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「think 2030」vol.1 | KDDI ∞ Labo長 中馬氏

「think 2030」vol.1 | KDDI ∞ Labo長 中馬氏

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東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を目前に控え、日本社会・経済は大きなターニングポイントを迎えようとしている。そうした中、日本国内ではオープンイノベーションが徐々に浸透し、大企業やスタートアップの共創による新規事業創出が形になってきた。――しかし、米中貿易摩擦、イギリスのEU離脱、消費税増税など、明るいニュースばかりとも言えないのが現状だ。

本記事では激動を予感させる2020年のその先「2030年に向けた企業×オープンイノベーションの未来」という視点から、企業・ビジネスパーソンの進むべき道を考えていく。――今回は、オープンイノベーションのパイオニア的存在である「KDDI ∞ Labo」を牽引する中馬和彦氏に、POST2020の世界について話を伺った。

▲KDDI株式会社 ライフデザイン事業企画本部 ビジネスインキュベーション推進部長/KDDI ∞ Labo長 中馬和彦氏

1996年、国際電信電話(現KDDI)入社。2018年4月から現職。アクセレータープログラムによる支援から、ファンドによる出資、最終的にM&Aを通じてKDDIに仲間として迎え入れるまでのベンチャー支援プログラムKDDI ∞ Laboや、ベンチャー投資ファンドKDDI Open Innovation Fundを統括している。

POST2020に向け、誰もが勝者にも敗者にもなり得る。

――POST2020の世界について、中馬さんからお話を伺いたいと思います。通信業界では5Gへの移行があるなど、業界的にも目が離せません。2019年という「現在地」をどのようにお考えですか。

KDDI・中馬氏 : POST2020を見据えると、ここ数年内に良くも悪くも勝者と敗者が決まるのではないでしょうか。だからこそ、2019年は重要な局面だと考えています。――しかし、日本人の多くはいまだに自分の国を「モノづくり大国」と思っており、その成功体験から抜け出せていません。私自身は、モノづくり領域での日本の復活は難しいと感じています。なぜなら、現在起こっているデジタルトランスフォーメーションは、今まで日本人が大切にしてきたモノづくり、つまり第二次産業という日本の産業構造を根本から覆す動きだからです。

GAFAのようにネット領域での覇者はすでに決まっている。これからは、2030年に向けて、ネットとリアルの融合が加速していきます。その領域においてチャンピオンになることが、2020年後の世界を制することでもあります。その勝者が、ここ数年で見えてくる可能性は大きい。ただし、成功のモデルはいまだにできておらず、どこが勝つかは分からない状態です。

――つまり、どの企業にも2030年に向けて、チャンピオンになるチャンスがあると。中馬さんが注目している領域などはありますか。

KDDI・中馬氏 : 今年から段階的に5Gへの移行があります。データ接続が飛躍的に向上し、IoT時代の本格的な到来と言われている。だからこそ、モノがネットとつながった時に、一番価値が増幅しやすそうな領域に注目しています。

――非常に興味深いですね。具体的には?

KDDI・中馬氏 : 一つは、”Sports-Tech”。スポーツはリアルタイムで状況が動いていきますが、その中でどれだけそのリアルタイムをデジタルで表現できるか。この部分に注目しています。

そして、もう一つがエンターテイメント。私たちは”Entertainment-Tech”と呼んでいますが、テーマパークや動物園、水族館といった、ファンが集まり熱量が高まる場所にテクノロジーを入れていきます。そして、ファンの熱量をさらに高めていけば、異次元の出来事を起こせるのではないかと考えています。

日本人の武器は、“コンテンツを作り込む能力”。

――今年から5Gのプレサービスが開始されますが、そこに向けてKDDIさんが目指す道をお聞かせください。

KDDI・中馬氏 : これからの通信キャリアの役割は、データを使って新しい何かを始めること。その取り組みが5Gだったり、IoT化だったりします。通信キャリアごとに、社会にどんな価値を与えたいのかという軸があるはずです。私たちKDDIは、楽しさをはじめとした、エンターテイメントの提供をこれからの軸にしていきます。

5Gに移行しても、スペック値などは一般の人には分かりにくいでしょう。「便利になるのはいいことだ」と思ってもらえるくらいかもしれません(笑)。KDDIはその先の「え、こんな面白いことができの?」といった、”驚き”を提供したいのです。

