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【実証実験レポートⅢ】200名超が熱狂した新時代の観戦体験!ベガルタ仙台×GayaRの共創に迫る

【実証実験レポートⅢ】200名超が熱狂した新時代の観戦体験!ベガルタ仙台×GayaRの共創に迫る

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仙台市が主催する、事業共創プログラム「SENDAI X-TECH BUSINESS BUILD」――。さまざまな産業に最先端テクノロジーを掛けあわせることで、イノベーションの創出を図る取り組みだ。「SENDAI X-TECH Innovation Project」の一環として開催され、2021年1月の「BUSINESS BUILD DAYS」を経て、合計4チームが本格的な実証実験(インキュベーション)へと進んだ。

それから約1年――。実際にどのような実証実験が行われ、どのような成果が生まれたのか。第一弾の楽天イーグルス×GATARI・toraru、第二弾のハミングバード・インターナショナル×ミヤックスに次ぐ第三弾では、プロサッカーチームであるベガルタ仙台と、リアルタイムスポーツ実況アプリ GayaR(ガヤール)を展開する株式会社GayaRの実証実験レポートをお届けする。ホームスタジアムでの試合を起点に、周辺飲食店(SELVA)への波及効果も狙った本共創プロジェクト。当日の現場の様子はどうだったのか。

また、実証実験終了後、ベガルタ仙台で本企画の実装をリードした磯田 敦氏にインタビュー。プロジェクトの裏側や得られた手応え、今後の展望を聞いた。

ベガルタ仙台×GayaRが狙う、新たな観戦体験の提供と周辺地域への波及

実証実験の舞台となったのは、3月26日にユアテックスタジアム仙台で開催された、2022明治安田生命J2リーグ 第6節 FC町田ゼルビア戦。ベガルタ仙台のホームゲームである。今回の実証実験では、株式会社GayaRが運営するリアルタイムスポーツ実況アプリ「GayaR」を使用し、ベガルタ仙台の元選手(OB)3人が、「試合前」と「試合後」に音声コンテンツを生配信するという企画を実現した。

「試合前」には、試合の見どころなどを解説し、「試合後」には、試合の振り返りを語りあう。サポーターらは、スマートフォンのアプリを通じて、この生配信を聞くことができるだけでなく、アプリのチャット欄から、気軽に質問やコメントを配信者に投げかけることもできる。つまり、配信者とサポーターらの“双方向”で、コミュニケーションがとれるのだ。



今回、配信者(ガヤラ―)として参加したのは次の3名。いずれも、ベガルタ仙台のプロアスリートとして活躍していたOBである。

<配信者(ガヤラ―)>

■ 赤嶺 真吾氏(ベガルタ仙台OB)

■ 千葉 直樹氏(ベガルタ仙台OB)

■ 菅井 直樹氏(ベガルタ仙台OB、現・株式会社ベガルタ仙台 地域連携課スタッフ)

なお、配信はスタジアム内にある中継室から行われた。


▲ベガルタ仙台のホームスタジアム「ユアテックスタジアム仙台」は、JR仙台駅から地下鉄に乗って約15分。仙台の中心エリアからは少し離れた泉中央エリアにある。

今回の共創プロジェクトの狙いは大きく2つだ。1つ目は、コロナ禍で制限がある中でも楽しめる、新たな観戦体験をサポーターらに提供すること。コロナ禍により、スタジアムはもちろん、飲食店でのライブビューイングなどでも、気軽に大勢で集まって“声”を出すことができないのが現状だ。しかし、GayaRの場合、サポーターは“声”ではなく“チャット”で応援に参加するため、リスクを軽減することができる。

2つ目は、スタジアムでの盛り上がりを、近隣飲食店へと波及させること。コロナ禍での打撃が大きい周辺飲食店の活性化を目的に、今回は「SENDAI X-TECH BUSINESS BUILD」のサポーターとして本プロジェクトに参加するSELVA(セルバ:泉ショッピングプラザ)も参画した。観戦チケット1枚につき、ドリンク1杯をプレゼントしているセルバ内の飲食店で、さらにGayaRのインストール済画面も提示すれば、GayaRがもう1杯無料でプレゼント。つまり、観戦チケットとGayaRインストール済画面で、ドリンク2杯が無料となる仕組みだ。

この無料サービスは、スタジアムで試合を見たサポーターらに、SELVAの飲食店に立ち寄って、飲食店で飲みながら配信を楽しんでもらいたいという意図のもと企画された。これまで以上にスタジアムから飲食店への導線を強化することが狙いである。



さらに、本取り組みのプロモーションの一環として、試合当日、スタジアム前にGayaRブースを設置。GayaRアプリのインストール済画面提示で、くじ引きに参加ができ、抽選で選手のサインが入った2022ユニフォームや、当日使用した公式試合球などが当たるイベントも行った。こうした意図や狙いを持った実証実験だが、サポーターらはどう受けとったのか。ここからは、試合当日の様子をレポートする。

