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セキュリティテスト:基礎知識と成功に導くポイント

セキュリティテスト:基礎知識と成功に導くポイント

山下秋子

セキュリティテストは、システム開発のプロセスにおいて、非常に重要なステップです。

朝、目を覚ますと、身に覚えのない引き落としで銀行口座が空になっていたり、SNSアカウントにログインできなくなっていたり、自分の個人情報がダークウェブ上で公開されているのを発見したりするかもしれません。想像するだけでも恐ろしい事態です。

残念ながら、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクはますます高まっており、毎年、このような悪夢に直面する人が後を絶ちません。

しかし、もし攻撃が実際に起こる前に、未然に防ぐ方法があるとしたら?そこで登場するのが、セキュリティテストです。

本記事では、セキュリティテストとは何か、その種類、基本的な原則、そして、非常に重要なベストプラクティスについて詳しく解説します。デジタルな世界を安全に守るための、没入感あふれる旅にご一緒しましょう。

セキュリティテストとは

セキュリティテストの定義

セキュリティテストとは、ソフトウェアの脆弱性を評価し、悪意のある、または予期せぬ入力がソフトウェアの機能に与える影響を測定するテストです。その目的は、システムがサイバー攻撃や不正アクセスといった脅威から適切に保護されているかを検証することにあります。

組織は、システムに厳格なセキュリティテストを実施することで、ソフトウェアの安全性、信頼性、そして回復力に関する重要な証拠を得ることができます。これにより、不正な入力がシステムに受け入れられないことを保証します。

ソフトウェアセキュリティテストは、非機能テストの一種に分類されます。これは、ソフトウェアが「何を」するか、ソフトウェアの機能が正しく動作するかを評価する機能テストとは異なります。非機能テストは、アプリの設計や構成が有効かつ安全であるかどうかを確認することに重点を置いています。

他のテスト種類の詳細は下記の記事をご覧ください。

ソフトウェアテストの種類:効果的な品質保証のために知っておくべきこと

セキュリティテストの役割・目的

セキュリティテストは、システムの 脆弱性を特定し、適切な対策を講じる ことで、サイバー攻撃から企業を守るために行われます。では、具体的にどのような目的で実施され、どのようなメリットがあるのでしょうか?

脆弱性を特定し、修正するため

近年では ゼロデイ攻撃(未知の脆弱性を狙った攻撃) や ランサムウェア の被害が拡大しています。サイバー攻撃の多くは、攻撃者が利用できるセキュリティ上の欠陥や設定ミスである脆弱性・セキュリティホールを悪用することで発生します。

セキュリティテストの基本的な目的は、アプリケーション、ネットワーク、データベース などシステム全体を徹底的に検査し、潜在的な脆弱性を特定し、修正します。

サイバー攻撃に対する防御力を強化するため

システムがサイバー攻撃の標的になる可能性は常に存在し、不正アクセス、データ漏洩、DDoS攻撃(分散型サービス拒否攻撃) などの脅威が企業にとって大きなリスクとなっています。

セキュリティテストでは、実際の攻撃シナリオを模擬し、防御の有効性を検証 します。例えば、ペネトレーションテスト(侵入テスト) を実施することで、外部の攻撃者がどのような手口で侵入を試みるかをシミュレーションし、事前に防御策を強化できます。

さらに、システムの 監視体制やインシデント対応フロー もテストの一環として評価され、攻撃を受けた際に迅速に対応できる体制を構築することが可能となります。

法規制や業界標準に準拠するため

企業が扱うデータの種類や業界によっては、厳格なセキュリティ規制や業界標準の遵守が求められます。例えば、以下のような法規制や基準があります。

  • PCI DSS(クレジットカード業界のセキュリティ基準):クレジットカード情報を扱う企業が遵守すべき国際的な基準
  • ISO 27001: 情報セキュリティ管理システム(ISMS)に関する国際標準

これらの規制を遵守しない場合、法的制裁や多額の罰金、企業の信頼低下 につながる可能性があります。セキュリティテストを定期的に実施することで、コンプライアンスを確保し、適切なデータ保護を実現することができます。

外部のソフトウェアテスト会社への外注を検討する際、上記の標準への準拠状況は、パートナーの能力を評価する上で重要な要素となります。

セキュリティ意識を高めるため

セキュリティテストの結果を社内で共有することで、従業員の セキュリティ意識を高める ことも重要な目的の一つです。特に、フィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリング(人を騙して情報を引き出す手法) は技術的な対策だけでは防ぎきれず、従業員一人ひとりの意識が重要になります。

