
NFTで地域文化と観光体験を融合 JTB・戸田建設・富士通が連携し、観光DXの新モデルの実証実験を開始
福井県越前市で、観光とデジタル技術を掛け合わせた新たな取り組みが始まる。戸田建設株式会社、株式会社JTB、富士通株式会社の3社は、訪日外国人観光客の誘客拡大を目的とした観光DXプロジェクト「ECHIZENクエスト」の実証実験を、2025年11月から翌年1月末まで実施する。
北陸新幹線の延伸によりアクセス性が向上した越前市では、今後の観光需要増加が見込まれている。3社はこの機を捉え、地域の伝統文化や職人技をデジタル技術で再定義し、観光体験の質を向上させることで、地域経済の循環と関係人口の拡大を目指す。

「ECHIZENクエスト」とは――NFTで可視化される“体験の証”
プロジェクトの名称「ECHIZENクエスト」は、「探求」や「冒険」を意味する“Quest”に由来する。参加者は越前市内を巡り、越前和紙、打刃物、漆器、焼物、箪笥といった伝統工芸や眼鏡、繊維などのモノづくり文化を体験。その各スポットで、越前市ゆかりの紫式部をモチーフにしたNFTが発行される。
このNFTは単なるデジタルコレクションではなく、観光体験の証明や地域支援のデジタル化を担う。将来的には、NFTを地域内での買い物や特典利用に活用できる「デジタル通貨(ヴィジュアルコイン)」として機能させる構想もある。NFT保有者限定の体験メニューや割引といった仕組みも検討中だ。
体験を重ねながらNFTを集めていく過程は、まるで街を舞台にした冒険ゲームのよう。観光客が遊びながら地域文化への理解と愛着を深める“観光DX”の新しい形だ。
3社の共創体制――まちづくりから技術までを統合
この取り組みは、3社それぞれの強みを生かした共創体制となっている。
戸田建設:スマートシティ基盤整備および全体統括を担当。越前たけふ駅周辺のまちづくりを軸に、地域資源を活かした観光基盤を構築。
JTB:観光商品の企画・造成、プロモーションを担う。自社の「GLOCAL Sustainability Project(GSP)」を通じ、地域課題の解決と新規事業創出を推進。
富士通:NFT発行やヴィジュアルコイン技術を提供。ブロックチェーン技術を応用し、改ざん不可能な体験証明・電子決済の仕組みを支える。
これまでにJTBと富士通は、訪日外国人富裕層向けの観光DX研究を進めており、今回の実証はその延長線上に位置づけられる。3社の連携により、地域観光の高付加価値化に向けた新たな枠組みが整いつつある。
デジタル技術で文化を未来へ――他地域展開も視野に
NFTやデジタル通貨を活用する「ECHIZENクエスト」は、単なる観光促進施策ではない。デジタルを通じて地域文化を保護し、持続可能な観光モデルを構築することが狙いだ。
3社は今後、越前市での実証結果を踏まえ、他地域への横展開を検討。観光体験の「証」としてNFTを活用する仕組みを、地方創生や文化保全の新しいモデルケースとして確立していく。デジタルの力で地域の伝統と未来をつなぐ――「ECHIZENクエスト」は、観光がもたらす価値を再定義する第一歩となりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)