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わずか2カ月で実証、メディア取材も。山梨県初・オープンイノベーションプログラムの成果発表会に密着!

わずか2カ月で実証、メディア取材も。山梨県初・オープンイノベーションプログラムの成果発表会に密着!

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山梨県は、今年度から『STARTUP YAMANASHI OPEN INNOVATION PROGRAM』という、県内企業と全国のパートナー企業によるビジネス創出プログラムをスタートさせた。

そして、3月7日に山梨県立図書館で、このプログラムから生まれた4つの共創プロジェクトの進捗や今後の展望を発表する成果発表会を開催。このイベントには、プログラム参加者や関係者など多くの人が集まり、参加者たちの振り返りを聞くとともに、ネットワーキングを通じて意見交換なども行った。

今年度のプログラムには県内企業として、山梨放送、内藤ハウス、アルプス、メイコーの4社が名乗りをあげ、共創のテーマを提示してパートナー企業を募集した。1月には、ビジョンが一致したパートナー企業とともに、対面式のワークショップでビジネスの骨子を描き(※)、その後、わずか2カ月という短期間で社会実装に向けた準備を行った。その途中経過を発表する場が、今回の成果発表会だ。

――本記事では、4つの共創プロジェクトの内容を中心に、発表後に開催された参加者らによるトークセッションの様子をレポート。山梨県初となるオープンイノベーションプログラムから、どのような事業の芽が育まれたのか。ぜひ注目してほしい。

※関連記事:スポーツギフティング、真空乾燥、倉庫DX化、飲食店の省力化――山梨県内企業×スタートアップの共創ワークショップから生まれた4つの事業アイデアとは?

「県内企業と新たな価値を創造していく“共創”を力強く支援」――山梨県庁より挨拶

最初に、山梨県庁より清水氏が登壇。清水氏は、「スタートアップは本県発展のためのパートナーであると考え、スタートアップに対する支援はもとより、県内企業と新たな価値を創造していく共創についても力強く支援している」と話す。

今年度開催したオープンイノベーションプログラム『STARTUP YAMANASHI OPEN INNOVATION PROGRAM 2023』では、4社が共創パートナーを募集したが、「県内企業の抱える課題について、全国のスタートアップより非常に優れたアプローチ、アドバイス、アイデア等をいただいた」と述べ、各プロジェクトの今後の進展にも期待を寄せた。

▲山梨県 産業労働部 スタートアップ・経営支援課 課長 清水 信一 氏

続いて、山梨県庁で本オープンイノベーションプログラムを担当する森田氏が登壇し、山梨県がスタートアップ支援とオープンイノベーションに注力する理由について語った。森田氏は説明のなかで、日米の株式市場成長率推移を示しながら、「GAFAMを除いた株式の成長率は、日本とアメリカでほとんど変わらない」と指摘。アメリカは数十年前より、GAFAMのような新事業を積極的に育成してきたため、高成長を維持していると話す。そのうえで、「新事業に寛容な経済を、山梨から作りたい」と考え、スタートアップ支援を開始したと紹介した。

また、オープンイノベーションを推進する背景として、新事業リリースまでの期間を短縮する効果に言及。あるデータによると、クローズドイノベーションではリリースまで2~4年以上かかるのに対し、オープンイノベーションでは半年〜2年に短縮できると説明。そして、「効率的な新事業創出を山梨から始めたい」との方針から、オープンイノベーションに力を入れていると述べ、今後もこの事業を継続していく考えを示した。

▲山梨県 産業労働部 スタートアップ・経営支援課 主査 森田 考治 氏

ここからは、2023年度『STARTUP YAMANASHI OPEN INNOVATION PROGRAM』より立ち上がった4つの共創チームの発表内容を紹介する。なお、次の3人がコメンテーターとして参加し、発表に対してアドバイスを提供した。

■エバーコネクト株式会社 代表取締役 篠原 豊 氏(※オンライン参加)

■株式会社eiicon 執行役員 Enterprise事業本部・公共セクター事業本部管掌 村田 宗一郎 氏

■山梨県庁 産業労働部 伊藤 賢造 氏(※写真右)

