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先端デジタル技術の実証現場を体感する『TECH MEETS 実証実験ツアー』に密着!――中部国際空港島エリアで進む5つの共創事業の現場をレポート

先端デジタル技術の実証現場を体感する『TECH MEETS 実証実験ツアー』に密着!――中部国際空港島エリアで進む5つの共創事業の現場をレポート

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愛知県は、中部国際空港島とその周辺エリアを「オープンイノベーションフィールド」と位置づけ、近未来の事業やサービスを先行的に実用化することを目指す『あいちデジタルアイランドプロジェクト』に取り組んでいる。このプロジェクトの一環として、先端デジタル技術の実証を通じた事業共創を進めるプログラム『TECH MEETS』(テックミーツ)を推進している。本取り組みでは、地域で課題を抱えるニーズ企業と、解決につながる技術やサービスを持つシーズ企業をマッチングし、実証を起点とした共創事業の立ち上げを支援している。

2期目となる今年度は、「常滑エリア(中部国際空港島および周辺地域)の課題解決コース」と「大規模イベントの課題解決コース」の2本立てで展開され、愛知県内各所で実証実験が進行中だ。現在、合計18件もの共創プロジェクトが動いているという。

こうした取り組みの一環として、2026年2月3日に『TECH MEETS 実証実験ツアー』が開催された。実証実験の現場を実際に巡り、先端デジタル技術の実装状況を体感できる本ツアーに、TOMORUBAも参加。中部国際空港島および常滑市に点在する5つの実証実験の現場を見学した。本記事では、そのツアーの様子をレポートする。

やきもの文化と招き猫の街「常滑」――空港隣接都市に人の流れを生む2つのデジタル実証

『TECH MEETS 実証実験ツアー』の最初に訪問したのは、名鉄・常滑駅からほど近い常滑市陶磁器会館。館内にはとこなめ観光案内所が併設され、周辺一帯は、長編アニメ『泣きたい私は猫をかぶる』の舞台としても知られる、窯業の歴史と街並みが息づくエリアとなっている。

ツアーでは、常滑市陶磁器会館の一室で2つの共創プロジェクトの説明を受けた後、参加者それぞれが周辺を自由に散策する時間が設けられた。まず紹介されたのが、インバウンド個人旅行者を主な対象に、常滑エリアの周遊を促す実証プロジェクトである。

●インバウンド個人旅行者向け常滑周遊体験の創出

・ニーズ企業:株式会社ブルーチップファーム

・シーズ企業:ナカチカ株式会社

▲株式会社ブルーチップファーム WEBプロモーション・マーケティングマネージャー 原田 克己 氏

ニーズ企業のブルーチップファームは、常滑市で苺やブドウの栽培をはじめ、ワイナリーやレストランの運営を手がけている企業だ。同社が課題として捉えているのは、中部国際空港には多くの訪日個人旅行客が到着しているにもかかわらず、隣接する常滑市には観光客の立ち寄りが少ないこと。

同社の担当者はレストランの現状について、訪日客の来店は「週に1件程度」と語る。周辺の飲食店も同様の状況にあり、インバウンド需要を取り込めていないことに「非常に歯がゆい思いがあった」と話す。こうした課題の解決を目指し、本プログラムに参加した。

今回はセールスプロモーション事業などを展開するナカチカと連携し、常滑市周辺を対象としたWEB版イラストマップを制作。市内の観光スポットをイラストタッチで表現することで、初めて訪れる人でも親しみやすいデザインに仕上げた。

利用者は、現地に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取るだけで、マップにアクセスできる。ブラウザ上で動作するため、アプリのダウンロードは不要。GPS機能をオンにすると現在地や各スポットまでのルートが表示され、街を歩きながら自然と次の目的地が見えてくる設計だ。訪日客を主な対象としていることから多言語対応している。あわせてスタンプラリー機能も実装し、利用を促す仕掛けとした。

▲会場ではQRコード付きポストカードが配布され、参加者はスマートフォンで実際にマップを確認した。

さらに、GPS機能をオンにしたユーザーの移動履歴をもとに、旅行客の動きをヒートマップとして把握できる仕組みも備えている。すでに実利用が始まっており、「どのエリアがよく歩かれているのか」――その実態が少しずつ見え始めているという。今後は、こうしたデータを手がかりに、人が集まりやすいスポットを見極め、より効果的な情報発信や広告施策につなげていく考えだ。

