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「がんと共に生きる時代」の新たな価値創造を目指す『HOPE-Acceleration』第2期募集開始!「衣・食・住」、「就労/就学」、「意思の尊重」をテーマに新たな価値創造へ――プログラム参加2社が実感するプログラムのメリットを紐解く

「がんと共に生きる時代」の新たな価値創造を目指す『HOPE-Acceleration』第2期募集開始!「衣・食・住」、「就労/就学」、「意思の尊重」をテーマに新たな価値創造へ――プログラム参加2社が実感するプログラムのメリットを紐解く

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創業から300余年、「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という熱い想いを胸に、革新的な医薬品を届け続けてきた小野薬品工業(以下、小野薬品)。新薬の開発にとどまらず、一人ひとりの患者さんとそのご家族、そして医療従事者が病気と戦う様々な場面に注目し、ニーズにあった価値を提供することで、より良い生活への道を切り開くための挑戦を続けてきた。

そのような同社が2024年よりスタートさせたのが、オープンイノベーション型事業創造プログラム『HOPE-Acceleration』。本プログラムでは、がん患者さんが自分らしい生活を送り、周囲との信頼関係を大切にしながら生活できる環境の構築を目指している。従来の手法にとらわれず、がん患者さんががんと共生するための新しい価値を創造し、事業へとつなげることが狙いだ。

2期目となる『HOPE-Acceleration2025』は、「衣・食・住」「就労/就学」「意思の尊重」に関わる悩みの解決策を幅広く募集する。採択企業は、インキュベーション期間を経て、8月末の最終審査会を迎える。(※募集締切:3/9(日))

今回TOMORUBAでは、プログラム参加企業の募集開始に際し、主催者である小野薬品で新規事業開発を推進するBX推進部 部長 藤山昌彦 氏、および昨年1期目の参加企業(2チーム)にインタビューを実施。本プログラムの魅力を探った。

小野薬品・藤山氏インタビュー――がん患者さんの多様な悩みに対応するサービス群の開発を目指すプログラム

――昨年に続き、オープンイノベーション型事業創造プログラム『HOPE-Acceleration』を開催されます。改めて本プログラムに取り組む背景や狙いについてお聞かせください。

小野薬品・藤山氏: 新規事業を継続的に生み出すことが、このプログラムの大きな狙いで、今回もがん領域をテーマにしています。現在、私たちは『michiteku』という患者さん向けの情報提供サービスを展開していますが、このサービスの利用者をはじめとした患者さんたちに向けて、より多様な価値を提供し、様々な課題を解決していくことを目指しています。患者さんは本当に多くの課題をお持ちですから、一つ二つのサービスでは十分ではありません。患者さんの長い人生において生じる課題を、できる限り多く解決していきたいと思っています。

昨年の『HOPE-Acceleration』のパートナー企業とは、排尿障害や外見ケアに関する取り組みを進めていますし、別の活動では患者さんの体力増進に関連するテーマも扱っています。このような解決策をさらに増やしたいとの考えから、今年も同様のプログラムを開催することにしました。自分たちだけでゼロから事業を立ち上げる活動も続けていますが、リソースが限られていますし、事業実現には時間がかかります。外部企業との連携を積極的に進め、迅速にサービスをリリースしていきたいと思っています。

▲小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 部長 藤山昌彦 氏

――本プログラムを通じて御社と共創することで、どのようなメリットを得られそうですか。御社側から提供できるリソースやアセットについてお聞かせください。

小野薬品・藤山氏: 患者さんや医療機関にサービスを広げるための橋渡しができると考えています。その理由は三つあります。1点目は「患者さんに対する理解」です。医療機関向けに医薬品を提供してきた当社には、患者さんに対する理解が蓄積されています。例えば、患者さんからヒアリングする際、知見のない企業が重篤な疾患を持つ方に話を聞くのは難しいと思います。しかし、私たちはそうした経験を多く積んでおり、配慮すべき点を理解しています。

