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CEATEC開催目前!ニューノーマル時代の「2つの革新的コンセプト」、その開発秘話に迫る

CEATEC開催目前!ニューノーマル時代の「2つの革新的コンセプト」、その開発秘話に迫る

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新型コロナウイルスの影響で、今年はオンライン開催となる「CEATEC 2020 ONLINE」――。CEATECといえば、各分野のリーダーたちが集い、最先端のテクノロジーを披露する国内最大級の展示会だ。昨年は787社もの企業が出展し、15万人以上の来場者が会場に足を運んだ。

沖電気工業株式会社(以下「OKI」)は、10月20日(火)から開催される本展示会のニューノーマルエリアに、同社のイノベーション・マネジメントシステム「Yume Pro」から生まれた2つのコンセプトを出展する。――それが、昨年のCEATECで脚光を浴びた「AIエッジロボット」と、今回が初のお披露目となる「レーザー振動計」だ。いずれも、社内アイデアコンテストである「Yume Pro チャレンジ」で大賞を受賞し、開発予算を得て形にしたものだという。

先日公開した前編に続く後編では、2つのコンセプトの開発秘話に迫る。これらのコンセプトを通してどのような社会課題の解決に挑むのか、そこにはOKIの持つどのような技術が活かされているのか、OKIがこれから目指すニューノーマルとは?――イノベーション推進センターにてセンター長を務める藤原雄彦氏に詳しく聞いた。



■沖電気工業株式会社 イノベーション推進センター センター長 藤原雄彦氏

1987年入社。交換機の開発に従事し、局用交換機サブシステムのプロダクトマネジャーとしてアトランタに駐在。帰国後はモバイルルータの商品企画、マーケティング部長、共通技術センタ、情報通信事業本部 IoTアプリケーション推進部 部門長を歴任。イノベーション推進には準備期間から携わり、2020年4月より現職。

人と協働する「AIエッジロボット」で、人手不足やニューノーマルの課題解決へ。

――今年の「CEATEC 2020 ONLINE」では、「AIエッジロボット」と「レーザー振動計」を展示されるそうですね。これらを開発した背景についてお伺いしたいです。

藤原氏 : まず「AIエッジロボット」からお話しします。世の中の動向を見ていると、「働くロボット」が出始めたのが数年前です。一方で産業界では、2014年頃より人手不足が叫ばれるようになりました。こうした状況を踏まえて、協働ロボットのようなものを開発すれば、人手不足の解決につなげられるのではないかと考えたのが発端です。

ただ、ロボットの現状を見てみると、作業の途中で止まってしまうものが多い。なぜかというと、安全性が重要で、ロボットが人に衝突したり、ケガを負わせるようなことがあってはならないからです。停止したまま動かないロボットも数多くあると聞きました。ただそれだと、人手不足の解消どころか、逆に人手がかかっていますよね。

そこで、「止まらないロボット」を開発しようと考えました。しかし、いくら事前にタスクを設定しておいても、周囲の状況は変わります。であれば、人間がロボットを監視すればいいのではないかと考えたのです。

でも、監視するとした場合、1対1だと人手不足の解消にはなりませんから、1人が複数のロボットを監視する必要があります。1人が複数を見て、ロボットが正常に稼働している時は監視だけを行う。トラブルが発生した時だけ、人が遠隔で判断し対処するという仕組みにしようと思いました。


▲「CEATEC 2020 ONLINE」に出展する、「AIエッジロボット」。

――「AIエッジロボット」には、御社のどのような技術が活かされているのでしょうか。

藤原氏 : ひとつは「つなぐ技術」です。私たちは既存事業で、ネットワーク技術を磨いてきました。同時に、コンタクトセンターや24時間保守も手がけています。これらを活かせば、動くロボットをオンラインで遠隔監視することも容易です。また、ロボット本体に関しても、当社はATMの現金処理機をはじめとしたハードの技術を保有しています。これらすべての技術を組み合わせて、遠隔で監視する協働ロボットを完成させました。

