「信頼できるAI」を社会実装するCitadel AI、シリーズAで5.2億円資金調達完了
「信頼できるAI」を社会実装する株式会社Citadel AIは、シリーズA資金調達ラウンドにおいて、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社、Coral Capital、ANRI株式会社、サントリーホールディングス株式会社、三菱UFJキャピタル株式会社ならびにそのファンドを引受先とする、総額5億2千万円の第三者割当増資を実施した。
欧州議会がAI規制法案を採択「信頼できるAI」の実現に向けた世界の取組み
生成AIの急速な進展と共に、AIの誤った出力やセキュリティ・バイアス等に対する課題が改めて浮き彫りになり、世界各国でAIの信頼性に対する懸念が高まっている。2023年6月14日には、EUの欧州議会において、世界初となるAI規制法案(EU AI Act)が採択された。
人間の生命や安全・尊厳にかかわるハイリスクAIに対しては、今後、リスク管理プロセスの確保やユーザーへの情報開示に加え、技術的な適合検査などの規制がかけられることになるという。米国・シンガポール等でもさまざまな検討が進んでおり、また先進7カ国(G7)の議論と並行し、日本でもAI戦略会議が発足している。
「信頼できるAI」を実現することは、現代の社会経済において、もはや喫緊の課題であり、それに向けた国際標準等の枠組みの構築と、技術的解決策の早期実現が強く求められている。
幅広いAIに対して横断的・汎用的に適用可能な、実戦経験に根ざしたソリューション
Citadel AIは、信頼できるAI実現のための独自のソリューションを提供するスタートアップ。開発・学習段階のAIの自動耐性テストを行うCitadel Lens(シタデル・レンズ)、ならびに運用段階の自動モニタリングを行うCitadel Radar(シタデル・レーダー)という、2種類の製品を提供している。AIに潜むリスクを自動で瞬時に検出し、その原因を人間に分かりやすい形で可視化。元Google Brain、Waymoやトヨタ等において、ハイリスクAIシステムの設計と運用を通じ、AIの課題と正に実戦で闘って来た世界のエンジニアが結集し、開発をリードしている。
従来の方法では、AIの中身の情報を活用して手作業で検証を進めていたため、膨大な手間と時間が必要となり、また新しいモデルを導入するたびに、検査ツールも作り直す必要があった。
同社製品は、顧客のAIの入出力を見るだけで、外部から瞬時に自動検証・自動診断することができる、ユニークなModel Agnosticな機能(AIのモデルやフォーマットに依存しない汎用的な検証機能)を備えている。社内のさまざまなAIモデルに対し横断的に適用し、全社統一的なAIの品質管理を実現したり、モデルのバージョンアップに合わせて継続的にテストすることで、簡単に検証履歴を比較評価することが可能だという。
BSI(英国規格協会)との提携、ハイリスクAIに対する技術・法的適合検証を実現
Citadel AIの製品は、国際的な規格開発とその認証分野で世界をリードするBSI(英国規格協会)にも採用されている。世界54のスタートアップの中から、1年に及ぶ技術的な選考過程を経て、選定された。今後、医療機器や自動車、重要インフラ・与信審査等の分野におけるハイリスクAIに対し、その技術検証ならびに法的適合性検証ツールとして、弊社製品が広くグローバルで適用されていく予定。
またシンガポールのIMDA(情報通信メディア開発庁)が運営する「信頼できるAI」を構築するプロジェクトAI Verify Foundationに加盟、英国政府のCDEI(データ倫理・イノベーションセンター) とDSIT(科学・イノベーション・技術省)が紹介するAI Assurance Techniquesの14事例の一つにも選ばれている。
今回の調達によって獲得した資金を通じ、同社は主力製品の対象を、生成AI等の最新AIへと拡充すると共に、来たるべきAIの信頼性に関わる各国の法制度やさまざまなISO標準に対する適合性テスト機能の搭載を進め、グローバル市場への事業展開をさらに加速化するという。