例えば、社内研修や定期的なセキュリティ診断 を通じて、従業員に適切なセキュリティ対策を理解させることができます。具体的には、安全なパスワードの管理方法、怪しいメールの見分け方、不審なリンクのクリックを避ける習慣 などを教育することで、企業全体のセキュリティリスクを大幅に低減できます。

セキュリティテストの主な種類・手法

さまざまな種類のセキュリティテストを組み合わせて実施することで、潜在的な脆弱性を特定し、サイバー攻撃からシステムを守る強固なセキュリティ対策を構築できます。ここでは、代表的なセキュリティテストの種類とその特徴について解説します。

セキュリティテストの主な種類

ペネトレーションテスト

ペネトレーションテストは、実際のサイバー攻撃をシミュレーションし、システムの脆弱性やセキュリティ上の弱点を発見するテスト手法です。エシカルハッカー(ホワイトハッカー)やセキュリティ専門家が攻撃者の視点からテストを行い、実際の攻撃手法を用いてセキュリティの抜け穴を突こうとします。

このテストでは、以下のような脆弱性を重点的にチェックします。

  • 認証・認可の欠陥:不正アクセスや権限昇格のリスクを検証
  • ネットワーク設定の脆弱性:開放されたポート、不適切な暗号化設定、不要なサービスの稼働など
  • アプリケーションのロジックの欠陥:ユーザー入力の処理方法や特定の操作時に発生するセキュリティ上の問題

ペネトレーションテストを実施することで、実際の攻撃シナリオを想定した防御力の確認が可能になり、企業は早期にセキュリティ対策を講じることができます。

脆弱性スキャン

脆弱性スキャンは、ソフトウェアやシステムに潜在的なセキュリティリスクがないかを自動的に検査する手法です。自動化されたツールを使用して、既知の脆弱性や設定ミスを検出し、修正すべきポイントを明確にします。脆弱性スキャンで特定される主な問題点には、以下のようなものがあります。

  • 古いソフトウェアコンポーネント:パッチが適用されていないバージョンのソフトウェアやライブラリの使用
  • 弱いパスワード:推測されやすいパスワードや、十分な強度を持たない認証情報
  • 不適切なネットワーク設定:不要なポートの開放や、安全性の低い通信プロトコルの使用

脆弱性スキャンは、定期的に実施することでシステムのセキュリティ状態を継続的に監視し、攻撃者が悪用する前に問題を修正できる点が大きなメリットです。

セキュリティ監査

セキュリティ監査は、ソフトウェアの設計、実装、運用プロセス全体を包括的に評価し、セキュリティ対策の不備を特定する手法です。セキュリティ監査を実施する際には、以下のステップを踏むことが推奨されます。

  • 監査の目的と範囲を明確化:監査の対象、目的、期待される成果を定義
  • 関連情報の収集:システムアーキテクチャ、設計、実装に関するドキュメントを確認し、関係者へのヒアリングを実施
  • 脆弱性の特定と優先度付け:ペネトレーションテストや脆弱性スキャンを併用し、セキュリティ上の課題を洗い出し、リスクの高いものから対策を検討
  • 改善策の提案:監査結果を基に、具体的なセキュリティ強化策を提示

セキュリティテストの手順

セキュリティテストのプロセスを理解することで、テスト業務をスムーズに進めるだけでなく、各ステップにおける品質や成果物を適切に管理できるようになります。以下に、一般的なセキュリティテストの手順を紹介します。

セキュリティテストを行うプロセスセキュリティテストを行う流れ

計画段階

セキュリティテストの最初のステップであり、最も重要なフェーズです。この段階では、テストの目的や範囲を明確にし、対象となるシステムやアプリ特定、リソースの割り当て、スケジュールの策定を行います。

