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NTTコミュニケーションズ | 「現場×経営層がコミットし、本気で事業化を見据えた」オープンイノベーションプログラムがスタート!

NTTコミュニケーションズ | 「現場×経営層がコミットし、本気で事業化を見据えた」オープンイノベーションプログラムがスタート!

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近年、オープンイノベーションに取り組む大手企業は数多く、様々なプログラムが実施されている。実際にサービス提供まで実現し、成功事例も創出されている一方で、事業化に至らずPoC段階で終わってしまったという事例も枚挙に暇がない。

NTTグループの中でも“野心的な”グローバル企業として1999年に発足し、190を超える国・地域へネットワークサービスを提供しているNTTコミュニケーションズでも、これまで社内でイノベーションを推進する取り組みは複数あったが、事業化にはなかなか至らなかったという。そこで今回、NTTコミュニケーションズは、事業化に焦点を当てたオープンイノベーションプログラム=「NTT Communications OPEN INNOVATION PROGRAM」を、全社を巻き込んで実施する。

これは会社として初めての取り組みではあるが、経営陣のコミット、テーマ選定、リソースの公開、各テーマにおいて熱量と専門性が高いメンバーの参画、サポート体制の構築等、事業化に向けた綿密な設計がなされている。――プログラム実施にあたり、同社の副社長・丸岡亨氏に背景や方向性を、そして事務局のメンバーに具体的なテーマやプログラムの特徴を聞いた。

副社長・丸岡氏インタビュー 「外部に公開していないアセットも提供。本気で事業化を見据えたプログラム」

▲NTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役副社長 丸岡亨氏

――なぜ、オープンイノベーションプログラムを実施することになったのでしょうか?その背景を聞かせてください。

丸岡氏 : 一番大きな理由は、世の中のスピードにキャッチアップしたいということです。NTTコミュニケーションズ(以下:NTT Com)は今年で設立20周年を迎えます。発足当時、もともと規制のかかったNTTという大きな組織から、インターネットインフラという当時の最先端テクノロジーと、当時のNTTグループにとって未知なる市場であったグローバルビジネスを担う、野心的な会社として設立されました。以来、NTTグループの中でも既成概念に縛られない組織として、様々な事業を行ってきました。

今、テクノロジーが急速に発展し、産業や社会の構造にも急激な変化の波が押し寄せている中、我々はデジタルトランスフォーメーション(DX)をグローバル規模で起こしていくべく、様々な施策を実施しています。私自身、CDO(Chief Digital Officer)を拝命し、DX推進にドライブをかけていこうとしています。

しかしながら、こうした変革をスピーディーに成し遂げていくためには、我々の力だけでは限界があります。こうした状況を打破すべく、今回当社として初の取り組みである、全社を巻き込んだオープンイノベーションプログラムの実施に至りました。

――このプログラムによって一番成し遂げたいこととは何でしょうか?

丸岡氏 : 各テーマにそれぞれ散りばめられた想いを社会実装し、しっかりとお客様や世の中に価値を提供することです。

当社ではこれまでも、イノベーション施策を実施してきました。例えばアジアの国々では、当社主催で「Startup Challenge」というピッチコンテストを行っています。2年目の2018年は、インドネシア、マレーシア、ベトナムの3ヵ国で開催し、いずれも大きな反響がありました。社内でも「DigiCom(デジコン)」というDX推進コンテストを実施し、上位入賞者による新規事業創出にチャレンジしています。また営業部では、「WakuWakuみらい共創研究会」というお客様と自由闊達なアイデアを出し合うことによる、共創の場を設けています。これらは、草の根的に取り組んできたものも含め、社内の各組織にて行われている取り組みです。

本プログラムでは、そうした既存の取り組みも社外との接点として取り込みながら、全社で想いを持ったメンバーと共に、戦略的にアイデアを社会実装していきたいと考えております。

――プログラム参加希望者が気にするのは、NTT Comと組むことで何ができるかです。貴社の強みとは?

