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地方都市で独自の進化を遂げる日本のイノベーションエコシステム、その全貌を解き明かす

地方都市で独自の進化を遂げる日本のイノベーションエコシステム、その全貌を解き明かす

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大企業によるCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が急激に増え(※)、ベンチャー投資が一大ブームになっている日本。豊富な資金の流れを背景に、大企業・ベンチャー・自治体・大学などとの連携によるイノベーションエコシステムが急速に発達している。その中心は、首都・東京であることに間違いはないが、実は地方都市でも独自のエコシステムが構築されつつある。その中で、多彩なアイデア、プロダクト、技術、人材を取り込みたいとの考えから、国内だけではなく、海外企業との協業を模索するエコシステムも増えてきている。今回、海外との協業の可能性が高いエリアとして取り上げるのは、地域(自治体)と企業による連携が特に活発な「福岡」「大阪」「名古屋」「神戸」「仙台」だ。ではさっそく、各地域の特色を見ていこう。

※CVC投資額の年度推移、投資額は急増している

経済産業省「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き」より(2019年4月)

IT企業が集積しつつある「福岡」、国家戦略特区を活かした官の支援が豊富

福岡県福岡市は、九州エリアの中核都市として発展してきた。近年は中国・韓国に近い立地を活かし、「東アジアのビジネスハブ」を目指している。玄関口ともなる福岡空港は、市街地の中心である博多駅からわずか5キロ(電車で約5分)。国内はもちろん、アジア主要都市へと空路でつながっている。「コンパクトにまとまり、住みやすい」と評価を得ており、人口増加率も高い。若者の流入も多く、人材の集まるエリアだ。

かつてこの地域は石炭の産出がさかんで、それを活用した重化学工業が発展していた。しかし、時代の流れとともに衰退。同市は、新たな産業の創出を図るべく模索を続けてきた。2010年、高島宗一郎市長が就任して以降は、新産業の育成と若手の流入を狙い、スタートアップやIT企業の誘致を強化。行政の手厚い支援に加え、人材確保の容易さ、オフィス賃料の安さなどが引き金となり、年間50社近いペースで企業誘致に成功している。2013年には、韓国系のLINEが第二オフィスを構えた。日本では数少ないユニコーン企業であるメルカリなども福岡オフィスを新設。IT企業が数多く集積しつつあるのが、今の福岡市だ。

福岡市は、国家戦略特区(※)「グローバル創業・雇用創出特区」という側面も持つ。この利点を活かし、さまざまな規制緩和を行なってきた。外国人の創業を支援する「スタートアップビザ」や、スタートアップの法人税を軽減する「スタートアップ法人減税」を国内で初めて導入したのも福岡だ。ほかにも、自動走行やドローン飛行、在宅医療などの実証実験も、規制緩和により実施している。具体的な事例として、福岡市と福岡医師会が連携し、本来「対面」が義務づけられている薬局での服薬指導を、「オンライン」で対応。在宅医療患者の負担を軽減した。

※国家戦略特区: “世界で一番ビジネスをしやすい環境”を作ることを目的に、地域や分野を限定することで、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度

福岡市には、スタートアップが活動しやすい環境も整っている。廃校をリニューアルした官民共働型インキュベーション施設Fukuoka Growth Nextには、「STARTUP CAFÉ」という行政による創業支援施設があり、海外のスタートアップからの相談も受け付けている。スタートアップビザの取得やオフィス、住まいの相談もここで可能だ。Fukuoka Growth Nextでは、このほかにも観光・食・スポーツなど多彩な切り口で頻度高くピッチコンテストが開催されている。日本語でのピッチが可能であれば、もちろん海外スタートアップにも門戸は開かれている。F Venturesといった九州に特化したVCも複数あり、資金調達のしやすさもメリットだ。

▲Fukuoka Growth Next(Webサイトより抜粋)

また、地域の交通インフラを担う西日本鉄道などや大手メーカー・安川電機グループのIT企業など地元有力企業を協業パートナーとして迎えた、アクセラレーションプログラムも進行中だ。西日本鉄道は、バス停の看板をデジタル化し、これを活用するアイデアを広く募集した。応募の中から、アルバイトマッチングアプリを展開するタイミー(日本)と協業することが決定。両社は現在、バス停に新たな価値を付加する取り組みを進めている。また同社は、総合商社である三菱商事と連携し、福岡市内でAIを活用したオンデマンドバスの運行を2019年より開始。予約・配車システムには、Spare Labs(カナダ)のものが採用された。