セキュリティテストの手順:計画段階

具体的には、以下のポイントを検討します。

  • テストの目的を明確化:セキュリティテストの目的を設定します。たとえば、脆弱性の特定、セキュリティ基準への適合性評価、サイバー攻撃への耐性検証などが挙げられます。
  • テストの範囲を決定:テスト対象となるシステムのコンポーネント、アプリケーション、ネットワークインフラを特定します。適切な範囲設定は、リソースの無駄を防ぎ、重要な資産に焦点を当てた効果的なテストを実施するために不可欠です。
  • テスト手法の選定:ブラックボックステスト、ホワイトボックステスト、グレーボックステストなど、さまざまなセキュリティテスト手法があります。システムの特性や目的に応じて、最適な手法を選択します。
  • 役割と責任の明確化:セキュリティテストに関与するメンバー(セキュリティテスター、開発者、システム管理者、プロジェクトマネージャーなど)の役割と責任を明確に定めます。これにより、テストの進行がスムーズになり、問題が発生した際の対応が迅速になります。
  • 予算の確保:セキュリティテストへの投資はコストではなく、リスク回避のための重要な施策です。テストの範囲や複雑性、実施頻度に応じて適切な予算を確保します。外部のセキュリティ専門家の雇用、テストツールの導入、社内チームのトレーニングなども考慮すべきポイントです。

準備段階

堅牢な計画が策定されたら、準備段階では、万全の体制を構築し、テストチームに適切なツールと環境を提供し、何をテストすべきかを明確に理解させることが重要です。この段階では、リーダーシップを発揮し、戦略的な判断を下すことが、テストの質と効率を左右します。

セキュリティテストの手順:準備段階

チームの編成とトレーニング

セキュリティテストを実施するために、必要な専門知識を持つテスターを集めます。社内チームで対応するか、外部のセキュリティ専門企業に委託するかは、コストと効果を考慮して決定します。

社内チームと外部チームのどちらかを選択肢として検討し、それぞれのメリットとデメリットを比較検討しましょう。

  • 社内チーム: 自社のシステムや文化に精通しているため、円滑なコミュニケーションと迅速な対応が期待できます。しかし、専門知識を持つ人材の育成や維持には、時間とコストがかかる場合があります。
  • 外部チーム: 最新の脅威や脆弱性に関する最新情報に精通しており、客観的な視点からテストを実施できます。しかし、コミュニケーションコストや機密情報の漏洩リスクなどを考慮する必要があります。

テスト環境の構築

本番環境を可能な限り忠実に再現した、専用のテスト環境を構築します。これにより、テスト中に本番システムに影響を与えるリスクを最小限に抑えることができます。テスト環境は、データ侵害を防ぐために適切に隔離および保護されていることを確認してください。

ツールの選定と設定

テストの目的と手法に基づいて、適切なセキュリティテストツールを選択します。脆弱性スキャナ、侵入テストツール、コード分析ツール、セキュリティ監視ソリューションなどが含まれる場合があります。これらのツールを適切に設定して、脆弱性を正確に特定し、報告できるようにします。

テストケースの開発

一般的なWebアプリの脆弱性、ネットワークの弱点、認証の問題など、潜在的な脆弱性を網羅する詳細なテストケースを作成します。これらのテストケースは、業界のベストプラクティスに基づいて、貴社の特定のシステムおよびアプリに合わせてカスタマイズする必要があります。

準備段階は、必要なものがすべて揃った、適切に訓練されたチームを構築し、適切なツールと環境を提供し、何をテストする必要があるかを明確に理解させるためのものです。特定の業界に精通した外部チームの活用を検討している場合は、約10年の経験を持つベトナムの大手テスト会社であるLQA にご相談ください。

実行段階

セキュリティテストを実施する際は、計画に従って体系的に進めることが重要です。すべての脆弱性を正確に特定し、適切に対処できるよう、テストの各工程を慎重に進める必要があります。テスト中に発生した問題は詳細に記録し、後の分析と対応に備えましょう。

セキュリティテストの手順:実施段階

テストの効率を向上させるために、自動化されたセキュリティテストツールを活用するのも有効です。これにより、脆弱性の特定をシステマティックに行い、詳細なレポートを作成し、一貫したテストプロセスを確保できます。ただし、テスト自動化だけに頼らず、手動テストも組み合わせることで、ツールでは発見が難しい複雑なセキュリティリスクにも対応できます。

また、この段階では開発チームやセキュリティ専門家との連携が不可欠です。単に脆弱性を検出するだけでなく、それを適切に分析し、効果的な対策を講じるために協力体制を築くことが求められます。

意思決定者は、セキュリティテストの取り組みが組織全体の目標と整合しているかを確認し、特に重要な資産に対して適切な対策が取られていることを監督する必要があります。この連携により、特定された脆弱性への対応が迅速に行われ、セキュリティインシデントのリスクを低減するとともに、組織全体のセキュリティ体制を強化することができます。

