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製造業向け環境機能SaaSが優秀賞を獲得!―愛知から生まれる新事業とは?「AICHI STARTUP DAY 2021」ビジコンの模様を徹底レポート

製造業向け環境機能SaaSが優秀賞を獲得!―愛知から生まれる新事業とは?「AICHI STARTUP DAY 2021」ビジコンの模様を徹底レポート

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自動車産業をはじめとした製造業の集積地であり、スタートアップを起爆剤とするイノベーション都市として急成長を遂げる愛知――。2018年10月に策定した「Aichi-Startup戦略」に基づき、日本最大級となるインキュベーション施設「STATION Ai」(2024年開業予定)の建設を進めるほか、数々のスタートアップ支援策を打ち出している。

この取り組みの一環として、愛知県とeiicon companyは、去る9月18日(土)に「AICHI STARTUP DAY 2021」と題したオンラインイベントを開催。「Aichi-Startupビジネスプランコンテスト2021」デモデイと、「PRE-STATION Ai」PRイベントの二部構成で、13時から6時間にわたってライブ配信を行った。

本イベントには、140名近い視聴者が参加。これまでも同様のイベントを開催してきたが、今回が過去最大数となったそうだ。このことからも、愛知に対する注目度が高まっていることがうかがえる。本記事では、愛知の底力と可能性を視聴者に見せつけたイベントの様子を、「Aichi-Startupビジネスプランコンテスト2021」のデモデイに焦点をあてて紹介する。

激戦を勝ち抜いた10者が壇上へ、そのうち3者が受賞!

本コンテストでは、テーマを「モノづくり企業の課題を解決するAI・IoTなどを活用したアイデア・サービス・プロダクト」「愛知県の社会的課題を解決するアイデア・サービス・プロダクト」の2つで参加者を募集。その結果、合計68件もの応募が集まったという。

そのうち、コンテストへの出場権を獲得したのは、7倍近い倍率の激戦を勝ち抜いてチャンスを得た10者だ。この10者は、約1カ月にわたるメンターによるメンタリング、アイデアのブラッシュアップ、ピッチ練習を経て、集大成となるコンテストの大舞台に立った。

コンテストの審査基準は「ターゲットの明確性・課題の整理度」「市場性」「課題に対するソリューションの独自性」「起業動機・背景の明確性」の4点。審査員を務めたのは、次の5名だ。

<審査員>

■川出 仁史 氏(愛知県経済産業局スタートアップ推進課 課長)

■白川 智樹 氏(株式会社アプリコット・ベンチャーズ 代表取締役)

■藤田 豪 氏(株式会社MTGVentures 代表取締役)

■松下 健 氏(株式会社オプティマインド 代表取締役社長)

■安田 孝美 氏(名古屋大学大学院 情報学研究科/情報学部 教授)

ここからは、140名近い視聴者が見守るなか、堂々と披露されたピッチの中身を紹介する。まずは、最上位賞である「優秀賞(1者:賞金100万円)」、そして「奨励賞(2者:賞金50万円)」を獲得したプレゼン内容から始める。

【優秀賞】 土壌汚染対策法を楽々に 製造業環境機能SaaS「Underground Dogs」

本コンテストの最上位賞、栄えある「優秀賞」を獲得したのは、株式会社デンソーに勤務する中野辰大氏だ。中野氏は仕事をする中で感じた、強烈なペインをもとに着想。製造業で行われるアナログな届出を、デジタルで解決するソリューションを提案した。

中野氏によると、一定規模以上の工事に必要な土壌汚染対策法届出は、土地利用履歴を膨大な資料をもとにまとめる必要があり、「担当者は転職するか、心を無にするかの2択を迫られる」という。それほど煩雑で大変な作業なのだ。また、令和元年(2019年)に閾値縮小の法改正が行われ、届出対象案件が増えたことで、環境担当者は頭を悩ませている最中だという。こうしたタイミングもあり、煩雑な届出をペーパーレス化するSaaS「Underground Dogs」を提案した。


土壌汚染対策法では、製造業者と土壌業者(第三者検証実施者)、行政(届出先)の3者が絡む。3者それぞれの段階で、現状だと紙届出ベースの煩雑な手続きが行われているが、これらをSaaS化することで簡略化する。法律専門用語のヘルプ機能を設けたり、環境法に基づいた生産設備・化学物質の使用履歴をデータベース化したりすることで、環境担当者は必要な項目と工事範囲を入力するだけで届出の作成が完了できるようにする。

