経産省 | 「大学発ベンチャー調査」を公表――調査対象の78%が“今後大企業と提携したい”
経済産業省は、2019年5月に「平成30年度大学発ベンチャー実態等調査」を公表した。この大学発ベンチャー実態等調査は、「イノベーションの担い手」として高く期待される大学発ベンチャーの効果的な支援検討のため実施されている。同調査では、大学発ベンチャーの設立状況を把握するとともに事業環境やニーズ等を調査し、成長に寄与する要因を分析。調査結果を一部抜粋し、紹介していく。
■大学発ベンチャー数の推移――平成29年度調査と比べ185社増加
2018年度調査において存在が確認された大学発ベンチャーは2,278社。2017年度で確認された2,093社から185社増加している。2017年度からの増減は、2018年新設企業が98社、2018年以前に設立されていたが前回調査で把握できなかった企業が239社。2017年度調査後に閉鎖した企業は145社、大学発ベンチャーではなくなった企業が7社。うち、M&Aされた企業は10社となっている。
また、⼤学発ベンチャー分類の推移を見てみると、現存する大学発ベンチャーのうち、研究成果ベンチャーに分類される企業が最も多く 58.9%(1,341社)となっている。
■大学発ベンチャーの大学別創出数――東京大学がトップを独走
大学別は東京大学が最も多い。ただ、京都大学、筑波大学など他大学の伸びも目立ち、各大学がベンチャー創出に力を入れている。また、2016年度からの増加数は、京都大学が最も多く、東京大学、筑波大学と続く。
■業種別大学発ベンチャーの推移――バイオ・ヘルスケア・医療機器が最多
業種別では、バイオ・ヘルスケア・医療機器が最も多く、ついでIT(アプリケーション、ソフトウェア)、その他サービスの順に多く、過年度と同様の傾向となっている。2017年度調査と比べると、バイオ・ヘルスケア・医療機器が43社、その他サービスの企業が59社、多く把握された。
■大学発ベンチャーの出口戦略――IPOしたい企業が33.3%
出口戦略は、新規株式公開(IPO)したい企業が最も多く33.3%(161社)となった。事業売却(M&A)を出口戦略とする企業は11.2% (54社)と少ない。また、事業ステージ別には、PoC前から単年度赤字までの企業はIPOが最も多く、単年黒字累積赤字や累積赤字解消の企業は、自社の売上げ規模等の拡大を目指したいとする企業の割合が多い。
■大学発ベンチャーのIPO、M&Aの状況――現在の上場ベンチャーは64社
現在、上場している大学発ベンチャーは64社あり、その時価総額は2.4兆円。上場年は2013年が最も多く13社。2016年度調査以降で解散等とした企業386社のうち、M&Aによるものは16社となっている。
■他者とのアライアンス――今後は国内大企業とのアライアンスを希望
アライアンス対象機関は、大学・公的研究機関とは76.4%が既にアライアンスを実施しており、今後は国内大企業とのアライアンスを希望する企業が78.0%と最も多い。また、対象領域については、研究領域で既に多くの企業がアライアンスを実施しており、今後は開発や販売・マーケティング領域でのアライアンスを希望する企業が多い。
■大学発ベンチャーの成長要因分析
ステージ前期では、「エンジェル・VCからの出資あり」、「国内大企業とのアライアンスあり」、「大学・公的研究機関とのアライアンスあり」、「技術顧問が企業の技術者・研究者」。ステージ後期では、「CEOの経歴が企業の経営層であること」が成長要因として有意な結果となっている。