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富士市が推進する「次世代型素材・CNFを活用したオープンイノベーション事業」――2期目のホスト企業3社が共創で実現したい新たな価値創出とは?

富士市が推進する「次世代型素材・CNFを活用したオープンイノベーション事業」――2期目のホスト企業3社が共創で実現したい新たな価値創出とは?

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富士市は2022年度に引き続き、2期目となる「デジタルツールを活用したCNFオープンイノベーション促進事業」に取り組んでいる。植物由来のCNF(セルロースナノファイバー)は環境にやさしく、かつ多様な特性を持つことから幅広い分野での活用が見込まれており、次世代型素材として注目を集めている。

同市の基幹産業である紙・パルプとも関連が深いこともあって、2019年3月に「富士市CNF関連産業推進構想」を策定し、同年11月には同推進構想に基づき会員制の「富士市CNFプラットフォーム」を設立。プラットフォームは、CNFの実用化に向けた支援をはじめ、用途開発の加速、関連産業の創出・集積を図るための産学金官などの連携・ネットワーク構築などに注力してきた。現在、企業・団体、個人など198の会員(※2023年11月24日 現在)が活動している。

富士市では、ビジネスマッチングやオープンイノベーションによるCNFの実用化・社会実装をますます加速すべく、デジタルツール(オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」)の活用を促進。2期目を迎えた本事業では、ホスト企業としてプラットフォーム会員の「株式会社コーヨー化成」「レンゴー株式会社」「丸富製紙株式会社」を選出し、3社は意欲的に共創の取り組みをスタートしている。

■株式会社コーヨー化成 https://auba.eiicon.net/projects/38139

■レンゴー株式会社 https://auba.eiicon.net/projects/37550

■丸富製紙株式会社 https://auba.eiicon.net/projects/37536

これを受け今回、TOMORUBAでは富士市とホスト企業3社の担当者にインタビューを実施した。まず、富士市のCNF・産業戦略担当である平野氏には、「デジタルツールを活用したCNFオープンイノベーション促進事業」を推進する背景や狙いについてインタビューを実施。ホスト企業3社には、共創にかける思いや提供できるリソース・アセット、共創パートナー像などについて詳しくお聞きした。

【富士市】 脱炭素に資する素材の認知をますます広めたい

▲富士市 産業交流部 産業政策課 CNF・産業戦略担当 主幹 平野貴章氏

――富士市は2022年度に引き続き「デジタルツールを活用したCNFオープンイノベーション促進事業」に取り組んでいます。改めてになりますが、本事業を推進する背景をご教示ください。

平野氏 : 本事業のキーワードは大きく2つで、「CNF」と「デジタル」です。それぞれに取り組む背景をご説明します。1つめのCNFについては、未来の素材として注目されており、紙産業が盛んな富士市内の企業や研究機関などでも早い段階から研究・開発が進められています。

一方で、多様な機能・性質があるものの、どのように活用すれば良いかが十分には見えていない。使う側の立場になってディスカッションが必要だと考えました。そのディスカッションにデジタルを活用しようという狙いが、2つめのキーワードにつながってきます。

新素材が活用されるには素材を知ってもらうことが大前提で、そのために一般的には展示会などリアルの場を通じて紹介を行ってきました。ただ、業界の関係者が中心に集まる展示会では、ものの見方も似通っておりどうしても議論が深まらない傾向にあります。より多くの出会いを創出するにはデジタルツールが有効なのではないか。特にアーリーステージの段階ではデジタルツールを活用して、幅広い業界・業種の方たちと出会いの場を作ることが重要と考え、この事業を進めています。

――富士市ではCNFのプラットフォームも立ち上げ、盛り上がりを見せているとお聞きしています。

平野氏 : おかげさまで会員数は伸びてきています。ただ、内情を見ると、CNFをどのように使っていくか、という議論は十分にはされていません。もっと活発な議論が行われ、場合によってはプラットフォームの枠を超えて、企業同士がつながる。そうしてCNFのすそ野が広がっていくことを望んでいます。

他方、デジタルツールとしてオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」を導入したことは、非常に良い結果につながりました。異業種の企業やスタートアップなど、これまで接点がなかった方々とも、多くの出会いがあったと聞いています。ファーストコンタクトから面談に進んだ率も高く、中には継続して共創が進められているケースもあるようです。その意味では、当市としても良い支援ができたのではないかと捉えています。