引受先からのコメント(敬称略)
東京大学協創プラットフォーム開発株式会社 最高投資責任者/パートナー 水本尚宏氏
前回に続いて、本ラウンドでもリード投資をさせて頂きました。小林さんとKennyさんには創業期にお会いし、弊社のインキュベーションプログラム1stRoundで採択をさせて頂きました。正直、当時は彼らの先進的な課題設定に社会ニーズが追い付くのか少々不安な気持ちもありましたが、この1年間で世界と彼らは一変しました。今やニュースでAI規制の話題を聞かない日はなく、Citadel AIのプロダクトはAI規制が最も進む欧州最大手の第三者認証機関BSIのAI評価システムとして採用されました。そして同社は世界中からトップレベルのエンジニアが集まるグローバルスタートアップに急変貌しつつあります。
これはAI規制という世界を左右するルール作りに日本のスタートアップが大きく関与する千載一遇のチャンスです。同社と共にこのチャンスを掴んでいきたいと思います。
Coral Capital パートナー 西村賢氏
AIの進化と普及により、従来のソフトウェアと異なる品質管理や信頼性担保のニーズが高まりつつあります。それはCitadel AIが創業した2020年時点よりも、さらに明白で具体的になってきています。小林代表とKenny CTOの元に集まったCitadel AIのチームメンバーは、みな誠実で優秀。その社会的責務と技術的なチャレンジに奮い立っています。「信頼できるAI」の社会実装に燃える技術力の高いメンバーに感銘を受けて投資を決めました。
ANRI ジェネラルパートナー 鮫島昌弘氏
前回の資金調達ラウンドに続き、今回も追加投資いたしました。生成AIが急速に普及していく中、信頼できるAIを提供する当社のサービスは今後益々ニーズが高まっていくものと思います。また、世界大手の認証機関であるBSI社から選定され、国際的にも技術水準の高さが証明されました。更なるグローバル展開によって、日本から世界を目掛けて大きく飛躍することを期待しています。世界規模のビジネスを「仕立て」ていきましょう!
サントリーホールディングス株式会社 未来事業開発部部長 青木幹夫氏
昨年4月の資本参加以降、グループのIT専門機能会社であるサントリーシステムテクノロジー社とCitadel AI社は、サントリーにおけるAIシステムの安定稼働を保証するプラットフォームを共同で開発してまいりました。Citadel AI社のプロダクトを活用した事例として、「パレット回収予測モデル」への適用があります。モデルの運用業務における自動化・効率化を実現するとともに、予測においても着実な精度の改善を確認できました。同協業やBSI(英国規格協会)での採用から、同社のプロダクトの品質・信頼性・検証能力の高さを確認できました。
また、EUの欧州議会において、世界初となるAI規制法案(EU-AI法)が6月に採択されるなど、世界的にAI規制強化の動きの中で、同社サービスへの需要は一層高まりつつあります。今回、Citadel AI社との協業・つながりをより強固なものとし、同社の成長加速を支援する観点から、追加出資を実施しました。今後も、Citadel AI社と協業し、サントリーグループにおけるAIシステムの運用監視を強化するとともに、グループのDX推進を加速していきます。
三菱UFJキャピタル株式会社 投資第三部部長 西尾祐一氏
AIが浸透した現代社会において、「信頼できるAI」を実現することはもはや喫緊の課題であり、それに向けた国際標準等の枠組みの構築と、解決策の早期実現がグローバルベースで強く求められています。Citadel AIが提供する製品は、幅広いAIに対して横断的・汎用的に適用可能な実戦経験に根ざしたソリューションで、この時代の流れに則したものとして、グローバル市場に展開出来る製品です。Citadel AIの、「信頼できるAI」を実現させなければならないという強い使命感に共感すると共に、弊社でも今回の出資をきっかけとして、MUFGの一員としての強みを生かし、当社の事業成長に貢献して参りたいと考えております。
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