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【TAP Key Person's Interviews】♯06 「キャッシュレス社会」を共創で実現する | 東急カード株式会社

【TAP Key Person's Interviews】♯06 「キャッシュレス社会」を共創で実現する | 東急カード株式会社

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2015年から東急電鉄が実施している事業共創プログラム「東急アクセラレートプログラム(TAP)」。幅広い16の領域で求められている技術・アイデアはどのようなものか?そしてオープンイノベーションを通してそれぞれの領域では何を実現したいのか?――それらを可視化するため、eiiconではTAPに参加する東急グループ各社にインタビューするシリーズ企画『TAP Key Person's Interviews』をスタートさせた。

今回登場するのは、TAPの【カード・ポイント・ペイメント】領域を担う、東急カード株式会社だ。1983年の創業以来、35年に渡って東急グループのクレジットカード事業を担い、独自ポイントである「TOKYU POINT」や金融領域に関する付帯サービスをカード会員に提供。東急グループだからこそ実現できる付加価値を提供してきた。

歴史と確かなサービスを持つ同社が、昨今のキャッシュレス化の流れをどのように捉えているのか。そして、TAPを通じてどのような世界観を実現したいのか?――代表取締役社長・梅原氏に、お話を伺った。

■東急カード株式会社 代表取締役社長 梅原昌弘 氏

1985 年に東京急行電鉄株式会社。1986年から財務にて、会社の格付けや資金調達を担当。英国・ロンドンの証券会社に派遣され、現地で実務を経験。1998年からグループ資本政策や再編業務等を担う。2013年7月から東急カード株式会社に出向、2017年4月に代表取締役社長へ就任。余暇の時間では、海外サッカーやミュージカル鑑賞といった趣味を楽しんでいる。

東急カードを、より価値のあるものにしていく。

――国内でもQRコード決済が普及しつつあるなど、キャッシュレス化の流れが非常に活発です。このような時流の中で、東急カードさんの事業の強み、そしてTAPを通してどのよう世界観を描いていきたいかをお伺いしたいと思います。

梅原氏 : 東急カードは、東急グループが持つ多様な事業のもと、交通系と流通系の両方の側面を持ったカードとして、およそ35年前にリリースされてから今日に至ります。クレジット機能だけではなく、TOKYU POINTという東急グループ共通のポイントも提供しており、現在では年間約90億円程度が流通しています。また、カード会員250万人の内120万人が東急沿線の方々で、地域に密着した強みを持つカードとしての特徴もあります。

――東急沿線を中心とした顧客基盤が、大きな特徴になりますね。

梅原氏 : はい。ただ、それだけに甘んじてはいません。私たちが大切にしているのは、いかに東急カードの商品性を上げていくかということ。たとえば、東急グループの特典プログラム「TOKYU ROYAL CLUB」では、東急カードをお持ちの方に対して、メンバーステージ毎に施設利用やイベント参加など、さまざまな特典をご用意しています。東急の施設なら駐車場が無料、東急ストアで5%割引といった、グループ内での特典も多くあります。面白いアイデアがあれば、カードの特典やサービス面に関してTAPでご提案いただきたいですね。

また、その他にも、未来の収支をファイナンシャル・プランナーが作成する限定サービス(TOKYU CARDファイナンシャルプランニングサービス)も好評です。資産運用に関する付帯サービスをウェルスナビさんと提携して進めはじめたり、今後は会員様の資産に関わる部分での新サービスを充実させていこうと考えています。東急カードの年間収益は約90億円で、その中でファイナンシャルのサービスの売上は、正直ごく一部になります。

しかし、これらの付帯サービスをフックに、顧客基盤を強固なものにしたい。――そうすることで、私たちはLTV(Life Time Value)の向上を目指していきます。ですので、フィンテックに限らずファイナンシャルについても幅広く考えていきます。

▲預かり資産・運用者数トップクラスを誇るロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」を提供するウェルスナビ株式会社と提携し、「WealthNavi for TOKYU POINT」の提供を開始させている。