――昨年度の「デジタルツールを活用したCNFオープンイノベーション促進事業」を振り返って、手応えはいかがだったでしょうか。

平野氏 : お伝えしたように、これまで出会いのなかった企業とのマッチングが図れ、活発なディスカッションが行われました。想像以上に良い成果が出ていると感じています。特にホスト企業の一つだった東洋レヂン株式会社さんは新事業の創出につながり、オープンイノベーションの好例も生まれました。他にも、自分たちに出来ること・出来ないことが見えてきて共創に対する意識が変わった、オープンイノベーションに前向きになったという声が多く届いています。

――今年度は新たに3社がホストとなりました。どのようなことを期待していますか。

平野氏 : 今回参画の3社は昨年度の事例を見ています。そのため、共創にどのようなことが求められているのか、一定の理解があるのではないでしょうか。AUBAのコンサルタントの方たちの支援もあるのでしょう。どの企業も、実現したいことが明確で、良い成果が期待されます。

――最後に、今年度の意気込みを聞かせてください。

平野氏 : 私はCNFのことを勝手に「革新的環境調和型新素材」と呼んでいます。植物由来で脱炭素やカーボンニュートラル、循環型社会やサーキュラーエコノミーの実現に向け、環境と経済を両立する素材だと確信しているからです。高機能で食品や化粧品にも応用でき、最近では軽量・高強度の性能も着目されており、可能性はとても大きいです。

当市では「CNFと言えば富士市」と言われるべく力を入れ、補助金も用意しています。より多くの方々にCNFの良さを知っていただければ大変うれしく思います。そのために、私たちはサポートを惜しみません。ホスト企業と共に、ぜひ積極的にオープンイノベーションに挑んでいただければと思います。

【コーヨー化成】 生産量全国2位を誇る静岡の薔薇で、幸福度向上への貢献を目指す

【左】株式会社コーヨー化成 経営企画本部 首席研究員 柏木敏氏

【右】株式会社コーヨー化成 開発グループ チームリーダー 細野沙織氏

――まず本事業への参画の背景についてお聞かせいただければと思います。

細野氏 : 当社はプラスチック成形加工の会社として実績を重ねてきました。近年ではアルコール除菌を中心とした衛生材料、化粧品の自社開発に力を入れています。2016年には産学官の連携で「静岡バラプロジェクト」を立ち上げ、その中から薔薇水ブランド「baraio」が生まれました。「baraio」は原料にCNFも活用されていることもあって、参画を決めたのです。スタートアップをはじめとする方々と共に「baraio」を展開・発展させていきたいという思いがあります。

――「baraio」についてぜひ詳しくご紹介ください。

細野氏 : 静岡県は薔薇の生産量が全国第2位です。ただ、薔薇は栽培される約3割が規格外として廃棄されてしまいます。生産者の方々にとっても負担は決して小さくないでしょう。一方で、薔薇は形や色以外にも、香りや成分など価値の高いものがあります。捨てるのは非常にもったいない。

そこで、化粧品メーカーでもある当社が廃棄予定の薔薇を買取り、大学や研究機関、自治体と共同でローズ水100%の化粧品を開発しました。一般的な化粧品は必ず水を使用していますが、「baraio」はローズ水のみを使用しているのが特徴です。また、お伝えしたように廃棄予定の薔薇を使用しているので、生産者の力になれ、かつ環境やSDGsにも配慮された製品と言えます。

▲「baraio」の香りは富士山の高さである3,776mにちなみ、「No.3」「No.7」「No.76」の3種類を展開。

――共創ではどのようなことを実現したいですか。

細野氏 : 使ってみないことには良さがわからないので、まずは「baraio」を使ってほしいと思っています。現状、美容液や乳液などの製品ラインナップがあり、例えば、宿泊施設あるいは街コンなどのイベント会場に置いてもらうのが良いのではないかと考えています。「baraio」 のターゲットは20~40代の女性ですので、男女の出会いの場と相性が良いのではと考えています。

実は街コンのアイデアはAUBAのコンサルタントの方から提案いただきました。私たちだけではまったく出てこなかった発想です。そうしたアイデアをたくさんいただければ嬉しいですね。このほか、環境やSDGsの商材として活用を見出すことではできないかと考えています。

柏木氏 : 化粧品は第一に女性をきれいにするのが役割ですので、そうした面で力を発揮できればと思います。また、化粧品で女性を楽にする、あるいは、最近では男性の美容意識も高まっていますから、男性を美しくするという視点でも活用の道を探っています。

