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中部国際空港島エリアに先端デジタル技術が集結!10の共創プロジェクトに迫る――あいちデジタルアイランドプロジェクト『TECH MEETS』成果発表会レポート

中部国際空港島エリアに先端デジタル技術が集結!10の共創プロジェクトに迫る――あいちデジタルアイランドプロジェクト『TECH MEETS』成果発表会レポート

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3月19日、中日ホール&カンファレンス(名古屋市)で、愛知県が主催するイノベーション創出を目指した4事業の合同成果発表会『AICHI INNOVATION CHALLENGE』が開かれた。このイベントでは、『AICHI MATCHING 2024』『愛知自動車サプライヤーBUSINESS CREATION 2024』『TECH MEETS』『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』の4つのプログラムから生まれた成果が披露された。

イベント当日は、各プログラムの成果発表に加え、基調講演や登壇企業との面談ができるブース出展、合同交流会も実施され、スタートアップ・エコシステムの発展や地域連携、オープンイノベーションに関心を持つ多くの来場者で賑わった。

本記事では、そのうちの【あいちデジタルアイランドプロジェクト『TECH MEETS』】の成果発表会の様子をお伝えする。中部国際空港島と周辺エリアをフィールドに、どのようなテクノロジーが試されたのか、その成果に注目してほしい。

【オープニング】 中部国際空港島及び周辺エリアをフィールドに、ニーズ企業とシーズ企業の共創で先端デジタル技術を実装する!

最初に主催者である愛知県庁の松岡氏が登壇し、『あいちデジタルアイランドプロジェクト』の目的を説明した。松岡氏は、このプロジェクトが中部国際空港島及び周辺エリアをオープンイノベーションフィールドに位置づけ、2030年に普及が見込まれる近未来の事業やサービスを先行的に実用化することを目指していると語った。

今年度は、生体認証システムや人流データなどを活用した実証実験が行われた。また、2025年度も企業共創による実証実験やフィールド活用の拡大を図る方針が示された。

▲愛知県 産業振興課 デジタル産業グループ 松岡徹 氏

続いて、本プロジェクトの一環である『TECH MEETS』の運営を担当する株式会社eiiconの上原和也が登壇し、プログラムの概要を説明した。

▲株式会社eiicon 地域戦略事業本部 東海支社 東海支援1G Account Executive/Consultant 上原和也

『TECH MEETS』は、中部国際空港島とその周辺にある企業や施設等(ニーズ企業)と、先進的なデジタル技術を持つテック企業やスタートアップ(シーズ企業)が連携し、新たな事業やサービスの実装を目指す取り組みだ。今年度は、9社のニーズ企業(※)が参画してシーズ企業を募った。その結果、10件の共創プロジェクトが誕生し、計画フェーズと開発・実証フェーズを経て、今日の成果発表会に至ったことを紹介した。

※『TECH MEETS』に参画した9つのニーズ企業・施設は下記の通り。

愛知国際会議展示場株式会社/イオンモール常滑・株式会社イオン銀行/ANA中部空港株式会社、中部国際空港株式会社/常滑市(観光戦略課、常滑市民病院)/株式会社名鉄グランドホテル(中部国際空港セントレアホテル)/株式会社名鉄生活創研/株式会社矢場とん

【成果発表ピッチ】 2024年度『TECH MEETS』から生まれた10件の共創プロジェクトが成果を公開!

プログラムの概要説明が終わった後、今年度の『TECH MEETS』に参加した10チームが実証実験の成果を発表した。ここからは、そのピッチ内容を紹介する。

【1】イオンモール常滑・株式会社イオン銀行 × DXYZ株式会社

発表タイトル/「顔ダケで、世界がつながる。」顔認証IDプラットフォームFreeiD

イオンモール常滑とイオン銀行は、顔認証IDプラットフォーム『FreeiD』を展開するDXYZと協力し、イオンモール常滑で顔認証決済『FreeiD Pay』の実証実験を行った。利用者は顔をかざすだけで買い物ができる仕組みだ。

6日間の実証期間では、346名が『FreeiD Pay』を利用。決済回数は1,173回で、決済金額は合計348万円に達した。20代から60代まで幅広い年齢層に利用され、「カードやスマホ決済より楽だ」といった声が多く寄せられた。また、全体の65%が「財布の紐が緩んだ」と回答し、客単価の向上につながる可能性も示唆された。

このほか、顔認証でポイントを獲得できる『FreeiD Point』の実証実験も実施。利用者の99%が「便利」と答え、店舗側からの評価も高かったという。今後は入退場などへの活用も視野に入れ、「顔ダケで、つながる世界」をともに構築したいと呼びかけた。

【2】常滑市 観光戦略課 × 株式会社ファーストローンチ

発表タイトル/「AIトコタン」で、世界とつながり、愛される常滑に!

