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【ICTスタートアップリーグ特集 #21:歯っぴー】AI画像処理を用いてスマホ撮影だけで歯科健診が可能に。歯科健診の受診率向上の鍵を握る「歯っぴー」のソリューションとは?

【ICTスタートアップリーグ特集 #21:歯っぴー】AI画像処理を用いてスマホ撮影だけで歯科健診が可能に。歯科健診の受診率向上の鍵を握る「歯っぴー」のソリューションとは?

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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「共創の場」を提供するプログラムだ。

このプログラムでは総務省事業による研究開発費の支援や伴走支援に加え、メディアとも連携を行い、スタートアップを応援する人を増やすことで、事業の成長加速と地域活性にもつなげるエコシステムとしても展開していく。

そこでTOMORUBAでは、ICTスタートアップリーグの採択スタートアップにフォーカスした特集記事を掲載している。今回はAI画像処理を用いて歯科領域のICT化を進める歯っぴーを取り上げる。これまで歯科とICTは積極的には結び付けられてはいなかった。そうした状況を同社がどう変えていくのか。代表の小山氏に、取り組みを始めた背景や現在の状況、ビジョンなどを聞いた。

▲歯っぴー株式会社 代表取締役 小山昭則 氏

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<スタートアップ解説員の「ココに注目!」>

■眞田幸剛(株式会社eiicon TOMORUBA編集長)

・代表の小山氏は、地元・熊本で起きた2016年の大震災の際に、水が使えないことによる高齢者の口腔機能の低下といった多くの課題を目の当たりに。このような課題に対し、テクノロジーを導入することによって歯と口の健康を欧米水準へ引き上げることができると考え、2018年に歯っぴーを設立しました。

・歯っぴーは「歯の健康増進は全身の健康増進にもつながる」をコンセプトに、熊本県熊本市を拠点にBtoB/BtoCの二軸で事業を展開。BtoB事業においては、AI画像処理技術を用いてICTと歯科の融合を図っており、スマホで写真を撮るだけで歯周病の検査ができるという画期的なソリューション「Dental Status」を展開しています。

・政府による2022年、2023年の「骨太の方針」で、国民皆歯科健診の検討や歯科領域のICT活用の推進が盛り込まれました。まさに追い風が吹いている状況です。

2016年の熊本地震が起業のきっかけ

――まずは起業した経緯を教えてください。

小山氏 : 少し前の話になりますが、2016年の熊本地震がきっかけです。私は熊本県出身で、当時は神奈川県でエンジニアをしていました。地震に際して半年間、仕事を休んでボランティア活動を行うことを決めたんです。その中で、さまざまなことを経験しながら、培ったエンジニアの経験や技術を活かせる場所があるのではないか、生まれ故郷の熊本に貢献できることがあるのではないか、といった思いを強く持つようになりました。

当時は30代半ばで、起業するのなら今が一番いい時ではないかとも捉え、思い切って挑戦することにしたのです。熊本地震での経験がなければ、今もエンジニアをしていたでしょう。

――歯科領域に注目したのはなぜでしょうか。

小山氏 : 理由は大きく2つあります。ひとつは熊本地震でボランティアをしていた時、水が使えないことで高齢者の口腔機能の低下など多くの課題を目の当たりにしたことです。日本は歯と口の健康を軽視しがちですが、欧米並みに引き上げる必要性を感じました。

もうひとつは、歯科領域がブルーオーシャンだからです。歯っぴーの創業メンバーは、私を含め歯科の専門知識は持っていません。しかし、歯科領域はICTなど最先端のデジタル技術がほとんど入り込んでいないということもわかりました。この分野でなら、自分たちの経験を活かしながら戦えるのではないかと考え、参入したのです。

AI画像処理で、歯周病専門医の目を再現。課題はスピード感

――歯っぴーが取り組む事業についてご紹介いただければと思います。

小山氏 : 企業健診や健康診断向けのソリューション「Dental Status」を展開するBtoB事業と、一般ユーザー向けのプロダクト「Dental Light」を展開するBtoC事業の二軸で進めています。