――テーマの実現に向け活用できる貴社の強みはどのようなものがありますか。

柏木氏 : 「減圧蒸留装置を使った香り成分等の抽出技術」「薬液の調合・含浸技術」「化粧品から洗剤まで、基材となる薬品や溶剤の特性に生かした最適な調合方法」などがあります。当社は化粧品やウェットティッシュの開発で実績を重ねていますので、さまざまな技術やノウハウが提供できます。このほか、産学官の連携を行ってきましたので、静岡県の大学、研究機関、自治体とのネットワークもあり、それらも活用可能です。

――最後に本事業にかける意気込み、応募企業へのメッセージをお願いします。

柏木氏 : 市場にないものをつくり、新しい価値を届けるのが私たちの使命だと捉えています。先ほどもお伝えしたように、化粧品には女性を美しくする、楽にする、男性を美しくする良さがあります。そうした良さを知っている方と共創したいですね。薔薇には人を幸せにする力があると捉えています。静岡の薔薇で多くの人を幸せにしたいと思います。

細野氏 : まずは静岡の薔薇とその良さを知ってもらい、「baraio」の活用を考えていただければと思います。生花は人々を元気づけるものだと思います。中でも、薔薇は側に置いておくだけで、色や形、香りにふっと気持ちが癒される瞬間があります。「baraio」 が静岡の薔薇が広まる一つのきっかけになればとてもうれしく思います。

【レンゴー】 液体に活用する独自のCNFで、新たな価値を創造する

▲レンゴー株式会社 研究技術開発・環境経営推進部門 中央研究所研究企画部企画第二課 担当課長 土屋大樹氏

――まずは本事業への参画の背景を教えていただければと思います。レンゴーは段ボールで著名ですが、なぜCNFに着目しているのかもあわせてお聞かせください。

土屋氏 : ご指摘のように、当社は「段ボール」という言葉の名付け親ともされており、長年にわたり企画・製造を手がけトップクラスの実績を有しています。そうした中、段ボール以外の事業として環境対応の製品を提供しようという取組を始めました。当社は元々1930年代からセロファンの製造を行っています。ただ、これだけでは不十分と考え、後発ながら2018年ごろからCNFの製造にも乗り出したのです。言ってみれば、素材メーカーとして新しいスタートを切りました。その意味で、素材メーカーのスタートアップと言えるかもしれません。

――レンゴーでは、CNFを液体に活用することに着目しているとうかがいました。

土屋氏 : はい。後発の当社が他と同じことをしていたら太刀打ちできませんし、新しい価値を生み出しにくいでしょう。そこで着目したのが液体です。液体はCNFの性質が最も安定している状態で、何か応用展開ができないかと思案しています。

――共創相手としてイメージしている企業像や、現時点で考えている共創のアイデアをご紹介いただければと思います。

土屋氏 : 本事業の期間が半年と限られているので、塗料や化粧品をまずは想定しています。増粘剤、乳化剤、分散剤などの添加材について共同研究・共同開発をする。そうした性質をとっかかりにして、さらに機能を追加し、今までにない機能を持ったり、あるいは飛躍的に機能を向上させたりできればと思っています。ただ、あくまで現時点での考えに過ぎませんので、さまざまな視点から提案をいただきたいです。

――AUBAを通じ、既にいくつかの企業とコンタクトを取っているとお聞きしています。その中で、新たな発見などはあったでしょうか。

土屋氏 : そうですね。さまざまな企業と話をさせていただいています。特にスタートアップの方からは斬新なアイデアをいただくことが多く、まったく想定外の提案もありました。そんなのはあり得ない、無理だ、と思うこともありますが、そうした話をしてもらったほうがありがたいです。私たちの凝り固まった視点や発想が、ほぐれていくような感じがします。結果として、より大きな成果につながると期待しています。

――印象に残る出会いはありましたか。

土屋氏 : 宇宙産業のスタートアップとの出会いがありました。スケールが違い過ぎて、通常通りの事業活動を続けていたら、まず出会わなかった企業だと思います。デジタルを活用した出会いの良さを感じることもできました。

――テーマ実現に向けて活用できる貴社の強みについてご紹介ください。

土屋氏 : 当社独自のCNFを提供できますし、カスタマイズの要望には可能な限り対応します。また、段ボール事業で培った取引先とのネットワークも活用いただけます。

――CNFについて、独自性はどのようなものですか。

土屋氏 : 細い・耐熱性がある・化学的処理をしていない、という3つの性質を兼ね備えています。一つ一つはよく聞く話だと思いますが、3つ揃っているのは当社独自のものですね。