空港島に隣接する常滑市役所の観光戦略課は、アバターや生成AIの開発を得意とするファーストローンチと協力し、「個々の来訪者に最適化した観光案内」をテーマに実証実験を行った。

この取り組みでは、常滑市のマスコットキャラクター「トコタン」を3Dアバター化し、AI技術を活用して観光案内を行う仕組みを検証。常滑駅前にAIトコタンを映し出すデジタル看板を設置し、観光客の反応を観察した。その結果、AIトコタンが観光客の一次対応を代行できること、さらに8割以上の質問に対して回答できることが確認され、観光案内スタッフの負担軽減につながる可能性が示された。

今後は、プロモーションを通じた認知拡大や会話の精度向上を進め、観光客が気軽に情報を得られる環境を整えていく。発表会場にはリアル「トコタン」も登場し、和やかな雰囲気のなか発表は締めくくられた。

【3】常滑市民病院 × 株式会社Eyes, JAPAN

発表タイトル/AIを活用した診療記録自動作成システム

空港島に隣接する常滑市民病院では、人材不足が深刻な課題となっている。これに対処するため、医療業界におけるIT・AI開発などに強みを持つEyes, JAPANと協力し、問診記録を自動で書き起こす実証実験を行った。

具体的には、医師が患者と行う問診の会話をAIが自動でテキスト化し、話者を識別して分ける。その後、SOAP形式に要約し、最終的に院内システムのカルテにQRコードで転記する仕組みだ。これにより、医師の負担軽減と業務効率化を目指している。

実証実験に参加した医師からは、「要約は活用できる内容だった」「取り込み方法を簡略化してほしい」といった声が寄せられた。今後はこれらのフィードバックをもとに、さらに精度向上を目指し改善を続ける方針。医師が少しでも楽になるシステムを提供し、社会課題の解決につなげたいという意気込みも伝えられた。

【4】株式会社矢場とん × 株式会社地元カンパニー

発表タイトル/「あと配土産」でもっと楽しく!もっと便利に!

矢場とんは、「看板商品の味噌カツは冷凍商品のため持ち帰りが難しく、荷物の増加や保冷時間の制約による売り逃しが多く発生している」といった課題を抱えていた。そこで、地元の特産品を全国に広めることを目指すIT企業、地元カンパニーと共同で「あと配土産」の実証実験に取り組んだ。

「あと配土産」の仕組みは、まず店舗で商品を模したミニギフト(ミニチュア)を販売し、購入者がそれを渡したい相手に贈るというもの。受取人は、ミニギフトに記載されたQRコードからアクセスし、住所を登録することで実物のお土産が自宅に届く仕組みだ。

このミニギフトは、2025年3月から矢場とんの中部国際空港店で販売を開始し、現在も継続中。今後はさらに顧客データを分析し、POPの改善やオペレーションの最適化などを行う予定だ。さらに、矢場とん全店舗での展開や、愛知県の他の特産品への拡大も目指している。発表時には矢場とんのマスコットキャラクター「ぶーちゃん」も応援に駆けつけ、会場を盛りあげた。

【5】中部国際空港株式会社 × 富士通Japan株式会社

発表タイトル/既存カメラ映像を活用した不審行動検知AIの実現可能性検証

中部国際空港は、今後ますます人材確保が難しくなることを見越し、富士通Japanと共同で空港警備の監視業務を省力化する取り組みを実施した。

具体的には、富士通JapanのAIを使って防犯カメラ映像を解析し、不審行動を検知するサービスを活用。これまではオペレーターが防犯カメラの映像を24時間監視していたが、まずAIが映像を解析し、不審な事象が検知された際のみ、オペレーターが対応する形を試した。

この実験で検知対象としたのは、不審物の置き去り、転倒や暴力行為、危険行為、行為対象者のトラッキング、特定エリアへの侵入など。その結果、一定の検知に成功したという。今後は精度向上を進めるとともに、実装に向けたシステム環境の整備や運用方法を検討し、導入へとつなげていきたい考えだ。

【6】Aichi Sky Expo × 株式会社センサーズ・アンド・ワークス

発表タイトル/人流デジタル化によって「3方よし」を実現するDXソリューション

中部国際空港に直結し、国内最大級の面積を誇る国際展示場『Aichi Sky Expo』は、センサーズ・アンド・ワークスと協力して、人流データの取得、分析、活用に取り組んだ。

人流データを取得するため、展示場内の3カ所にセンサーを設置。画像認識技術と920MHz帯の無線技術を活用し、人流を計測した。期間中、2回のイベントで人流計測を実施したところ、98%以上の捕捉率を達成し、大規模なイベントでも安定した無線通信が行えることも確認できた。

さらに、入退場者数などのデータをリアルタイムで表示するダッシュボードを用意し、会場内の交通誘導などに役立てた。また、取得したデータを分析し、満足度や快適度などの指標として可視化。こうした人流データを活用することで、デジタルアイランドの実現を目指していきたいと語った。