ビジネスモデルとしては、製造業者からシステム利用料を得る想定だ。土壌浄化企業とのパートナーシップも検討する。大手ほど環境法の届出件数が多くメリットが出やすいため、本業での繋がりも活かしトヨタグループ上位からの導入を目指す。実際に事前のヒアリングを実施した工場は、すべての担当がβ版の利用を希望したと話す。


さらに、環境法や土壌汚染対策法で集まる設備データを基盤として、環境情報開示機能も加えることで、昨今、世界的に注目を集めるカーボンニュートラル領域への拡大も視野に入れる。中野氏は最後に「カーボンニュートラルの達成に向け、日本全国パワーシフトを目指していきたい」と熱意を込め、プレゼンを締めくくった。


▲受賞に際して中野氏は、「(本受賞は)皆さんからの“やれよ”というプレッシャーだと思うので、世の中の役に立てるようビジネス化していきたい」とコメント。審査員の名古屋大学・安田氏も「まさに“やれよ”というメッセージだと思う」と同調しながら、「今回の受賞を機に、デンソーの社内から中野さんのようなイントレプレナーシップの志を持つ社員が、数多く生まれてくることを期待している」と伝えた。

※プレゼンの模様は以下のアーカイブからご視聴ください。

https://www.youtube.com/watch?v=wCStZYFsQck 

【奨励賞】 医療の質が向上する AIによるオペレーション最適化SaaS「A-Pita」

奨励賞の1者に選ばれたのは、トヨタ自動車株式会社に勤務する久野泰弘氏だ。世界に冠たる「トヨタ生産方式」を、病院の待ち時間短縮化に活かすというビジネスプランを披露した。

久野氏が本サービスに着目した背景には、祖母の通院に付き添ってきた原体験がある。朝9時に家を出て、帰宅するのが午後3時。毎回の通院に、平均して6時間も要したというのだ。長時間の通院で「祖母が疲れていく様子を見るのが耐えられなかった」と久野氏は振り返る。この課題を解決したいと考え、病院と患者サイド双方にヒアリングを実施。その結果、長い待ち時間は、患者・医療従事者いずれにとっても負担になっていることが分かった。

では、何が問題なのか――。久野氏は大小4カ所の病院に赴き、1週間かけて観察をしたという。見えてきた課題は「診察の流れが最適化できていないこと」だった。そこで、AIを用いて診察順を最適化するオペレーションシステム「A-Pita」の構築を考案。患者と医療従事者に端末を持ってもらい、位置情報から動きを自動最適化し、患者を自動で案内・誘導するというものだ。


こうした構想を描く中で、久野氏はあることに気づいたと話す。それは、部品の製造ラインと病院が、同じ問題構造を抱えていることだ。製造工程においても、加工速度が落ちると部品が滞留する。病院でも同様の事象が起き、待ち時間が長くなっていると分析する。そう考えると、病院の課題を「トヨタ生産方式」の考え方で解決できるはずだと話す。


ビジネスモデルに関しては、病院からシステム利用料(患者数連動課金)を得る想定だ。まずは病院との共同研究によって実績を作る。その後、学会での発表を経て、医師間のネットワークで事業拡大を狙う。将来的には、診察順最適化だけではなく、幅広く病院のDXを進める「病院版Freee」を目指したいと、先にある事業構想を語った。


▲受賞に際して久野氏は「社内でも頑張ってきたが、うまくいかなかった。今回は一念発起して、このビジネスプランコンテストに応募した。苦労が実ったと感動している。顧客に寄り添って、よいサービスを作っていきたい」とコメント。感極まって涙がこぼれるシーンもあった。審査員の藤田氏は「原体験からくる想いの強さが、立ち上げ時のガソリンになる。頑張ってほしい」とエールを送った。