――なるほど。

梅原氏 : 現在日本では国を挙げてキャッシュレス化を推進している真っ最中で、クレジットカードの市場は75兆円規模と非常に伸びています。日本国内では数少ない成長産業の一つですね。そこで、問題になっているのが、カードの不正使用の増加。被害を防ぐため、AIを使った不正検知やRPAの一環でOCR技術も現在検討し、東急グループ全体での実用化を目指しています。カード情報のリスク管理も注力しており、セキュリティや危機管理ソフトのバージョンアップを進めています。

また、東急カードアプリにも工夫を施しています。アプリに万歩計機能を実装し、定期的にアプリを利用する機会を設けることで、カードの不正利用による不審な点があれば、ユーザーが自らすぐに気付いて問い合わせができる仕組みになっています。他にもすでに検討段階にあるテクノロジーもありますが、カード利用者のリスクを減らすセキュリティに関しては、常に新しいものを求めています。

業務の生産性向上にも取り組んでおり、以前はコールセンターの受電率が70%台まで落ち込んでいましたが、現在は90%台まで上げることができています。しかし、マンパワーによる部分が大きいので、今後はITを活用した総合的な改革に着手していく予定です。

▲TOKYU POINTの残高やクレジット利用額を確認できる「東急カードアプリ」。

グループ全体で活用できるデータ分析を。

――東急カードさんの会員向けとしては、「TOKYU ROYAL CLUB」とファイナンシャル、そしてセキュリティを含めたリスク管理。さらに、社内ではコールセンターを中心とした業務改善。4つのポイントで、現在様々な改革を進めているんですね。

梅原氏 : その通りです。特に、東急カードアプリに関しては、日進月歩でITが進化しているので、私たちも日々開発に取り組んでいますし、将来的には東急グループ全体で使えるアプリに成長させたいと考えています。

データベースマーケティングに関しても、東急グループで本腰を入れて進めていこうと話し合いがされています。その中で、当社が中心となってプロジェクトを進めていければと考えています。特に、データ分析やセキュリティは当社の得意分野。マーケティング部分は東急グループが担当し、データを私たちが収集しながら分析し、共有していく形を作り上げていきます。

――具体的にはどのようなデータ分析などを行っていくのでしょうか。

梅原氏 : クレジットカードのデータは万能だと思われがちですが、実はそんなことはありません(笑)。収集したデータを組み合わせながら分析することが必要です。東急ストアでカードを使用すれば、後でデータを掛け合わせることで「ニンジンを買った」などの情報は分かりますが、東急グループ以外のお店でカードを使用すれば購入金額はデータとして残りますが、購入した商品までは分かりません。データの活用は今後も加速していきますが、漠然とデータを集めたところで、“使えるデータ”にならない。東急カードアプリに位置情報等も搭載しつつ、マーケティング観点で行動履歴といったデータも収集できるようにすれば、より精度の高い分析が行えると考えています。

――現状で外部企業などと進めているプロジェクトがあればお聞かせください。

梅原氏 : 静岡県下田市のふるさと納税を、下田市役所様と一緒に盛り上げる施策を新たに始めました。ふるさと納税は東急カードによる決済が年々伸びているサービスです。ふるさと納税を通じて「下田市にこんな美味しい物がある、こんな素敵な商品がある」ということを知ってもらい、観光へと繋げる取り組みです。

下田市には何といっても東急グループの路線である伊豆急行が走っていますし、ホテルやロープウェイも東急グループ企業が運営していますので、下田市に観光客が増えることでWin-Winの関係を築くことができます。地域振興という枠組みの中で、外国人観光客を狙ったインバウンド向けのアイデアも有効ですが、むしろリピーターになりやすい日本人向けの取り組みに私たちは目を向けており、TAPでもそういったアイデアを広く求めています。

