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NTT Comによるオープンイノベーションプログラム「ExTorch」、Demodayレポート!――共創5チームが目指す未来を創造するサービスとは?

NTT Comによるオープンイノベーションプログラム「ExTorch」、Demodayレポート!――共創5チームが目指す未来を創造するサービスとは?

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NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)グループによる共創プログラム「ExTorch(エクストーチ) Open Innovation Program」。去る10月22日に、第2期プログラムのDemodayがオンライン開催された。

TOMORUBA編集部では、NTT Comによる共創プログラム第1期のスタート時(2019年4月)から取材を続けてきた。同社は通信インフラを軸とした多岐にわたる事業を展開しており、グループ企業も多い。多様な事業組織が、現場の課題や未来に向けたテーマを自ら設定し、コミットすることが特徴のプログラム。熱量の高い事務局メンバーや、経営層の強力なバックアップ体制を整えることで、共創を強力に推進できる環境を作り上げている。

そうした努力が実り、コロナ禍でありながらも第1期からは「風況データプラットフォーム」(メトロウェザーとの共創)が社会実装に向けて着実に前進しており、「建物内をストリートビュー化する”Beamo™”」(3i Inc.との共創)がプログラム発のサービスとして産声をあげた。

本記事では、このような歴史を歩んできた共創プログラムの第2期Demodayをレポート。

第2期は【船舶ITソリューション/データセンター/通信ビル/応対自動化AI/SIMサービス】というテーマで募集し、今回5つのプロジェクトの現状が披露された。各プロジェクトは以下の通りだ。

【テーマ:船舶ITソリューション】マリンデータシェアリング 〜船舶運航の安全に寄与する気象海象のオープンプラットフォーム〜

オーシャンアイズ×NTTワールドエンジニアリングマリン


【テーマ:データセンター】 完全無人化された次世代のデータセンターの創出

THK、東京通信機工業、RobiZy(アドバイザリーパートナー)×NTT Ltd. /NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部


【テーマ:通信ビル】 通信ビルを活用したシェアリングドローンプラットフォームの実現

ジャパン・インフラ・ウェイマーク×NTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 インフラデザイン部


【テーマ:応対自動化AI】 AIとの対話によるストレスチェック/メンタルトレーニング

エクセリーベ×NTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部


【テーマ:SIMサービス】 栽培管理支援業務の自動化・高度化

PLANT DATA×NTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部

なお、Demodayには審査員として、経済産業省 新規事業創造推進室長 石井 芳明氏、インクルージョン・ジャパン 取締役 寺田知太氏、NTTドコモ・ベンチャーズ 代表取締役社長 笹原 優子氏、NTT Com 執行役員 イノベーションセンター長 稲葉 秀司氏の4名が参加。


厳正なる審査の結果、5チームの中から審査員特別賞に輝いたのは「通信ビルを活用したシェアリングドローンプラットフォームの実現」チーム、さらにオーディエンス賞は「完全無人化された次世代のデータセンターの創出」チームが受賞した。受賞チームを含めた全5チームは、サービス化に向けてさらなる共創を進めていくことになる。

――第2期からは、どのような未来のビジネスが生まれるのか。5チームによる共創プロジェクトのプレゼンに加え、第1期の共創事例プレゼンの模様も紹介していく。

※記事トップに掲載している集合写真ですが、撮影時のみマスクを外しています。

オープンイノベーションにかける、NTT Comの想い

Demodayの冒頭では、NTT Com 代表取締役社長の丸岡亨氏が登場。「ExTorchとは、人類の未来をパートナー企業と一緒に実現していくためのプログラムです。私たちが思い描いている未来を未来のままで終わらせず、しっかりと形にしていくために開催してきました」と、共創プログラムを実施する想いについて語った。


さらに丸岡氏は、「新たにリアルな場とバーチャルの場を融合した『OPEN HUB』プロジェクトも開催します。2022年2月にはリアルな場として”スマートワールドに向けた検証を行える施設”もオープン予定です。ぜひこれからもみなさんと一緒に、新しい価値を生み出していきたいと思います」と話し、未来に向けてオープンイノベーションを推進していくことをアピールした。


次に、NTT Com イノベーションセンター長の稲葉秀司氏が登場。稲葉氏は以下のようにスピーチし、オープンイノベーションを活用した新規事業創出に向けて、意気込みを語った。

