスを展開する同社だが、『モノ』だけではなく『コト(=体験・価値)』の販売にも進出したいとの考えから、既存事業で培われた自動車の挙動計測・分析技術を応用した新規ビジネスを模索。ビジネスビルドを経て、ドライブレコーダー(ドラレコ)を活用した見守りサービスを展開する株式会社セトラスを採択した。

●株式会社セトラス

タイトル「全ての人が輝ける市民参加型のDXエコシステム都市へ」

セトラスはスマートフォンで使えるドラレコアプリと、ドラレコから収集した映像を活用するための流通基盤を持つ企業だ。ドラレコから特定の場所、時間帯の映像データを抽出することができ、それらを防犯の観点で役立てている。今回の共創では、同社のシステムとカヤバのスマート道路モニタリングシステムを組み合わせて、安全な都市計画に役立てていきたいという。

具体的には、同社のドラレコを高齢ドライバーが利用し、高齢者に使用してもらうことで、運転の安全性評価や暴走事故の防止にも役立てる狙いだ。収集したデータは、カヤバが開発中の車載センサをもとにしたデータ分析基盤に提供。それらを自治体向けに販売して高齢ドライバーの運転の安全性評価や道路保全に役立てるほか、街路樹の管理といった他分野への展開も検討するという。

審査員から「カヤバのモニタリングシステムと高齢ドライバーとの親和性は?」と聞かれたセトラス・岩井氏は「データ提供者へのインセンティブ付与が重要」と述べ、「高齢者こそよい仲間になってくれる」と答えた。

<ホスト企業・受賞者コメント>

カヤバ株式会社 技術本部長 常務執行役員 藤井氏は、今回のビジネスビルドでは「有意義なディスカッションができた」としたうえで、「何を使って何をやるかという点が、我々の目的と短期的に一致する」ことが採択の理由となったと述べた。セトラス・岩井氏は「当初、道路保全だけだとマーケットが小さいため難しいと感じていたが、議論をすることで広がりの可能性が見えてきた。今回、参加することで色々なアイデアが出てきたので、様々な人とアイデアを交わすことが重要だと再認識した」と述べた。

【大和製罐 × アプデエナジー】 “リユースバッテリーサブスク”の相模原モデルを構築して世界へ広げる

「リチウムイオン電池の劣化診断技術を活用した新サービスの開発」をテーマに共創パートナーを募った大和製罐株式会社。金属容器の製造販売で高いシェアを誇る同社だが、近年はエネルギー・蓄電池関連の新規事業にも注力。相模原市内の事業所に、大規模な蓄電池評価試験所を開設し、研究開発を進めている。今回のビジネスビルドでは、コンバートEVやオフグリッド事業を展開する株式会社アプデエナジーを採択した。

●株式会社アプデエナジー

タイトル「リユースバッテリーによるエネルギー供給のサブスクリプションサービス BaaSの実現」

アプデエナジーは、廃車となったEVからバッテリーを取り出して再活用するビジネスを展開している。主力事業は、リユースバッテリーからEVを再生産する「コンバートEV事業」と、リユースバッテリーを蓄電池として再活用する「オフグリッド事業」の2つ。今回の共創では、再エネによる電力の自給自足や脱炭素をビジョンに掲げる。再エネを最大限活用するには、電力の需給バランスを調整する蓄電池が重要だが、その原材料が高価であるため普及が進んでいない。そこで、リユースバッテリーを蓄電池に使う電力供給の仕組みを整備したいと話す。

具体的には、リユースバッテリーによる電力供給システムを構築し、電気代を支払うようにサブスクリプションのビジネスモデルで提供する。本システムを導入するメリットは3点あり、上昇が見込まれる電気代を据え置くことができる点、脱炭素経営を実現できる点、災害停電時でも電力が供給されるので稼働を止めなくて済む点だ。ターゲット顧客は、大量の電力需要がある工場など。大和製罐も既存事業や蓄電池評価事業で電力を多く消費するため、最初は大和製罐の相模原にある事業所で実証実験を行う。また大和製罐の持つリチウムイオン電池の効率劣化診断の知見も得ながら事業を強化していく計画だ。この事業を実現するために、アプデエナジーでは電池を管理するクラウドシステムを新たに開発したいと語った。

