【10/29応募締切】 デジタルで宮崎のビジネスをアップデートする共創プログラム―県内有力企業4社が抱える課題と共創テーマとは?
人口減少や新型コロナウイルス感染症など、社会や事業を取り巻く環境が大きく変化している現在、地方自治体や地域の産業は持続的に発展していくための変革が問われている。
――こうした状況下、宮崎県では県が主体となり、県を代表する地場企業の協力のもと、デジタル・テクノロジーを活用した新たなビジネスモデルの創出を目指すオープンイノベーションプログラム『MIYAZAKI DIGITAL INNOVATION BUSINESS BUILD』(以下、ビジネスビルド)を開催。事業アイデアを募っている(応募締切10/29)。
これに合わせて今回、オンライン説明会が実施された。説明会では募集企業による募集内容の解説のほか、プログラムのメンターで株式会社EBILAB 代表の常盤木龍治氏によるローカルビジネスをテーマにしたパネルディスカッションなどが行われた。以下に詳細をレポートする。
宮崎県は今年度を『デジタル化元年』と位置づける
説明会の冒頭、宮崎県 総合政策部 産業政策課 副主幹 濵砂充生氏が挨拶。「宮崎県は今年度を『デジタル化元年』と位置づけています。今回初めて開催するビジネスビルドでは、県内企業の経営課題についてテクノロジーでの解決を図ると共に、将来に向けた事業構想を試みます。本プログラムを通じ宮崎県から新しいビジネス、新たな価値の創出を目指します」と意気込みを語った。
濵砂氏の挨拶に続いて、EBILAB 代表の常盤木氏によるパネルディスカッションに行われた。テーマは、「DXでローカルビジネスをアップデート――トップランナーが語る地域課題の最前線と未来予想図」。日本全国各地でDX人材の育成を手がけている常盤木氏から、”地方DX”のポイントが語られた。モデレーターは、ビジネスビルドの運営を担うeiiconの曽田将弘が務めた。
地方が生き残るにはDX、データ経営が鍵
―― まずは簡単に自己紹介をお願いします。
常盤木氏:現在、国内47都道府県でDX人材を育成する活動などを行っています。以前は都内の大手ベンダーに勤め、地方に飛び回っていました。その時、地方にこそ課題と宝物がある、地方がデジタルを実装しないと日本に未来はない、と確信したんですね。その後、沖縄県に移住し、日本と世界の地方を結び、「地方を輝かす」を実践しています。EBILABではAIを使った来客予測、廃棄ロスの改善、働く環境の整備などを行っています。
―― それでは最初のテーマに入ります。「実体験から見聞きしたローカルビジネスの現状」。ぜひ日本全国を飛び交わる常盤木さんの視点で、地方のビジネスを語ってください。
常盤木氏:コロナ禍を踏まえての観点でいうと、確かな経営努力をし、従業員に賃金として還元し、良い商品・サービスを提供している企業は一人勝ちをしています。コロナ前の水準に戻った企業もあれば、より良くなった企業もいくつか出ています。
―― 一人勝ちする、あるいは生き残るポイントはどこにあるのでしょう。
常盤木氏:間違いなくDXです。より本質的に言うとデータ経営です。経営にデータを取り入れることで、不確実である明日の勝率を高める工夫ができます。実例として、福井県の和洋菓子店を取り上げます。このお店は経営陣も従業員も年休が取れていなかったのですが、当社のシステムを利用して45日先までのおおよその来客数を把握しました。その結果、休暇を取って良い日がわかったのです。
DXというと何か大事のように聞こえるかもしれませんが、構えないでください。この例のように休暇を取りやすい状況を作るために利用する、という「自分たちの実利」に直結する観点が大切なのです。加えて言うと、向き合う課題は、誰かを幸せにするものでないといけません。特に地方のDXは自分たちの産業をはじめ、地域に根付いている課題を改善し、地域の商店街が潤ってローカル商材が売れる状態を作るという発想が求められます。
―― 地方にDXを根付かせるためには何が重要でしょうか。
常盤木氏:実は地方ではDXのブレークスルーは簡単に起きます。ただ、きっかけがないとブレークスルーは起きません。その意味で、今回のビジネスビルドはきっかけになり得る。非常に良い取り組みだと思っています。また、ITに知見がなく二の足を踏んでいる状況も見受けられますが、事業を統括しヒト・モノ・カネを見ている人のほうが、デジタル人材としては向いていると強調します。
地方の価値は、外から来た人間が気づくことが多い
―― 続いて「ローカルビジネスとDX 地域課題解決の可能性」をテーマにしたいと思います。地域課題としてはどのようなものがあるでしょうか。
