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【イベントレポート】 デジタルヘルスケア先進国・イスラエルのキーパーソンたちが集結!OKIとの共創によって生み出される世界観とは?

【イベントレポート】 デジタルヘルスケア先進国・イスラエルのキーパーソンたちが集結!OKIとの共創によって生み出される世界観とは?

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2018年1月にトムソン・ロイター社より「グローバル・テクノロジー・リーダー100社」に選出されるなど、世界的に高い評価を得ている沖電気工業(OKI)。同社は社会課題の解決(SDGs)を起点にしたイノベーションを目指しており、2018年4月にイノベーション創出活動「YumePro(ユメプロ)」を立ち上げた。「YumePro」では特に「医療・介護」、「物流」、「生活・住宅」といった3つの領域に注力することを表明している。

そこでOKIは、オープンイノベーションのさらなる加速を目的として、デジタルヘルスケア分野でイノベーションを⽬指している企業向けに、世界最先端の情報をお届けするセミナーをJapan Innovation Network (JIN)と共催した。

「イスラエル デジタルヘルスケア イノベーション最前線」と題し、7月31日に開催された今回のセミナーでは、政府主導で成長産業としてデジタルヘルスケアに焦点をあてているイスラエルの関係機関のトップを招聘。イスラエルにおけるデジタルヘルスケアの現状が紹介された。さらに、OKIのイノベーション活動の新しい取り組みの数々もプレゼンテーションされた。

会場は、デジタルヘルスケアに関心を持つ、メーカー・金融・保険・IT・メディカルなど多種多様なビジネスパーソンが数多く出席。登壇者の声に耳を傾けた。

高齢化への取り組みが、イノベーションを生むチャンスとなる

セミナーの冒頭に登壇したのはJIN専務理事である西口尚宏氏。「デジタルヘルスケアをバズワードで終わらせるのではなく、本質的な社会課題の解決策として取り上げていきたい。そのために、政府が主導してデジタルヘルスケアに取り組んでいるイスラエルのキーパーソンたちを招いた」と本セミナーの主旨を説明。

続いて、OKIのChief Innovation Officer (CINO)である横田俊之氏が登壇した。横田氏は、OKIのイノベーション活動である「YumePro」に触れ、「OKI単体だけではなく、数多くのパートナーのみなさんと共に社会課題を解決していきたい。特に、医療・介護の領域でいうと誰もが天寿をまっとうする世界を実現することが目的。そのために、SDGsで掲げられている”2030年までに、非感染症疾患(NCD)による早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1減少させること”を推進していきたい」と語った。

▲沖電気工業株式会社 執行役員 Chief Innovation Officer (CINO) 横田俊之氏

次に、経済産業省 ヘルスケア産業課 課長 西川和見氏とイスラエル政府保健省の元Chief Information Officer Shira Lev-Ami氏と、JIN・西口氏の3者によるパネルディスカッションが繰り広げられた。

イスラエル政府のeHealth戦略の責任者としてイスラエルのデジタルヘルスケア戦略を主導したShira Lev-Ami氏は、「まずデータ収集から始まる」と語り、国全土に渡ってネットワークを構築してそのデータを共有しているという。さらに、イスラエル国内の病院と政府が連携し、全ての医師がデータを利活用できるよう推進していると語った。

一方、経済産業省・西川氏は「“高齢化”という社会課題が日本の優位点になる」と指摘。自動車やエレクトロニクスという分野で多くの技術を生み出してきた日本が、課題先進国として“高齢化”に向き合うことで、世界でも先進的なイノベーションが創出される可能性がある。そのためにも日本とイスラエルの協力関係を築いていきたいと話した。

歩行データを活用した「早期発見」など、共創に取り組むOKI

次に登壇したのは、OKIの経営基盤本部 イノベーション推進部長 大武元康氏だ。プレゼンテーションの冒頭で大武氏は「OKIはSDGs3.4(※)の実現を事業として行う」と宣言。そのためにも、国内外から共創パートナーを募ることをアピールした。

※SDGs3.4……2030年までに、非感染症疾患(NCD)による早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。

非感染症疾患による死亡者を減らすために「未病・予防」にアプローチすると話す大武氏。「早期発見」「行動促進」を実現するため、歩行、健診、食事の分析に強みを持つパートナーと連携。さらに「家族・地域をつなぐ」を実現するため、生命保険会社などと連携してリビングラボ(※)を創ることを目指すという構想を力強く語った。

※「リビングラボ」……実際に人々が生活する街のなかで社会実験を重ねる取り組み

実際にOKIでは、歩行データを活用した「早期発見」に向けて、ZEROBILLBANK JAPAN・no new folk studioとの連携を始めた。加速度センサーやジャイロ、無線通信機能を組み込んだ靴を活用して、歩行時の足の運び方を分析し、行動変容に繋げる仕組みを開発。歩行やスポーツ時の正しいフォームを分析したり、歩行異常から糖尿病や認知症などの早期発見への応用を目指している。

