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KDDIが仕掛ける5Gのミライ ~5G、ドローン、XRの取り組み事例~

KDDIが仕掛ける5Gのミライ ~5G、ドローン、XRの取り組み事例~

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「通信とライフデザインの融合」を掲げ、通信を中心に生活を楽しくするサービスや顧客体験価値の提供を目指しているKDDI。オープンイノベーションに積極的な大企業の1位にも選出され(ILS実行委員会、経済産業省調べ)、最新技術を活用した多岐にわたる領域に積極的に挑戦し続けている。

そんなKDDIは、様々なテーマでイノベーションを共に考えるイベント“KDDI Innovation Makers”を、9月より全4回のシリーズで開催中だ。10月24日に行われた第2回目のテーマは、「KDDIが仕掛ける5Gのミライ~5G、ドローン、XRの取り組み事例~」。会場は第1回目と同じく、虎ノ門の「KDDI DIGITAL GATE」。新規事業開発者やエンジニア、スタートアップなど、KDDIでの最新技術に関わる事業に興味を持つ人々が多数集った。

オープニングでは、“KDDI Innovation Makers”を運営するKDDI株式会社 Innovation Makers事務局の仙石真依子氏が挨拶を行った。「KDDIは、『通信とライフデザインの融合』を目指し、新規事業の創造に向けて本気で取り組んでいる。しかしながら技術革新が驚くべきスピードで進む現代においては、多くの課題が立ちはだかる。そこで今回はKDDIの取り組みを聞いていただくと共に、ぜひ積極的にご意見を頂きたい」と、会場に呼びかけた。

今回は、KDDIの「5G」「ドローン」「XR」各技術領域におけるイノベーターたちが、実証実験や具体的な活用事例についてプレゼンテーションを行った。その内容を順に紹介していきたい。

「KDDIが目指す5Gのカタチ」

トップバッターは、商品・CS統括本部 商品技術部 無線通信グループリーダー 木下淳之氏。5Gの技術的な特徴、実証実験の紹介、そして事業化に向けた方向性について話した。木下氏は「これまで実施した5Gの実証実験は独自規格のもの。5Gの標準仕様は2017年末に決定したばかりで、現在端末を開発中。世界では2018年末~19年にかけて商用化が始まる」と、見込みを語った。

しかし一方で「マネタイズは大きな課題であり、世界中が悩んでいる。まだ5Gの事業化には少し時間が掛かる」と、立ちはだかる壁の大きさに触れた。

▲【登壇者】KDDI株式会社 商品・CS統括本部 商品技術部 無線通信グループリーダー 木下淳之氏 

2004年にKDDIに入社。 2004年から2009年まで、移動体交換機の開発業務、及び交換機のIP化プロジェクトに従事。 2009年に商品部門に異動し、端末アプリケーション及びUIの開発業務を経て、新たな通信技術の導入方針及び仕様策定業務を担当。 2016年からIoT事業推進室を兼務し、LTE-Mチップ/モジュールを導入。 現在は5Gの技術方針の策定及び商品化検討を行うとともに、ユースケースの検討に取り組む。

 

<5Gの技術的な特徴>

木下氏はまず、5Gの技術的な特徴について説明を行った。5G技術を簡単に表現すると、「高速・大容量、多接続、低遅延」。通信のピーク速度は現行LTEの20倍である20Gbps、同時接続台数は10倍、無線区間の遅延時間は1/10というのが、5Gの目標値だという。

高速化の実現方法は、高い周波数の活用だ。現在5Gの候補となっている周波数は、6GHz未満の「Sub6」と、28GHz帯の「mmWave」。しかしながら、「高い周波数は連続エリアを作るのが困難。速度・容量と、エリアの連続性・広域性はトレードオフの関係にある。そこで、利用場所がある程度限定されるIoTや、スタジアム等でのユースケースが多い」のだという。

<5Gの実証実験紹介>

次に木下氏は、KDDIがこれまで取り組んできた5Gの実証実験について紹介を行った。世の中で5Gと親和性がある様々な領域に取り組んでいるが、今回は具体的に3つの事例を提示した。

まず1つ目は、「大容量:高速移動環境での実証実験」。走行中列車の先頭に装着した4Kカメラで撮影した高精細映像を5Gでアップロードし、運転訓練支援などに応用するという。また、車内で8K映像ストリーミングを受信し、デジタルサイネージに活用する。

2つ目は、「大容量:高度セキュリティシステム」の事例。イベント等でカメラを搭載した車を走らせ、そこで撮影した4K映像を遠隔地の監視センターに伝送。LTEでは不可能だったが、5Gでは人物特定まで可能なほど精緻な映像が伝送できるため、防犯などに活用できる。

3つ目の事例は、「低遅延:ICT施工」だ。これは建機に搭載した4K3Dカメラ映像を5Gで遠隔地に伝送することにより、遠隔地から建機を正確に操作することが可能となる。災害現場など人が入りにくい場所での作業が効率化できる。

