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第2期プログラム開始!東芝の技術は、何に生まれ変わるのかー。ビジネスソリューションへと昇華した、東芝×スタートアップの共創事例

第2期プログラム開始!東芝の技術は、何に生まれ変わるのかー。ビジネスソリューションへと昇華した、東芝×スタートアップの共創事例

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フィジカル(実世界)とサイバーのデジタル技術をつなぎ、解析・分析・理解し、フィジカルにフィードバックさせて新たな世界を創るCPS(Cyber Physical Systems)を掲げる東芝グループ。昨年オープンイノベーションプログラム「TOSHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM 2020」を開始し、5G・IoT・ビックデータ・画像認識といった4つのテーマで採択されたスタートアップとの共創が進んでいる。

本プログラムの特徴は、東芝の『技術』を活用して、新たな市場への価値創出を目指すところだ。

インフラを支えるための通信技術・車に搭載されている画像認識技術などを、社外のアイデアやサービスとかけあわせることで、スマートファクトリーなど新たなビジネスソリューションへと生まれ変えるのだ。

3月16日より、第2期となる「TOSHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM 2021」の参加者募集がスタートした。「プライベートブロックチェーン」「量子アルゴリズム」「購買データ」「ラグビー部」「ifLink」と、さまざまな事業分野での技術やリソースを活用した、共創テーマだ。

東芝の技術は、どのような可能性があるのかー。どうやってビジネスソリューションに昇華させていくのか。

今回、第1期に採択された企業2社の事例についてインタビューを行った。

最初に紹介するのは、「ローカル5G」の事例だ。360度映像を用いたオンラインコミュニケーションツールを開発するスタートアップ株式会社Nossaとの共創プロジェクトで、3月より東芝府中事業所でPoCがスタートしたばかりである。

2つ目の事例は、ソフトバンクの社内起業制度からスピンオフしたconect.plus株式会社とIoTの民主化に向けて推進する「ifLink」のプロジェクトだ。東芝が設立したifLinkオープンコミュニティの中でも、いくつもの協業が生まれている。

それぞれの共創の進捗や、事業化に向けて見えている景色、プログラムに参加するメリットなどを、プログラム事務局の東芝・相澤宏行氏、Nossaの代表・福井高志氏、conect.plusの代表・坂井洋平氏の3名にオンラインで話を伺った。

【1】ローカル5G×360度カメラで、リアルタイムでの現場管理を実現(東芝×Nossa)


Nossaが持つ技術の真価を発揮できる、ローカル5G環境

――今回Nossaさんは、ローカル5Gのテーマで、360度カメラを用いたリアルタイムでの現場管理を提案して採択されていらっしゃいますね。まずは、東芝さんがNossaさんを採択した理由を聞かせてください。

東芝 相澤氏 : ローカル5Gのマーケットはまだ新しく、これから拡大していきます。東芝としても、自社で通信系の事業がありますが、アプリケーションの領域は自前だけでは不十分な状況でした。

そこでプログラムを通し、ローカル5Gの超高速・低遅延といった特徴を活かせるアプリケーションを開発している会社を探していたところ、Nossaさんに出会ったのです。360度映像は、ローカル5Gの環境で真価を発揮できるという期待が大きく、採択に至りました。


▲株式会社東芝 CPSxデザイン部 エキスパート 相澤宏行氏

――福井さんにも伺いたいのですが、今回のプログラムに参加した背景を教えてください。

Nossa 福井氏 : 当社は、360度映像を用いたコミュニケーションツールを開発しています。応募時はまだプロダクトのリリース前の、プロトタイプ段階でした。そこで実証実験ができる場を探していたところ、このプログラムを知りました。

東芝さんの魅力のひとつは多種多様な現場があることです。多くのフィールドで、現場からのフィードバックを頂ければと考えました。そしてもうひとつは、ネットワーク環境です。当社としても製造業は注力業界のひとつでしたが、360度映像は容量が大きくネットワーク環境がボトルネックになることが多いと感じていました。その点で、ローカル5Gというテーマは非常に魅力的でした。


▲株式会社Nossa 代表取締役 福井高志氏

従来は考えられないスピードで調整し、府中事業所でのPoCが実現

――次に、共創プロジェクトをどのように進めていったのかを伺いたいです。以前、「みんなのアイデア共有会」で成果発表を行った時、今後は府中事業所でPoCを進めるというお話をしていらっしゃいましたね。

Nossa 福井氏 : まさに、東芝府中事業所でのPoCが始まったばかりです。当初は、東芝インフラシステムズのみなさんと擦り合わせて、まず東芝さんの事業所で検証をし、将来的には東芝さんの顧客、そして外部にサービスを広げていく共通の未来図を描きました。その中で、東芝府中事業所で実証実験を行うことになり、東芝インフラシステムズさんのご協力をいただいて、工場見学に行き課題のヒアリングを行ったのです。