「“イノベーション”という概念を提唱したシュンペーターは、イノベーションを“ニューコンビネーション”つまり新結合と表しました。異なるもの同士を組み合わせてこそ、イノベーションが生まれる。私たちもその考え方を重視し、昨年新たに『Re-connectX』というスローガンを発表しました。

Xとは『Everything』のこと、つまりCovid-19で一度分断された全てのものを『Reconnect(つなぎ直す)』して、サステナブルな未来に貢献していくという意味です。その中で特に重要視しているのがオープンイノベーション。より離れた知をつなぎ合わせることで、より大きなイノベーションを生み出しきたいと思っています。パートナー企業たちとの知と私たちの知を掛け合わせることで、既存事業の革新もしくは新たな事業創出に邁進していきます。」


――ここからは、5つの共創プロジェクトのプレゼンをレポートしていく。

■マリンデータシェアリング~安全な船舶運航のためのプラットフォーム~

<オーシャンアイズ×NTTワールドエンジニアリングマリン>

オーシャンアイズとNTTワールドエンジニアリングマリンが手掛けるのは「マリンデータシェアリング~船舶運航の安全に寄与する気象海象のオープンプラットフォーム~」プロジェクト。海上は陸上に比べて観測点が少ない上に、気象情報などを取得しづらく、船舶間の情報共有も難しいため乗組員の勘や経験で補いながら運航せざるを得ない環境となっている。

情報収集は今でもTVやFAXが多く使われており、定時以外の情報が得られず手間もかかる。加えて、自分たちが目視した情報や漂流物の情報を報告する際には、手書きでFAXしなければならず乗組員の大きな負担に。また、報告した情報が他の船には共有されないのも問題だ。


そこで本プロジェクトでは、船に取り付けたセンサーにより海上の気象や船体情報を収集し、船の運航に役立つ形で情報を提供するプラットフォームを作り上げていく。それにより精度の高い気象情報をスマホやタブレットでリアルタイムに把握でき、安全な船舶運航を可能にするのだ。

今後は情報収集するために、センサーを取り付ける船を増やしていくのが喫緊の課題。2027年に1,000台の船で情報を収集し、プラットフォーム化するのが目標となっている。

■完全無人化された次世代のデータセンターの創出

<THK、東京通信機工業、RobiZy(アドバイザリーパートナー)×NTT Ltd Japan/NTTコミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部>

二番目のプレゼンは、THK、東京通信機工業、RobiZyとNTT Comによる「完全無人化された次世代のデータセンターの創出」プロジェクト。様々な企業の強みを生かして、ロボットを使った無人データセンターの実現に向けて共創している。

年々データセンターの設備が増加するのにつれ、メンテナンスのコストも増える一方で、メンテナンスする人材の不足も課題になっている。データセンター1棟あたりの年間運用コストは6億円とも言われており、その45%が人件費、稼働の55%が手作業というのが実情だ。本プロジェクトは人の代わりにロボットが受付や点検作業を行うことで、業務を効率化しコストを削減するのが目的となる。


無人のデータセンターを実現するには「人向けに作られた建物設計」や「難しいロボット実装」などの課題があったが、様々な企業の協力により無事解決の糸口が見えている。具体的には、電気信号で開閉できるサーバーラックの開発や、専門家でなくてもカスタマイズ・実装ができるロボットの開発など一つずつ課題をクリアしてきた。


今後は自社データセンターの無人化だけでなく、ロボットを使った自動点検サービスを他社のデータセンターにも提供していく。顧客の施設を訪問してロボットが使いやすい環境を作り出し、ロボットの選定/実装、保守運用サービスまで提供していく予定だ。将来的にはデータセンターに限らず、ガスや水道など社会インフラ設備を持つ公共団体にもサービスを展開していくという。

■通信ビルを活用したシェアリングドローンプラットフォームの実現

<ジャパン・インフラ・ウェイマーク×NTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 インフラデザイン部>

続いては、ジャパン・インフラ・ウェイマークとNTT Comが手掛けた「通信ビルを活用したシェアリングドローンプラットフォームの実現」。NTT西日本の子会社として、主に通信設備の保全などを行う事業をしてきたジャパン・インフラ・ウェイマークは、ドローンを活用した点検作業のDXを進めてきた。

しかし、実際は現場に作業員が赴き、パイロットがドローンを操作して撮影するなど、人手が掛かってDXはなかなか進まない点が課題に。そこでジャパン・インフラ・ウェイマークが提案したのが、ドローンによる完全自動の点検システム。その実現のために本プログラムに応募した。

