
製造業向けにリモート点検のIoT・AIソリューションを提供するLiLz、約4.3億円を調達 五感点検ソリューションの研究開発を本格化
プラントや製鉄所といった製造業向けに、リモート点検のIoT・AIソリューションを提供するLiLz株式会社は、総額約4.3億円の資金調達を実施した。出資を行ったのは、既存株主に加え、三菱UFJキャピタル、三井住友海上キャピタル、YMFGキャピタル、鹿児島ディベロップメント、BORベンチャーファンド2号(琉球キャピタル・琉球銀行)、東銀リースの各社だ。これにより、累計調達額は非公開ながら、次のステージに向けた飛躍的な布石が打たれた。
調達資金は、音やにおいといった視覚以外の要素を検知する「五感点検ソリューション」の研究開発に投じられる予定だ。従来、LiLzは完全無線型のIoTカメラ「LiLz Gauge」などを通じて、現場の“目視”点検をリモート化し、省力化に貢献してきたが、現場では依然として「音」「におい」「熱」などの五感を活用した確認作業が多く残っている。老朽化が進むインフラ施設や化学プラントでは、事故リスクの高まりもあり、予防保全の必要性が増している。LiLzは、こうした点検業務の“人による五感”をテクノロジーで置き換えることに挑戦している。
投資家が注目する“無線・防爆・多感覚”の技術力
今回の出資ラウンドに参画した投資家からも、LiLzの技術と市場成長性に高い期待が寄せられている。
三菱UFJキャピタルの佐藤栄司氏は「電源・ネットワーク工事不要という特長は、グローバル展開にも優位性がある」とし、視覚点検にとどまらない五感監視サービスへの発展性を評価。
三井住友海上キャピタルの髙木俊吾氏は「高温・高所といった危険を伴う巡回点検の課題に、LiLzの無線型監視カメラは抜本的な解決をもたらす」と語る。特に“即日導入が可能で最長3年稼働”という特性は、現場にとって極めて魅力的だ。
また、YMFGキャピタルの岩崎啓太氏は、防爆対応が整ったことで化学プラントへの導入が現実的となり、周南・北九州などでの展開を見据える。鹿児島ディベロップメントの宮之原拓氏は「人手不足の深刻な現場に、LiLzのソリューションは現実的かつ安全性を飛躍的に高める存在」と述べるなど、実運用に即した期待が強い。
沖縄県からグローバル展開へ
LiLzは2017年設立。沖縄県を拠点に、IoT・AIによる「現場の遠隔監視・点検」の領域で実績を重ねてきた。今回の調達を機に、海外展開も視野に入れた体制強化を図るとともに、製品開発・販売促進を加速する構えだ。
現在は、防爆対応モデルや音・におい検知といった五感点検モデルの開発に注力しており、複数ポジションでの採用活動も本格化している。
LiLzの目指す未来は、単なる“作業の効率化”ではない。人の感覚に頼ることが常識だった現場を、テクノロジーで再定義し、より安全でスマートな産業社会へと進化させる。その挑戦は、沖縄から世界へと広がろうとしている。
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(TOMORUBA編集部)