府中事業所は東芝グループの生産拠点で、様々な製品が作られています。広大な敷地の中、生産、管理、品質保証など各部門が点在しており、何かあった時にお互い出向く際、時間のロスがありました。

そこで当社の360度映像を活用していただければ、遠隔からでも現場の状況が把握できるため、課題が解決できるのではないかと仮説を立てたのが昨年の9月頃です。その後も調整を続け、東芝さんがローカル5Gの免許を取得され、PoCをスタートしていただけることになりました。


――PoCに至るまで、困難を感じたことはありますか。

Nossa 福井氏 : 東芝インフラシステムズのみなさんや、相澤さんにサポートしていただき非常にスムーズでした。ひとつ難しそうだと感じたのは、工場見学やヒアリングの調整です。府中事業所には東芝グループの様々な企業・事業部門が入所しているため、調整が大変そうでした。その中でも、ご尽力いただけたと思います。

東芝 相澤氏 : 東芝インフラシステムズは、安心安全第一の慎重な会社で、従来、確認や調整は非常に慎重に行っています。たくさんの関係者がいるためです。

しかし今回、Nossaさんのような機敏なスタートアップとの共創にあたり、東芝基準でみると相当スピーディに調整を頑張りました。これは福井さんたちとご一緒することで、新しいことができるという期待感があったからです。

――PoCは始まったばかりということですが、現状の手応えとしてはいかがでしょうか。

Nossa 福井氏 : まだ期待した結果が出る段階までには到達していないというのが現状です。もう少し調整ができた時には、高解像度、低遅延で映像のやりとりができ、よりスムーズなコミュニケーションに繋がるのではないかと思います。将来的に目指すのは、離れた現場とのコミュニケーションを円滑にすること。これができれば時間のロスが減り、移動が難しい方も活躍できるようになることです。


プロダクトの磨き上げやPRにも有効なプログラム

――このプロジェクトについて、東芝さんからはどのように評価されていますか。

東芝 相澤氏 : 東芝オープンイノベーションプログラムは、グループ全体に提供していることから、各プロジェクトでスピード感が異なります。先ほどもお話ししましたが、東芝インフラシステムズは、人の命を預かるものを作っているため、非常に慎重な会社です。

その会社が、ご一緒いただくことになった昨年6月から3カ月弱でプランニングを進め、それから半年くらいで順調にPoCに到達したというのはすばらしい成果です。福井さんには誠実に対応をしていただき、期待と安心感を持っています。東芝は誠実さを大切にする文化を持っているので、福井さんのお人柄とPJメンバーの相性がよかったのだと思います。

――最後に、今回のプログラムに参加して、共創パートナーとして東芝の魅力をどう感じましたか。

Nossa 福井氏 : 今回本当に良かったのが、担当の方が対等に接してくださることです。私自身も大企業に勤務していた経験から、スタートアップを偏った目で見る人がいることも知っています。しかし、今回私がご一緒している方々はそういうことは一切なく、社内での進捗状況もしっかりと共有いただいています。

また、相澤さんの存在も大きいですね。プロジェクトメンバーとは密にやり取りをしているとはいえ、直接聞きにくいこともあります。そういう時には、相澤さんにメールをして相談していました。いつも温かくサポートいただき、ありがたかったです。

――第2期の募集が始まりましたが、応募を検討している企業にメッセージをお願いします。

Nossa 福井氏 : このプログラムは、どんなフェーズの会社にも合うのではないかと思います。当社がエントリーした時のようなサービスローンチ前のスタートアップでも、PoCをご一緒できることには大きなメリットがありますし、ある程度成熟したプロダクトを持つ会社も、共創すればプラスになるはずです。現場の声をいただくことでプロダクトの磨き上げもできますし、東芝さんのプログラムに選定されたこと自体、対外的なPRに繋がりますから、ぜひ応募をお勧めしたいですね。

【2】IoTの民主化という共通の未来図を描く「同志」として(東芝×conect.plus)


プロダクトの相性、技術力、そして人間性もマッチしていた

――conect.plusさんは、ifLinkのテーマで採択されたということですが、まず相澤さんから、その理由についてお話しいただけますか。

東芝 相澤氏 : 大きく三つの理由があります。ひとつは、conect.plusさんのプロダクトが、ifLink(※)に最適だということです。次に、開発力。ifLinkの組み込み自体はあまり難しくはないのですが、それを考慮してもわずか5日間で開発して組み込みができる技術力には驚かされました。そして三つ目は、人間性と推進力です。

conect.plusさんは、もともとソフトバンクの社内起業制度からスピンオフしたスタートアップで、様々なアクセラレータ―プログラムで採択されていらっしゃいます。こうした社内提案制度から出てきて、外部で活躍する坂井さんたちのような人材が、今後東芝の中からも出てこなければなりません。そのロールモデルを示していただけると思い、ぜひご一緒したいと考えました。