【共創ピッチ】山梨放送・内藤ハウス・アルプス・メイコーの4社が、共創パートナーと描いた未来図とは

●山梨放送 × エンゲート 『スポーツギフティングの仕組みで、山梨のスポーツシーンに新風を』

山梨県内でテレビ・ラジオ事業を展開する山梨放送は、スポーツギフティングサービスを展開するエンゲートとともに、山梨県民と県内スポーツチーム、地元企業を巻き込んだ事業構想を発表した。

エンゲートは、スポーツファンが直接的かつ金銭的にスポーツチームを応援できるサービスを提供している。バレーボール日本代表やプロ野球など約150チームに導入され、国内最大級のスポーツ応援プラットフォームに成長しているという。今回のプログラムでは、山梨放送とともに新たなモデルに挑戦する。

そのモデルというのは、次のようなものだ。まず、山梨県民が県内スポーツチームに対して、ギフティング(金銭的な応援)を行う。その集まった資金は、スポーツチームが地域貢献活動に使用する。山梨放送のスポーツ番組を視聴すると、ギフティングに使用できる応援ポイント(県内チームにのみ使用可)を獲得できる仕組みとする。その応援ポイントの原資は、地元のスポンサー企業が負担するというモデルだ。

それぞれが得られるメリットに関してだが、ファンはスポーツ番組を視聴しながら、インターネット経由でスポーツギフティングができる。ギフティングにかかる費用も負担しなくてよい。地元のスポンサー企業は、これまでにない新しいプロモーション活動を試すことができる。スポーツチームは、ファンとの直接的な接点を持つことができ、収益向上にもつなげられることがメリットだ。最終的には、地域活性化にもなるという。

この構想の実現に向けて現在、県内プロスポーツチームへの導入を図っていると話す。同時に地元スポンサー企業にも提案を行っているところだという。3月末に、山梨放送主催のもと、県内6チームが集結するスポーツイベント『やまなしスポーツファンフェス2024』が開催されるが、準備が整えばその会場でモニターを使用し、「山梨応援ポイント」の体験デモンストレーションを行いたいと語り、今後も山梨を盛りあげていきたいとした。

●内藤ハウス × eyeForklift 『倉庫の「見える化」「デジタル化」を可能にする次世代倉庫建築ソリューション』

山梨県で建設事業を展開する内藤ハウスは、富士通発の物流系IoTスタートアップ eyeForklift と、倉庫の見える化とデジタル化に挑戦。実際に山梨県で行った技術検証の結果を報告した。

eyeForkliftは、マーカーとカメラで屋内位置測位を行う技術を持つスタートアップだ。本プログラムでは、物流2024年問題への対応と社会全体の生産性向上を目指して共創に取り組んだ。プログラム期間中、2日間にわたって内藤ハウスの取引先のひとつである段ボール箱製造・販売会社の倉庫で技術検証を実施した。

実装先となった倉庫では、段ボールの原紙ロールを平置きで積み上げて保管していた。使用する際に製造装置の場所までフォークリフトで原紙ロールを運び、製造している。余った原紙はもとの保管場所に戻すという運用で、ごく一部の担当者だけで稼働していた。このように、一般的に平置き倉庫では、どこに何があるかを一元管理することが難しいとされているが、今回はeyeForkliftの技術を用いてデジタルでの管理を試みた。

技術検証の項目は「位置測位」と「製品ラベル読み取りによる個体認識」の2点だ。前者については、倉庫に機材を持ち込んで検証を行ったところ、半径1メートル以内の位置座標を正しく取得できることが確認できた。後者についても、スマートフォンのカメラを活用して、原紙に印字されたラベル情報を読み取り、デジタル化することに成功した。

この2つの組み合わせにより、個体の位置を確認できるようにするという。現場で働く人たちにヒアリングをしたところ、「探す時間を短縮できる」「作業を標準化できるので人材育成が可能になる」「非効率を解消できる」といった声を収集することができたそうだ。今後、倉庫を保有する企業に対して販売していく。将来的には、屋内位置測位システムを搭載した『DXサービス付きの倉庫』を、内藤ハウスで新築・施工する展望も共有した。

●アルプス × TechMagic 『調理ロボットで地方の飲食店やSA/PAを省人化・無人化』

高速道路のサービスエリア・パーキングエリア(SA/PA)や飲食店の運営を行うアルプスは、調理ロボットを開発するTechMagicとともに、SA/PAなどの省人化・無人化を目指して共創をスタート。本プログラム内では県庁舎内のカフェで実証実験を行い、その結果を報告した。