――官の手厚い支援のもと、海外スタートアップの受け入れ体制が整っている福岡。スタートアップ創出にかける熱意はどこよりも強い。福岡で創業を目指すなら、まずはFukuoka Growth Nextにある、「STARTUP CAFÉ」に行くことをお勧めする。

<関連リンク>

・福岡市 国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」 :

https://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/kikaku/fukuoka_tokku_top.html

・Fukuoka Growth Next : https://growth-next.com/ja/

・F Ventures : https://f-ventures.vc/

・西日本鉄道によるオープンイノベーションプログラム「西鉄Co+Lab」 :https://www.nishitetsucolab.com/

チャレンジ精神あふれる「大阪」、万博に向けオープンイノベーションが活発化

大阪府大阪市は、古くから商業の中心として栄えてきた。17世紀初頭、政治の中心が東京へと移った後も、大阪は長らく日本における経済・物流の中心として、その地位を維持してきた。こうした歴史的背景から、「ヒト・モノ・カネ・情報」すべてにおいて豊かな基盤を持つ。戦後躍進したパナソニック、ダイキン工業、武田薬品工業などの国内大手メーカーも、ここ大阪で生まれた。大企業の本社数は、東京に次いで多い。

商人の町として栄えたことから、大阪には「旺盛な企業家精神」や「失敗しても笑い飛ばす大らかさ」がある。その一例として、大阪を代表する大企業のひとつサントリーは、「やってみなはれ」の精神で数々の新商品を生み出してきた。チャレンジに前向きな大阪だが、「2025年国際博覧会(大阪・関西万博)」の開催が決定し、勢いに拍車がかかっている。この万博は、ベンチャーを含めた多彩な企業、研究機関、行政、市民を巻き込んだ「オープンイノベーションの場」にする方向性が、関西を代表する経済団体「関西経済同友会」の代表幹事によって示された。

大阪におけるエコシステムの現状についても紹介しよう。2013年に官主導で、「OSAKA INNOVATION HUB」が発足した。大阪にスタートアップエコシステムを構築することを目的とした組織で、活動拠点は大阪駅に隣接するインキュベーション施設ナレッジキャピタル内にある。ここでは連日のように、セミナーやピッチ、アイディアソン、ハッカソン、ワークショップなどのイベントが開催され、その数は年間300本にも及ぶ。英語でのピッチコンテストもさかんだ。2012年にオランダで始まったスタートアップ向けのピッチコンテスト「GET IN THE RING」の日本大会もここで開催されている。海外スタートアップの参加も多く、HoloAsh(アメリカ)やQue Q Thailand(タイ)などが登壇している。

ナレッジキャピタルは、イノベーション創出を目指す人たちにとって素晴らしい場所だ。大企業の研究者、大学研究者、起業家、学生、エンジニア、クリエイター、投資家など、新たな事業創出にチャレンジする人材が集結し、巨大なコミュニティを形成している。ナレッジキャピタル全体がラボ(実験場)としても機能しており、近畿大学が世界に先駆けて完全養殖に成功した「近大マグロ」のレストラン1号店もここにある。

関西一円には人材を輩出する有名大学も多い。その代表格である大阪大学は、2014年に国立大で初となるVCを立ち上げた。同大学は、2018年度において106社もの大学発ベンチャーを生み出している。大阪大学発で躍進しているベンチャーには、ケミカルリサイクリングの日本環境設計、遠隔心臓リハビリテーションシステムを開発するリモハブなどが挙げられる。

――万博開催に向け、オープンイノベーションの機運が高まる大阪。進出するなら、今が絶好のタイミングだろう。大阪への進出を考えるなら、まずは「OSAKA INNOVATION HUB」にコンタクトしてみよう。

<関連リンク>

・2025年国際博覧会(大阪・関西万博) : https://www.expo2025.or.jp/

・OSAKA INNOVATION HUB : https://www.innovation-osaka.jp/ja/

・ナレッジキャピタル : https://kc-i.jp/

・大阪大学ベンチャーキャピタル : https://www.ouvc.co.jp/

自動車関連ビジネスの集まる「名古屋」、モビリティベンチャーが躍進

愛知県名古屋市は、東京・大阪とともに三大都市圏に数えられる。このエリアの特徴は、自動車産業が発達していることだ。トヨタ自動車が県内に本社を構え、県全体に裾野産業が広がっている。自動車部品のサプライヤーとして有名なデンソー、アイシン精機、ジェイテクトも愛知に拠点を置く。そのほか数多くの中小零細製造業が集まり、愛知県全体で「ものづくりの集積地」としての特色を持っている。