報告段階

セキュリティテストの結果を分析し、適切に報告することは、ソフトウェアのセキュリティテストプロセスにおいて極めて重要なステップです。この段階では、テスト中に収集したデータを精査し、対応すべきセキュリティ上の課題を特定します。

セキュリティテストの手順:報告段階

効果的なセキュリティレポートを作成するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 課題の要約:発見された脆弱性について、明確かつ簡潔にまとめます。脆弱性の内容だけでなく、その深刻度やビジネスへの影響も記載し、関係者がリスクの大きさを理解しやすいようにします。
  • 証拠の提示:テスト結果を裏付ける証拠を詳細に示します。具体的には、スクリーンショット、ログファイル、コードの抜粋などを含めることで、発見された脆弱性を明確に可視化し、対応策の検討をスムーズに進められるようにします。
  • 対応策の提案:脆弱性を解消するための実践的な対応策を提示します。具体的な修正手順や、必要なリソースについても言及し、開発チームが適切な対応を迅速に実施できるようにすることが重要です。
  • 対応の優先順位付け:発見された脆弱性を、深刻度やビジネスへの影響度に基づいてランク付けし、優先的に対処すべき問題を明確にします。これにより、限られたリソースを最も重要な課題に集中させ、効率的な対応を実現できます。
  • 進捗の管理:脆弱性の修正状況を継続的に追跡し、対応の進捗を管理します。定期的なモニタリングを行い、未解決の問題がないか確認するとともに、必要に応じて追加のテストを実施し、確実な解決を目指します。

セキュリティレポートは、関係者に迅速かつ適切に共有されることが重要です。また、報告内容をもとに、セキュリティ対策の優先順位を決定し、投資を最適化するための判断材料として活用します。さらに、セキュリティテスの専門家からフィードバックを得ることで、より効果的な対応戦略を策定し、組織全体のセキュリティ強化につなげることができます。

修正段階

脆弱性の修正を行う際には、その深刻度やソフトウェア全体のセキュリティへの影響を考慮し、優先順位を付けて対応することが重要です。

セキュリティテストの手順:修正段階

まず、効果的な修正を行うために、詳細な修正計画を作成します。この計画には、各脆弱性の修正手順、スケジュール、担当者、および必要なリソースを明確に記載し、円滑な対応を可能にします。

次に、計画に基づき、優先度の高い脆弱性から順に修正を進めます。修正後は、再テストを実施し、脆弱性が完全に解消されたことを確認することが不可欠です。また、修正作業が新たな問題を引き起こしていないか慎重にチェックします。

最後に、新たな脅威や脆弱性を迅速に検出し、適切に対応できるよう、継続的な監視体制を導入します。セキュリティは一度限りの対策ではなく、継続的なプロセスとして捉えることが重要です。組織全体でセキュリティ意識を高め、日常的に対策を実践できる文化を醸成することで、長期的な安全性を確保できます。

一般的なセキュリティテストツール

セキュリティテストを効率的に実施するために、多くの専門的なツールが活用されています。以下は、代表的なセキュリティテストツールの一覧です。

静的アプリケーション・セキュリティ・テスト(SAST)

静的アプリケーション・セキュリティ・テスト(SAST)は、ソースコードの静的な状態を解析し、潜在的な脆弱性を検出するテスト手法です。主な目的は、アプリケーションの開発段階でセキュリティ上の問題を早期に発見し、修正することです。SASTを活用することで、不適切な入力バリデーション、数値エラー、パストラバーサル、競合状態など、さまざまな脆弱性を特定できます。

SASTは主にソースコードを対象とした解析手法だが、バイナリ解析ツールを用いることでコンパイル済みのコードにも適用可能です。この手法の最大の利点は、アプリケーションの実行前にセキュリティ上の問題を検出できる点にあります。そのため、開発の早い段階でコードの品質を向上させ、修正コストを削減することができます。特に、大規模なアプリケーション開発では、SASTの自動解析を組み込むことで、開発プロセスの一環として継続的にセキュリティ対策を実施できます。

動的アプリケーション・セキュリティ・テスト(DAST)

動的アプリケーション・セキュリティ・テスト(DAST)は、アプリケーションが実行中の状態でセキュリティ検証を行う手法です。主な目的は、既存のアプリケーションが実際の攻撃に対してどのように反応するかを確認し、潜在的な脆弱性を特定することです。DASTツールは、さまざまな攻撃シナリオをシミュレーションし、アプリケーションが外部からの攻撃に対してどのような耐性を持つかを評価します。