常盤木氏:宮崎県にも共通する話としては、交通の便の問題があります。他には、主要都市圏が孤立して相互性がないことなどがあります。非デジタルの側面の問題が絡み合っていることも少なくありません。また、そうした問題は過去に解決を試みたこともあるはずです。それでもうまくいっていないのはなぜか。私がDXを推進する場合はそこを深掘ります。すると、解決策が見えてくるのです。今出来ていない、過疎化している、遊休資源になっている、というものは宝になり得ます。
―― 課題を特定して、そこに対してアプローチすることがポイントになりますね。地域の資源を活かすことも非常に重要だと思いますが、宮崎県はどのような資産が活かせそうですか。
常盤木氏:宮崎県はかつて「日本のハワイ」と言われたハネムーンの聖地でした。そうしたポジションを取りに行くニッチ戦略と非常に相性が良いでしょう。実際、独自性のある景色が広がっています。日本の景色は同一化されている傾向があるので、大きな武器になります。
地場の人たちはもしかしたら価値を感じないかもしれませんが、外部にいる人間は捉え方が異なります。資産を持っている人と、資産を求めている人の価値観は真逆ということは多いのです。県の価値を県民だけで考えるのは望ましいことではありません。風土という言葉がありますが、外の人は風、地元の人は土。風と土のバランス感覚はとても重要です。
―― 宮崎県は大きな可能性が秘めていそうです。
常盤木氏:現状、宮崎県にあまり固定化されたイメージがありません。その分、手を加える余白が多くあります。また、遊休資源も豊富にありますので、それらにアクセスできるような仕組みを整えるとイノベーションのきっかけになります。
ただし、変に手を加える必要はありません。そのまま開放することに価値があるのです。するとその価値に引かれた人が集まってくる。県としては、集まった人たちの交流の場などを作り、シナジー効果が起こりやすい体制を築くことでしょう。
他業種の成功事例を流用することが革新につながる
―― イノベーションのヒントをたくさんいただいたところで、最後のテーマに移りたいと思います。「地域のDX推進 ローカルビジネスが勝ち残るための秘訣」。民間のローカル企業が勝ち残るためには何をすればいいのか。ぜひ教えていただきたいと思います。
常盤木氏:データ化やデジタル化の基本は財務体質の健全化です。この場合の健全化とは、無駄な稼働リソースがどこにあるかを認識することです。仕事のための仕事がどこで生まれているのかを棚卸します。大切なのは表面的な売上をのばすことではありません。目指すのは利益増です。
―― 詳しく教えてください。
常盤木氏:まずは時間のコストを減らします。コストの主要因はお金でなく時間です。本来はしなくていい業務を減らすなどします。次にコスト削減した分、商品や食材の原価を上げます。その結果、商品やサービスの評価が高まります。
最後に地域の他の同価格帯の商品と戦わない、つまり、同業他社との戦いをやめます。強みの部分で勝負するようにします。また、デジタル化のポイントは、その人が苦手なことをさせなくていいことです。一般的な企業は全員に同じことをさせようとし、苦手分野の改善を求めます。しかし、それはしなくていいことです。
―― 商品・サービスにしても人にしても、短所を伸ばすことにコストをかけない。苦手なことをやらなくていい状態を作れるのがデジタルということでしょうか。
常盤木氏:そうです。その上で、地域は値上げ戦略を取ることを強く推奨します。安い商品を値上げするのではありません。松竹梅で言えば、松と竹の商品を値上げします。そのために、パッケージに地域の特性を出したり、地域のポータルサイトを作ったり、見込み客の情報を共同でプールしたりするなどします。
―― 時間のコストを見直すことで収益性を上げる。それを品質アップに持っていく。次に、地域の強みを出して単価を上げる。これが大事なのですね。
常盤木氏:DXは本来、一社で行うものではありません。オープンイノベーション的な視点が必要で、自分たちが地域に提供できる機能は何かを考えます。その上で、法人を超えて機能ごとに連携した時に何ができるかを考えるのです。
一社で考えるのではなく、全体を見る。互いに相互補完することで、業界全体のアップデートを目指します。さらに言うと、他業種での成功例を自分たちの領域に持ってくると、効果の高いケースがあります。例えば、製造業の当たり前をスポーツ産業に持ってくるなどです。
―― なるほど。新しいサービスを作るというよりは、既にあるものを利用するという発想。改めてオープンイノベーションへの理解が深まった気がします。それではパネルディスカッションの締めくくりとしてローカルビジネスを盛り上げてくださる皆様にメッセージをお願いします。
常盤木氏:ローカル=大都市から遠いことは今後、バリューになります。これから求められるのは、各地域で手を取り合いながら、自分たちのビジネス土壌を再定義することです。ないものはすべて武器になると考えれば、未来は開けます。一緒に力を合わせましょう。
事業検証費用も支援――ビジネスビルドの概要とは?