TechMagicは、炒め料理ロボット『I-Robo』を開発・展開している企業。加熱の温度や時間だけではなく、鍋や鍋内のヘラを自在に動かして自動調理することができる。鍋の洗浄を自動でできることも特徴だ。すでに飲食店に導入しているという。

今回の実証実験では、山梨県庁舎のカフェに約2週間にわたって『I-Robo』を設置。ユーザーには食材と調味料を提供し、操作画面を見ながら調理ロボットを自身で操作してもらった。提供メニューは、焼きそばと野菜炒めの2つ。メディアの取材も多数あり、認知拡大にもつながったと話す。

テストユーザーからアンケートを取得し、25人から回答を得ることができた。その結果だが、セルフ調理の操作性については、約70%が「分かりやすい」と回答。調理時の危険性については、約84%が「危険性を感じなかった」と答えた。味についても、普通以上の評価を得られたそうだ。定性面では「予想していたよりも美味しかった」「子どもたちが楽しそうに集まっていた」などのコメントが寄せられた。今後、メニューの検討や許認可対応を進めるとともに、操作性や換気対策、安全対策を進めていきたい考え。

アルプスとしては、2024年度に小売無人化の実証を行い、小売と飲食の無人化を揃えたうえで、2025年度にはサービスエリアへの導入を図りたいとした。さらに2026年度には、これらの実証内容を武器に新規店舗の出店を加速していくマイルストーンも示し、発表を締めくくった。

●メイコー × wash-plus 『衣類の真空乾燥で、世界の洗濯事情に変革を起こす!』

産業装置の製造を手がけるメイコーは、コインランドリー事業を展開するwash-plusとともに「減圧乾燥機」の開発に着手。本プログラムでは、その第一歩となる技術検証を行い、その成果を発表した。

減圧乾燥(真空乾燥)とは、減圧して沸点を下げて乾燥させる技術だ。水の沸点は気圧の低下によって下がる。例えば、海抜0メートル地点においては、100度で水は沸騰するが、気圧の低い富士山の頂上などにおいては、88度付近で水が沸騰するのだという。減圧を続けると最終的に水は凍結する。これは、液体が気化する際、周囲の熱を吸収する性質があるからだ。

実際、実証実験で布類の真空乾燥を試してみた。その結果、衣類の乾燥に成功したと話す。また、一般的な大気中で乾燥させた場合と真空で乾燥させた場合の所要時間を比較した。その結果、大幅に時間短縮できることが確認できたそうだ。

減圧乾燥機がもたらす効果についてだが、家庭用においては家事の時短ができる。また、温度を高めることなく乾燥ができれば、生地へのダメージも軽減できる可能性がある。これらの点が優位性になると見る。さらに、業務用においては、回転率の向上、人件費の削減、原材料費の削減につなげられる可能性があるという。

今後の予定としては、今回の実証実験で課題も発見されたことから、それらに対処するための実証実験を継続していく考え。特許の取得も検討すると説明。その上で、実証機器(試作機)の開発にも着手して、2025年度の社会実装を目指す意向だ。最後に「これが世界を救う技術になると思っている」と、本プロジェクトへの意気込みを伝え、発表を終えた。

【トークセッション】ホスト企業4社がプログラム後に語る、他社との共創から得られた気づきや発見

成果発表が終わった後、本プログラムでホスト企業として参画した山梨県内企業4社(山梨放送/メイコー/内藤ハウス/アルプス)の代表や担当者がトークセッションに登壇。今年度の活動を振り返りながら、共創によって見えてきた可能性について語った。

<登壇者>

・株式会社山梨放送 営業局次長 兼 営業企画部長 前田真宏 氏

・株式会社メイコー 営業技術部 係長 井上太一 氏

・株式会社内藤ハウス 経営企画部 担当課長 島村柊平 氏

・株式会社アルプス 代表取締役社長 金丸滋 氏

・株式会社eiicon 執行役員 Enterprise事業本部・公共セクター事業本部管掌 村田 宗一郎 氏 ※モデレーター

【トークテーマ①】 「なぜ共創に取り組もうとしたのか」

内藤ハウス・島村氏は、「自社の力で社会課題を解決することは困難であり、時代の流れも速くなっていることから、同社ではアライアンス戦略に力を入れている」という。さらに、「山梨県ニュービジネス協議会の企画で、スタートアップのピッチを初めて聞いた際、大きな刺激を受けた」と話す。利益を追求するのではなく、社会の課題を解決したいという強い意志で取り組むスタートアップに共感し、関わってみたいと感じたことを伝えた。

