スマホカメラで血圧・脈拍を非接触計測──Arkth×IKIジャパン、感性工学と実装力の共創で次世代バイタルセンシングを開発
株式会社Arkthは、慶應義塾大学発スタートアップのIKIジャパンと共同で、スマートフォンやPCのカメラのみを用いて血圧や脈拍を推定する「非接触型バイタルセンシングシステム」を開発した。特別なセンサーやウェアラブル機器を必要とせず、顔や皮膚を約15秒間撮影するだけでバイタル情報を取得できる点が特徴だ。
同システムは、IKIジャパン代表で慶應義塾大学教授の満倉靖恵氏が研究してきた「感性工学」と「生体信号解析」を融合。従来の非接触計測で課題とされていた精度面を改善し、日常利用に耐えうるレベルでのバイタル推定を実現した。
カフ式の課題を解消、継続できる健康管理へ
日本では高血圧患者が約4,300万人にのぼるとされ、日常的な血圧管理の重要性は広く認識されている。一方で、従来の腕帯(カフ)式血圧計には、装着の煩雑さや測定時の心理的ストレスといった課題が存在していた。
さらに、オンライン診療の普及が進む中で、ビデオ通話越しでは医師が患者のバイタルデータをリアルタイムに取得できないという制約も顕在化している。こうした背景を受け、両社は「継続できない健康管理」という根本課題の解決を目指し、本技術の開発に取り組んだ。
実証で高い精度を確認、オンライン診療への応用も
実証実験では250件以上のデータを取得し、従来のカフ式血圧計との比較において、収縮期血圧(SBP)で-2.13±11.39、拡張期血圧(DBP)で-2.99±9.18という結果を記録。非接触型としては高い精度と有効性が確認された。
この成果により、オンライン診療における客観的データの取得や、遠隔地での健康管理の高度化が期待される。なお、現時点では医療機器としての診断用途ではなく、ウェルネス領域における活用を前提としている。
3つの技術的特徴──精度・低コスト・拡張性
同システムの強みは大きく3点に整理できる。
独自のノイズ除去アルゴリズムによる高精度推定である。照明環境や被験者の動きといった外乱要因を抑制し、安定したデータ取得を可能にした。
スマートフォンやPCなど既存デバイスをそのまま活用できる点だ。専用機器が不要なため、導入コストを抑えつつ幅広い環境で利用できる。
「心」と「体」の統合的な可視化への拡張性である。今後は脳波解析などの技術と組み合わせ、ストレスや集中度といった感性データも統合することで、より高度なヘルスケア体験の提供を見据える。
建設・運送・高齢者見守りなど幅広い応用へ
本技術は、オンライン診療にとどまらず、建設現場や運送業における作業者の体調管理、高齢者の見守りなど、多様な分野での活用が想定されている。非接触かつ短時間で測定できる特性は、現場負担の軽減と安全性向上の両立に寄与する可能性が高い。
今後の社会実装においては、Arkthが直接サービス提供を行うのではなく、IKIジャパンと各分野の事業者が連携しながら導入を進める方針だ。Arkthは技術面から検証および実装支援を担う。
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(TOMORUBA編集部)