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サントリーの食・水や健康食品ノウハウを徹底活用した新規事業!ベンチャーとオープンイノベーションを推進する狙いは?

サントリーの食・水や健康食品ノウハウを徹底活用した新規事業!ベンチャーとオープンイノベーションを推進する狙いは?

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1899年、明治後期の大阪。鳥井信治郎が開業した「鳥井商店」から、サントリーの歴史は始まった。日本における洋酒文化の普及、国産ウイスキーの製造など、周囲に猛反対を受けても不屈の精神で取り組んだ創業者の口癖は、「やってみなはれ」。この精神でサントリーグループは数々の挑戦を続けてきた。現在は酒類や清涼飲料、健康食品を中心に、人々の生活文化を豊かなものにする商品やサービスを多数展開している。

そんなサントリーグループが、新規事業創出のため、ベンチャー企業との共創プロジェクトをスタートする。サントリーの既存事業である酒類や飲料、健康食品などに留まらない新たな消費者へのアプローチを、ベンチャー企業と模索していく狙いだ。

近年はグローバルで大規模なM&Aを行うなど、既存事業の強化を積極的に行うサントリーグループが、社内起業ではなくベンチャー企業とのオープンイノベーションを決意した背景とは。そして、提供できるリソースとは。今回の取り組みを進めている「ベンチャーコネクティングチーム」の鈴木氏に話を伺った。

▲サントリーホールディングス株式会社 経営企画部 課長 ベンチャーコネクティングチーム 鈴木 雄一氏

ベンチャーと対等な立場で新規事業立ち上げ、社会課題を解決

――今回「ベンチャーコネクティングチーム」を発足させ、積極的にオープンイノベーションを進めるとのことですが、その背景をお聞かせください。

鈴木 : 今、様々な業界で新たな技術やプレーヤーの参入など、業界地図を塗り替えるほどのイノベーションが起こっています。こうした大きな波は、酒類・飲料業界にはまだ到達していませんが、これから変化していくことは間違いありません。ですから今のうちに、新たな取り組みを行っていくことが必要です。

――なるほど。

鈴木 : また、世の中は「健康」や「食」といった分野で様々な社会課題を抱えています。日本国内であれば、超高齢社会の到来による健康にまつわる問題。一方で世界に目を向けると、人口の爆発的増加による食糧問題があります。これらの社会課題を解決していくには、これまでにない切り口によるソリューションの創出が不可欠です。新たな技術やアイデアを持つベンチャー企業の方々と共に、人の生活文化を豊かにする新規ビジネスを立ち上げ、社会に貢献していきたい。そんな想いのもと、「ベンチャーコネクティングチーム」はスタートしました。

――チームには、どのような方々が所属しているのでしょうか。

鈴木 : バックグラウンドは様々ですね。まず、部長の田端。彼は営業部門の出身で、そこから人事部を経て、宣伝部で山崎や白州、響、角瓶のブランドマネージャーを経験。直近までは内閣府で政策参与を務めていた人物です。私はもともと技術系で、工場でのエンジニア、生産企画、そして研究所での研究企画を担当してきました。そしてIT部門出身で、ホールディングスのIT推進、業務改革を推進してきた阿部。サントリーウエルネスで化粧品開発を行った後、商品企画・マーケティングを経験した龍口。チームはこの4人、少数精鋭で運営しています。

▲「ベンチャーコネクティングチーム」のメンバー 左から、龍口、阿部、鈴木、田端

――組織としては、いつ頃からスタートしたのですか。

鈴木 : 現在のチームの前身として、2016年初頭からシリコンバレーのベンチャーキャピタルを通じた探索活動を始めました。アプローチを行ったいくつかのITベンチャーと、現在PoC (Proof of Concept/概念実証)やその前の協議を進めているところです。

この成果を踏まえ、さらに探索エリアや領域を広げてベンチャー企業との共創を進めるべく、2017年4月に「ベンチャーコネクティングチーム」と名付けました。

――サントリーさんは以前からオープンイノベーションを行っているイメージがありますが、「ベンチャーコネクティングチーム」の他にどのような実績があるのでしょうか。

鈴木 : 比較的早く始めたのは、R&D領域ですね。アカデミックな領域で技術探索を行う活動は以前から盛んです。一方、ビジネスの領域でベンチャー企業との共創はほとんどありませんでした。サプライヤーとしてのお付き合いはあったとしても、今回のように対等な立場で一緒に新しい事業を生み出していく組織は、私たちが初めてですね。