特に、DASTではファジング(Fuzzing)技術を活用し、アプリケーションに対して無数の無効な入力や予期しないテストケースを送信します。これにより、特定の条件下で脆弱性が顕在化する可能性を探ります。また、DASTはスクリプト、セッション管理、データインジェクション(SQLインジェクションやXSSなど)、認証、インターフェース、レスポンス、リクエストといった広範な要素をチェックすることができます。

DASTの利点は、アプリケーションの本番環境に近い状態でのテストが可能であり、実際の攻撃手法に基づいた脆弱性検出ができる点です。一方で、ソースコードの詳細な情報にはアクセスできないため、問題の根本原因の特定には追加の解析が必要になります。SASTと併用することで、より包括的なセキュリティ対策を実施することが可能となります。

インタラクティブ・アプリケーション・セキュリティ・テスト(IAST)

インタラクティブ・アプリケーション・セキュリティ・テスト(IAST)は、SASTとDASTの両方の特性を組み合わせたハイブリッドなテスト手法です。IASTの主な目的は、ソースコードに存在する既知の脆弱性が実行時にどのように悪用される可能性があるかを評価することです。

IASTツールは、静的解析と動的解析を組み合わせることで、より正確な脆弱性検出を実現し、誤検知の発生を抑えます。具体的には、事前に収集したデータフローやアプリケーションの挙動に基づいて、高度な攻撃シナリオを実行します。また、リアルタイムでアプリケーションの動作を分析し、テストケースを自動的に調整・生成することで、脆弱性に関する洞察を深めることができます。

IASTを活用することで、企業はより詳細かつ知的なテストを実施し、アプリケーションのセキュリティ対策を強化できます。特に、アジャイル開発において、継続的インテグレーション(CI/CD)プロセスに組み込むことで、迅速なセキュリティ評価が可能となります。

ソフトウェア構成分析(SCA)

ソフトウェア構成分析(SCA)は、オープンソースコンポーネントの管理と強化を目的とした技術です。近年、ソフトウェア開発においてオープンソースライブラリの活用が増加しているため、SCAはセキュリティリスクを最小限に抑えるための重要な手法となっています。

SCAツールは、プロジェクト内で使用されているすべてのオープンソースコンポーネントを識別し、それに関連するライブラリや依存関係(直接・間接の依存関係)を解析します。そして、各コンポーネントに潜在する脆弱性を特定し、適切な修正措置を推奨します。

SCAの重要な成果物の一つが「ソフトウェア部品表(Bill of Materials: BOM)」です。BOMは、プロジェクトで使用されているすべてのソフトウェアコンポーネントの詳細なインベントリを提供し、どの部分にどのライブラリが使用されているかを可視化します。これにより、脆弱性の影響範囲を迅速に特定し、適切な対応を講じることが可能になります。

セキュリティテストを行う時の注意点

セキュリティテストは簡単に実施するテストではないと考えられます。このテストを円滑にお行うために、確かな知識だけでなく、経験と対応力も必要があります。ここには、セキュリティテストを行う時に、注意すべきなことを紹介します。

セキュリティテストを行う時の注意点セキュリティテストを行う時の注意点

目的と要件の明確化

セキュリティテストを実施するにあたり、まず重要なのは、テストの目的と対象ソフトウェア固有のセキュリティ要件を明確に定義することです。これにより、テストプロセスは最も重要なセキュリティ上の懸念事項に焦点を当てることができ、効率的なテストにつながります。

まず、適用されるセキュリティポリシーと規制基準の見直しから始めます。これには、HIPAAやPCI DSSなどの業界固有の規制や、ISO 27001やNIST SP 800-53などのより広範なセキュリティ基準が含まれる場合があります。これらのガイドラインを遵守することで、セキュリティテストを関連する業界および規制フレームワークと効果的に連携させることができます。

次に、ソフトウェアのリスクプロファイルを評価し、セキュリティ上の脅威や攻撃の潜在的な影響と発生可能性を特定します。脅威モデリングや包括的なリスク評価を実施することで、セキュリティリスクを効果的に特定し、優先順位を付けることができます。

最後に、上記で特定されたリスク、関連する規制や基準に基づいて、明確で測定可能、かつテスト可能なセキュリティ要件を定義します。これらの要件は、機密性、完全性、可用性、否認防止など、セキュリティのさまざまな側面を網羅的にカバーする必要があります。