――最後に本事業にかける意気込み、応募企業へのメッセージをお願いします。

土屋氏 : こんなことできるだろうか、これはちょっと難しいかな、と思うようなアイデアでも遠慮なく持ってきてください。奇想天外な発想は大歓迎です。そんな夢みたいな話が実現できるか、というものを生み出せたら、技術者冥利に尽きます。とにかく、モチベーションと熱意は必要以上に持っています。一緒に世の中にないものを生み出しましょう。

【丸富製紙】 CNFの「強度」に着目。共にインパクトのあるものづくりを

▲丸富製紙株式会社 執行役員 生産技術・新製品開発部 部長 八木英一氏

――まずは本事業への参画の背景・テーマ設定理由と、本事業を通して創造したい価値をお聞かせください。

八木氏 : 当社はトイレットペーパーやティシュペーパーなど主に家庭紙の製造販売を行っています。トイレットペーパーでは全国でも上位の生産量で、芯なしのトイレットペーパーなど独自性の高い製品も扱っています。

一方で、新たな展開を求め数年前からCNFの研究を行っており、自社製品に活用しています。一定の成果を収めているので、世の中にもっと広めていこうと数年前から展示会にも出展してきました。ただ、なかなか共創にはつながりません。他社との共創の仕方がわからず、受け身なところもありました。

そうした時に、本事業の存在を知り、参画を決意したのです。実は昨年度も参画を考えていましたが、東洋レヂンさんの事例を聞いて、やはり可能性は大きいと再認識し、本年度の告知を聞いてすぐに手を挙げました。おそらく、どこよりも早い応募だったと思います。

――今回、自社開発のCNF「FUJI-MF」をテーマにしています。特徴をご紹介ください。

八木氏 : 当社はトイレットペーパー製造工程で発生した端材を活用してCNFを作っています。SDGsや循環型社会に貢献する材料を使っており、当社独自の特徴と考えられます。性能としては、ナノファイバーと言いながら、ナノほど細かくはしておらず、その分、低コストで強度を増すことができます。

――AUBAを活用してみての感想はいかがですか。

八木氏 : 驚くほど多くの問い合わせをいただいています。これまで出会いの創出であれほど苦労していたのは何だったのだと思えるほどです。展示会には展示会ならではの良さがあるのですが、それにしてもスピード感が違い過ぎました。

――手応えを感じていただけて良かったです。本事業で共創相手としてイメージしている企業像や、共創アイデアの例を提示していただければと思います。

八木氏 : 「FUJI-MF」は強度が武器で食品や化粧品との相性は良くありませんが、強度を必要としている分野で強みを発揮したいです。具体的には、プラスチックなど石油由来の材料を使っていた部分の代替として活用いただけるのではないかと考えています。例えば、自動車部品や、身近なところでは卵の容器などが想定されます。

――先ほど、AUBAで多くの問い合わせが来ているという話がありました。共創が進んでいるケースはありますか。

八木氏 : 2社はサンプル製造まで進んでいます。そのうちの1社がプラスチックの代替としての利用を試みています。原材料は紙なので、水と火に弱く、その点の克服が課題です。

――テーマ実現に向けて活用できる貴社の強みをご紹介ください。

八木氏 : 富士市内に14の工場があり、活用いただけます。量産にも対応可能です。また、CNFは当社の次の事業を創るものとして経営陣からの期待は大きく、会社からの支援も期待できる状況にあります。私自身も役員を務めていますので、出来る限りスピーディーに対応いたします。

――最後に本事業にかける意気込みと、応募企業へのメッセージをお願いします。

八木氏 : CNFは環境に優しい素材です。ゼロカーボンの実現を目指す方や、新しい価値を世の中に提供したいという思いを持つ方と共創をできればと考えています。紙を原料とするCNFからこんなものが生まれたのか、という驚きとインパクトを与えることを共に目指しましょう。

取材後記

富士市やホスト企業の話を聞きながら、改めてCNFの持つ高い可能性を確認できた。植物由来の素材で循環型社会に貢献すると共に、多様な性質を持つのが強みだ。昨年度実施されたプログラムからは、オープンイノベーションの好例も生まれたという。今年度はどんな価値が創造されるだろうか。今後の展開から目が離せない。なお、ホスト企業3社の詳細情報に関しては、以下を参考にしていただきたい。

■株式会社コーヨー化成 https://auba.eiicon.net/projects/38139

■レンゴー株式会社 https://auba.eiicon.net/projects/37550

■丸富製紙株式会社 https://auba.eiicon.net/projects/37536

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:小嶋文子)

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