2点目は「患者さん、医療現場などとの接点」です。サービスを患者さんに届けようとする際、情報の信頼性がとても重要です。患者さんにとって信頼できるルートからサービスを紹介することが重要ですが、当社とならKOL(Key Opinion Leader/医療業界で多方面に影響力をもつ医師等)と連携して、新サービスのメリットを伝えるルートを構築しやすいと思います。KOLや医療従事者とのエビデンス取得や、学会発表も検討の視野に入れています。

3点目は「医療業界や法規制の理解」です。医療に近い領域でサービスを展開する際、医療行為との線引きが難しいことがあります。どういう訴求で、どういうサービスなら提供が可能なのか、業界理解がなければ怖くて踏み込めないことも多いでしょう。当社ならそうした点でのサポートもできます。

――費用面などのサポートについては、いかがでしょうか。

小野薬品・藤山氏: PoC(Proof of Concept:概念実証)に必要な費用の支援も行っています。共創パートナー企業には製品やサービス、技術の提供を期待していますが、それが患者さんに有益かどうか、また、病院を通じてどのように提供するかの検証が必要です。その費用は当社が負担し、当社内の伴走者と一緒に検証を進める体制を整えています。

――共創パートナー企業にとって非常に価値のあるプログラムだと感じましたが、1期目の結果を踏まえて改善や強化したポイントはあるのでしょうか。

小野薬品・藤山氏: 昨年は大まかにテーマを提示しましたが、実際にプログラムを運営する中で、具体的な課題に対して共創パートナー企業の技術やサービスの使い方を議論する方が、事業構想が進みやすいことが分かりました。そこで今回は、患者さんへのヒアリングやサービス検証を通じて得た具体的な課題を提示する方針に変えました。これにより、共創パートナー企業が自社の技術やサービスを、どの課題に活用できるかをイメージしやすくなると考えています。

――募集ページでは「がん患者さんの受ける痛みJOURNEY」を提示されていますが、この意図についても教えてください。

小野薬品・藤山氏: がん患者さんは、告知後に治療を受け、その後、普段の生活に戻る方もいれば、再発や手術後の体調不良を経験する方もおられます。長期にわたり様々な変遷を辿りながら生活していかれるのですね。その間に、ご家族や仕事の状況も変わるため、ピンポイントで課題を解決したら終わりというわけではありません。治療、副作用、リハビリ、食事、復職など、課題は次々に生まれ切れ目なく続きます。これを「JOURNEY」という形で表現しています。

単なる課題のリストではなく、患者さんの人生の流れに沿った課題の提示を行いたいと考え、このような提示方法をしています。プログラムへの応募を検討される企業には「自社のプロダクトなら、これらを解決できそうだ」とイメージしてもらえると思いますし、切れ目のない支援を行いたいという私たちの意思表示でもあります。

――『HOPE-Acceleration2025』では、どのようなゴールを目指されていますか。また、応募企業に向けてメッセージをお願いします。

小野薬品・藤山氏: がん患者さんをトータルでサポートできる事業を構築したいと考えています。一つひとつの事業は小さなものかもしれません。しかし、それらがラインナップとして連なることで、一人の患者さんの多様な悩みに次々と対応できるような事業へと育てていきたいです。

プログラムへの応募を検討される企業のみなさんは、世の中の課題を解決したいという思いで新しい事業や難しい事業に取り組んでおられると思いますが、この点には強く共感しています。私たちと組むことで、患者さんや病気で苦しんでいる方、ご家族を一緒に支援できると考えています。ぜひ、私たちとともに歩んでいただける方との出会いに期待しています。

――ここからは、昨年の『HOPE-Acceleration』に参加し、現在も継続して新規事業の検証を進めている2つの共創チーム(Lasiina×小野薬品、ビューティースマイル×小野薬品)のインタビュー内容をお届けする。