NTT Comは2019年のプログラムで、ドローンの最大の敵となる「風」を観測するメトロウェザー社を採択しており、本プロジェクトを進める上で最適なパートナー。今回の実証実験でも、風況によって発着を判断するよう連携試験を実施する予定という。

本プロジェクトが実現すれば、作業員がわざわざ現場に赴き点検する手間がなくなるため、作業員の安全を担保できるほか、人件費の削減にも繋がる。ドローンによって浮いたアセットは、新しい事業の創造に充てるなど企業活動の推進も後押しする。


実証実験は三重県の通信局舎を活用して行われたが、将来的には複数のビルをドローンが飛び回り、幅広い範囲の点検作業を行う想定だ。狙う市場は、ガスプラントやダム、太陽光パネルの点検も含めて4,000億円にまで達するという。

■AIとの対話によるストレスチェック/メンタルトレーニング

<エクセリーベ×NTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 アプリケーションサービス部>

エクセリーべとNTT Com アプリケーションサービス部が手掛けるのは「メンタル不調予防のためのAIとの対話によるストレスチェック/メンタルトレーニング」プロジェクト。AIと専門家の二人三脚で利用者の心を整え、メンタル不調を予防するサービスだ。


現在、大企業の約90%には長期の休職者がいると言われている。従業員にとって大きな問題であると同時に、企業にとっても休職者一人あたり1,800万円もの損失があり、国としてもメンタル不調に対する様々な対策が義務化されてきた。

しかし、今のメンタルケアには課題があると言う。年に1度しかストレスチェックが行われないため、メンタル不調発見が遅れ早期のケアが施されない。また、普段話さない専門家に相談するのは心理的ハードルが高く、相談しにくいのも問題だ。

そこで本プロジェクトでは、日々の生活の中でストレスチェックやメンタルトレーニングを取り入れられるサービスを開発中。AIを使い始業時に3分のメンタルトレーニングと終業時にはストレスチェックを行い、月に一度はカウンセラーからフィードバックを受けられる。

これにより、メンタル不調を早期発見・予防をするだけでなく、いざというときも専門家に相談しやすい環境を作り上げていく。PoC終了後は大企業をターゲットにサービスを展開していく予定だ。

■栽培管理支援業務の自動化・高度化

<PLANT DATA×NTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 データプラットフォームサービス部>

PLANT DATAとNTT Com データプラットフォームサービス部が手掛けるのは「スマートデータプラットフォームを活用した栽培管理支援業務の自動化×高度化」プロジェクト。IoTデバイスを活用して国内の農業課題を解決していくサービスだ。


国内の農業は就業人口が右肩下がりの一方で、法人が運営する大規模施設園芸が増加し、市場も拡大している。大規模農園ではICTをうまく活用しており、農業の市場規模の約2割は栽培管理支援が占めている。

そんな農業には大きな2つの課題がある。ひとつは栽培管理の暗黙知化。これまでの経験や勘による農業が行われており、非効率な業務が数多く残っている。そしてもうひとつは長い労働時間。これらの課題を解決するにはテクノロジーを活用して、データの計測・分析をし、ノウハウを可視化することが必要だ。

本プロジェクトでは、カメラや温湿度など各種センサ類を搭載したIoTデバイスが様々なデータを収集し、それらを基に栽培管理を行うことができるサービスを提案。リモートコントロール機能などの具備によって、人の手がかかることを省力化/自動化する。今後は2022年のサービスリリースに向け、サービスの質の向上に加えサードパーティとの連携にも注力していくと言う。

第1期プログラムで誕生し、社会実装が進む2つのサービス事例

次に、第1期プログラムで共創が進み、社会実装が進んでいる2つの事例のプレゼンが行われた。その内容について紹介していく。

■鉄塔を活用した小型ライダーの展開による風況データ活用の実現

<メトロウェザー×NTT コミュニケーションズ プラットフォームサービス本部 インフラデザイン部>

「無線中継所や鉄塔設備を活用することにより、新しいビジネス展開を実現したい」というNTT Comと、ドップラー・ライダー(※)の最適な設置場所を探しているメトロウェザーが、第1期プログラムを通して出会ったことにより、この共創プロジェクトは誕生した。

※大気中にレーザ光を発射し、大気中のエアロゾル(塵、微粒子)からの反射光を受信しすることによって風速・風向を観測することができる大気計測装置。(以下画像参照)


