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神戸大学発AIスタートアップ TelaAxon、シリーズAで1億円調達——持続可能なAIの社会実装を加速
神戸大学発のAIスタートアップである株式会社テラアクソン(TelaAxon)は、シリーズAラウンドで約1億円の資金調達を実施した。リード投資家は神戸大学キャピタルであり、SMBCベンチャーキャピタル、みなとキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタルの計4社が出資。この調達により、同社の累計資金調達額は約1.3億円に達した。
持続可能なAIの実現へ向けた挑戦
テラアクソンは、AIのプライバシー侵害や倫理的問題、運用の持続可能性といった課題を解決することを目指し、金融やヘルスケアといった高い秘匿性が求められる分野でのAI開発を推進している。
同社が注力するのは、「持続可能性を有する人工知能」の実現だ。特に、AIの連合学習(Federated Learning)や継続学習(Continual Learning)といった技術を活用し、専門知識がなくても安全かつ効率的にAIを運用できる環境を整えることに取り組んでいる。今回の資金調達によって、研究開発の強化や人材の採用、組織の拡充を加速させる方針だ。
研究開発の加速と社会実装の拡大
テラアクソンの基盤技術の一つである「連合学習」は、複数のAIモデルを統合することで精度を向上させる技術だ。これにより、各機関がデータを共有することなく、プライバシーを保護しながら高度なAI分析が可能となる。この技術は、金融分野の不正取引検知や、ヘルスケア分野での健康増進支援などに応用されている。
今回の資金調達を受け、テラアクソンは国内外のデータサイエンティストの採用を進めるとともに、大学や企業との共同研究を強化し、研究開発エコシステムの中核を担うことを目指す。
また、AI技術の実用化を推進するため、DX関連企業との連携を拡大し、より実用性の高い製品の開発を進める予定だ。
投資家の期待と評価
出資を行ったVC各社は、テラアクソンの技術力と事業成長性を高く評価している。
神戸大学キャピタルの石田真士氏は、「小澤先生の技術と安田代表の創造的な提案力が融合し、大手企業を巻き込んだビジネス課題の発見・解決につながっている」とし、AIのプライバシー課題を解決する同社の技術が、金融・医療分野をはじめとした多くの産業に貢献すると期待を寄せる。
SMBCベンチャーキャピタルの川戸啓太氏は、「テラアクソンはプライバシーテックを活用し、AIと人が共生する世界観を実現しようとしている」と評価。すでにウェルビーイング支援などの分野での社会実装が進んでいることを指摘し、同社のさらなる事業拡大を支援する姿勢を示した。
また、みなとキャピタルの藤原淳氏は、「金融機関向けに不正送金監視AIを開発するなど、特殊詐欺対策といった社会課題の解決にも貢献している」と述べ、テラアクソンの技術が実社会に与える影響の大きさを強調した。
フューチャーベンチャーキャピタルの小林祐也氏も、「詐欺被害が増加する中、不正送金監視AIは金融機関にとって重要な技術」とし、プライバシー保護とAI運用の持続可能性を両立するテラアクソンのアプローチを評価した。
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(TOMORUBA編集部)