<5Gの事業化に向けて>

さらに木下氏は、実証実験で取り組んできたことを事業化するための方向性を、BtoC、BtoB、BtoBtoCそれぞれの領域について語った。しかしながら、冒頭で語られた通り、5Gサービス検討には様々な壁が立ちはだかる。まずは、通信以外の領域がボトルネックになるケース、次に5Gを使っても技術的に不可能であるケース、そして最後の壁として、事業的に成り立たないというケースだ。それらの壁を超えサービス化実現のために、KDDIは検討を重ねている。

「5Gは、スマートフォン以外にも大きな価値をもたらすと信じている。しかし、通信業者だけでは、新しいユースケースは見つからない。5Gの成功に向けて、ぜひ様々な方々とサービス/ビジネスを検討していきたい」と、締めくくった。

「スマートドローン実現に向けた取組み」

次に、商品・CS統括本部 商品戦略部 商品1グループリーダー 博野雅文氏が登壇した。博野氏は、KDDIにおけるドローンの取り組みを紹介。壇上には実証実験に使用されたドローンが存在感を放っていた。

▲【登壇者】KDDI株式会社 商品・CS統括本部 商品戦略部 商品1グループリーダー 博野雅文氏

2004年にKDDIに入社。WiMAX基地局の開発業務を経て、長くセルラーネットワーク構築に関わる企画・開発業務に従事。特に、BCMCS、WiMAX2+、VoLTEの導入に携わる。2014年より、端末における無線通信プロトコル開発のグループリーダーを務めた後、2016年10月より現職。セルラーネットワークを活用したスマートドローンの事業化および商品中期戦略の策定を担当。

<ドローンの産業適用の可能性>

最初に博野氏は、国や行政が実施するドローンの取り組みに触れた。2015年の「未来投資に向けた官民対話」において、安倍首相が「2019年にドローン配送実現」を宣言。これがトリガーとなり、日本でもドローン市場での国際競争力を高めるための施策が始まったのだという。

国内市場規模も急速に拡大。2016年度には500億円に満たなかったが、2019年度には1000億円超、2024年度には4000億円に迫ると算出される。ドローンの適用領域としては、高速道路点検、パネル点検、イベント警備などがある。

<KDDIにおけるドローンの取り組み>

こうした市場背景の中で、KDDIは4Gや5Gを搭載した「スマートドローン」を軸として、事業化を推進していくという。博野氏はスマートドローンの優位性として、「通信システムを介しているため、人が現場に移動する必要がなく、低コストで運用できる」と語った。しかし当然ながら、そこには衝突などの課題があるため、安全性の技術実証も同時に進めている。

続いて博野氏は、スマートドローンの基本戦略について話した。「ドローンの機体だけではなく、運航管理システム、機体の高度を設定する3次元地図、データを蓄積・分析するためのクラウドサービス、これらをプラットフォームとしてトータルに提供する『スマートドローンプラットフォーム』。これをベースに点検、測量、配送など各種ソリューションを提供していく」という。この「スマートドローンプラットフォーム」は、パートナー企業との共創により推進をしている。機体は名古屋のPRODRONE、運航管理システムはTERRA DRONE、地図はZENRIN、気象はウェザーニュースといった体制だ。

KDDIでは、このスマートドローンプラットフォームの各種実証実験を行っている。――まずは、今年3月に相模湖リゾートプレジャーフォレストにて実施した「複数ドローンを活用した広域警備実験」。高度の異なる4台のドローンを組み合わせて、運航管理システムによる遠隔制御で広域警備を行うというもの。今後は、画像認識による不審者の自動認識など、さらなる技術開発を進め、実用化を実現していくという。

博野氏は他に、JR東日本主催のモビリティ変革コンソーシアムにて推進している「インフラ点検における実証実験」。そして、長野県伊那市、ZENRINと実施している「物流領域への適用に向けた実証事業」についても紹介した。

<5Gで広がるスマートドローンの可能性>

では、スマートドローンは5Gでどのように変わるのだろうか。博野氏は5Gの大容量・低遅延といった特徴により、「リアルタイムで、人間の目で見るような解像度により、人が行けない場所を見ることができる」ことを強調。これにより、点検や監視について提供領域の幅が広がるという。

また、将来的な方向性として、「全国の基地局にドローンポートを展開、広範囲な飛行エリアを構築し、プラットフォームとしてビジネス化していきたい」と、Drone as a Service構想についても語り、「様々なパートナーと共に、スマートドローンの可能性を広げて行きたい」と決意を語った。

「XR(AR,VR)分野の取り組み」

最後に登壇したのは、商品・CS統括本部 商品企画本部 プロダクト開発1部 プロダクト2グループリーダー 上月 勝博氏。AR/VRに代表されるXR分野の取り組み事例について語った。

▲【登壇者】KDDI株式会社 商品・CS統括本部 商品企画本部 プロダクト開発1部 プロダクト2グループリーダー 上月勝博氏

1993年にKDDI入社。以来一貫してモバイル分野のプロダクト、サービス企画開発の業務に従事。モバイル向け動画、音楽サービス(着うた、LISMO等)、電子書籍サービスの企画開発、アート系端末の企画、Android,Firefox OSスマートフォン等オープンソースOSを活用したスマートフォン端末の導入を担当。現在はXR(VR/AR等)、スマートグラス等新規技術関連の商品企画・開発を担当。