山梨放送・前田氏は、山梨県を盛りあげる新規事業を模索していたが「山梨放送のお客さまでもある県内の企業との競争はしたくなかった」と話す。また、グループ会社が多いことから「何か新しいことを始めようにも、すでにグループ内で取り組んでいることもよくあった」とし、「外に向けて一緒に取り組んでもらえる企業を探したほうが、新しいものが生まれるのではないか」と考え、本プログラムに参加したことを明かした。

【トークテーマ②】 「共創プロジェクトを進めるうえで、どのような壁を乗り越えてきたのか」

メイコー・井上氏は、自社には外から何かを取り入れようという考え方が今までになかったと振り返る。そういう体質であったことから「社内からの見方や理解を変えるという点では難しい場面もあった」と話す。この仕事に取り組む意味や収益性、具体的な事業計画を問われる場面もあったそうだ。ただ、約半年というプログラム期間を経ることで、「少しずつ社内のなかでも、スタートアップ企業と共創することの可能性を見出せたのではないか」と、現時点での手応えを共有した。

【トークテーマ③】 「共創に取り組んできて、今、思うことや気づき、見えてきた可能性は」

山梨放送・前田氏は、本プログラムでは、目標を明確に決めずに大まかなテーマで募集したため、パートナーを決定する過程で、全国の多種多様な企業から様々な声を聞けたという。リモート会議では九州や海外にいる人と会話をしたそうだが、別のイベント企画で協業できる可能性なども思い浮かび「たくさん発見があった」と話す。山梨放送に対する期待や、逆に課題を指摘する意見もあり、多くのヒントを得ることができたと述べた。

メイコー・井上氏は「スタートアップの熱量やスピード感には驚かされた」と話す。それに突き動かされることも多かったという。今後、事業を展開していくにあたり、スタートアップとのマッチングによるオープンイノベーションも取り入れていく選択肢もあることが、本プログラムを通じた気づきだったと語った。

アルプス・金丸氏は、日本初となるような新しい取組が好きで、常に妄想をし続けているという。本プログラムは「妄想実現のための相手探し」だったと振り返る。今回は非常にピンポイントなテーマで募集したため、応募がない心配もしたが、「臨んでみたら、ドンピシャの企業に出会えた」と語り、本プログラムを通じた出会いに感謝した。

【トークテーマ④】 「これからオープンイノベーションに取り組む人たちへのメッセージ」

アルプス・金丸氏は「時代の流れがこれだけ速いなかで、自分だけで調べて研究していたら追いつけない。持っている人に聞いたり、一緒に取り組んだりすることが絶対に必要だ。そういう意味でも、オープンイノベーションを取り入れることは、必須なことだと思う」と伝えた。

内藤ハウス・島村氏は「勇気を出して行動に移してみることが大事ではないか。私の場合は物流問題に貢献したいとの想いから行動に表してみた。企業の力が社会を変える原動力になると思う。皆さんと一緒に、山梨県をもっと魅力的な県にしていきたいし、その結果、子どもたちが希望を持てるような社会になることを願っている」と呼びかけた。

取材後記

山梨県内企業の持つ知識や経験、技術、実証フィールドと、全国のパートナー企業の持つ技術やアイデアを組みあわせて、革新的なビジネスの創出を狙った本プログラム。当初の目標通り、共創を通じて「スポーツギフティング」や「倉庫DXソリューション」「調理ロボット」「減圧乾燥機」など、新規性に富んだアイデアが試された。また、プログラム開始時には「県全体のスタートアップへの理解はまだ低い」という声もあったが、本事業を通じて徐々にスタートアップに対する認知度が高まっている様子も見受けられた。共創プログラムは来年度も継続するという。4つの共創プロジェクトの進捗はもちろん、今後の山梨県全体の変化にも注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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