検査を適切なタイミング

適切なタイミングでセキュリティテストを行うことは、システム全体を保護し、システムパフォーマンスを強化しながら、企業の円滑な運営を保証することにつながります。一方、タイミングを誤ったセキュリティテストは、時間、人的リソース、費用などを無駄にする可能性があります。

脆弱性検査は、定期的なセキュリティチェックに加え、新しいシステムの導入時や大規模なアップデート後に実施するのが効果的です。

適切なツールと技術の活用

セキュリティテストを実施する上で、適切なツールと技術を正しく活用することが重要です。ツールの選定を誤ると、正確な結果が得られない可能性があります。

システム全体のセキュリティ状況を包括的に把握するためには、多様なテスト手法を組み合わせる必要があります。単一のアプローチだけでは、すべての脆弱性を捉えることはできません。

例えば、アプリのセキュリティ脆弱性を特定するには、SAST、DASTおよびペネトレーションテストなどを組み合わせて活用するのが効果的です。

SASTツールはソースコードを精査して脆弱性を検出します。DASTツールは実行中のアプリケーションをスキャンして潜在的な弱点を明らかにします。さらに、ペネトレーションテスターはアプリケーションに対する攻撃をシミュレートし、セキュリティ脆弱性を発見して対処することを支援します。

セキュリティ指標の監視と結果分析

セキュリティテストの結果を適切に評価するためには、セキュリティ指標を設定し、その成果物を分析することが重要です。これにより、テスト結果が良好かどうかを客観的に判断できます。

効果的な分析を行うためには、テスト結果を正確かつ包括的に文書化する必要があります。

包括的な文書には、実施されたテスト、得られた結果、テストフェーズ全体で発見された問題や脆弱性に関する広範な情報が含まれています。この文書は、特定された各懸念事項の深刻度と優先順位を評価し、その解決のための強固な計画を策定する上で重要な役割を果たします。

さらに、業界の専門家からのフィードバックを積極的に求めましょう。専門家の知識と洞察は、特定された脆弱性に対処するための効果的な戦略の開発に貢献します。これらの専門家と協力することで、セキュリティ問題の解決に向けた、十分な情報に基づいた戦略的なアプローチが保証されます。重要なのは、テスト結果だけでなく、その背後にある根本原因や潜在的な影響を理解し、再発防止策を講じることです。

セキュリティ専門家とのコラボレーション

セキュリティテストは専門的な知識を要するため、経験豊富なセキュリティ専門家との連携が不可欠です。

日本は人材不足の問題に直面しており、国内だけで適切な人材を採用することはますます難しくなっています。

このような状況において、オフショアへのテスト外注を検討することは、多くの日本企業にとって現実的な選択肢となります。LQAのようなソフトウェアテスト会社は、競争力のある人件費、豊富な優秀な人材という強みを活かし、プロジェクト品質を保証しながらコストを削減することが可能です。

自社の状況に合わせて、セキュリティ専門家との連携方法(内製化、外部委託、オフショア活用など)を検討することが、効果的なセキュリティテストを実現するための鍵となります。

ソフトウェアテスト外注のメリットの詳細か下記の記事をご参照ください。

ソフトウェアテスト外注の理由とは?外注会社を選択する方法

セキュリティテストの費用

費用は企業にとって最優先事項の一つです。そのため、セキュリティテストにかかるコストを事前に把握し、適切な予算配分を行うことが重要です。セキュリティテストのコスト構造を理解することで、無駄を省きながら効果的なテストを実施し、最適なコスト削減策を見つけることができます。

下記はセキュリティテストの費用に影響を与える主な要因です。

システムの規模と複雑さ

システムが大規模であったり、複雑な機能を持っていたりすると、テストにはより多くの時間、リソース、そして高度なスキルを持つ人材が必要になります。

例えば、AndroidアプリとiOSアプリのテスト費用は異なる場合があります。AndroidはOSのバージョンが多岐にわたるため、対応すべきテストケースが増え、結果的にテストコストが高くなる傾向にあります。一方で、iOSは比較的統一された環境で動作するため、テスト工数を抑えやすいケースが多いです。