しかし、自動車のメッカとして栄えてきたこのエリアにも、変化の時が来ている。2018年に、トヨタ自動車が「自動車をつくる会社」から、あらゆる移動サービスを展開する「モビリティカンパニー」へのモデルチェンジを表明したからだ。自動車業界に、CASE(コネクテッド・自動化・シェアリング・電動化)、MaaS(サービスとしての移動)の波が押しよせたことで、愛知にも新たなモビリティ関連産業が生まれつつある。

いくつかの事例を紹介しよう。名古屋大学から生まれたティアフォー(日本)は、自動運転技術を開発するベンチャーだ。累計120億円以上の資金調達を完了しており、五輪選手村で走行するトヨタの自動運転バス「e-Palette」に、自動運転技術を提供する。また、同大学発のオプティマインド(日本)は、トヨタ自動車などから資金の提供を受け、組合せ技術を活用した運転ルート最適化サービスを提供する。

さらに、空飛ぶクルマを開発するSkyDrive(日本)は、本社こそ東京に置くものの、愛知県豊田市と連携協定を結び、豊田市で事業化に向けたテスト飛行を重ねている。トヨタ自動車は2020年1月、電動垂直離着陸機の開発に取り組むアメリカのスタートアップJoby Aviationに、約433億円(3.94億ドル)の出資を行うと発表した。同社は今、オープンイノベーションに力を入れており、国内のみならず海外スタートアップとの協業も加速している。2019年には、中国のスタートアップである小馬智行(ポニー・エーアイ)と自動運転技術分野での提携を発表。小馬智行のシステムを、トヨタ自動車の車に搭載し、自動運転の実験を行っている。

▲「e-Palette」(トヨタ自動車 ニュースリリースより抜粋)

こうした民の動きを受け、官も少しずつ動き始めた。2019年より、愛知県主催のアクセラレーションプログラム「Aichi Open innovation Accelerator」がスタートし、現在進行中だ。フランスの巨大インキュベーション施設「STATION F」に倣った「ステーションAi」の整備も、2020年度から始まる。「ステーションAi」は、愛知県が強みとする「ものづくり」に、デジタルをかけあわせた巨大インキュベーション施設になる予定だ。

――トヨタ自動車のモデルチェンジにともない、自動車産業に地殻変動が起こる愛知。モビリティベンチャーが日本進出を目指すなら、間違いなく名古屋がおすすめだ。

<関連リンク>

・ティアフォー : https://tier4.jp/

・オプティマインド : https://www.optimind.tech/

・SkyDrive : https://www.skydrive.co.jp/

・Joby Aviation : https://www.jobyaviation.com/

・Aichi Open innovation Accelerator : https://aichi-oi-accelerator.com/

医療産業都市を標榜する「神戸」、シリコンバレーの有名アクセラを招聘

 兵庫県神戸市は、19世紀中頃の開港5大都市のひとつで、港町として発展してきた。開国後、欧米から新たな文化、風俗、技術が流れ込んだエリアだ。神戸もそれらを積極的に受け入れ、異国情緒溢れる街を形成した。「オシャレで最先端の街」として確固たる位置を築いていた神戸だったが、1995年に発生した阪神・淡路大震災で深刻な被害を受け、イメージが一変する。そこからの起死回生プランが、今の神戸を形作りつつある。

震災復興事業としてスタートしたのが、「神戸医療産業都市構想」だ。神戸ポートアイランド(埋立地)に、最先端の医療研究機関、病院、製薬メーカー、医療機器メーカーなどを誘致した。現在では368社・団体(2019年12月時点)もの医療関連企業が集まり、日本最大級のバイオクラスターに成長している。iPS細胞を用いた世界初の網膜シート移植手術も、ここで行われた。また、国立の研究開発法人として産総研と双璧をなす、理化学研究所も拠点を置く。超高速スーパーコンピュータ「富岳」も設置される予定で、創薬研究などに活かされる。

神戸市では、官主導でエコシステムの構築が進んでいる。2016年にシリコンバレーの有名アクセラレーター「500 Startups」を招聘し、起業家育成プログラムを開始した。世界トップクラスのメンターによる指導がプログラムの特徴だ。2019年からは、このプログラムを「神戸医療産業都市」と紐づけ、ヘルステックにフォーカスしたテーマで、世界中からスタートアップを募った。その結果、総応募数は174に達し、そのうち海外チームが116チームと、国内の応募数を上回った。海外チームからは8チームが採択され、医療産業都市のネットワークを活用した取り組みを進めている。過去3年間で、このプログラムに参加した企業は合計56社に達し、資金調達総額は80億円を超えている。