※プレゼンの模様は以下のアーカイブからご視聴ください。

https://www.youtube.com/watch?v=vSTy6IHyeAQ&feature=youtu.be 

【奨励賞】 “法と人がつながる社会“を目指す証拠収集・保全SaaS

もうひとつの奨励賞を獲得したのは、名古屋大学法学部4年の加藤豪輝氏。アプリの開発・実装経験や、ビジネスコンテストでの受賞実績を持つ学生起業家である。加藤氏は、近年、SNSの普及とともに深刻な社会問題となっている「誹謗中傷」の課題に挑みたいと話す。加藤氏にも「この課題を解決したい」と思わせた原体験がある。それは、高校時代に遡る。

加藤氏によると、誹謗中傷に悩んでいた高校時代の友人が、誰にも相談できないまま、学校を変え、住所を変え、名前を変えてしまったのだという。こうした経験から「もう誰にも、誹謗中傷に苦しんでもらいたくない」と話す。法学部に通いながら、誹謗中傷をきっかけに広く調べていく中で、インターネットに関する訴訟全体に課題があることが分かったという。実際に裁判に至るケースが非常に少ないのだ。それは、ログが消えてしまう前に弁護士に相談をし、証拠を整えるシステムが存在しないからではないかと分析する。


そこで加藤氏は、法律相談を行う前から、証拠収集・保全のできるSaaSを考案。まず、誹謗中傷があった場合、被害者は該当の画像やURLを、SNS上からSaaSに連携する。その証拠はクラウド上でまとめて管理ができる。それをもとに、AIで違法性を検討したり、弁護士に相談したりすることが可能だ。相談された弁護士も、同じSaaS上で容易に裁判に必要な書類を作成できる。この誹謗中傷領域を起点に、将来的には離婚問題、風評被害、景品表示、著作権などへの横展開も見込む。


ビジネスモデルに関しては、弁護士へのツール提供による月額課金。また、弁護士相談前の被害者や被害企業へは従量課金で利用してもらう想定だ。加藤氏は「司法はIT化が最も遅れている分野だが、デジタル庁の発足を皮切りに、裁判のオンライン化、データベース化、IT化が始まっている。民事訴訟の変革を迎えている今、絶好のタイミング」だとし、事業創出に向けて本腰を入れていく考えを示した。


▲受賞に際して加藤氏は「情熱と知識とやる気、すべてをかけてプロダクトを制作し、ただの机上の空論にならないようにしたい」と熱意を込めた。審査員の松下氏は「社会性もあり、熱量もあり、そして使命感も持たれていることに感銘を受けた。ぜひ頑張ってほしい」と激励。また、同じ名古屋大学出身である立場から「名大生つながりということで、いつか一緒に喜べる日が来るとうれしい」と伝えた。

※プレゼンの模様は以下のアーカイブからご視聴ください。

https://www.youtube.com/watch?v=OiGFhxBaibs 

災害避難、葬儀社向けCRM、AIセキュリティetc. 独創的なプランが続々登場

審査員から「点数が非常に拮抗した」と伝えられた通り、どのビジネスプランも秀逸なものばかりだった。本記事では、残る7者のビジネスプランも簡単に紹介したい。

■先人の知恵で“命”と“地域”を守る 災害発生時の避難促進サービス「escommu」

昨今、国内外で増加する「異常気象」に着目し、新たな切り口で災害発生時の避難促進サービスを考えたのは、株式会社デンソーの藤井聡史氏だ。土砂災害による死者数をゼロにするためには、安全な場所へと避難することが重要だ。しかし情報が広域すぎるなどの理由から危機感が醸成されず、避難につながっていないケースが多い。そこで、判断に必要な情報の質のアップデートを目指す。

具体的には、ハーベスティングバッテリー(自家発電テクノロジー)とIoTセンシング技術、PCやタブレットなどのデジタルツールを用いて、リアルタイムでの情報収集から通知までを実現する。センシングにおいては、落石・山鳴りなどの先人の知恵(前兆現象)も活用する。蓄積したデータをもとに発生前の予測にもつなげる。すでに豊田市と連携して開発中で、実績を作ることができれば、土砂災害リスクの高い他地域へも拡大する計画だ。


■顧客の期待値を予測するサービス「Ruly」

続いて、名古屋大学大学院 理学研究科修士1年の金岡優依氏が登壇。小売業界の実店舗に注目したビジネスプランを披露した。金岡氏は、特定店舗での購買活動において、1回目の購買と2回目の購買の間に、店舗には行ったが購入しなかったという「非顕在状態」期間があると分析。この「非顕在状態」時のデータを実店舗で取得し、店舗の利益向上につなげたいと話す。