【1】Lasiina × 小野薬品――排尿障害の改善に向けて共創開始、KOL等へのインタビューを通じてプロダクトの価値を再確認

――まず、共創に取り組むことになった背景からお伺いします。小野薬品 BX推進部でLasiinaとの共創に取り組んでいる高垣さんにお聞きしたいのですが、Lasiinaの事業内容に興味を持ったきっかけから教えてください。

小野薬品・高垣氏: がん患者さんの中には排尿障害を抱える方が多くいらっしゃいます。尿漏れ対策として、尿パッドなど漏れたら対処できる製品はすでに存在するのですが、それ以外に関してはイノベーションがこれから本格化するという段階です。Lasiinaさんの技術は、尿漏れの状態を可視化でき、改善効果を確認できるという二つの機能を備えているので、困っている方に適切なソリューションになるのではと考え、興味を持ちました。

▲小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 高垣陽子 氏

――Lasiinaの野正さんは、どのような経緯で「尿漏れセンサーデバイス」を開発されたのでしょうか。また、『HOPE-Acceleration』に応募しようと考えた理由は?

Lasiina・野正氏: 私は元々富士通で働いており、在籍時に日本製紙クレシアさんと共同でこのサービスを開発しました。約4年間、オープンイノベーションのような形で一緒に研究開発を進め、ようやく製品化の目途が立った頃、「利用者に響く形で社会に広げる方法を、早期に考える必要がある」と思ったのです。そこで、サービスが完成した後の出口戦略を模索し始めました。

フレイル予防の観点から自治体との連携を探ったり、旅行促進を目的とした旅行代理店との協業を模索したり、泌尿器科への導入も視野に入れアプローチをする中で、本プログラムのことを知りました。

▲Lasiina株式会社 代表取締役 野正竜太郎 氏

――両社で目指している方向性と、それに向けて実施している具体的な取り組みについて教えてください。

小野薬品・高垣氏: 排尿障害は非常に相談しづらい問題ですし、退院後は医療機関からのフォローが十分に行き届かないこともあります。そこを上手くとらえるソリューション、および患者さんと継続的に貢献できるスキームを作りたいと考え、一緒に取り組んでいます。小野薬品としては、患者さんにより豊かに過ごしていただけるよう、医薬品以外の事業領域でも拡大を目指しています。

Lasiina・野正氏: 小野薬品さんとは当社のサービス完成後、これを利用して疾患の改善に取り組みたいと思っています。私たちのプロダクトは、尿量を可視化するものなので不安の解消はできますが、症状の改善はできません。「どう改善していけばいいのか」を小野薬品さんと共に考えていきたいです。

改善には、患者さんの症状やニーズの把握、医療機関の支援方法など、広い視点での対応が必要ですから、これらの実装を一緒に進めていく予定です。現在はその準備段階として、当社の試作機を使った着用テストや、利用者の行動変容を調べようとしています。

――『HOPE-Acceleration』に参加してみての感想はいかがですか。2024年5月末に「事業共創ワークショップ」で共創事業の骨子を練り、8月下旬には「最終審査会」を行うという短期間での展開でしたが、そのスピード感についての所感も含めてお聞かせください。

Lasiina・野正氏: 短期間で進めるスピード感に関しては、非常にありがたかったと感じています。というのも、当社のようなスタートアップは時間が勝負だからです。迅速に進めなければ資金が枯渇するため、スピードを意識して決められた期間で確実に意思決定することが必須です。その観点では、到達点が明確であり短期間で進められるこのプログラムは、とても良かったと思いますね。

小野薬品・高垣氏: スタートアップのスピード感の尊重は、プログラム設計段階から意識してきたことの一つです。迅速に進められるように当社では、患者さんや医療機関へのインタビューを素早く設定するといった対応を取ってきました。

また、私自身もスタートアップ出身なのですが、アジャイル的にプロジェクトを進めることを意識して取り組みました。期間を1週間で区切り、各週の目標を設定し、振り返りを行い、次のアクションを考えるというサイクルを回しました。このスタイルに共創パートナー企業の皆さんが協力してくださったからこそ、短期間で事業計画の策定と顧客ニーズの把握までを達成できたと思います。