<ホスト企業・受賞者コメント>

大和製罐株式会社 取締役技術本部長 大森氏は、アプデエナジーの持つスピード感が採択のポイントだったと述べ、同社の「スピード感に追従し、互いの補完関係を築くことで、良い取り組みができるのではないか」と期待を込めた。また「相模原にある事業所で実証を行い、相模原モデルとして世界に出して相模原に貢献したい」と伝えた。アプデエナジー ・王本氏は「大和製罐のなかで実証できるか、できないかが勝負。日本にとっても勝負だと捉えている」と述べ、迅速に事業化して普及させていくことで、日本のレジリエンス向上に貢献したいと話した。

【富士工業 × グリーンノート】 “IoT技術”を駆使して空気質の可視化・正常化に挑む

「最適な空気コントロールによる”安心・安全でエコロジーな本物の快適さ”の実現」をテーマに共創パートナーを募集した富士工業株式会社。同社は一般家庭用レンジフードで国内シェアトップを誇る企業だが、既存事業で得た知見をもとに「空気」に焦点をあてた新規事業開発にも取り組んでいる。本ビジネスビルドでは、IoT分野で技術コンサルティングや開発支援を手がける、株式会社グリーンノートを採択した。

●株式会社グリーンノート

タイトル「あなただけの空間で、ここちよい生活を。」

グリーンノートがとらえる空気の課題は、建物の設計時点においては考慮されている適切な空調が、施工段階や模様替え、設備更新などにより損なわれている可能性があることだ。当初の設計どおりに空調管理できているのか、誰も把握できていない。また一方で社会に目をやると、少子高齢化などの影響で施設の統廃合が進み、複合施設への移行が進行している。その一例として高齢者向け施設や廃校を、幼老複合施設へとリニューアルする動きも見られるという。しかし複合化によりメリットがある反面、利用者層の変化による新たな課題の発生が懸念される。例えば高齢者施設の匂い、廃校のカビ臭・空調不全といった空気質の悪さは保育施設の利用者にとっては受け入れがたく、複合施設の普及を妨げる要因となりかねない。

こうした空気の課題に対処するため、グリーンノートの持つセンサ・通信・クラウドの知見と、富士工業の持つ空気シミュレーション技術を掛けあわせ、空気質の可視化や正常化、3Dモデル化や気流の形成などに取り組みたいと話す。

ターゲット顧客は、ゼネコンや建設、メンテナンス業者などを見込む。とくに老朽化した公共施設を複合施設へと転用するシーンや、介護事業者が保育事業へと参入を考えて施設をリニューアルするシーンなどを検討。2社では足りないピースがあるため、パートナー企業も迎えて実現を目指したいとした。

<ホスト企業・受賞者コメント>

富士工業株式会社 テクノベーション本部 取締役本部長 黒澤氏は「目指すビジョンが近いこと」が採択の決め手だったと評し、「今後、お互いにやるべきこと、マネタイズの方法などを決めながら進めていきたい」と伝えた。グリーンノート・立石氏は「まだまだ小規模な会社ではあるが、これをきっかけに事業基盤を強化し、相模原の地でしっかりとした企業へと成長していきたい」と熱意を示した。

その他、独自技術を駆使したビジネスプランの提案も

採択された4社のほか、株式会社2DC、オンキヨー株式会社、株式会社ACCESSも、今回のビジネスビルドに参加し、以下のような内容の発表を行った。

●株式会社2DC(SWCC株式会社への提案)