▲購入前の非顕在データを取得した後、既存の顧客データをAPI経由で名寄せ。その後、顧客の購買意欲を機械学習で予測する。予測したRFM・LTVを、顧客セグメント分けに活かす。

データ取得においては、顔分析やAIカメラ・センサー、自然言語処理、音声感情解析といった技術を活用する。このサービスを使えば、より解像度の高い顧客セグメント分けが可能になる。この詳細な顧客セグメントデータを企業に提供し、マーケティング施策などに活かしてもらう考えだ。

■遺族の想いによりそう 葬儀社向けCRMアプリ「YOSUGA」

葬儀社のペインを解決するソリューションを提案したのは、金融マン×コンサルタント×起業家דお坊さん”の4足の草鞋を履く木村源基氏だ。木村氏によると、中部地方は日本で最も葬儀へのこだわりが強いエリアだという。こうしたエリアに生まれたからこそ、「遺族が悔いのない葬儀に満足できる社会」を作りたいと話す。あるアンケートによると、喪主の約半数が葬儀に「後悔あり」と回答。背景には「葬儀社の業務の非効率さ」があると分析する。葬儀社の手配ミスなども起きているという。

そこで、葬儀業界の面倒な業務をシンプル化するCRMアプリを提案。機能としては、画面タップで面談記録が作成されたり、面談記録から書類を自動発行・送付ができたり、参列者と香典の金額を紐づけたり、返礼品の手配を簡略化するといったものを想定する。コロナ禍で葬儀の規模が縮小し、経営陣の危機感が高まっている今、DXによる効率化が求められている。このタイミングを追い風に、まずは中堅の葬儀社をターゲットとして導入を図りたい考えだ。


■住宅購入の決断に特化したセカンドオピニオンサービス「iestart」

「人生最大の買い物の決断を3日でできる」というビジネスプランを提案したのは、住宅会社で25年以上の経験を持つ山口勝也氏だ。山口氏は、購入しようと思った物件が、検討中に売れてしまった経験を持つ人が“3割以上”存在すると指摘。さらに、その7割以上が“1週間以内”だったという。早期の決断ができない主な要因は、心理的ストレスにあると分析。これは住宅購入が、(1)同一物件が2つとない、(2)大半の人が初めての経験であるという特性に起因すると話す。

そこで、心理的ストレスを軽減するサービスを考案。具体的には、決断に迷っている物件情報と気がかりなポイントを入力すると、住宅購入の専門家がオンラインで相談に乗ってくれるというものだ。3日間限定のサービスとし、悩みに応じながら早期決断を促す。初期ターゲットは、心理的ストレスを抱えやすい女性単身者とする。最後に山口氏は「私が日本の家の買い方を変える、そんな覚悟を持って、iestartを愛知から発祥させ、日本全国へと広げていきたい」と力を込めた。



■「好きな家に好きなだけ!」サブスク型 住み放題サービス「COKO-COKO」

「好きなときに、好きなところで、好きなだけ暮らす」―そんな生活を実現できるサービスを提案したのは藤田愛氏だ。ポイントは3つあるという。1つ目は「固定の家を持ちながら、全国の好きな家に住むことができること」、2つ目は「長期間の縛りをなくし、費用は月10万円の定額制とすること」、3つ目が「スペックではなく気分で選べるから、毎回ワクワクできること」だ。

暮らしにまつわるサービスはすでに多数存在する。例えば、多拠点サービスやホテルの月額プラン、それに既存の賃貸などだ。しかし、多拠点サービスやホテルの月額プランだと、荷物や住民票の置き場に困る。賃貸だと、契約期間の縛りや前家賃が発生するため柔軟性に欠ける。「COKO-COKO」は、そうした懸念を払拭し、良いところ取りをしたサービスなのだという。まずは民泊事業者をターゲットに不動産開拓を進める。同時に、単身者をコアターゲットにユーザー獲得を目指すという。