――短期間で迅速にプロジェクトを進めるには、両社の目線合わせも欠かせません。工夫されたことはありますか。

小野薬品・高垣氏: 月に1回はオフラインでメンバー全員が集まり、2時間程度で振り返りと次の方針決めを行い、向かう先を再確認してドキュメント化するという方法を取りました。また、円滑にコミュニケーションが取れるよう、Slack、Miro、Notion、Boxといったデジタルツールを全般的に導入しています。オンライン・オフラインともにオープンなコミュニケーションを行えるようセットアップしていますね。

――プログラム期間中に実施された「事業共創ワークショップ」は、いかがでしたか。

Lasiina・野正氏: 非常に密度の濃いワークショップで、事業共創に本気で取り組もうとする姿勢が伝わってきました。プレゼンには小野薬品の代表取締役副社長(辻󠄀中聡浩氏)も出席され、トップ層が明確にコミットしていることにも驚きました。

大企業の思考・承認ロジックはある程度理解していますが、「とりあえず現場で何か新しいことをやっておいて」という丸投げスタンスがほとんどです。しかし、小野薬品さんはトップ、中間の意思決定者、高垣さんのようなスタッフの方まで全員のベクトルがしっかり揃って進めており、素晴らしいと感じましたね。

――今回のプログラムを通じて得られたものの中で、特に良かったと感じるのは何ですか?

Lasiina・野正氏: 得られたものとして最も大きかったのは、医療業界への導入という観点で”深掘り”ができたことです。元々、日本製紙クレシアさんとは一般消費者向けに量販店経由で販売する想定で、困っている人の存在はざっくり把握していても、特にがん患者さん・医療現場などの具体的な課題やニーズまでは理解できていませんでした。しかし、プログラム期間中のインタビューを通じて、見込みユーザーであるがん患者さんの解像度を高めることができ、新たな知見をたくさん得ることができました。

また、病院の先生方は一般企業である当社にとって遠い存在で、どのように接触すればよいかも分かりませんでしたし、話を聞きに行こうという概念もありませんでした。しかし、小野薬品さんの支援でKOLの方々との面談が実現し、貴重な意見を伺えました。その中で、私たちのサービスが本当に役立つことを再確認でき、大きな自信にもつながっています。

医療の現場で役立つサービスとなると、要求されるレベルは確実に上がりますが、高いハードルを設定してサービスを研ぎ澄ましていくことは意義のある挑戦です。このような支援を得られたことに感謝しています。

小野薬品・高垣氏: 今、野正さんがおっしゃった内容を価値と感じていただけたことは、とても嬉しく思います。医療機関や患者さんから直接意見を聞く機会の提供や、医療機関側とコミュニケーションを深めるための聞き方や患者さんに対して気を遣うべきポイントなどのインタビュー設計において、当社の強みをうまく還元できたのではないかと感じました。

お話いただいたこと以外では、キックオフ、中間報告、最終審査の3回にわたり、様々な角度からフィードバックをもらえる仕組みにしています。これらが、事業内容をさらにブラッシュアップする機会となっていれば嬉しいですね。

――最後に、本プログラムへの参加を検討している企業に向けて、一言メッセージをお願いします。

Lasiina・野正氏: 今の時代、自社の優れた技術だけでは新しいものは生まれず、他社との掛け合わせが重要でその領域にイノベーションが起こるのです。そのためには、オープンイノベーションに取り組む必要があるのですが、誰と組むかが大切なポイントだと考えています。小野薬品さんの場合は、共創パートナー企業を尊重し、フェアな立場でコミットして進めてくださいます。今回も様々なテーマが提示されていますので、ぜひ本プログラムに参加してみてはどうでしょうか。

【2】ビューティースマイル × 小野薬品――がん患者さんの外見ケア領域で事業開発、複数の生の声から課題が明確に

――まず、小野薬品 BX推進部でビューティースマイルとの共創に取り組んでいる中島さんにお聞きしたいのですが、どのような理由からビューティースマイルの事業内容に関心を持たれたのでしょうか。

