『日本スタートアップ大賞2022』発表――スペースデブリ除去に挑むアストロスケールが大賞を受賞
政府は「新しい資本主義」のグランドデザインと実行計画案をとりまとめ、重点投資の4本柱として「人」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「グリーン・デジタル」を挙げた。また、岸田文雄総理は2022年を「スタートアップ創出元年」として、官民をあげてスタートアップ支援を強化することを表明しており、スタートアップにさらなる注目が集められている。
そうしたなか、『日本スタートアップ大賞 2022』が発表され、6月2日には表彰式が開催された。同賞は、経済産業省、農林水産省、文部科学省、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会が広く募集をかけて実施。若者などのロールモデルとなるような、インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャー企業を表彰し称えることにより、起業を志す人々や社会に対し、積極的に挑戦することの重要性や起業家一般の社会的な評価を浸透させ、社会全体の起業に対する意識の高揚を図ることを目的としている。
有識者で構成される日本スタートアップ大賞審査委員会が、全国から寄せられた179件の応募のなかから、内閣総理大臣賞(日本スタートアップ大賞)1件、経済産業大臣賞2件、農林水産大臣賞1件、文部科学大臣賞1件、審査委員会特別賞2件を選出した。
各賞を受賞したスタートアップは次の通りだ。
日本スタートアップ大賞は、「アストロスケールホールディングス」が受賞!
■日本スタートアップ大賞(内閣総理大臣賞)
宇宙機の安全航行の確保を目指し、次世代へ持続可能な軌道を継承するため、スペースデブリ(宇宙ごみ)除去を含む軌道上サービスの開発に取り組む世界初の民間企業
■グローバル賞(経済産業大臣賞)
AIによるスマートフォン向けニュース配信アプリを日米で展開
■ダイバーシティ賞(経済産業大臣賞)
途上国におけるマイクロファイナンス事業
■農業スタートアップ賞(農林水産大臣賞)
日本初/最大級 花のサブスクリプションサービス運営
■大学発スタートアップ賞(文部科学大臣賞)
小型SAR衛星によるワンストップサービス
■審査委員会特別賞
知見と、挑戦をつなぐグローバルなナレッジプラットフォーム
福祉を起点に新たな文化を創る
『日本スタートアップ大賞(内閣総理大臣賞)』に選ばれたのは、世界初のスペースデブリ(宇宙ごみ)除去という難関の課題解決を目指す、株式会社アストロスケールホールディングス
だ。
グローバル市場への進出や社会課題の解決、地域経済の活性化などの事業ビジョンに関する項目をはじめ、事業の独創性や従来のビジネスモデルと異なる新規性・革新性、起業のチャレンジ性、事業の拡張性などを総合的に鑑み、最も評価の高かったのが同社だったという。
アストロスケールは、2021年3月よりデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d(エルサディー、End-of-Life Services by Astroscale – demonstrationの略)」のミッションを実施。これはデブリ除去に係る一連のコア技術を実証する世界初の商業ミッションとなる。同年8月には捕獲機による捕獲能力を実証し、2022年4月には、高難度の誘導接近の実証に成功。
また、軌道上サービスやスペースサステナビリティの実現への道を切り拓くことで、2022年春に当社はTIME誌の「世界で最も影響力のある100社(TIME 100 Most Influential Companies)」に選出されるだけでなく、米宇宙業界誌Via Satelliteの「Satellite Technology of the Year」や内閣府主催第5回宇宙開発利用大賞の「内閣府特命担当大臣(宇宙政策)賞」を含む数々の賞を受賞している。
日本スタートアップ大賞受賞に際し、アストロスケール創業者兼CEOの岡田光信は、以下のように述べている。
「日本スタートアップ大賞(内閣総理大臣賞)を受賞したことを大変光栄に思います。先日創業から9年を迎えましたが、このような名誉ある賞を受賞できたことは、グローバルなチームが一丸となって事業に貢献した結果に他なりません。また、この受賞はデブリの除去・低減を含め、宇宙の持続可能性(スペースサステナビリティ)の重要性やその取り組みへの評価および高い期待の表れだと考えています。宇宙利用の基盤インフラとも呼べる当社の軌道上サービスを実現し、スペースサステナビリティに貢献できるよういっそう精進してまいります。」
また、今回新設された『グローバル賞(経済産業大臣賞)』に選ばれたのは、スマートニュース株式会社だ。同社がニュースアプリ「SmartNews」を通じて、「情報の偏り」「社会の分断」というグローバルな社会課題の解決に挑戦していることや、2012年12月に国内でアプリを提供開始してから2年を待たず、2014年10月に米国でアプリを展開し、近年では米国の主要なニュースアプリの中で、ユーザー1人あたりの月間平均滞在時間が最も多いアプリとなるなど(※1)、グローバルで大きく成長していることが評価された。
(※1)米国の調査会社「App Annie」のデータから(2021年7月時点)
一方、『農業スタートアップ賞(農林水産大臣賞)』に選ばれたのは、お花のサブスクリプションサービス「ブルーミー」を展開するユーザーライク株式会社だ。これまで規格外として使われなかった花を、サービス独自の規格「ブルーミー規格」により市場流通を可能にしたほか、日本最大の花市場や生産者、花屋など、業界全体と連携したSDGsへの活動が高く評価されたという。
スタートアップの創出・育成に向け、政策資源を総動員する
『日本スタートアップ大賞 2022』の表彰式には岸田文雄総理が登場。政府としてもスタートアップ企業の支援に取り組むことを表明した後、アストロスケールホールディングスのデブリ除去技術実証衛星「ELSA-d衛星1/2模型」をはじめとして、各受賞スタートアップの製品・サービスの説明を受けつつ、各受賞企業経営者にお祝いの言葉を述べた。
また、岸田総理は表彰式の挨拶で以下のようにスピーチ(一部抜粋)。スタートアップの創出や育成、起業に挑戦しやすい制度の創出などに取り組んでいくことを改めて表明した。
「私は、社会的起業家を始めとするスタートアップこそが、社会の課題を成長のエンジンに転換し、持続可能な経済社会を実現する、新しい資本主義の考え方を体現するものだと考えています。そこで、本年を『スタートアップ創出元年』と世界に宣言し、スタートアップの創出・育成に向けて、やれることは何でもやる、そうした覚悟で政策資源を総動員していきたいと思っています。
具体的には、才能ある人材の発掘・育成、国や自治体による公共調達、また、研究開発支援、国内外のベンチャーキャピタルへの公的出資などを抜本的に拡充し、人材、資金といったあらゆる側面から、徹底的に支援に取り組んでいきたいと考えています。
また、既に、産業革新投資機構が、アイデアや技術を磨く初期段階からの投資、また、開発に多く資金と時間を要する、ディープテック分野への投資に積極的に踏み込むなど、スタートアップへの支援の抜本強化に着手しております。
さらに、起業にチャレンジする人を増やすために、融資の際の個人保証慣行を変えていきます。具体的には、商工中金のスタートアップ向け融資の経営者保証を原則廃止するとともに、信用保証制度においても創業時に個人保証を求めない新しい制度を創設いたします。」
※参考リンク・画像出典
・経済産業省HP/「日本スタートアップ大賞2022」の表彰式を行いました!
https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220602002/20220602002.html
・株式会社アストロスケールホールディングス/プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000067481.html
・スマートニュースリリース株式会社/プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000478.000007945.html
・ユーザーライク株式会社/プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000062.000013638.html
・首相官邸HP/令和4年6月2日「総理の一日」日本スタートアップ大賞2022表彰式
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202206/02startup.html
(TOMORUBA編集部)