テストの種類と範囲

テスト対象となる機能の数や種類によっても、費用は大きく変動します。

  • 基本的な脆弱性スキャン(自動ツールを使った簡易チェック):比較的低コスト
  • 侵入テスト(ペネトレーションテスト)(ホワイトハッカーが手動で攻撃シミュレーション):高コスト
  • コンプライアンスチェック(業界基準への適合性評価):規制の厳しさによりコストが変動

特に、機密データを扱うシステムでは、より高度なセキュリティテストが求められるため、コストが増加する可能性があります。

専門者とスキルの必要性

労働コストは、セキュリティテスト費用の中で最も大きな割合を占める要素の一つです。

  • テスト人材の所在地:日本やアメリカのような高コスト地域では、セキュリティ専門家の人件費が高額になりがちです。一方で、ベトナムなどのコストの低い地域に外注することで、同等レベルのテストをより低コストで実施できます。
  • テスターの専門性と経験:一般的なソフトウェアテストと異なり、セキュリティテストには高度な専門知識が求められるため、経験豊富なエンジニアを採用するほど費用が増加します。

コストを最適化するには?

  • リスクベースのアプローチの採用:すべての機能を一律にテストするのではなく、リスクの高い部分を優先的に検査することで、コストを抑えつつ効果的なセキュリティ対策を実現できます。
  • テスト自動化の実施:基本的な脆弱性スキャンなどは自動化ツールを活用し、人の手が必要な部分にリソースを集中させることで、コスト削減が可能です。
  • アウトソーシングの導入:コストパフォーマンスの高いオフショアテストサービスを活用することで、高品質なセキュリティテストをより低コストで実施できます。

LQAにセキュリティテストを任せてください

LQAは、97%の顧客満足度 を誇り、ソフトウェアテスト分野での信頼できる受賞歴を持つ企業です。これらの実績は、以下の強みを活かした高品質なテストサービスによって支えられています。

セキュリティテストにおけるLQAの強みセキュリティテストにおけるLQAの強み

  • 業界特化型の経験:LQAは特定の業界に特化した豊富な開発・テスト経験を持ち、リアルなテストデータを提供 できます。各業界の特性や要求事項を深く理解し、それぞれのニーズに最適なテストを設計・実施することで、テストの精度を向上させています。
  • 費用対効果の高いソリューション:競争力のある価格で高品質なテストを提供し、最大30%のコスト削減を実現。適切なテスト手法とツールを活用することで、コストを抑えつつ効率的にソフトウェアの品質を向上させます。
  • TCoE準拠による最適化されたテストプロセス:LQAはテストセンターオブエクセレンス(TCoE) のフレームワークに準拠し、テストプロセス、リソース、技術を最適化。これにより、より効率的かつ効果的なテスト を実現し、企業の開発プロジェクトを成功に導きます。
  • 幅広いテスト領域に対応:LQAは、幅広いテスト領域に対応し、包括的なテストソリューションを提供しています。モバイルアプリWebアプリのテストをはじめ、Winform、Web UI、APIを対象としたテスト自動化、システムのパフォーマンスを評価するパフォーマンステスト、セキュリティの脆弱性を検出するペネトレーションテスト(セキュリティ診断)など、多岐にわたるテストサービスを展開しています。さらに、Automotive、組み込みIoT、ゲームテストといった専門性の高い領域にも対応し、業界ごとの要件に最適なテスト環境を構築することで、確実な品質保証を実現します。
  • 国際的な言語対応:LQAには英語が堪能なメンバーが多く、25%のメンバーが日本語にも対応。そのため、グローバルプロジェクトにおいてもスムーズなコミュニケーションが可能です。日本企業との協業においても、高い品質とスピードを維持しながら、細かな要求にも柔軟に対応します。
  • セキュリティコンプライアンスへの徹底した取り組み:LQAは、お客様の機密データ、ユーザープライバシー、サイバーセキュリティ を最優先に考えています。知識移転前には機密保持契約(NDA) を締結し、開発プロセス中には最適なセキュリティ対策を実施。万全の体制で企業の情報資産を守ります。

よくある質問

セキュリティテストにはどんな種類がありますか?

セキュリティテストにはさまざまな種類があり、目的やシステムの特性に応じて適切な手法が選択されます。代表的なものとして、脆弱性診断、セキュリティ監査やペネトレーションテスト があります。

サイバーセキュリティテストとセキュリティテストの違う点とは?