タイトル「Power Tile~電源トラブルのない病院内充電インフラの実現~」

2DCのワイヤレス給電システムは、タイル状の送電ユニットに受電コイルを置くと、どこに置いても無線充電が可能となるものだ。送電ユニットは表面にのみ電磁波を形成するので、電磁波を閉じ込めつつ、位置決め不要の給電ができる。このタイル状の送電ユニットを連結させることで、給電範囲を広げることもできる。こうした給電シートを用いて、SWCCとともに医療現場のワイヤレス化を目指す。まずは輸液ポンプのワイヤレス化から開始し、最終的に手術室の無線化も狙うという。

●オンキヨー株式会社(カヤバ株式会社への提案)

タイトル「明日もこの道で帰ろう」

オンキヨーとカヤバは両社でデータを取得し、交通事故アラートマップを作成。子ども、高齢者、自転車、観光客など、属性に合わせた道の提案を行う事業を考案。カヤバが路面状態に関するデータ、オンキヨーが交通量に関するデータを取得する。オンキヨーは特定の地点において、どの程度の交通量があるのかを音や振動で計測できる技術を持っており、それを活用する。まずは、交通事故を防ぐためのサービスとして開始し、将来的には定期的な街の交通点検につなげたい考えだ。

●株式会社ACCESS(大和製罐株式会社への提案)

タイトル「マイクログリッドコントローラーを活用したリユース蓄電所プロジェクト」

IoT分野で40年の実績を持つACCESSは、蓄電池の劣化診断技術を持つ大和製罐とともに、定置用蓄電池のリユース事業を構想。使用済の蓄電池を電池メーカーから回収し、大和製罐の技術で劣化診断を行う。大和製罐内にリユース電池を集めた蓄電所を構築して、まずは自社内で電力を消費する。ここから得た知見や実績をもとに他社へと横展開。ACCESSのIoT技術を活用して蓄電池の管理を行い、経済的に運用する仕組みを構築したいとした。

「本イベントで生まれた4つの共創事業が、どのように成長するのか楽しみにしている」

各社のプレゼンテーションと採択企業の発表が終了した後、メンターと主催者より参加者にメッセージが投げかけられた。

野村総合研究所 経営コンサルティング部 プリンシパル 徳重剛氏は「ここから先は、『いかにビジネスにするか』というモードにシフトしていくタイミングだと思うので、引き続き頑張ってほしい」とエールを送った。

Two Birds Consulting株式会社 代表取締役 下薗徹氏は「テクノロジードリブンで何かを考えていく際、私が大事にしていることは『肌触り』だ。誰かがサービスの恩恵を受ける瞬間や、その温かさのようなところを大切にしてほしい」と伝えた。

また、株式会社eiicon 取締役副社長 富田直氏は「アイデアソンなら発散だけでいいが、今回は社会実装を目的としたビジネスビルド。ここから事業化に向けて頑張っていきましょう」と呼びかけた。

さらに、株式会社eiicon 執行役員 村田宗一郎氏は「ビジネスビルドの2日目に、『これは受発注の関係だから、オープンイノベーションではないよね』とディスカッションされているのを聞いてうれしかった。参加者のなかにオープンイノベーションが少しでも根づいていればと思う」と語り、引き続き伴走していくことを伝えた。

最後に、相模原市 環境経済局 局長 藤井一洋氏が「本イベントを通して、新たに4つの共創事業が生まれた。これから残り4カ月と短い時間ではあるが、どのような事業に成長するのか楽しみにしている」と述べ、2日間のビジネスビルドを締めくくった。

取材後記

ワイヤレス給電やリユースバッテリーなど、次世代を見据えたテーマの発表が次々と披露され、非常に聞き応えがあったビジネスビルドであった。イベントのなかで「相模原モデルを世界に広げていきたい」という発言もあったが、特にこの2日間では、同じ技術を持つ企業同士の交流も活発だったことも特徴的であった。この「Sagamihara Innovation Gate」から、世界に飛び立つビジネスが生まれることが楽しみだ。2024年3月には、4カ月間の成果を発表するDEMODAY(成果発表会)も予定されている。リニア新駅の誕生に向けて活気づく相模原に、足を運んでみてはどうだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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