――ベンチャー企業と共創する上では、意思決定のスピードも大きなカギとなりますが、その辺りの仕組みはどうでしょうか。

鈴木 : 今まさに取り組んでいるところです。今後は、「ベンチャーコネクティングチーム」の中で決裁できる範囲を広げて、意思決定のスピードを上げていきます。

「健康食品」「食」「水」の3領域の強みを生かしたオープンイノベーション

――今回、主に「健康」「食」「水」の3領域で、ベンチャー企業とのオープンイノベーションの可能性を探っていかれるそうですね。この領域でどのような展開を考えていらっしゃいますか。

鈴木 : 「健康」の領域では、当社は現在サプリメント事業を展開しています。しかし今後はそれだけでは解決し得ない健康問題にも対応していきたい。そこで新しい技術などを取り入れることで従来にない製品やサービスを展開し、お客様の健康寿命の底上げにつなげていこうと考えています。

次に「食」の領域。先ほど申し上げた食糧難の時代に向けて、現在の食の代替となるものの開発や、これまでにない生産方法の開発などが期待されています。ここではベンチャー企業の技術やアイデア、そしてサントリーがこれまで培った技術も活用しながら貢献できるはずです。

――最後の「水」はどうでしょう?

鈴木 : 我々サントリーはコーポレートメッセージで「水と生きる」を掲げ、酒類や飲料の製造に欠かせない「水」にまつわる様々な活動を行っています。例えば、工場で使う水の水源涵養、そして「水育」と称した教育活動を、国内外の学校で実施しています。このような活動の数歩先、あるいは全く異なる活動によって、まだ私たちが関与できていない水に関する社会・環境問題を解決できる可能性があると思っています。

「健康」「食」領域と比較して「水」領域はまだ漠然としているのですが、もしかしたら今はまったく水とは関係ない事業を行っているベンチャー企業がパートナーとなるかもしれません。そうした新たな可能性も、ベンチャー企業との対話の中で探っていきたいですね。

バリューチェーン全般のノウハウ、実証フィールドなど、ベンチャーへ提供できるサントリー独自の価値

――ベンチャー企業との共創を進めていく上で、提供できるリソースはどのようなものがあるのでしょうか。

鈴木 : 大きなものでは、バリューチェーン全般の知見・ノウハウですね。例えば原材料調達におけるリスク低減、品質保証、お客様コミュニケーションなどがあります。特にお客様の声を商品開発にフィードバックする仕組みはうまく機能しており、他社さんからも問い合わせをいただきますね。マーケティングの面では決まったセオリーやシステムがあるわけではないのですが、例えばハイボール復活など、社員が一つひとつ築き上げた実例の数々は私たちの大きな財産です。こうした実例に基づいたノウハウの共有を行うことも考えています。

もちろん、製品・サービスをスケールアップさせる上での生産、営業も大きなリソースです。そしてテストマーケティングなどにおいては、ダイナックやプロントといったサントリーグループ企業で展開する飲食店、文化施設、通販チャネルといった実証フィールドを提供することも想定しています。

――オープンイノベーションを進めていく上では、社内・グループ企業内での認知を広げることも重要なポイントですね。

鈴木 : はい、その通りです。ちょうど先日、社内の展示会で我々の活動を紹介するパネルを出展しました。先ほど申し上げたシリコンバレーのベンチャーとのPoCについても、そこで紹介しましたので、少しずつ認知は広がっていくのではないかと思います。

また、連携先を探していく上で、「ここは既存事業とのシナジーが期待できそうだ」というベンチャーがあれば、グループの事業会社に紹介していくことも考えています。社内にも「何か新しいことをしたいときは、ベンチャーコネクティングチームへ」という認識を広げていきたいと、チーム一同取り組んでいます。

――最後に、改めてベンチャーとの共創における意気込みをきかせてください。

鈴木 : 健康、食、水といった、私たちの生活文化に深く根差した社会課題に私たちは取り組み、世の中に広く貢献をしていきたいと思っています。同じような問題意識を持つベンチャー企業の方々、ぜひ一緒にイノベーションを生み出していきましょう。

【編集後記】サントリーの誇る健康食品、飲食の価値は絶大

オープンイノベーションを実施するには、自社の持つ強みを生かすことが前提となるが、サントリーのベンチャーコネクティングチームは、まさにサントリーの強力なストロングポイントを軸に形成されている。

サントリーの飲食や健康食品といった国民的に支持を得ている分野と、ベンチャーの長所をかけ合わせたオープンイノベーションは、どのようなインパクトをもたらすだろうか。

◆ベンチャー共創プロジェクトの詳細については下記URLをご覧ください。

https://eiicon.net/about/suntory-co-creation/

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  • 村上 英一

    村上 英一

    • 日本ポール株式会社 応用技術研究所
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