一般的に「セキュリティテスト」は、ソフトウェアやシステムの安全性を検証するための幅広いテストを指し、情報漏洩やデータ改ざんを防ぐことを目的としています。一方で、「サイバーセキュリティテスト」は、特に外部からのサイバー攻撃やハッキングに対する防御力を評価するテストです。例えば、ネットワークやクラウド環境のセキュリティ対策を検証するテストは、サイバーセキュリティテストに分類されます。また、内部の不正アクセスや情報漏洩のリスクを評価するテストも、セキュリティテストの一環として実施されます。このように、サイバーセキュリティテストはセキュリティテストの一部であり、特に外部からの攻撃に焦点を当てたものといえます。

セキュリティテストにかかる費用は?

セキュリティテストの費用は、システムの規模やテストの種類、必要な専門技術によって大きく異なります。一般的に、システムが複雑であるほど、テストの範囲が広がり、コストが高くなる 傾向があります。また、ペネトレーションテストなどの高度な技術が必要なテスト は、専門のセキュリティエンジニアが対応するため、費用が高額になりやすいです。

結論

セキュリティテストは、システムの安全性を確保し、サイバー攻撃のリスクを軽減するために欠かせません。計画・準備から実施・評価・改善に至るまで、適切な手順を踏むことで、潜在的な脆弱性を特定し、リスクを最小限に抑えることができます。特に、ビジネスの成長とともにサイバー攻撃のリスクも高まるため、定期的なセキュリティテストを実施し、継続的なセキュリティ対策を強化することが重要です。

経験豊富な専門チームや最新のテストツールを活用しながら、組織全体でセキュリティ意識を高め、より安全なシステム運用を目指しましょう。もし専門的な知識やリソースが不足している場合は、外部のテストパートナーを活用するのも一つの有効な選択肢です。

LQAでは、お客様のニーズに合わせた最適なセキュリティテストを提案し、費用対効果の高いソリューションをご提供します。最短2日~1週間以内に詳細な見積もりをお出しし、コストを抑えつつも高品質なテストを実施できるようサポートいたします。 セキュリティテストの導入を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

山下秋子LTS Group

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      ソフトウェア定義車両(SDV)は、自動車業界の次世代技術として注目されています。車両の機能や特徴を制御する高度なソフトウェアを取り入れたSDVは、安全性や利便性を高めたユーザー体験を提供します。しかし、その複雑さゆえに、安全性やセキュリティ、信頼性を確保するための課題も増加しています。これらの課題に対応するために、テスト自動化はSDVソフトウェアテストの品質と効率を大幅に向上させる重要な手段となります。この記事では、SDVテスト自動化の重要性、安全性およびセキュリティ基準への対応、さまざまな自動化テストアプローチ、そしてソフトウェア定義車両の機能的信頼性を確保する方法について詳しく説明します。SDVの安全性向上を実現するソフトウェアテスト自動化SDVの複雑さは、その安全性とパフォーマンスを確保するための堅牢なテスト手法を必要とします。手動テストは一部のシナリオで必要不可欠ですが、現代の自動車ソフトウェア開発に必要なスピードと規模に追いつくことは困難です。テスト自動化は、反復的な作業を合理化し、テストカバレッジを拡大することで、これらの課題を解決します。コーディング標準の準拠自動化ツールは、MISRA C/C+

      山下秋子

      4時間前

    • システムテストとは?目的、見積もり、実施方法、成功のポイントを解説!

      システムテストとは結合テストが完了した後に実施され、システムやソフトウェア全体が仕様通りに動作するかどうかを多角的に評価するプロセスです。このテスト段階は、ソフトウェア開発の成功において重要な役割を担っていますが、その複雑さから様々な課題に直面することがあります。この記事では、システムテストの基本的な概要に加え、導入する際のメリットやよく見られる問題点、そしてテストを成功に導くためのポイントについて詳しく解説します。システムテストに関する理解を深め、より効果的に実施するために、一緒に読みましょう!システムテストとは?この章では、システムテストの定義を説明し、システムテストと、ソフトウェア開発ライフスタイル(SDLC)における他のレベルのテストとを比較します。システムテストの定義と目的 システムテストは、ソフトウェア開発プロセスにおける重要なテスト段階の一つであり、単体テストや結合テストの後、ユーザー受け入れテスト(UAT)の前に実施されます。このテストでは、個々のコンポーネントやユニットではなく、システム全体を統合された環境でテストし、システムが期待通りに動作するかどうかを確認します。ソフトウェアテストのレベ

      山下秋子

      5時間前