<XR分野への取り組み>

上月氏のチームがVRに取り組み始めたのは、スマートフォン導入が一段落した2015年頃の頃だ。しかし当時は国内であまり盛んではなかったため、初作品は米国のイベントにて発表。その後、東京ゲームショウ2016年にも別作品を出展。現在ではXR技術の活用、スマートグラス、5Gなどとの組み合わせなどによる可能性も探求しているという。実際にKDDIはXR分野において通信業界最多規模の取り組みを進めている。上月氏はその実例を紹介していった。

<ハウステンボス『JURASSIC ISLAND』への企画・開発協力>

2017年1月に、ハウステンボスとKDDIは、新技術を活用したサービス開発に関するパートナーシップを締結。最初はドローンレースやスマートドローンのアイデアソン開催、その後VR領域にも広がり、「VRの館」での常設出展、VRゴーグル自動販売機の実証実験といったサービス検討を進めていったという。

そして次なるXR技術の取り組みとして、上月氏は2018年7月1日にオープンした「JURASSIC ISLAND (ジュラシックアイランド)」を紹介。これは日本初となる屋外ウォークスルー型AR シューティングアトラクション。無人島を舞台に、ARスコープが装着されたライフル型の"銃"を手に森林の中を探検しながら、ARスコープ越しに現れるリアルな肉食恐竜に挑む。

条件は、「“無人島”で“AR”を使った“恐竜”を撃退するゲームで、最大“75人が同時プレー”できる」こと。KDDIはアプリケーション、ハードウェア、ネットワークをトータルでサポート。トラフィック分散、スマートフォンの充電問題、斜面だらけの地形にARで恐竜を出現させるための工夫など、様々な苦労を乗り越えて実現に至った過程を紹介。「これは私たちのチームだけではなく、KDDIの多様な部門、そして開発会社にも協力いただき、共創体制を組んで実現していった」と、上月氏は語った。

<ODGとのスマートグラス事業に向けた取り組み>

次に上月氏は、スマートグラスの事業化について話した。「パーソナルモバイル通信デバイスは、時代の変遷でどんどん変化していく。では5G普及による変化を見据え、XR技術による時間・空間を超える体験を創出するには何が必要か?そこで着目したのが、スマートグラス」だという。

KDDIは米国サンフランシスコのODGとパートナーシップを締結。ODGが開発した「R-9」をベースに、日本人が着用しやすいデザインにカスタマイズし、国内利用に向けた対応を検討している。

 さらに上月氏は、「R-9」を活用した新しい体験価値の事例を挙げた。まずはR-9 を装着して「バーチャルキャラクターと現実世界でコミュニケーション」ができるデモンストレーションを映像で紹介。次に、2018年6月に実施した日本航空(JAL)との連携による、「羽田空港JALサクララウンジ・スカイビューでの映像視聴の実証実験」、10月に実施した「札幌ドームにおけるプロ野球のARスポーツ観戦の実証実験」を紹介。「XRの可能性について、皆さんと一緒に考えていきたい」と呼び掛けた。

質疑応答

木下氏、博野氏、上月氏のプレゼンテーションを受け、質疑応答が行われた。会場からは5G実用化、ドローンファンド、5GとXRの親和性など、様々な質問が寄せられた。――特に「全員にズバリ聞きます。どんな企業とパートナーシップを組みたいですか?」という質問に対しては、3者とも外部共創への強い想いが見えた。

木下氏:「様々な課題はあるが、とにかくチャレンジしたいと思っている。積極的な姿勢を持つパートナーと共に事業化を検討していきたい」

博野氏:「我々は、『スマートドローンプラットフォームを構築する』というビジョンを掲げている。他にも、ビジョンをお持ちの方々と議論をしながら、同じ方向に向かって走っていきたい」

上月氏:「新しいことに果敢にチャレンジする姿勢はもちろん、我々にないスキルやノウハウを持つ方々と、共創関係を築いていきたい」

――その後、登壇者も交えた懇親会を開催。KDDIが挑む新技術領域と事業化の可能性について、熱い議論が尽きなかった。

取材後記

「5Gの商用化について、一般利用はいつ頃からか?」という会場からの質問に対して、木下氏は「世界で見ると、早いところで2018年末から2019年頃。日本では2020年頃」と回答した。5G時代は未来というより、もうすぐそこに迫っている。実証実験など現実的な取り組みの紹介により大きな可能性の広がりを感じたが、一方で技術的な課題やマネタイズの壁など、短い間にクリアすべきことも多い。それを乗り越え、世の中に“ワクワク”を提供していくには、「ビジョンとチャレンジ精神」を持つ共創パートナーが不可欠だ。興味を持った方は、ぜひ12月にも続いて開催される“KDDI Innovation Makers”への参加をお勧めしたい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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