丸岡氏 : NTT Comには新しいことにチャレンジするスピリッツがありますし、また我々は、インフラを基軸として多様なサービスを展開しており、様々な顧客接点を有しています。これらは、プログラムで生まれたサービスが事業化された後を見据えた際、大きな強みになると思います。また、規模の大きなアセットが多く、事業化後にもスケールしやすいと考えております。

また、事業の強みとしては、ゲートウェイやネットワーク、データセンター、クラウドまで垂直統合で提供できるフルスタックのケーパビリティがあります。1社でグローバルかつフルスタックにサービスを提供している企業は、グローバルで見てもユニークな存在です。これらを活用いただけるのではないかと思います。

――なるほど。

丸岡氏 : サービス展開についてですが、今回テーマとして掲げているデータセンター(Nexcenter)は、国内外で約140の拠点を有しており、これは世界でも有数の規模のアセットと言えるかと思います。

また、今回のプログラムでは、これまで社外に公開していなかったラグビーチーム、鉄塔、無線中継所といったアセットや、テレプレゼンス、テレイグジスタンスを実現するためのロボット用P2P通信モジュール(Skyway WebRTC Gateway)のようなコア技術まで、様々な経営資源を自由にお使いいただくことが可能です。

こうした豊富なリソースも、我々の中だけで活用し新たなサービスを創ろうとすると、どうしても提供者側の論理になりがちです。先日、経済産業省主催のグローバル起業家等育成プログラム「始動 Next Innovator」の審査員を務めた際にも、私自身が井の中の蛙だと感じました。様々な業界の企業の先進的な考えや尖った視点に触れ、これまで接点のなかった方々とディスカッションすることで、全く異なるものが生まれることを実感したのです。今回のプログラムで外部の方々の尖った視点と我々の資産やケーパビリティを組み合わせることで、新たな事業創出に結び付けていきたいと考えています。

――最後に、応募を検討しているパートナー候補に向けて、メッセージをいただけますか?

丸岡氏 : これまで申し上げた通り、今回のプログラムは、パートナーとなる皆様に、我々がこれまで公開していなかったアセットを自由に活用していただき、共通のビジョンに向かって、共同で事業化に向けた価値検証を行っていくプログラムです。

NTTグループの中でも、当社は生い立ちからして新しいことにチャレンジできる素地がある企業だと自負しています。イノベーション創出に向けて前向きなディスカッションをしていきたいと考えていますし、当然ながら事業化を念頭に置いたプログラムです。

これまでのNTTグループの殻を打ち破るようなパッションとアイデアを持って、積極的にこの機会を活用していただける企業の皆様の積極的なご参加を歓迎いたします。NTT Comとパートナーの皆様との間に生まれる新たなシナジーによって、より良い社会を目指し、共に革新を起こしていきましょう。

ビジネスイノベーション推進室&事務局メンバーインタビュー 「現場から社内公募で選出した、実現性の高いテーマとリソース」

続いて、「NTT Communications OPEN INNOVATION PROGRAM」の牽引役となる、ビジネスイノベーション推進室と事務局メンバーの以下5名に、具体的なテーマやプログラムの特徴について詳しく話を聞いた。

●経営企画部 ビジネスイノベーション推進室長 東出治久氏

●経営企画部 ビジネスイノベーション推進室 担当部長 福田直亮氏

●経営企画部 ビジネスイノベーション推進室 担当課長 田口陽一氏

●経営企画部 デジタル・カイゼン・デザイン室 ビジネスデザイナー 岩田裕平氏

●経営企画部 ビジネスイノベーション推進室 八塩初奈氏

――今回、ビジネスイノベーション推進室がオープンイノベーションプログラムに取り組むということですが、その背景を聞かせてください。

東出氏 : ビジネスイノベーション推進室は、2017年10月にスタートした新事業組織です。当社のイノベーション活動は、これまでも各組織で行われていました。しかしそれを事業化しスケールさせていくには、経営全体として戦略的に実施していくことが必要です。そこで、この組織を立ち上げました。

福田氏 : この組織が持つ機能の特徴としては、大きく2つあります。1つ目は新たな事業領域の模索を行うこと、2つ目は経営企画部直下の組織としてイノベーション創出の土壌となるような全社を巻き込む仕組みを作ること。

今回は全社を横串で巻き込んだオープンイノベーションプログラムであり、事業化を強く意識して実施していきます。

▲経営企画部 ビジネスイノベーション推進室長 東出治久氏

――現在、各社オープンイノベーションに取り組んでいますが、事業化に至らずPoC段階で終わってしまうケースも良く見聞きします。今回は事業化を本気で目指していくということですが、何か仕組みとして工夫されていることはありますか? 