顧客基盤を軸に、サービスを充実させる。

――TAPを通して、既存事業のさらなる改革を目指しているような印象を受けますが、その他、全く新しいサービスや決済方法などにも検討の余地はありますか。

梅原氏 : 先程もお伝えした通り、キャッシュレス化の流れは加速していて、日本のキャッシュレス比率は現在20%程度。それを国は40%にまで上げようとしています。今後はさまざまな決済手段が生まれて、どこに注力するかは私たちとしても議論を深めていく必要があります。

キャッシュレス化において、クレジットカード決済が第一世代とするなら、電子マネー決済が第二世代、現在はQRやバーコード決済の第三世代の黎明期に差し掛かっています。Amazonやヤフー、楽天など、多くのメジャープレイヤーが存在します。そこに割って入るのではなく、いかにグループの基盤を活かしつつ、キャッシュレス化の波に乗っていけるか、そこに対するアイデア・テクノロジーがあると嬉しいです。

東急カードでは、2018年からスマートフォンを活用したクレジットカード決済ソリューション「.pay(ドットペイ)」のサービスを開始しました。ハウスクレジットとして、東急グループの施設で使用することを目的とし、東急の商業施設とカード会員を密に繋げることを目指しています。サービスを充実させることでカード会員の約半数を占める、東急沿線にお住まいの方の深堀りも狙っています。

――会員比率という観点から、今後広がりを見せるサービス等はありますか。

梅原氏 : 東急百貨店とのつながりも多く、シニアの女性会員の比率が大きいのですが、高齢者の方は段々と購買意欲が落ちていく傾向にあります。注目したいのは、交通系のオートチャージに使用されている30万件にのぼる口座。こちらは若年層の会員が多く、アクティブにカードを使っていただいています。

特に、30代女性の東急沿線から通勤している方々。彼女たちをオートチャージによるカード使用をフックにし、ポイントも貯めて、クレジットカードを一社に集約したいというニーズを満たす。そして、公共料金や電車代の支払いといった、継続決済に繋げていきます。その継続決済に選ばれるカードになるためには、さらに何が必要かを一緒に考えていただきたいです。

――TAPに参加する共創パートナーに対して、提供できるリソース・アセットにはどのようなものがありますか。

梅原氏 : やはり、強固な顧客基盤ですね。東急グループの加盟店との連携は、当社を通せばワンストップで実現できます。さらに、自由が丘の商店街のように、商店街全体でTOKYU POINTを使用できる場所もあります。そういった、場の提供も共創パートナー企業の皆様には魅力と感じていただけるのではないでしょうか。

さらに、今年は働き方改革の一環として、RPAによる生産性の向上にも努めてきました。昨年と比べ1300時間程度の効率化を実現し、残業は2割程度削減。有給取得率に関しては、2018年度末までに40%から80%を捉えそうなところまできました。このプロジェクトで蓄積した、業務改善のノウハウを提供することも可能です。

――最後に、TAPに応募を考えている共創パートナーに向けてメッセージをお願いします。

梅原氏 : 東急カードだけでなく、クレジットカード業界全体が次のステップに進もうとしています。この流れに乗って、幅広くビジネスを展開していきたいと思っています。さまざまなサービスと組み合わせて、東急カードのLTVを上げ、お客様の生活価値向上につながるアイデア・テクノロジーをぜひご提案ください。東急カードのさらなる可能性を引き出していただける共創パートナーからのご応募をお待ちしています。

取材後記

現在日本では、国を挙げてキャッシュレス化を加速させている。しかし、昨今のニュースでも分かるように、カードの不正使用といった犯罪も多発。現状を踏まえると、迅速かつ安全に、カードサービスの拡充は進めていかなくてはならない。とにかく規模とユーザーを拡大させようとするキャッシュレスのマーケットにおいて、東急カードはセキュリティを堅牢にし、顧客基盤を固めつつ、カード会員のLTVを上げていく取り組みを模索している。東急カードのさらなる発展に寄与するアイデア・テクノロジーを、TAPを通じてぜひ提案いただきたい。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:齊木恵太)

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