■あなたにぴったりの海外渡航用 TODOリスト「TOKOTODO」

続いて、株式会社デンソーの高木亮氏が登壇。高木氏は、日本を離れ世界で戦っているすべての人たちが、本来のミッションに集中できるよう、身の回りの困りごとを解決するサービスを提案する。というのも、トヨタ自動車やデンソー、豊田通商を擁する愛知県では、海外赴任者が非常に多い。赴任者は、海外生活を始めるにあたって、新居探し・引っ越し・通院など様々なシーンで問題に直面する。しかし情報が集約されていないうえに、時間もないため、トラブルに巻き込まれたり、損をしたりするケースも多いという。

そこで、「何を」「いつ」「どうやって」準備すべきかが分かる「All-In-One TODOリスト」を考案。赴任地域、出国予定日、帰国予定日、家族構成を入力するだけで、そのユーザーに最適化されたTODOリストが自動生成される。過去赴任者の経験談なども読める仕様だ。また、引っ越し業者・保険会社・語学学校などサービスプロバイダと連携し、主な収益源はプロバイダからの取引手数料とする。初期ユーザーは、日本で3番目に海外赴任者の多いというデンソーの本業特権を活かし社内ネットワークで獲得する。その後、社外へと広げていく考えだ。


■安全なAI社会を実現する、AIプロダクト用セキュリティ診断・向上サービス「Trust AI」

最後の登壇者は、名城大学人間学部4年の大矢優衣氏。「安心安全なJapan Qualityを、AI製品でも実現すること」をビジョンに掲げたビジネスプランを発表した。

昨今、AIは自動運転や顔認証、医療画像診断など幅広い分野で搭載されている。一方で、巧妙な攻撃により、簡単にAIを悪用できてしまうことも判明している。こうした背景を受け、政府や企業はAIのセキュリティ対策に乗り出していると話す。国内AIセキュリティ市場は、前年比158%で急成長し、10年後には1000億円規模にまで成長する見込みだ。しかし、現状、当該領域に注力している国内プレイヤーはいない。

そこで、疑似攻撃による顧客AIセキュリティ診断サービスを立ちあげたいと話す。論文に掲載されている最先端の攻撃手法を自社シミュレータに実装し、技術資産をシステムとして蓄積することが特徴だ。ビジネスモデルとしては、診断自体は無料とし、問題の詳細レポートに課金する仕組みを考える。また、顧客AIの弱点を補強する、AI防御フィルタも販売する。

代表の石川氏は、AI×セキュリティの両分野で全米トップクラスの大学院を修了。複数の国際学会への論文採択経験や国内ハッキング大会での入賞経験も持つ。大矢氏は、急成長中のスタートアップで支社立ち上げや法人営業MVP獲得の経験を持つ。この強力な2名を創業メンバーに、事業を立ち上げていく計画だ。


「愛知の底力と可能性を感じられるイベントだった」――審査員講評

デモデイの締めくくりとして、3名の審査員から講評が伝えられた。

オプティマインド・松下氏は「(起業には)吸収力としつこさが大事だ。名古屋には応援してくれる応援団がたくさんいる。遠慮なく頼って、突き進んでほしい」と話した。

続いて、名古屋大学大学院・安田氏は「ファイナリストには、中部を代表する企業の社員、学生、僧侶の方もおられ、非常に多様性に富んでいた。愛知の底力と、これからの可能性を感じることができた。また、製造大手からの提案もあった。優秀な社員の方がイントレプレナーとして、普通に起業できるような環境が、愛知の中で育ってくることに期待している」と期待を込めた。

最後に、MTGVentures・藤田氏は「この数年間、色々なスタートアップピッチを見てきたが、このイベントは一番レベルが高かったように思う。この地域の可能性を感じられるピッチだった」と称賛。「ぜひこれから先手に立って、この地域を盛り上げてほしい」と応援するメッセージを伝えた。

取材後記

今回、特に印象に残ったのは、製造業の中で感じた強烈なペイン、あるいは製造業の中で培った強みを“本業の外側”に持ち出し、事業化を目指そうとするイントレプレナーたちの姿だ。大規模な製造業を数多く擁する、愛知だからこその特徴だったように思う。また、驚かされたのは、同じ土俵で学生らが、まったく遜色のないプレゼンを披露したこと。これは、「Tongali(トンガリ)プロジェクト」をはじめとした東海エリアの学生起業家を育成する取り組みが、奏功してきているからではないだろうか。講評にもあった通り、愛知の底力と可能性を強く感じられるイベントだった。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子)

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  • 田上 知美

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