小野薬品・中島氏: このプログラムはがん領域に特化しており、その中でもがん治療による副作用が、患者さんに大きな精神的苦痛を与えている現状を、何とかして解決したいと考えておりました。一般的な対策として、苦痛の緩和や除去という手段になりがちですが、私たちは「そもそもなぜ苦痛と感じるのか」という患者さんの真の欲求を突き詰め、それに手を差し伸べるサービスを生み出すことを目指しました。

そうした中、プログラムを通じていただいたビューティースマイルさんの提案が、苦痛の緩和や除去ではなく、患者さんの「オシャレを続けたい」という本質的な欲求により近づくアプローチであったため、魅力に感じました。

▲小野薬品工業株式会社 経営戦略本部 BX推進部 中島慶 氏

――ビューティースマイルの髙橋さんは、どのような背景から『HOPE-Acceleration』に応募されたのですか。

ビューティースマイル・髙橋氏: 応募した理由は、当社の「ネイルドネーション」が、がん患者さんや障がいを持つ方、爪にコンプレックスのある方を対象にしたサービスだったからです。

このサービスは2024年2月に立ち上げたばかりで、これから活動を広げていくタイミングでした。そのようなタイミングで、がん患者さんを対象としたこのプログラムを知り、応募を決めました。こうしたプログラムへの参加は初めてでしたが、金融機関の方から「応募してみたら」と勧められたこともあり、挑戦することにしたのです。

▲株式会社ビューティースマイル 代表取締役 髙橋繁世 氏

――両社が目指している方向性や、それに向けた具体的な取り組みについて教えてください。

小野薬品・中島氏: 治療の副作用により日常生活に支障をきたすほどの外見の変化が生じることがあります。代表的な例としては脱毛が知られていますが、それだけでなく、爪や肌など様々な場所に変化が生じます。これらの変化により、治療前には当たり前にできていたことができなくなったり、他人を頼らなければならなかったりする状況が生まれています。

こうした患者さんが苦しまれている状況を踏まえ、外見の変化に悩まれている方や、治療前だがこれから外見の変化が予想される方を対象に、ストレスなく日常生活を送れる解決策を提供したいと考えています。その解決策を、情報とモノの2つで提供する施策を、ビューティースマイルさんと一緒に検討しております。

ビューティースマイル・髙橋氏: 実はこのプログラムが始まった当初、私たちは爪にしか興味がなかったのです。しかし、がん患者さんのことを知れば知るほど、困っているのは爪だけではないことに気づきました。脱毛や肌荒れ、手荒れにも課題を感じておられ、ネイルチップ以外の支援も提供することに価値があると実感しました。そこで現在は、小野薬品さんと一緒に爪以外の部位のケアの可能性を調査しています。

――プログラムを通じて得られたものの中で、特に良かったと感じるのは何ですか?

ビューティースマイル・髙橋氏: 8月下旬の最終審査会までの期間中、たくさんのインタビューを一緒に取らせていただくことができました。そのインタビューを通じて、がん患者さんの気持ちや外見の変化を一緒に研究することができたと感じています。中小企業である当社が単独でアンケートやインタビューを依頼しても、がん患者さんから協力を得ることは困難ですが、製薬企業である小野薬品さんだからこそ、多くの方が応じてくださいました。この機会を得られたことは、非常に良かったと思っています。

――インタビューやアンケートはどのくらい実施されたのでしょうか。

ビューティースマイル・髙橋氏: 小野薬品さん経由では、がん患者さんのインタビュー9回とアンケート51名、ご家族・知人インタビューは4名とアンケート62名、医療従事者のインタビューは6回とアンケート11名を実施しました。毎週、誰かの声を聞いていましたね。