福田氏 : 既存事業部を巻き込んで実施しているということが1つの特色です。また、いざ事業化するという時には、ヒト・モノ・カネといった社内のリソースを注いでコミットしていかねばなりません。そういった判断を行うにあたっては、やはり経営サイドを巻き込んだ仕組みづくりが必要です。そこで、社長直轄の「ビジネスイノベーション推進コミッティー」という意思決定の仕組みを作りました。

――なるほど。通常の経営会議とは別に、イノベーション関連のジャッジメントを行う仕組みを作ったということですか?

福田氏 : 通常の承認システムでは、組織を超えたリソースのアサインや費用負担の意思決定には時間が掛かります。そこで、今の組織にとらわれない、枠を超えたジャッジメントができる仕組みを作っています。まだスタートして間もないのですが、スピーディーな判断と事業化を後押しすべく、本気度高く進めているところです。

▲経営企画部 ビジネスイノベーション推進室 担当部長 福田直亮氏

――今回、4つのテーマが設定されていますが、こちらは経営企画部主導で設定したものでしょうか?

東出氏 : 事業化という視点で考えた時に、実際にアセットをもっている現場からのリアルな課題やニーズをもとにテーマを設定することが重要だと考えました。そこで、テーマは経営企画部が音頭を取り、社内公募で実際にサービス・事業を提供している各事業組織から募りました。結果的に、想定を超える20以上のテーマが集まりました。

岩田氏 : その中で、事業化の可能性が高そうなテーマを選定していきました。具体的には、稼働が確保できるかどうか、PoCの期間中、採択された企業にアセットを提供できるかどうか、アセットにオリジナリティがあり外部企業にとって価値があるか、こうした視点でこの4テーマに絞りました。

――選定された4つのテーマと、募集領域について具体的に聞かせてください。

岩田氏 : プログラム全体のテーマとしては、「世界のインフラから未来のコミュニケーションをつくる」です。NTT Comとしてコミュニケーションやインフラに関するビジネスを行っていることも踏まえ、今回は4つのテーマを設定しました。

1.離れた場所でも自由自在に、身体を動かす体験の拡張

これは、テレイグジスタンス・テレプレゼンスを低遅延・無線で実現するというテーマです。ロボティクス向けの通信モジュール(SkyWay WebRTC Gateway)を研究開発してきたメンバーが、当社に在籍しています。いわゆる「ロボット」に限らず、ハードウェアと遠隔地にいる人がリアルタイムに通信する部分をアセットとして提供することにより、主にロボティクス系・ハードウェア系の技術領域に強みをお持ちの方々と共創していくことを想定しています。

2.設備運営の自動化で次世代データセンターを創造

データセンターは点検・管理等の運用面、警備等のセキュリティ面でコストが掛かります。その部分の自動化・省人化にぜひ取り組んでいきたいと考えています。本テーマでは、データセンターを実証実験の場として提供することが可能です。

3.ラグビーを革命するスポーツテック

スポーツテックは、今後注力していきたい領域です。当社はジャパンラグビートップリーグに所属している「シャイニングアークス」を保有しています。このシャイニングアークスやクラブハウス・練習グラウンドであるアークス浦安パークを活用し、来場者増加やチーム強化への取り組みを実施していきたいと検討しています。 

4.山中の無線中継所や都心の鉄塔を活用した新たなサービス

当社には、多くのインフラ資産があり、それらを活用したサービスを創出できないかと考えています。例えば、山の中の施設を鳥獣被害対策、ドローンの自動充電基地化、地方のハイカー向け新サービスのようなエンターテイメント活用、また、都心の鉄塔を新たな広告媒体として活用していく等、幅広いご提案を受け入れる準備をしています。これらの資産に関しては、地域に根差したものが多いため、地方創生への貢献も可能と考えます。