「ドローン前提社会」や「エアモビリティー(空飛ぶクルマ)社会」の実現が目前に迫っているなか、”風”の情報はますます重要になってくる。本プロジェクトでは、NTT Comが保有する無線中継所や鉄塔にドップラー・ライダーを設置し、3次元のリアルタイム風況データを取得。「風況データプラットフォーム」を構築し、さまざまな風況の情報をお客様に提供していくというビジネスモデルだ。

2020年11月には長崎県五島市、2021年2月には香川県三豊市において、離島間でのドローン配送実験で風況情報を提供し、安定運行に貢献。2021年7月にはエッジコンピューティング活用に向けた実証実験を京都府で行うなど、着実に技術検証を進めている。拡大するドローン市場においてサービスを進化させながら2023年のサービスインを目指している。

■3D-Viewで建設・製造・あらゆる現場のDXを推進する革新的な映像サービス「Beamo™」

<3i Inc.×NTTビズリンク>

3i Inc.とNTTビズリンクによる共創によって生まれた「Beamo™」(ビーモ)は、誰でも簡単にストリートビューを作成できるサービスだ。市販の三脚、スマートフォン、360°カメラといった機器を使い、撮影した画像をクラウドにアップすると瞬時にストリートビューが作成される。プレゼンでは、NTT Comのラグビーチームであるシャイニングアークスの選手が「Beamo™」を体験する動画を紹介。専門的な知識がなくても活用できるサービスだということが示された。


また、プレゼンのなかでは3i Inc.のKen Kim氏によるコメントも紹介。「アメリカでいくつかアクセラレータープログラムに参加したが良い出会いに恵まれなかった。そんなときに参加したのが本プログラム。共創を進めるなかで、実際の現場に行き、どのようにソリューションを設計し、課題解決できるかをブレインストーミングしながらサービスを形作った。現在は、NTT Comの70以上のデータセンターにてBeamo™を活用していただいている。さらに今年は、NTTビズリンクさんと販売代理店契約を締結。このプログラムがもたらしてくれたチャンスには感謝の気持ちでいっぱいです」と話した。

審査員特別賞・オーディエンス賞を発表! 

各チームによるプレゼンが終了後、表彰式が行われた。審査員特別賞は、「通信ビルを活用したシェアリングドローンプラットフォームの実現」チームが受賞した。審査員のインクルージョン・ジャパン 寺田氏は、同チームに対して以下のようにコメントした。「メンテナンスのニーズは日本に明確にあり、その解決策がドローンであることも明確。故に競合も多く、いかに優位性を打ち出していくかがカギになるだろう。通信ビルの活用にこだわりすぎるとビジネスを狭めてしまうので、柔軟な発想で戦っていってほしい。」


次に、オーディエンス賞が発表され、「完全無人化された次世代のデータセンターの創出」チームが受賞した。審査委員のNTTドコモ・ベンチャーズ 笹原氏は、次のような応援メッセージを投げかけた。「様々な企業との共創だけでなく、ロボットとも共創していく姿が興味深かった。実際にロボットが点検しているムービーを見て「こんな時代がやってくるんだ」と思ったオーディエンスも多いはず。ぜひみなさんの期待に応えてもらえるよう頑張ってもらいたい。」


表彰式終了後、経済産業省 新規事業創造推進室長の石井氏が登壇し、全体講評として次のように語った。「本日の各チームのピッチを聞いて感心したのは、NTT Comの“現場“の皆さまがテーマオーナーとなって外部のパートナーたちと手を組み、新しいことを進めようとしている姿勢です。このような取り組み方は、素晴らしいと思いました。」


取材後記

イベントの最後にはNTT Com 代表取締役副社長 菅原英宗氏が次のようなコメントを述べた。「今回のイベントは、個人や企業がそれぞれの価値を見つめ直し、つなぎ直して新しい価値、そして社会を創っていこう。そういうビジョンのもとで進めてきました。今年度のExTorchはまさにそのビジョンを体現したプログラムだったと思います。今回は事業化に向けてまだ途中の報告にはなりますが、改めてオープンイノベーションの価値を感じ、新たな価値を創造していってほしいと思います。」

今回登壇した5チームはいずれも自社の強みと、NTT Comグループが持つアセットをうまく融合して新しい価値の創造に挑戦している。まだプロジェクトは半ばで、これからPoCに入るプロジェクトも少なくない。それぞれのプロジェクトが社会どのようなインパクトを打ち出していくか楽しみだ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:鈴木光平)

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