上記写真のように、会場で歩行データの分析に関するデモンストレーションが行われた。歩行の仕方によって靴のソール部分が発色。歩き方などのデータが蓄積・分析され、症状の早期発見に貢献する。

また、ブロックチェーン技術を活用した厳密な情報管理で家族・地域をつなぐという計画にも言及。さらにリビングラボについては、先行するイスラエルと連携。関係者が集まるリビングラボを構築することにより、住民主体で健康推進する社会を作り上げるという構想だ。

上記のような未病・予防につながる仮説を検証する場として、OKIは北海道COI(岩見沢市)と連携することを発表。さらに、SDGs3.4を達成するために複数の「仮説」「場」「ソリューション」が必要とし、改めてさまざまな企業や学校、団体との連携を求めた。

日本×イスラエルで、社会課題解決に取り組んでいく

セミナーの最後は、JIN・西口氏がモデレーターとなり、OKI・大武氏とイスラエル講演者である3名を交えたパネルディスカッションが行われた。

まずは、イスラエル講演者である3名のプロフィールを紹介したい。

Dr. Nathalie Bloch氏(↑写真)は、Sheba Medical Centerという中東最大の病院が設立したイノベーションセンターの所長。同センターでは、大企業やスタートアップが病院内にオフィスを設け、病院にいる患者や医師と共に医療現場の課題に対して解決策を構築している。

Center for Digital Innovation(CDI)共同創設者&CFOのBoaz Gur-Lavie氏(↑写真)は、高齢者の課題を18個特定し、その解決をデジタルヘルスケア を通じて解決することを目指すリビングラボを設立。リビングラボには常時複数のスタートアップが実験をボランティアの高齢者と繰り返し、画期的な解決策を創出している。CDI以外にも患者の医療データを管理・観覧できるプラットフォームを構築するスタートアップも設立している。

Dr. Yair Schindel氏(↑写真)は、ヘルステックとライフサイエンスに特化したVC、aMoonを設立。アルツハイマーの治療薬から高齢者の膝の痛みを改善する靴まで、さまざまな最先端のソリューションを提供するスタートアップに投資。2018年5月にクレディ・スイスから$250M(約280億円)のファンドレイジングに成功し、イスラエル最大のライフサイエンスVCとなっている。

上記の通り、イスラエルにおける病院・スタートアップ・VCといったそれぞれの立場の牽引者であるキーパーソンたちが登壇した。

Nathalie Bloch氏は、デザインシンキングを取り入れた研究プログラムがあるなどイノベーションセンターの特徴を述べたのち、人口の5%に医療費の95%が費やされており、1年間に何度も病院を訪れたり入退院する患者がいることで、医療コストが過大になっている点を指摘。イノベーションセンターでは、どうしたら再入院を防ぐことができるかを取り組んでいると話した。

一方、Boaz Gur-Lavie氏は、世界中どの国においても医療費が右肩上がりになっており、そのため病気の予測・予防が重要になると語った。さらに、Yair Schindel氏は、死因順位の高い癌や心血管疾患、感染症、認知症といったものの予防や治療が大きなビジネスチャンスにつながる点を指摘。こうしたビジネスが、イスラエルにとっても次なる成長エンジンになる可能性を示唆した。

また、OKI・大武氏は、「健康な状態で天寿を全うできる世界を作りたい。特に、全世界が直面する大きな課題である認知症の解決に挑んでいきたい」と意気込みを話した。

そしてパネルディスカッションの最後にJIN・西口氏から、Boaz Gur-Lavie氏率いるCDIと共に「CDI Japan(仮称)」を設立することが発表された。イスラエルのデジタルヘルスケアの生態系と面的な関係構築を行うことを目的とし、OKIはCDI Japanの設立発起人メンバーとなる。イスラエルと日本がデジタルヘルスケア領域で手を結び、社会課題解決を推進していくという大きな可能性が感じられるセミナーとなった。

取材後記

政府主導で医療データが蓄積・活用され、デジタルヘルスケア先進国とも言えるイスラエル。そのキーパーソンたちが招聘されたイベントということもあり、客席は満員。セミナー後のネットワーキングでも多くの関係者たちが親睦を深めていた。

先進国の中でも、いち早く“超高齢化”を迎えている日本では、医療・介護領域における早急なイノベーションが必要となる。今回のセミナーを通じ、イスラエルの取り組みから学びや気づきは多くあった。これを契機に、イスラエルと日本の連携を強化し、デジタルヘルスケアにおけるイノベーションが生まれることを期待したい。

◆OKIのイノベーション創出活動についての詳細はコチラをご覧ください。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)

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