――ソリューション/プロダクトの特徴として、どのようなことが挙げられますか。

小山氏 : BtoB向けのソリューションである「Dental Status」に関しては、スマホで写真を撮るだけで、AIが画像処理技術で歯周病の有無などを判定することができるため、非侵襲・非接触が強みと言えます。つまり、歯に直接触れることがないので、痛みを与えることなく検査できるのです。コスト面、利便性にも優れており、これらのことが強みとなっています。

――BtoC向けのプロダクト「Dental Light」はどのようなものですか。

小山氏 : 歯に特殊なライトを当てることで、歯垢の有無を確認できる装置です。家電量販店に卸しているほか、上位機種を学校で歯科教育の一環として使用していただいています。

――ICTスタートアップリーグで、目指すことを教えてください。

小山氏 : 「Dental Status」の機能を向上させることです。歯周病は自覚症状がありません。検査を受けないことには歯周病にかかっているかどうかわからないのです。

一方で、多くの人にとっては歯医者さんに行くのは抵抗があります。好んで足を運ぶ人は稀でしょう。その結果、歯周病の発見が遅れてしまうのですが、スマホあるいはタブレットで簡単に検査ができるとしたら行動変容が起こるかもしれません。歯医者さんに行くのは億劫でも、手軽にできるのなら検査したい人は大勢いるはずです。

――AIが歯周病専門医の眼を再現しているのですね。

小山氏 : はい。歯科医師が属人的に行っている検査をICTで代替できればと考えています。政府による2022年、2023年の「骨太の方針」では、国民皆歯科健診が検討され、歯科領域のICT活用の推進が盛り込まれました。こうした状況下ですので、先行して着手したメリットを活かしながら、事業を展開していきたいですね。

――歯科医師など「Dental Status」のユーザーからはどのような評価を得ているでしょうか。

小山氏 : 検査結果を判定するのに7秒かかっており、もう少し判定時間を短くしてほしいという声があります。これを3秒に縮めるのがICTスタートアップリーグで果たしたいことの一つです。加えて、UI・UXの改善も行っていきます。

歯科医師からの賛否はほぼ2つに分かれています。導入に積極的な歯科医師もいれば、拒否反応を示す歯科医師もいます。「Dental Status」がどうというよりは、ICTそのものに対する拒否反応ですね。それはある程度、予想できたことではあります。判定の信ぴょう性も疑われることもありますが、これについては7割程度の精度を示す調査結果がありますので、一定の信ぴょう性はあると言えるでしょう。

歯科領域のICT化でイニシアティブを取りたい

――今後の短期と中長期のビジョンをご紹介いただければと思います。

小山氏 : 歯科×ICTの分野では、他に先駆けて取り組みを進めているという自負があります。イニシアティブを取って、歯科領域のICT化を図っていきたいと思います。

短期的には、「Dental Status」の課題も見えてきましたので、まずはその解決を目指します。それをふまえ、中長期的には歯と口の健康増進を図っていきます。先ほども言及したように政府から国民皆歯科健診と歯科領域のICT推進の方針が出されました。このことは分水嶺となると捉えています。

歯科定期検診の受診率は、欧米諸国で70%、日本で5%と言われています。最終的には日本を欧米並みの水準に引き上げるのが私たちの使命だと捉えています。

取材後記

歯科健診の大切さは以前からも言われていた。一方で、歯医者に行くのは抵抗がある。実際に足を運んで検査を受けると、多少なりとも痛い思いをすることもある。それが手軽にスマホの写真撮影で済ませられるのなら、健診に前向きになれるだろう。同社の「Dental Status」や事業がどれだけ、歯科のICT化を実現し、歯科健診を身近で手軽なものにするか。注目していきたい。

※ICTスタートアップリーグの特集ページはコチラをご覧ください。

(編集:眞田 幸剛、文:中谷藤士)

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  • 奥田文祥

    奥田文祥

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「競争の場」を提供するプログラムです。TOMORUBAではICTスタートアップリーグに参加しているスタートアップ各社の事業や取り組みを特集していきます。