●世代別・嗜好別観光体験の設計と発信支援

・ニーズ企業:知多半島ケーブルネットワーク株式会社

・シーズ企業:株式会社Plaru

▲知多半島ケーブルネットワーク株式会社 竹内 啓真 氏

続いて登壇したニーズ企業は、常滑市を含む知多半島南部を事業エリアとするケーブルテレビ局、知多半島ケーブルネットワークだ。同社は常滑市の観光施設である廻船問屋瀧田家等の管理運営を担っており、地域資源の魅力発信と回遊促進の観点から、本事業に参画。解決したい課題は、1つめの発表と同様、中部国際空港島や周辺の大型商業施設に多くの来訪者が集まる一方で、その流れを常滑エリアへと十分につなぎ切れていないことである。この課題解決に向け、AI旅行計画アプリを開発・運営するPlaruと連携し、常滑エリアを対象としたデジタルマップとデジタルスタンプラリーを企画した。

Plaruが提供するアプリでは、訪問したいスポットや「自然」「文化・芸術」「飲食店」といったジャンルを選択することで、おすすめの立ち寄り先が表示される。また、出発地と目的地、各地点での時間を指定するだけで、移動ルートを含めた旅行プランを自動生成できる。今回の実証では、こうした機能に加え、常滑エリアで楽しめるデジタルスタンプラリーを企画し、周遊を促す仕組みを構築した。

このデジタルスタンプラリーは期間限定で実施され、各スポットは地域に根差したケーブルテレビ局ならではの視点で選定。同社による推薦コメントも掲載されている。すでに300名近くが参加しており、「行きたい場所を見つけられてよかった」といった参加者の声も紹介された。

実証実験ツアー当日は、参加者が実際にアプリをダウンロードし、旅行プランやルート作成、スタンプラリー参加の流れを体験。会場となった常滑市陶磁器会館もスタンプラリーの対象スポットとして設定されており、参加者は説明を受けながら、アプリ上でスタンプ取得の仕組みを確認していた。知多半島ケーブルネットワークの担当者は「常滑駅や中部国際空港駅もスポットになっているため、ぜひスタンプを集めてほしい」と呼びかけた。

▲TOMORUBA取材陣も、PlaruのアプリやWEB版イラストマップを片手に、常滑のやきもの散歩道を散策。道中では、大きな見守り猫「とこにゃん」にも遭遇。観光客が次々と足を止めるフォトスポットになっていた。

世界各国の旅客が行き交う「中部国際空港島」――空港の課題に向き合う3つの共創プロジェクト

午後からは中部国際空港へと移動。国内外から多くの利用者が行き交う空の玄関口を舞台に、残る3つのプロジェクトを巡る見学ツアーが始まった。

ツアーでは、会議室でプロジェクトの説明を受けた後、現場に移動し、空港特有の環境で展開される取り組みを間近で確認した。最初に紹介されたのは、空港の案内業務の一部をロボットに代替する実証プロジェクトである。

●“迷わせない” パーソナル空港案内の未来を先端技術で創る

・ニーズ企業:ANA中部空港株式会社、中部国際空港株式会社

・シーズ企業:iPresence株式会社

▲ANA中部空港株式会社 企画部 DX・イノベーション推進グループ 吉野 千紘 氏

このプロジェクトは、ANAグループの一員として旅客対応や航空機の地上業務を担うANA中部空港と、空港施設の運営を担う中部国際空港が、2社一体となって提示したニーズに基づき進められている。

登壇したANA中部空港の担当者は、「航空業界全体で人材不足が深刻化している」と語る。搭乗手続きや案内業務を担うグランドスタッフも、定時運行を優先することから、乗客に十分なケアができていない場面もあるという。こうした課題の解決策として、今回は空港案内業務を支援するロボットの試験導入に取り組んでいる。

共創パートナーにはiPresenceが選ばれた。実証では同社が開発する自律走行ロボット『temi』が案内・誘導業務に活用されている。このロボットは、従来の案内看板やサイネージに比べ、乗客のチケット情報に合わせた個別案内が可能。搭乗券を画面にスキャンすると「何時までにどこで何をするべきか」を教えてくれるのが特徴だ。搭乗時刻が迫った乗客には、AIによる電話連絡も検討されている。

今回の実証では、ロボット導入による乗客の行動変容やグランドスタッフの負担軽減を中心に検証している。担当者は、「これまでスタッフが足を使って行っていた誘導や声かけを、テクノロジーで代替できるのか。その可能性を探りたい」と語る。すでに試験導入が行われており、一部の対応をロボットに任せ、細かい対応が必要な乗客にスタッフが集中できる可能性が見えてきているという。

▲ツアーでは、駅改札から保安検査場までの迷いやすいエリアを、自律走行しながら案内するロボットの様子が紹介された。『temi』の画面表示は複数パターンがあり、ヒトやネコを模したデザインも選択できる。その愛らしさから子どもに大人気だという。