――次に、説明会の司会を務めるeiicon曽田から、ビジネスビルドの全体概要についての説明があった。宮崎県の特徴や課題、ビジネスビルドの参加メリットなどを紹介していく。
宮崎県は「都道府県『幸福度』ランキング」で 2年連続1位に輝いています。自然豊かな土地を活かした農業・漁業・林業・畜産業などの一次産業から、農産品加工などの第二次産業、フードビジネス、観光はもちろん、医療機器関連産業といったモノづくりまで、さまざまな産業が集積する特徴があります。
一方で、宮崎県は進学・就職などで15歳~24歳の学生世代の県外への人口流出が顕著であり、大きな課題です。このような宮崎県で、デジタルをキーワードにビジネスをアップデートする。ビジネスビルドを通じ、先進的・魅力的な新機事業・ビジネスを創出し、県内産業の生産性向上、経済活性化はもちろんのこと、地元の若者の雇用やU・I・Jターン希望者の増加にもつなげることを目指します。
ホスト企業は株式会社テレビ宮崎、有限会社浅野水産、株式会社マルイチ、株式会社マキタ運輸の4社。地域に根差した4社を根幹に据え、地場のサポート企業、ビジネスに精通したメンターたちの協力のもと、デジタル技術の活用、オープンイノベーションによる新しいビジネスの創出、社会実装を試みます。
プログラムでは、各業界/ビジネスに精通したサポーター・メンター陣によるビジネスメンタリング、事業検証費用をサポートとして1社あたり最大50万円の支給、宮崎県庁・県内企業・サポーター企業からリソースの提供、プロモーションによるサポートを用意しています。サポート企業として、地域の企業や人々と密接なつながりのある株式会社宮崎銀行、IT領域のスペシャリスト、SCSKニアショアシステムズ株式会社が参画しています。
募集は既に始まっており、締め切りは10月29日。応募いただいたアイデアを11月10日までに書類選考し、選抜された企業は12月3~4日に宮崎市にお集まりいただいて、ビジネスビルドを行います(※オンライン開催になる場合もあり)。採択された場合は3カ月間のインキュベーション期間を経て、事業化を図ります。3月には共創ビジネスアイデアをブラッシュアップして事業の骨組みまで創っていただく予定です。規模の大小を問わず、全国の法人格をお持ちの企業からのエントリーをお待ちしています。
宮崎県を代表するホスト企業4社が抱える課題と募集テーマ
――ここからは、説明会に登壇したホスト企業4社によるビジネスビルドの募集テーマや提供リソース・アセットについて、詳しく紹介していく。
●テレビ宮崎「地域活性につながるメディアの新たな価値創造」
▲新規事業開発部 兼 コンテンツ開発部 谷之木 志章氏
1971年に開局した当社は、東京・大阪・福岡に支社を持ちます。事業領域は3つあります。1つ目がメディア事業です。地上波テレビ放送、インターネット配信、スマートフォンアプリ「UMKアプリ」を用いて、ニュースや天気予報、生活情報などのコンテンツをお届けしています。
2つ目がイベント事業。「アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI」をはじめ、スポーツ、音楽、文化などに関する各種イベントを行っています。この2つの事業を50年以上行ってきましたが、それだけでは持続可能な成長が難しいということで、3つ目の新規事業開発が創設されました。現在、オンライントリップ事業、テイクアウトアプリ事業、ベンチャー出資などを行っています。
一方で当社はデジタル・テクノロジーが不足していると実感しています。テクノロジーの進化を加速させたいという思いから、次の3つのテーマを設定。以下に背景と課題感を説明します。
最初のテーマが「UMKグループが保有するリソースの有効活用」。抽象度の高いテーマですが、皆様と一緒に考えたい、可能性を広げたいとの思いを込めています。具体的なリソースは「世代特性など把握できる視聴率のデータ」。視聴率の傾向としては、13~44歳から多くの支持を集めている傾向があります。