【13:15】「試合前」は、ガヤラー3名の近況報告や勝敗予想でウォーミングアップ

キックオフは14時。続々とサポーターらがスタジアムに集まるなか、13時15分に「試合前」の配信がスタートし、放送局の解説者としても活躍する千葉直樹氏の「さあ、はじめていきましょう!」という勢いあるかけ声からはじまった。千葉氏がモデレーター役となって、トークをテンポよく進める。同じチームで戦った3人だけあって、開始直後から息もピッタリである。

まずは、昨年12月に引退したばかりの赤嶺真吾氏の近況報告から。岡山在住の赤嶺氏は、本イベントに参加するため、岡山から仙台まで足を運んだという。今後は岡山を拠点に活動するそうだが、指導者のライセンスも持つことから、指導者としてのキャリアも検討しているそうだ。一方、キンちゃんこと菅井直樹氏は、現在、ベガルタ仙台の地域連携課スタッフとして、Jリーグが推進する社会連携活動(シャレン!)で活躍している。



場の空気があたたまりだしたところで、少しずつGayaRのコメント欄にサポーターらから質問が書き込まれはじめる。最初の質問は、「今日の勝敗予想をお願いします!!」というもの。これに対し菅井氏は、連勝中であることから「この勢いで勝ちたいですよね」「調子のよい町田を相手に、ここで勝ちを拾えたら、もっと勢いがつく」と答えた。赤嶺氏も「ホームで勝てるチームが、自然と上位にいけると思うので、ホームの戦い方はシーズンを通して大事だ」と話した。



各チームの注目選手の話題で盛り上がるなか、「一緒にプレーしたなかで一番うまいと思う選手は誰ですか」という質問が飛びこむ。菅井氏は「野沢さん(野沢拓也選手)」と即答。千葉氏と赤嶺氏も「天才だよね」「センスいいですよね」「発想が異次元」と同調する。同じ質問に対して、千葉氏は悩みながらも「衝撃的だったのが、リトバルスキーさん」と明かす。「高卒1年目でリトバルスキーさんと対峙していたので、異次元すぎて神のように崇拝していた」と、笑いながら語った。

一方、FWとして活躍してきた赤嶺氏は、「右足・左足で蹴れるヤットさん(遠藤保仁選手)や、ベガルタ仙台だとヨンギさん(リャン・ヨンギ選手)」だと話し、「FW目線からいうと、キックがうまい選手はありがたかった」と語った。30分の配信はあっという間に終了時間を迎え、終了直前には「試合中も話してほしいです」「毎試合やってほしいです!!」という、継続を希望するサポーターらの声が、いくつも書き込まれた。

【16:00】「試合後」は、ゲームの振り返りからプライベートの話題まで幅広く

試合終了を迎えた16時、GayaRで「試合後」の配信がスタート。「試合前」と同様に、千葉氏の軽快なあいさつを皮切りに、試合結果の振り返りがはじまった。

コメント欄に、「今回の試合で、よかった選手をあげてください」という質問が書き込まれると、菅井氏はゴールキーパーの杉本選手(杉本大地選手)をあげる。失点しそうになった場面でのビッグセーブがよかったと評価した。一方、赤嶺氏は「鎌田選手(鎌田大夢選手)は、おもしろ味のある選手だと思った。前に運べてチャンスメイクできるので、今後が楽しみだ」と語った。千葉氏も同様に、鎌田選手だと話した。

0‐3の負け試合だったことから、「今日の試合は何がいけなくて、パスやシュートがうまくいかなかったのでしょうか」「仙台のFW陣はいかがですか」「完敗で乾杯してきます」といった質問・コメントが寄せられる。

トークの終盤、「ベガルタ仙台時代のベストゴールは」という質問が飛びこんだ。これに対して赤嶺氏は、「鹿島戦で、キンちゃん(菅井氏)がセンタリングであげて、それを自分がヘディングしたゴール」だと語る。ほしいタイミング、走るスピードがバッチリで、気持ちがよかったと振り返った。すると、コメント欄に「私もそのゴール好きです」という書き込みが。まさに、配信者とサポーターらの“双方向”でのキャッチボールが実現する場となった。


【16:30】続々と観戦後のサポーターらがSELVAへ、飲食店に賑わいが生まれる

さて、周辺店舗への波及効果も狙った本企画。スタジアムから歩いて約10分の場所にあるショッピングセンター SELVA(セルバ)に、人流をつくることはできたのか。飲食店の様子を簡単にレポートする。

SELVA内の「大魔王 Terrace」をのぞいてみると、ベガルタ仙台のゴールドのユニフォームを着た人たちが多く来店。座席はほぼ埋まり、GayaRのアプリや観戦チケットを見せて、“2杯無料”のサービスを楽しむ人たちで、賑わいが生まれていた。 



SELVA担当者も、スタジアムからSELVA飲食店への人流は「いつもの試合後よりも多いようだ」と、その手応えを語ってくれた。


「地域に様々な風を起こせるクラブへ」――ベガルタ仙台・磯田氏

イベント終了後、本企画の立役者のひとりである株式会社ベガルタ仙台 営業部担当部長 磯田 敦氏に、プロジェクトの裏側や得られた手応え、今後の展望を聞いた。

――初めてとなる本プロジェクト。終えてみての率直な感想をお聞きしたいです。

磯田氏: スタジアムの中から、スタジアムに来場できる人も、来場できない人も楽しめるようなコンテンツを、試合前と試合後に分けて配信する。そして、地域と連携して一緒に盛り上げていくというコンセプトで、このイベントを企画しました。今はそれが無事終了し、ひと安心というところです。