●持続可能な空港運営に向けた、航空機周りのグラハン業務の効率化・省人化の実現

・ニーズ企業:ANA中部空港株式会社

・シーズ企業:株式会社FaroStar

▲ANA中部空港株式会社 企画部 DX・イノベーション推進グループ アシスタントマネージャー 井川 拓実 氏

続いてのニーズ企業もANA中部空港で、航空機の地上業務などを担うグランドハンドリング部門から提示された課題である。同部門では、深刻化する人材不足を踏まえ、航空機運航の「絶対安全」と「省人化」の両立を目指している。担当者によれば、グランドハンドリングにおいてアナログな働き方が多く残っており、今回はその一つである「翼端監視」のデジタル化に取り組んでいるという。

「翼端監視」とは、航空機が地上を移動する際、翼端が周囲の物と衝突しないようチェックする業務で、すべての便に翼端監視員が配置されている。目視でのチェックだが、とくに夜間や悪天候時は視界が悪く、安全確保が難しい。ヒューマンエラーをゼロにできる、より高度な管理体制が求められている。

そこで、JAXAや航空自衛隊での経験を持つ代表が率いる、衝突回避技術のスペシャリスト集団・FaroStarとともに、翼端監視業務の自動化に向けた取り組みを開始した。具体的には、航空機が停止するスポットの左右に赤外線カメラを設置し、撮影映像をWi-Fi経由でパソコンに集約。さらにインターネット経由でiPadにアラート(音声)を出す仕組みを構築。バッテリー駆動型であることから、電源工事の必要もなかったそうだ。

今回の実証では到着時・スポットイン時の翼端監視で効果を確認しているが、将来的には出発時のプッシュバック業務への適用も検討したいという。さらに、他空港への展開や車両等へのカメラ設置も視野に入れる。担当者は、「絶対安全」を維持しつつ、「監視員ゼロ」での運営体制を目指したいと熱意を込めた。

▲ツアーでは、飛行機の駐機スポットが一望できるスカイデッキから、実際に設置されたカメラを間近に見学。今後、検知精度や現場スタッフの使用感などを確認するそうだ。

●バードストライクのさらなる抑制に向け、”人手に頼らずとも鳥を寄り付かせない滑走路”の実現

・ニーズ企業:中部国際空港株式会社

・シーズ企業:イーマキーナ株式会社

▲中部国際空港株式会社 スーパー・スマート推進部 DX戦略・業務改善推進グループ 高木 優佑 氏

最後に登壇したニーズ企業は、滑走路を含めた空港全体の管理運営を担う中部国際空港。同社が取り組むのは、航空機と鳥の衝突による「バードストライク」の問題だ。航空機の墜落にもつながりかねない重大な課題である。しかし、現状は空砲や煙火(音花火)による人力での追い払いに頼っている。人力で広大な滑走路一帯を昼夜問わず、鳥がいない状態に保つことは極めて困難だという。

そこで、「人手に頼らず鳥を寄せ付けない」をコンセプトに、新たなバードストライク対策に着手した。共創パートナーとなったのは、電子機器の開発・製造を行うイーマキーナで、同社は製品ラインナップの中に害鳥忌避装置も保有する。今回の実証実験では、音・超音波、高輝度LEDによる害鳥忌避装置を試験導入。さらに、レーザー素子を使った新たな装置も開発中だという。

これらの装置を、制限エリア内に設置し、その効果を確認する。目標は、2005年度以降毎年発生しているバードストライク件数(年4~30件程度発生)を将来的に0件にすること。昼夜問わず鳥を寄せ付けない滑走路を目指すとともに、追い払い作業の迅速化・省人化を進める。

▲ツアーでは、スカイデッキから滑走路周辺エリアを見学。担当者によると、滑走路周辺の土のゾーンが、草→虫→鳥という生態系を形成し、鳥の増加につながっているという。特に骨の硬い鳥類は、エンジンへのダメージが大きいそうだ。

現状、爆音や音波などさまざまな方法を模索しているが、根本的な課題解決には至っていない。「毎年どういう対策を取るかを必死に考えています。効果的なアイデアがあれば、連絡いただけると嬉しい」と担当者は語った。

※ ※ ※ ※

――ツアーで紹介された5つのプロジェクトのほか、残るプロジェクトも愛知県内の各所で実証実験が進められている。今年度の『TECH MEETS』に参加する全プロジェクトの成果は、3月18日に愛知で開催される大規模イベント「AICHI INNOVATION CHALLENGE 2026」内の成果報告会で披露される予定だ。

取材後記

国際空港という強力な集客拠点に隣接しながらも、人を呼び込むことに苦戦する「常滑」。航空機の安全や定時運航、丁寧な接客を守りながら、省力化も求められる「中部国際空港島」。こうした現場のリアルな課題は、実際に現場を歩き、体感してこそ伝わってくるものだった。そして、それらの課題をデジタル技術が解く可能性も見て取ることができた。3月18日の成果報告会では、各プロジェクトの発表を聞くだけでなく、中部国際空港島や常滑エリアも訪れてみてはどうだろう。現場の空気や取り組みの様子が、より深く伝わってくるはずだ。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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