加えて、ロボットに搭載している「フライングビュー」と「AIエッジコンピューター」も、OKIならではの技術です。「フライングビュー」をロボットの頭につけることで、遠隔操作者はロボットを俯瞰して見ることができます。

また、「AIエッジコンピューター」を搭載することで、たとえば、ガスを検知して周囲の従業員に即時に知らせるといった現場でのリアルタイム監視が可能となります。クラウドを経由するよりも、AIエッジで一次処理をした方が、タイムラグを減らせます。このように、当社のさまざまな技術を組み合わせて開発したものが、「AIエッジロボット」なのです。


▲「AIエッジロボット」は、フライングビューなどOKI独自技術を搭載している。

――今後、どのように展開していくご予定ですか。

藤原氏 : まずは人材不足が切迫している施設管理や警備領域での活用を目指しています。また、建設や製造、介護領域も人手不足が深刻ですから、そういった領域にも広げていきたいです。

さらに「AIエッジロボット」は、非接触や三密回避といった課題を、真っ向から解決することができます。もともとは、人手不足の解消を目的に開発したものでしたが、計らずしてニューノーマルの課題を解決できるソリューションとなりました。そういったニーズにも応えていける、幅広いソリューションに育てていきたいですね。

インダストリー4.0の革命児、「レーザー振動計」。

――続いて、「レーザー振動計」についてお伺いします。こちらはどういった経緯で生まれたプロダクトなのでしょうか。

藤原氏 : 「AIエッジロボット」は、社内アイデアコンテスト「Yume Pro チャレンジ 2018」で大賞を受賞し、昨年開催のCEATECに向けてコンセプト機を完成させたものです。CEATECで展示し社外に向けて発信した結果、数多くの企業やメディアから注目していただきました。その様子を見て役員の一人が経営会議でこう言ったのです。「年に1回程度、こういったものを出していきたい」と。

「Yume Proチャレンジ」は毎年開催していて、各年度の後半から募集を開始し、年度をまたいだ5月に審査・結果発表を行う流れです。次の受賞作も10月のCEATECと、それに続くOKIプレミアムフェアに出展し、社外に対してアピールしたいと考えました。

――では、「AIエッジロボット」と同様に「レーザー振動計」も、「Yume Pro チャレンジ」から生まれたのですね。

藤原氏 : そうです。「レーザー振動計」は、レーザー光を照射することによって、あらゆる機器の振動を取得できるものです。研究開発センターの担当研究者は、「有望な技術なので、時間をかけてじっくりと研究したい」と言っていましたが、私は有望だからこそ社外に出してみるべきだと伝えました。そして、「Yume Proチャレンジ」に応募するよう後押しし、少し発破もかけました(笑) 。

大賞を受賞することのメリットは、開発に向けて最大1億円の予算がつくことです。「AIエッジロボット」のように社会で認められれば、2年目以降も追加で予算がつき、事業を拡大することができます。潤沢な予算の中で開発に専念できるのです。昨年度、「レーザー振動計」は見事に「Yume Proチャレンジ 2019」で大賞を受賞しました。

――具体的に、どのような特徴を持つプロダクトなのでしょうか。

藤原氏 : 「レーザー振動計」は、さまざまな機器の稼働状況の監視や予兆保全に活用できるソリューションです。多様なセンサーを使うのではなく、レーザー光を当てることによって、あらゆる機器の振動を取得することができます。

機器の監視や予兆保全は、インダストリー4.0の中で以前から語られてきたことですが、まだ確固としたソリューションは生まれていません。この「レーザー振動計」は、技術と精度を磨く必要はあるものの、将来的にはインダストリー4.0の革命児ともなりうる技術だと、私は思っています。


▲「レーザー振動計」によるソリューションイメージ。


――どのように設置するのですか。

藤原氏 : 最初のアプローチとしては、工場などの施設に設置する予定で、止めてはならない社会インフラへ導入していければと考えています。また、将来的には、「AIエッジロボット」に搭載することも検討しています。ロボットがレーザー光を発しながら工場を動き回ってモニタリングをするような世界観を思い浮かべています。




――「AIエッジロボット」とも合流させるのですね!「CEATEC 2020 ONLINE」をご覧になる方に、とくに注目してほしいポイントなどはありますか。

藤原氏 : 「AIエッジロボット」も「レーザー振動計」も、これまでたくさんの方が感じてきた課題を解決するソリューションですから、分かりやすいはずです。「AIエッジロボット」は、人手不足の解消を目的として開発したもので、人が遠隔で監視するため途中で止まることはありません。

一方、「レーザー振動計」は、工場や社会インフラのリアルタイム監視や予知保全を実現するものです。身近にある課題を解決するソリューションだという視点で、見ていただければと思います。

ニューノーマルに活きる、OKIのテクノロジーとは?