また、当社から直接アポイントを取ったものに関しては、大学病院で6名、市役所の医療福祉関連の担当者で3名です。「製薬企業と一緒にこんな取り組みを進めているので意見を聞かせてください」と伝えると、アポイントを取得しやすかった印象です。

インタビュー以外では、小野薬品さんの専門的な知見をお借りできたことも良かったですね。特に医学的知見やエビデンスに基づき、安全ながん患者さん向けのサービスを設計できている点は大変心強いです。

――なるほど。御社は浜松市の企業なので、小野薬品さんとはオンラインでのコミュニケーションが中心だったと思います。意思疎通や目線合わせはスムーズに進みましたか。

ビューティースマイル・髙橋氏: 週に2、3回はZoomで話していたため、コミュニケーションには全く問題を感じませんでした。最終審査会までは、自社の社員よりも小野薬品の中島さんたちと話す機会のほうが多かったほどです。みなさんに対して愛着が湧いてしまうほどでした(笑)

小野薬品・中島氏: 私もコミュニケーションの取りにくさは全く感じませんでした。オンラインでも問題なく進むことに驚きましたね。ミーティングの回数を多く設定したことが良かったのかもしれません。

ビューティースマイル・髙橋氏: ミーティングの回数もそうですが、Slackで「こんな動きをしています」という進捗報告をできるだけこまめに行うようにしていました。お互いの動きを頻度高く共有したことが、スムーズに進んだ理由かもしれないですね。

――中島さんから見て、共創するうえで役立ったと感じる小野薬品のアセット・リソースは?

小野薬品・中島氏: 市場の解像度を高めるために医療従事者や患者さんへのインタビューの場を設定することはもちろんですが、業界KOLの医療従事者に直接話を聞ける、一緒に議論し検討できる場を設けられることは業界に長くいる小野薬品ならではの貢献の仕方だと感じます。小野薬品のスタンスとして、自社アセットを活かせるか活かせないかより、患者さんファーストで、患者さんのために何を解決すべきかを深掘りすることに時間を使っています。結果的に、小野薬品のアセットが活用できる、というより、社会的な意義が大きい活動が多くなっていると思います。

――最後に、本プログラムへの参加を検討している企業に向けて、一言メッセージをお願いします。

ビューティースマイル・髙橋氏: まず、中島さんたちが非常に積極的に関わってくださり、一緒に取り組もうとする姿勢が強く伝わってきました。とても心地よく仕事が進められ、素晴らしいメンバーに恵まれたと感じています。

また、私たちは中小企業で立ち上げ段階にあるため、どうしても行き当たりばったりになりがちでした。「まず動いてみる」という進め方が主でしたが、小野薬品さんは大企業ですから、PoCを実施して検証する、アンケートで市場の存在を確認する、PoCでこのレベルに達していないと厳しいなど、しっかりとしたプロセスを踏んで進めていかれます。この過程を一緒に取り組むことで、とても勉強になりました。様々な観点で素晴らしい機会になると思うので、参加してみることをお勧めします。

取材後記

インタビューを通じて、本プログラムが参加企業に提供する価値の大きさを実感した。がん患者さんや医療従事者らとの接点を持ち、具体的なニーズを把握できるだけでなく、医療業界の法規制に対するサポートも充実している。また、物理的な距離を超えて共創プロジェクトを円滑に進める体制が整備され、小野薬品の伴走者による力強いサポートが大きな推進力となっている。このような環境があるからこそ、参加企業は短期間で成長できるのだろう。がん患者さんを支援したい企業にとって、このプログラムは非常に有益なチャンスになると強く感じた。

※『HOPE-Acceleration2025』の詳細についてはコチラをご覧ください。

小野薬品工業リバースピッチ/個別相談会 

HOPE-Accelerationー「がんと共に生きる時代」の新たな価値創造を目指して

2025年2月14日(金) 14:00~16:00(受付13:30~)@飯田橋

少しでもご関心のある方は、是非お気軽にご参加ください。

(アーカイブ動画も配信します、当日参加できない方もお申し込みをお願いします。)

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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