――初回とは思えないほど、スムーズなトーク展開だったと感じました。どのような準備をされたのですか。

磯田氏: 事前に台本を作成し、「こういった流れで、ここをポイントに話しましょう」という準備は、私たちのほうで行いました。ただ、今回は“双方向性”を特徴とするアプリなので、視聴者の皆さんと会話のキャッチボールができるような場にしたいと考えていました。ですから、台本は用意しながらも、皆さんのコメントに沿うような形で進めていくという流れを組んでいましたね。千葉直樹さんが、もともとラジオのMCもされている方で、トークの進め方も上手ですので、うまく組み立ててくれました。

――3名のキャスティングも、サポーターの興味を惹くものでした。

磯田氏: ベガルタ仙台のサポーターの皆さんに喜んでいただけるように、引退直後の赤嶺さん、仙台で長く活躍されている千葉さん、現在ベガルタ仙台のスタッフとして活動している菅井の3名を人選させていただきました。

――コメント欄を通じて、サポーターから様々な声が寄せられました。それを見て、どのようにお感じになりましたか。

磯田氏: 試合に関して聞きたいことを書き込んでくれる方もいましたし、なかには「ビールの売り子さんが来ません」という要望を書き込んでくれる方もいました。同じリアルの場を体験しながら、その体験をオンライン上で共有しあうような状況を、コメント欄で実現できたことは、おもしろかったと感じています。

ちなみに、その後、同じ方が「ビールを買えました」とコメント欄に写真を送ってくださいました。これは、一方通行ではない双方向アプリだからこそ、実現できたコミュニケーションだと思います。



――今回、コロナ禍中の開催でした。企画を進めるうえで苦労したことなどは?

磯田氏: コロナ禍なので、オンライン配信だけで終わらせようと思えば、終わらせることもできました。しかし、今回はオンラインとリアルのハイブリッドにこだわりたいと考えていました。ですから、いかに適切なタイミングで実施するか。そのタイミングの調整は、少し大変ではありましたね。

――配信中に、SELVAにもうかがい、試合後の様子を聞いてきました。「通常の試合後よりも、お客さまが多い」とおっしゃっていたので、スタジアムからSELVAへの人流を生み出せた、まさに地域に資する取り組みだったのではないかと思います。地域貢献性をどう捉えておられますか。

磯田氏: ベガルタ仙台は、地域のサッカークラブですが、サッカーをしているだけではダメなんです。サッカーやスポーツを通じて、いかに地域に元気や活力をもたらせるかを、常に考える必要があります。サッカーを楽しんでもらうと同時に、地域に色々な風を起こせるように、常々考えて活動をしています。今回、地域の皆さんに少しでも貢献できたのであれば、とてもよい取り組みだったと思います。

――東京のスタートアップであるGayaRさんとコラボレーションした取り組みでしたが、どのような感想をお持ちになりましたか。

磯田氏: GayaRさんには、とても意欲的かつ積極的に、ベガルタ仙台と関わりを持っていただけました。その意欲的な姿に刺激をいただきましたし、私たちとしてもしっかり向き合って、期待されている以上のものを返さないといけないという気持ちになりました。ですから、少しでも「ベガルタ仙台と組んでよかった」「一緒に仕事をしてよかった」と思ってもらえると、うれしいですし、そう思ってもらえるクラブになれるよう、今後も活動を続けていきたいです。

――今後の展開は、どのようにお考えですか。

磯田氏: コロナ禍において、外に出づらい人、出たくない人、密集したくない人などが、まだたくさんいらっしゃいます。そういった方々のニーズに、しっかりと応えられるようなプログラムづくりや、新しい価値の提供に取り組んでいきたいですね。


▲ベガルタ仙台・磯田氏(写真左)、GayaRの服部氏(写真中)と柏倉氏(写真右)

取材後記

後日談となるが、GayaR「試合前」の視聴者数は203名、「試合後」の視聴者数は165名。非会員の利用が多く、GayaRユーザーの新規獲得にも貢献する結果となった。また、SELVA飲食店での観戦チケット半券・GayaRインストール済画面の提示数は、観戦チケット半券で312杯分、GayaRインストール済画面で112杯分。暫定で合計424杯の着地となったそうだ。半券利用での無料サービスは、2020年度も実施しているが、1試合平均で151杯だったという。

コロナ禍でサポーターらが“声”を出せない状況を逆手にとり、“チャット”を通じてサポーターらとリアルタイムでコミュニケーションを深める。GayaRとの共創による新たな観戦体験は、まさにニューノーマルを体現した企画だと感じた。また、試合後に飲食店への人流をつくることで、周辺地域の活性化も狙う施策だったが、人流を生み出すことにも成功しているようだった。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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