さらに、「編集室、スタジオ、カフェスペース、イベント施設などの不動産とイベントノウハウ」、「広告代理店、システム開発会社、ゴルフ場などで構成されるグループ会社」――などのリソースも提供可能。これらを使って、宮崎県の生活者にメリットのあるサービスを開発したいと思っています。その上で、既存ビジネスにテクノロジーを掛け合わせたビジネスモデルや県が抱える社会課題を解決するアイデアを募集しています。
次のテーマが、「県外在住の宮崎県出身者も繋がれるローカルコミュニティ形成」。若者の県外流出は社会課題の一つです。毎年約8000人が生まれ、約2000人が県外に出ています。出ていった人たちと何らかのつながりを持ち続けていれば、宮崎県の経済は広がりを見せるはずです。また、最近は外国人も増えていますので、外国人を含めたコミュニケーションを促すサービスを提供したいと考えています。
最後の3つ目のテーマが、「ハイブリッドドローンを活用した、非常時/平常時で活躍するソリューション・サービスの共同開発」。当社はドローン開発のスタートアップに出資しています。このスタートアップのドローンは長距離・長時間の飛行が可能で、他にはあまり見られない特徴です。皆様の持っているテクノロジーと掛け合わせたら面白いことができると期待しています。
●浅野水産「船舶ICT化の基盤構築、漁業の未来を切り拓く」
▲経営企画マネージャー 浅野龍昇氏
当社は近海かつお一本釣り漁船「第五清龍丸」を操業しています。全長40メートル、総トン数119トンで船員は23人。年間漁獲量は約1000トンです。創業して50年以上が経ち、世代交代が進んでいます。
当社が新規事業の立ち上げを積極的に行う背景には、かつお一本釣り漁業を残したいとの思いがあります。これまで、東京のスタートアップと共創し漁師の意思決定プロセス(漁師の勘)をAIシステム化する事業を立ち上げるなど、IT導入に積極的に取り組んできました。今、漁業は漁獲量の減少などの問題に直面しています。日本の水産資源は劇的に減少するという試算もあります。このような中、かつお一本釣りを残すために、足りない部分、ソリューションを今回のビジネスビルドを通じ募集することにしました。以下にテーマについて詳細を説明します。
「テクノロジーを活用した船舶の機関業務の効率化」。既にお伝えしたように当社は漁師の勘AI化プロジェクトを進めています。漁師の勘は大きく2つあり、1つが漁場の予測、もう1つが適切なエンジンルームの運用です。特に魚を保管する倉庫の管理温度(水温)で漁獲物の味も異なってきます。機関業務には高い技術が求められますが、機関技術者の高齢化が進んでおり、技術継承は急務の課題。当社に限らず、他の漁船でも問題となっています。
「テクノロジー活用による水産バリューチェーンの再構築」。2020年12月の改正漁業法で船舶ごとに年間の漁獲量の上限が定められました。水産事業者は適切な需給のバランスを見極めたうえで、漁に出る仕組みを作らなければいけません。今は漁獲したが儲からない、いわゆる「漁業者貧乏」を成り立たせています。一方、世界ではちゃんと儲かる仕組みになっています。この問題を早急に解決したいと思います。
「沖合でのオンライン通信環境の構築」。通信は、日本の漁業が抱える課題を解決するマスターピースと言っても過言ではありません。洋上通信は世界的には進んでいますが、日本は極端に遅れています。宮崎県は近海かつお一本釣漁獲量で全国1位です。日本一の県がDXを進めれば、日本の漁業に与えるインパクトは大きいはずです。
●マルイチ「生産者と消費者をつなぐプラットフォーム構築」
▲取締役 高木資子氏
当社は日向市に本社を置くスーパーマーケットです。県内に9店舗を展開し、12年前からはネットスーパーを手がけています。2021年で創業70年。日向市を中心に4世代に利用いただいていることになります。キャッシュレスを6~7年前から導入し、利用率は5~6割。全国的に見ても非常に高い水準となっています。また、最近ではベンチャー企業「SIRU+」と開発した献立の提案をするアプリを扱っています。こうしたICTを活用する際に大切にしていることがあります。それはお客様の困りごとを解決すること、そして、お客様を置いていかない、ということです。