さらに、インキュベーション施設の建設も予定されている。同市は、2019年に国連機関であるUNOPS(United Nations Office for Project Services)と連携すると発表。最先端のテクノロジーを活用して、SDGs上の課題解決を目指すグローバル・イノベーション・センター(GIC)を、アジアで初めて神戸市に開設する予定だ。また、2020年9月には、神戸ポートアイランド内に、医療産業に焦点を絞ったオープンイノベーション拠点も誕生する。この拠点は、創薬イノベーションプログラムや再生医療勉強会、ヘルスケア製品の共同開発などに活用されるという。

医療産業とは別の切り口で、行政のデジタルトランスフォーメーションも進む。2017年に神戸市主催で始まった「Urban Innovation Kobe」は、地域・行政の課題をスタートアップと神戸市が一緒になって解決する取り組みだ。日本の「ガブテック」の先駆けともなっている。行政手続き支援サービスを展開するグラファー(日本)との共創で、介護事業者向けの手続きを簡略化するソリューションなどが生まれている。

――港町という歴史的背景から、外国に対してオープンな神戸。ヘルステック、ガブテック、あるいはSDGsに強い海外スタートアップにとって、勝機のあるエリアではないだろうか。

<関連リンク>

・神戸医療産業都市構想 : https://www.city.kobe.lg.jp/a89323/shise/kekaku/iryo.html

・起業家育成プログラム「500 Startups Kobe Accelerator」 : http://jp.500kobe.com/

・Urban Innovation Kobe : https://urban-innovation-japan.com/

・グラファー : https://graffer.jp/

 

防災環境都市 「仙台」、震災を契機に防災テックの導入が進む

宮城県仙台市は東北エリア最大の都市。市街から約20分でアクセスできる仙台空港には、韓国・中国・台湾への直航便が発着しており、東北地方の玄関口として機能している。また、仙台には大企業の支店が多く立地しており、産業構造としては、卸・小売・宿泊・飲食・サービス業などが大半を占めている。

仙台市は、2011年に発生した東日本大震災により甚大な被害を受けた。沿岸部が津波で流されたほか、隣接する福島県では原発事故も起きた。こうした背景から、仙台市は災害や気候変動リスクに備えた「防災環境都市」を目指している。

具体的な取り組みを紹介しよう。仙台市は大手通信キャリアであるNTTドコモとともに、ドローンを用いた津波の状況確認、避難広報、緊急医薬品搬送の実証実験を行った。ノキアグループとも同様のドローン実験を実施している。また、防災以外でも、官主導でテクノロジーを取り入れる動きが生まれている。同市は2019年より、「X-TECHイノベーション都市・仙台」を掲げ、新たなプロジェクトを開始した。漁業・農業・介護・小売といった従来からある産業・業種に、テクノロジーをかけあわせてイノベーションの創出を目指す内容だ。仙台の老舗百貨店である藤崎やプロ野球チームの楽天野球団を巻き込んだアクセラレータープログラムも進行している。

▲「SENDAI X-TECH Innovation Project」(Webサイトより抜粋)

仙台には人材を輩出する大学もある。仙台市の中心に位置する東北大学は、学内に産学連携プラットフォームとして「東北大学オープンイノベーション戦略機構」を構える。2015年にはVCも立ち上げ、有望なスタートアップに投資を行ってきた。「2030年までに東北大学から100社のベンチャーを創出する」ことを掲げ、インキュベーションプログラムなどを強化。大学内に「東北大学スタートアップガレージ」というインキュベーション施設も開設している。

さらに仙台では、アプリコンテスト「DA・TE・APPS!」が毎年開催されている。その中において、2019年には東北とフィンランドの学生が競うコンテストが実施された。なお、仙台市はフィンランドのオウル地域と産業経済協定を締結しており、ゲーム・ICT産業に関わる学生や社会人を支援している。

――大震災を経験した仙台は、防災やエネルギーの地産地消に関連するソリューションを求めている。また、東北は国内で最も高齢化が進むエリアなので、高齢者向けのエイジテックなども相性がよいだろう。

<関連リンク>

・SENDAI X-TECH Innovation Project : https://techplay.jp/sendaixtech

・東北大学オープンイノベーション戦略機構 : https://oi.tohoku.ac.jp/

・東北大学スタートアップガレージ : https://www.tusg.jp/

・DA・TE・APPS! : http://dateapps2020.mystrikingly.com/

その他、エコシステム構築が進む地方都市とは?