――なるほど。

KDDI・中馬氏 : この驚きによる価値観の伝播は、とても凄まじい。新しいサービスが広まるのは便利だからではなく、驚きや衝撃があるからこそ広がっていく。そこから文化が作られ、世の中にチェンジが起きる。その変化を起こすために、テクノロジーを投入し、未知の体験を提供していくことが大切なのです。

当社は「LISMO」(音楽配信サービス)や「INFOBAR」(デザインケータイ)といった、通信キャリアの中でもカルチャーに寄り添ったサービスをつくり続けてきた歴史があります。だからこそ、5Gのベネフィットを”驚き”の中で体感してもらうサービスを、どこよりも先に作り上げていきたいですし、作り上げる自信があります。

――ありがとうございます。では2030年に向けて新規事業に着手したい領域はありますか。

KDDI・中馬氏 : やはり、エンターテイメント領域ですね。遊園地やスポーツはもちろんVTuberなど、ありとあらゆるものに仕込んでいますよ(笑)。さまざまな社会問題を抱えている日本ではありますが、外国人観光客は伸びている。これは、日本に食やファッションといった、力強い文化があるからだと思います。特に、日本人の食へのこだわりはスゴイ(笑)。これはコンテンツとしても強力で、この部分なら日本は世界で一番になれると思っています。

ただし、エンタメとテックを組み合わせたときに、日本の武器になるのは“勤勉なモノづくり”でなく、”コンテンツを作り込む能力”だと思っています。人間の欲求をくすぐるコンテンツを作る力に関しては、日本人は本当に優れています。そのコンテンツをテクノロジーで可視化して、食やアート、カルチャーとしてデジタル化する。その成功モデルは、まだ世界にありません。そのテクノロジーを生み出し、街や遊園地、スタジアムで実現ができれば、日本全体が大きく変わっていくはずです。

――2018年4月からKDDI ∞ Labo長に就任され、なにか思うところはありますか。

KDDI・中馬氏 : 海外のイベントや展示会に行っても日本企業は元気がないですし、旅行に行っても現地で日本人は全然遊び回っていない。そういった光景を目の当たりにしてからKDDI ∞ Laboに来てみると、やはりイノベーションをおこそうとしている企業やスタートアップ周辺は「元気があるな」と感じます。とにかく勢いがある。大企業が失った、何かを持っているんだと思いますね。

生き残るためには、一人になるのを恐れない。

――今後、ますますグローバル化や時代の変化が大きくなると思います。2030年を見据え、今のビジネスパーソンに必要なものは何だとお考えですか?

KDDI・中馬氏 : まずは、個人で頑張る力です。海外で打ち合わせしていて、現地の方に「仕事はなにやってるの?」と聞くと、自分の関わっていることを話してくれます。

しかし、日本人は「KDDIです」とか、「XXX部です」とか、所属組織で答えてしまう。それが行動にも表れていて、どこに行っても群れでいる。個人で頑張れるようになれば、きっと素質も生きてくるはずです。海外のイベントで日本人だけですよ、団体でいつも動いているのは(笑)。

――オープンイノベーションを実現するため、CVCや専門部署を立ち上げる企業が目立ちはじめています。最後に、オープンイノベーションの先駆者として、これから新規事業創出やオープンイノベーションに取り組む企業に向けてアドバイスをお願いします。

KDDI・中馬氏 : 「大企業であれば、企業グループ内の主従関係を逆にした方がいい」とお伝えしたいですね。KDDIグループを例に出すと、通信会社のauがあって、その下にECなどの新規事業があるという序列のままだと、物事の価値観が既存事業のままになってしまいます。――それではいつまでたっても新しいことが生まれず、育てることもできません。モノサシを変えて、事業を外に切り出すなどして、小さくても早く形にしていくことを考えていくべきです。

もう一つお伝えしたいのが、「とりあえずやろう」は正しいですが、「ダメだったらやめよう」では、結局やる気がないのと同じ。“死ぬ気になってやり切る”ことを、ピラミッドの上に置いて、新規事業やオープンイノベーションにチャレンジしてください。

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■KDDI∞Labo × eiicon「Innovation Gateway」開催!

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(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:齊木恵太)

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Think 2030

日本では大企業やスタートアップの共創による新規事業創出が形になってきた。 ――しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や米中対立問題など、明るいニュースばかりとも言えないのが現状だ。 シリーズ企画「think 2030」では、激動する2020年代以降の日本企業・ビジネスパーソンの進むべき道を考えていく。