こうした当社が目指しているのは「地域の人が元気に暮らせる社会を作る」ことです。その一環として取り組んでいるのが、オーガニック野菜の事業。5年前に無農薬野菜生産法人「日向百姓会」を設立し、健康を重視した野菜の栽培を始めました。海外ではオーガニック野菜の普及が進んでいます。一方、日本は10年ほど遅れていると言えるでしょう。幸いにも、日向百姓会の野菜は料理評論家からも高い評価を受けています。
当社では、地域の方を健康にすることを一つの使命と捉え、オーガニックに対する意識を浸透させたい考えです。ローカルスーパーマーケットを通じてオーガニック野菜をお客様に届ける。そうすることが強い地域につながると確信しています。こうした思いから、地域の一次産業を巻き込みながらさまざまな取り組みを行っていますが、なかなか地域に浸透しません。そこで、皆様の力をぜひお借りしたいのです。
当社がテクノロジーの活用で解決したい課題は、「安定供給」と「消費者の認識向上」です。提供リソースとしては、「1日約2万人が利用するポイントカードの顧客データ」、「9店の実店舗+宮崎県の3分の1を網羅するネット店舗」、「SNS関連(マルイチと日向百姓会のInstagram)」――です。皆様と共に取り組み、食を通じ地域を幸せにしていければと思います。
●マキタ運輸「テクノロジー活用による物流現場のアップデート」
▲管理営業部 水元雅士氏
当社は都城市に本拠を構える食品輸送を主とした物流企業です。従業員165人、保有車両は4.8t車16台、10t車40台、トラクタ64台、トレーラー149台です。グループ会社に物流会社2社のほか、農業生産法人があります。物流拠点は宮崎のほか、東京、大阪、福岡に計6棟の冷凍・冷蔵・常温倉庫を設けています。強みは、大消費地に物流センターを持つこと。さらに、集荷地から一定温度を保った輸送を可能にした「コールドチェーン輸送」などです。
当社は持続可能な物流ネットワークの構築を目指しており、業務のさらなる効率化が必要不可欠です。そのために、以下に掲げる4つのテーマについて実現させたいと考えています。それぞれの課題と今後のイメージをお伝えします。
「主要業務のマニュアル化・デジタル化」。課題は研修・教育がOJT中心となっていること。内容にムラがあり、管理も不十分です。今後は業務のマニュアル化、研修・教育のマニュアル化を進め、人材育成体制を強化したいと思います。
次に、「配送業務に関わるビッグデータを用いたAIによる自動配送システム」。課題は配車業務が属人的に行っていることです。今後は過去の配送実績のデータを活用し、適切なルートを提案して、自動配車を実施。人が介在するのは最終的な調整だけにしたいと考えます。
そして、「GPSを活用した車両管理システム・温度管理システム」。課題は有人車両、無人車両を別々に管理していることです。今後はシステムを統一し、クラウドでいつでもどこでも状況を確認できるようにしたい。
最後に、「遠隔地で業務する従業員の健康管理や事故を未然に防ぐテクノロジー」。課題は遠隔地で活動する従業員の健康状態を確認することが困難なことです。今後は日々の健康管理はもちろんのこと、ウェアラブルデバイスなどを活用し、非常時の通知・対応を素早く行えるようにしたいと思います。
当社ができる提供リソースは「従業員」、「保有車両」、「宮崎・東京、大阪、福岡の冷凍・冷蔵・常温倉庫」、「各拠点での車両ネットワーク・クライアントデータ」です。皆様と力を合わせることで課題を解決し、当社の取り組みが南九州のモデルケースになればと考えています。
編集後記
地方創生、地方から元気になるという言葉をよく聞くが、常盤木氏のパネルディスカッションで、地方こそがこれから日本のカギを握ることが理解できた。さまざまな可能性を秘める地方だが、中でも宮崎県は多くの魅力がありそうだ。同県は今年度を「デジタル化元年」と位置づけ、官民を上げてイノベーションの創出を目指している。『MIYAZAKI DIGITAL INNOVATION BUSINESS BUILD』のエントリーの締め切りは10月29日。少しでも興味を持ったらいち早くご応募をすることをお勧めしたい。
※本説明会の模様は以下URLにてアーカイブしています。さらに詳しい内容を知りたい方は、ぜひご覧ください。
(編集:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士)