【7】中部国際空港セントレアホテル × iPresence株式会社

発表タイトル/AI会話可能なホテルフロントロボットの利活用

空港島内にある中部国際空港セントレアホテルでは、週末などの混雑時に受付のための長い行列ができ、長時間の待機が発生していることが課題だ。そこで、iPresenceのAI会話ロボットを活用し、チェックイン時間の短縮を目指す取り組みが行われた。

プログラム期間中、ホテルのフロントにロボットを設置し、待機列の整理や館内案内、チェックアウトの説明、双方向での対話などを行った。この実証実験により、スタッフの心理的負担の軽減や、ロボットに任せる業務とそうでない業務の線引きが明確になるなど、いくつかの効果が得られた。

実験を通じて、ロボットはスタッフの代替ではなく、補助役として活用する方向性が見えてきたそうだ。今後は、チェックイン機やスタッフとの連携を強化し、さらなるロボット活用の可能性を検討していく予定だという。

【8】株式会社名鉄生活創研 × 株式会社Koeeru

発表タイトル/空港コンビニをタッチポイントとした訪日外国人のVOC分析とグローバルVOCプラットフォーム技術を活用したトレンド予測

名鉄生活創研は、中部国際空港内でファミリーマートを運営している。今回はこの店舗で、訪日外国人の購買行動を調査する活動を始めた。

具体的には、顧客の声に特化したサービスを提供するKoeeruと協力し、店舗でのVOC(顧客の声)の収集、顧客の声のデータプラットフォームの構築、店舗スタッフへの情報の見える化を行った。さらに、Koeeruのグローバルリサーチを活用し、旅行前後の声も集めた。

VOC調査から、「どこに商品があるかわからない」「言語対応がほしい」といった声が多く寄せられたため、ピクトグラムを使った看板や売り場マップを設置。また、人気アイテムの発注量を増やしたり、POPでの訴求を強化したりした。その結果、NPS(ネットプロモータースコア)の向上も確認できた。今後は、愛知県独自の訪日外国人VOCプラットフォームの構築も目指したいと語った。

【9】株式会社矢場とん × 株式会社ファーストローンチ

発表タイトル/「AIぶーちゃん」で地元・世界に愛される新しい矢場とんへ

みそかつ専門店の矢場とんと、アバターと生成AIの開発を得意とするファーストローンチは、矢場とんのマスコットキャラクター「ぶーちゃん」を使った店舗運営のエンタメ化に取り組んだ。解決したい課題は、人気店ゆえの待ち時間のストレスと従業員サービスの低下だ。

解決策として、待ち時間中にデジタル看板に映し出された「AIぶーちゃん」と会話を楽しめるシステムを開発し、試験導入した。その結果、2週間の実証実験期間中に674人が利用し、合計5680回の会話が記録された。利用者からは「メニューのオススメを聞けて楽しい」「ぶーちゃんがかわいい」といった感想が寄せられた。

また、「待ち伝」という順番待ち管理システムを導入し、待機中に注文を受け付ける仕組みを作ることで、従業員の負担軽減も図った。今後は実証実験で得られた課題を解消し、導入店舗数を増やすとともに、飲食業界全体の課題解決にもつなげていきたい考えだ。

【10】ANA中部空港株式会社 × AItoAir株式会社

発表タイトル/AIカメラでの手荷物管理業務の効率化

ANA中部空港は、中部国際空港で航空機運航に関する業務を総合的に担当している。同社は今後の旅客数の増加を見越し、エッジAI開発に強みを持つAItoAirとともに、アナログ業務の効率化に取り組んだ。

今回開発したシステムは2つある。1つ目は「手荷物タグの読み取り」で、スマホをかざすだけで行き先や便名を読み取ってテキスト化するアプリ。2つ目は「手荷物容積の推定」で、画像解析AIを用いてベルトコンベア上の手荷物の容積を推定するシステムだ。

期間中の実証実験で運用面の課題を把握したことから、それらに対応しつつ、本格的なシステム試験運用に向けて取り組んでいく予定だ。将来的には、データ活用によるさらなる空港ハンドリングひいては旅客サービスの向上を目指すとともに、他空港への展開も狙っていく考えも示した。

取材後記

中部国際空港とその周辺をオープンイノベーションフィールドとして活用する本プログラム。愛知県の玄関口であるこのエリアに先端技術が取り入れられることで、地域の魅力やブランド力がどのように変化していくのか、今後の展開が楽しみだ。航空・観光・医療・外食など、さまざまな分野で技術革新が進めば、空港周辺がイノベーションの発信拠点となる可能性もある。その第一歩となるのが『TECH MEETS』だと言える。各企業が持つ技術がどのように融合し、新たな価値を生み出していくのか、今後も注視していきたい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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  • 木元貴章

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