5つのエリアについて詳しく紹介したが、上記以外にも、エコシステムの構築が進む地域がある。その中のいくつかを簡単に紹介する。

まず、神奈川県横浜市だ。神戸と同じ港町としての背景を持つ横浜は、神戸とよく似た動きをしている。アメリカから起業家支援組織「CONNECT」を招き、アクセラレーションプログラムを開始。ライフサイエンス分野でのオープンイノベーションを推進する。また、大企業の本社も多いことから、大企業と連携したプログラムも多い。

茨城県つくば市も特徴的だ。つくば市内にある「筑波研究学園都市」は、東京にあった国立の研究機関や大企業の研究開発拠点を計画的に移転し、研究都市として整備された場所だ。筑波大学、産業技術総合研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)といった大学・研究機関が集積し、日本を代表するアカデミックなエリアとなっている。近年は、研究成果をもとにしたベンチャーもたくさん生まれている。同市は「Society 5.0」の実現に向けた産官学の連携を強化しており、今後さらなる活発化が見込まれる。

▲つくば市は、産学官の研究施設やJAXAなどが集積したエリアとなっている。

北海道札幌市も、オープンイノベーションの促進に力を入れ始めた。北海道ガスやサッポログループといった大手企業が、独自のオープンイノベーションプログラムを実施。北海道ガスは、モバイルバッテリーシェアリングサービスを展開するGREEN UTILITY(日本)と、寒冷地というエリア特性を活かした実証実験を行った。

瀬戸内海を臨む広島県広島市は、実は自動車産業がさかんな地域でもある。自動車メーカー「マツダ」は、広島市に本社を構える。自動車産業を軸に、地元広島大学と連携し、「ひろしま自動車産学官連携推進会議」を立ち上げている。海外企業との連携は本格化していないものの、名古屋と同様に自動車産業における共創可能性は高い。

次に、日本海側から島根県松江市を紹介する。松江市は、プログラミング言語「Ruby」による、地域振興・産業振興を推進している珍しい町だ。「Ruby」の開発者が松江出身だからだ。その特徴を活かし、Rubyで町おこしを図る。域外からもエンジニアが集まりつつあるという。さらに毎年、Rubyを発信する大規模イベント「RubyWorld Conference」を松江市内で開催。海外エンジニアを招聘し、講演なども行われている。

最後に、京都府京都市を紹介する。京都は「1200年続く古都」だが、大学が多く集まるエリアでもある。ノーベル賞受賞者を輩出する京都大学からは、起業家が多く生まれており、大学発のベンチャー数は東京大学に次いで多い。若手人材の豊富さから、京都に注目する企業は年々増加している。地元大企業には、京セラ、島津製作所、任天堂、オムロンなどがある。昨年、グローバルアクセラレーター「Plug and Play」も、2つ目の拠点を京都に開設した。

<関連ページ>

・"The Springboard™ Program in Yokohama" : https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/press/keizai/2019/0913demoday.html

・つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業 : https://www.city.tsukuba.lg.jp/shisei/torikumi/kagaku/1005023/1007437.html

・北海道ガスとGREEN UTILITYによる実証事業 : https://www.hokkaido-gas.co.jp/news/pdf/20190207_2449.pdf

・ひろしま自動車産学官連携推進会議 : https://www.hirojiren.org/

・RubyCityMATSUE(ルビーシティマツエ)プロジェクト : https://rubycitymatsue.jp/ja/

・京都市とPlug and Play Japanの連携 : http://japan.plugandplaytechcenter.com/press-room/20190719/

まとめ

海外スタートアップとの協業が増えてきた日本。東京はもちろん、地方都市においても、海外企業と連携する動きが生まれている。国内や地方のリソースだけでは限りがあるため、より幅広いアイデア、プロダクト、技術、人材を呼び込みたい考えからだ。こうした動きに呼応するように、JETROも海外企業の日本誘致をサポートしている。日本で開催される国内最大級の展示会「CEATEC」に海外スタートアップを招聘し、日本企業とのビジネスマッチングの機会を創出するといった場も設けている。

「日本企業とともに、新たなビジネスを創出したい」、あるいは「日本というフィールドで実証実験を行いたい」という考えを持つ海外企業は、ぜひ日本への進出を検討してほしい。その際、東京以外の地方都市にも、ぜひ目を向けてもらいたい。

※JETROが支援するイノベーション情報ついて、詳細はこちらをご覧ください。

本記事はJETROの企画にもとづき、eiicon編集部にて執筆しました。

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