奈良県初・行政課題解決の共創プログラム『Dive+Su Meetup』成果報告会をレポート――観光や地域活性、防災、行政DXなどに取り組んだ 8チームがピッチ!
「共創」で奈良県の行政課題・地域課題を解決するオープンイノベーションプログラム『Dive+Su Meetup』(ダイブツ・ミートアップ)の成果報告会が2月16日、奈良商工会議所で開催された。県内自治体とパートナー企業がタッグを組んだ8つの共創チームが登壇し、約3カ月間の実証成果と今後の展望を示した。
奈良県は豊富な文化財と歴史資源を有し、大阪・京都へのアクセスにも恵まれる。一方で、県土の約77%を森林が占める地理的特性から、観光対応や地域活性、防災、行政DXなどの課題を抱えている。こうした課題をビジネスの力で解決するため始動したのが『Dive+Su Meetup』だ。
同プログラムは、奈良県と県内市町が抱える課題を共有・構造化し、横展開可能な解決策を創出することを目的とする。民間企業との共創を通じて社会実装を進め、その過程で県内産業の持続的発展やスタートアップの市場開拓にも波及させる狙いがある。名称には「スタートアップと共に課題へ飛び込む」と、奈良を象徴する「大仏」の二つの意味が込められた。
初年度は「まちづくり」「地域活性化」「行政DX」をテーマに全国から94件の応募が集まり、9件を採択(当日は8チームが発表)。約3カ月間の実証を経て迎えた成果報告会当日は、会場を埋めた来場者が各チームの発表に耳を傾けた。終了後の交流会でも活発な意見交換が行われ、次年度以降の社会実装や事業展開への期待が高まった。
『Dive+Su Meetup』は、奈良の未来を切り拓くための挑戦のひとつ
成果報告会の冒頭、奈良県 副知事の西村氏が挨拶。「本日の発表がヒントとなり、次の活動や事業展開へとつながることを期待している。県をはじめ市町村も行政課題を抱えており、本日の気づきを次の施策に生かしてほしい」と期待を述べた。
▲奈良県副知事 西村氏
続けて、奈良県 大和平野中央構想・スタートアップ推進課の向田氏が事業概要を説明。「地域課題を企業の力で『新たな価値』に変え、奈良の未来を切り拓くための挑戦になる。自治体の課題を共有・構造化し、企業の柔軟な発想と技術で解決することで、地域の競争力向上を図りたい」と、本プロジェクトの狙いを改めて示した。
▲奈良県 向田氏
8チームが共創の成果を披露
奈良県が抱える切実な地域課題に対し、最先端のテクノロジーや独自性の高いサービス・プロダクトはどう組み込まれたのか。登壇した各チームからは、実地での検証データや住民の反応など手触り感のある報告が続いた。
●奈良県 防災統括室 × 株式会社 熊平製作所(セキュリティ製品製造業)
発表タイトル:自助・共助を推進して地域防災力を高める「みんなの自主防」
行政課題:県民の防災への自助意識向上と行動変容の実現
●奈良県 奈良公園室 × 株式会社mica(IoTトング)
発表タイトル:IoTトング活用による公園ゴミの検知・可視化
行政課題:公園内のごみ発生状況の検知・可視化を実現する
●奈良県 公園企画課 × 株式会社センサーズ・アンド・ワークス(センサIoTおよびDXソリューション開発)
発表タイトル:利用者データ取得と活用で奈良県営馬見丘陵公園をより多くの人の憩いの場へ
行政課題:公園への来場促進に向けたニーズ把握と行動分析
●宇陀市 政策推進課 × 株式会社IVRy(対話型音声AI SaaS)
発表タイトル:タッチ/クリック不要・対話型音声AIが実現するインクルーシブ予約
行政課題:高齢者も容易に利用できるオンライン予約の仕組みづくり
●奈良県 こども・女性課 × 株式会社Liquitous(民主主義のDX)
発表タイトル:こども・若者の意見を聴くためのオンラインプラットフォーム
行政課題:こども・若者の社会参画を促進する仕組みづくり
●奈良県 観光力創造課 × 株式会社Tale Navi(体験型観光)
発表タイトル:Kurabi×奈良の暮らし体験による周遊・滞在促進
行政課題:奈良の歴史文化×体験を軸にしたテーマ別観光の共創
●田原本町 かせぐ地域課 × 株式会社ミライクルラボ(探求学習)
発表タイトル:田原本町×事業づくりプログラム:創発型アイデア育成ワークショップ
行政課題:学生向けアントレプレナーシップ教育の推進
●奈良県 道路マネジメント課 × 株式会社ロケットバッテリー(大容量電池パック製造および電気機械器具製造)
発表タイトル:オフグリッド蓄電システム
行政課題:インフラ不整備地帯での通行規制対応の効率化
来年度も継続予定──ALL NARA体制での共創の広がり
8チームによるピッチ後、奈良県 大和平野中央構想・スタートアップ推進課 主幹の平井氏が登壇。平井氏は、本事業が県と市町村が連携する『ALL NARA』の体制で推進されている点に触れ、「ガバメントピッチには全国から約100件もの応募があり、地域に大きなインパクトを残せた」と初年度の成果を強調した。
その上で、「本事業は来年度も継続して実施する予定」と話し、「今回生まれた『縁』を起点に、次年度以降も引き続き共創に取り組みたい」と会場に呼びかけ、報告会を力強く締めくくった。
▲奈良県 平井氏
▲成果報告会のクロージング後、参加者による交流会が行われた。
取材後記
奈良県初となる本格的なオープンイノベーションプログラム『Dive+Su Meetup』。歴史と伝統を持つ同県が、新しい技術やアイデアを柔軟に取り入れようとする本気度が、会場の熱気となってあらわれていた。ピッチでは、多くのチームが次年度以降の社会実装や商用化への具体的なロードマップに言及していた。実証実験結果をいかに実際の公共サービスやビジネスとして定着させ、暮らしを変えていけるか。その真価が問われるのはこれからだ。奈良を象徴する「大仏」の名を冠しながら、課題には果敢に「ダイブ」する。その奈良らしい共創モデルが、地域発の新たな実装モデルとしてどこまで進化していくのか、今後の展開に注目したい。
(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)