▲経営企画部 ビジネスイノベーション推進室 担当課長 田口陽一氏<写真左>

経営企画部 デジタル・カイゼン・デザイン室 ビジネスデザイナー 岩田裕平氏<写真中>

経営企画部 ビジネスイノベーション推進室 八塩初奈氏<写真右>

現場の熱量高いメンバーをアサイン、予算も確保

――このプログラムには、どのような特徴や魅力があるのでしょうか?貴社と共創する上で活用できるリソースや、共創のメリットについても合わせて教えてください。

八塩氏 : 各事業部から現場目線で課題や想いをテーマとして抽出していることもあり、主体的で熱量の高いメンバーがアサインされています。その中には、大学と共同研究を行ってきた者や、スポーツチームを運営してきた経験豊富な社員、またモチベーションが高い若手等、様々なバックグラウンドのメンバーが含まれています。

もちろん、我々経営企画部も事務局として各プロジェクトと並走していきます。その中には、新規事業を推進している社員や、DX推進コンテスト「DigiCom(デジコン)」を運営している社員が在籍しています。確度高く事業化につなげられるよう、経験・意欲共に豊富なメンバーが揃い、サポートしていくことがこのプログラムの大きな特徴です。

また、Demodayが終了した後もそこで終わりではなく、事業化判断までしっかりと行っていけるよう、プログラム全体のスケジュールを設計しています。初回ではありますが、本気で社会実装を目指すプログラムです。

田口氏 : また、本プログラムの企画・立案を外部に委託するのではなく、ほぼ社内で行っているということも大きな特徴です。この背景として、プログラムの設計自体を外部に委託することに予算を割くのではなく、それぞれのテーマが具体的に走り出した段階で、各プロジェクトに振り分ける予算をしっかりと確保することを選択したからです。

本プログラムでは、PoCに向けて一定の予算を確保しており、各テーマで事業化を目指すというメッセージを強く掲げています。

事業化に向け、事務局としてもあらゆるサポートを実施

――改めて、応募企業に向けてメッセージをお願いします。

東出氏 : 私は当社の生え抜き社員ではなく、他社からの転職組です。なぜ当社にいるかというと、NTT Comのリソースに強い魅力を感じているからです。この会社で新たな価値を創出することにモチベーションを感じています。しかしながら、当社は現在ネットワーク、データセンター、クラウド等、従来のサービス提供が中心です。今回のオープンイノベーションプログラムを通して、我々のサービス、営業網、リーチャビリティを外部の方々に提供し活用していただくことにより、新たな価値を創出できると自信を持っています。

福田氏 : 我々は、オープンイノベーションを一時の花火で終わらせるのではなく、事業化してサービスを世に提供していくところまでを本気で目指しています。そのために、我々事務局としても、あらゆるサポートを行っていきます。これまでNTT Comと接点がなかった方々を含めて、興味をもっていただけたら幸いです。

田口氏 : イノベーティブな事業を、ぜひ一緒に興していきましょう。各メンバーの想いも非常に強いです。共感いただけた方々からのご応募をお待ちしております。

八塩氏 : お客様やユーザーに対する新たな価値を、一緒に追求していきたいと考えています。我々も、インキュベーションのプロフェッショナルとして一緒に汗をかきながら、精一杯サポートしていきます。

岩田氏 : 当社は、イノベーティブなことをやりにくい会社だと思われているかもしれません。しかし、今回のプログラム実施に向けて体制をしっかり作ってきました。突拍子もないアイデアでも歓迎です。各テーマにおいて忌憚のないご意見、アイデアをお待ちしています。

取材後記

今回のオープンイノベーションプログラムのポイントは、すべて事業化を見据えて設計されていることだ。そのために、これまでに外部に公開していないリソースも公開。経営層も巻き込み、イノベーション専門の会議体も準備することで、事業化において躓きがちなヒト・モノ・カネの確保もスピーディーに実施できる体制を構築している。さらに、あらかじめ、各テーマで予算を一定の金額で確保し、Demodayで終わりではなく、その後の事業化を見据えたスケジュールを設定しているという。

PoCで曖昧に共創プロジェクトが終了してしまうのではなく、その先の事業化をしっかりと見据えているNTT Comの本気度が伝わってくる。各テーマに関連したアイデアや技術を持つスタートアップは、ぜひ応募を検討して欲しい。

※「NTT Communications OPEN INNOVATION PROGRAM」の詳細はこちらからご覧ください。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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  • 田上 知美

    田上 知美

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