――新型コロナウイルスの影響で、世界は様変わりしました。ニューノーマル時代において、OKIの技術が貢献できる可能性についてお伺いしたいです。

藤原氏 : 新型コロナウイルスによる大きな変化として挙げられるのは、多極分散化です。一極集中から多極分散への変化は、以前から地方創生の文脈で必要性が叫ばれてきましたが、一向に進みませんでした。なぜなら皆、都会に向かって働きに行くし、若い人は都会に住みたいからです。

しかし、新型コロナウイルスによって、都会にいなくても仕事ができることに気づきました。これに伴い、郊外に立地するオフィスも増えてくることが予見できます。人々の導線が変わり、生活が変わるでしょう。そうなってくると、オンラインや非対面、あるいは非接触、無人化といったキーワードが重要になってきます。

OKIはこれらのキーワードに合致する技術ベースを培ってきました。たとえば、当社の技術が用いられている高速道路のETCは、非接触・非対面での決裁を可能にするものです。ETCと同じ技術を応用して、今年の8月からファーストフード店のドライブスルーで、現金のやり取りを行なわない非接触決裁の試験運用に取り組んでいます。これは、OKIの保有する技術資産を、そのままニューノーマルに活用したものです。

※関連リンク:プレスリリース「ETC多目的利用サービスのドライブスルーでの試行運用を開始」

――ニューノーマルにおいても、OKIの技術を十分活用できるポテンシャルがあるわけですね。

藤原氏 : はい。また、新型コロナウイルスではありませんが、ここ数年、日本は定期的に大きな自然災害に見舞われています。自然災害にどう向き合っていくかは、日本の抱える大きな課題です。これに対しても、OKIが注力してきたセンシングの技術を活用できる可能性があります。

たとえば、各所にセンシングデバイスを設置し、災害が発生しそうな場合に、市民に迅速に状況を伝え、避難してもらうといった対策が取れます。そうすることで、災害に強い安心・安全な街づくり、さらには、新しいスマートシティにもつなげられるのではないかと思います。

さまざまな社会課題に対し、OKIの蓄積してきた技術を組み合わせてソリューションを考える。足りない部分は外部と組む。今後もこの姿勢を貫き、イノベーションの創出に向けて、一層力を入れていきたいですね。


取材後記

社会課題を起点にイノベーションを興そうとする、OKIのイノベーション・マネジメントシステム「Yume Pro」。そこから生まれた「AIエッジロボット」と「レーザー振動計」が、「CEATEC 2020 ONLINE」で展示される。特に「レーザー振動計」は、今回が初めてのお披露目となる。同社は、これらをコンセプトモデルとして社会に提案したうえで、導入を検討する企業とともに製品化を目指すという。

「CEATEC 2020 ONLINE」は10月20日(火)から4日間。今年は新型コロナの影響もあり、完全オンラインで実施される。入場は無料で、インターネットに接続できる環境さえあれば、どこからでも最先端のテクノロジーに触れることができる。興味のある方は、ぜひ「CEATEC 2020 ONLINE」へ。そして、OKIの会場を覗いてみてほしい。

<「CEATEC 2020 ONLINE」 (シーテック 2020 オンライン)>

・会期/2020年10月20日(火)~23日(金) ※会期以降もオンデマンドで展開予定

・オンライン会場/ https://www.ceatec.com/

※OKIブースについての情報は以下をご覧ください(10/20以降公開予定です)

https://online.ceatec.com/event/92/booth/1127

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:古林洋平)

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