※ifLink……様々なIoT機器やWebサービスをモジュール化することで、ユーザーが自由に組み合わせて便利なしくみを簡単に実現することができるIoTプラットフォーム。

――conect.plusさんは、なぜ今回の東芝のプログラムに応募したのでしょうか。

conect.plus 坂井氏 : 当社は、IoTの利活用に必要なアプリケーションをSaaSで提供し、ノンコーディングでデータを分かりやすく伝えていく、利活用していくサービスを展開しています。IoTは様々な技術領域で構成されますが、当社のコアコンピタンスはアプリケーションレイヤーです。

一方、IoTのサービス開発にはモノやネットワークといった技術要素も不可欠です。当社のサービスもIoTのセンサーやデータのアプリケーションと、ユーザーや顧客の課題に貢献できます。我々もAPIをオープンにしていますが、IoTのデータやデバイスの連携は、毎回個別の対応や調整が必要になります。

その中で、プログラムのテーマであり、東芝さんの新規事業の中核であるifLinkは、まさにそうした様々なサービスを民主的に連携する思想のプラットフォームです。ifLinkと共創することで、よりIoTのカジュアルな、アジャイルなサービスの設計が実現するのではないかと思い、エントリーしました。


▲conect.plus株式会社 代表取締役CEO 坂井洋平氏

ifLinkと連携するマイクロサービスを、わずか5日間で開発

――続いて、共創の内容について伺いたいです。先ほど相澤さんからもお話しがあったように、ifLinkと連携するマイクロサービスをわずか5日間で開発したそうですね。

conect.plus 坂井氏 : デモデイでは5日間と話したのですが、実は誤りで、実は3日間だったんです。後からエンジニアに指摘されました(笑)。

――さらに早かったんですね!

conect.plus 坂井氏 : そのくらい、システム面においては特に難しい課題はありませんでした。サポート体制やドキュメントが揃っていましたし、メールではなくSlackで気軽にコミュニケーションが取れる環境を整えていただきました。

ビジネス観点では、勝手ながら東芝さんに対して堅いイメージを持っていたのですが、実際には非常にオープンというか、嫉妬してしまうくらい”リア充”でした(笑)。

――なぜマイクロサービスの開発からスタートしたのですか。

conect.plus 坂井氏 : 当社はテクノロジーオリエンテッドのビジネスを展開しています。そのため百の言葉を語るよりも、実際にシステム連携をして動いているモノを見せることこそが、新規事業においては説得力のある推進の仕方だと思っています。幸いifLinkの環境も整っており、速やかに着手できると考え、マイクロサービスの開発に着手したのです。

――マイクロサービスでは、どのようなことが可能になるのでしょうか。

conect.plus 坂井氏 : 前提として、当社のサービスはWebの仕組みを使ってダッシュボードを作ります。そのデータを繋ぐには、ゲートウェイ側でNANDを実装しなければいけません。

ifLinkの仕組みは、温度センサーやボタンセンサーやGPSセンサーなど様々ありますが、IF側のデバイスがTHEN側のマイクロサービスを使ってくれれば、ifLink連携するだけで我々のサービスとノンコーディングで繋がる仕組みができています。BtoBのシーンで我々のツールがあれば、IoTサービスをパッケージとして売り出すことが可能です。


――東芝さんから見て、conect.plusさんのプロジェクトはいかがでしょうか。

東芝 相澤氏 : ひとことで言うと、「尊敬」です。東芝ではIoTサービスの共創の場づくりを目指す一般社団法人ifLinkオープンコミュニティの運営の一部を担っています。多様な会員企業が120社ほど集まり、そこで様々な活動が展開中です。

conect.plusさんは、そこで中心になって活動すると自ら手を挙げてくださいました。自ら「ブカツifLink」と呼ばれる分科会(※)を形成してconect.plusさんのサービスと会員企業のデバイスサービスをうまくつなげ、まさに冒頭で坂井さんがお話ししていらっしゃった「IoTの民主化」に向けた取り組みを体現してくださっています。

※conect.plusさんが立ち上げた「Gotoサービス部」はこちらで紹介されております。

ここまでくると、もう尊敬のひとことに尽きますし、ifLinkオープンコミュニティの代表理事であり東芝の執行役上席常務の島田も、「ぜひコミュニティの中心になっていただきたい」と期待しています。まさに出会いに恵まれたこと、感謝しかありませんね。

同じ課題や目指す社会を共有し、立場を超えて共創できる

――現状と、今後について考えていらっしゃる展開をお聞かせください。

conect.plus 坂井氏 : 先日開催された「ifLink Open Community 2021 Winter Festival」(※)で成果発表を行いました。そこでは、先ほど相澤さんからお話しがあったようなifLinkオープンコミュニティのメンバー、デンソーさんや同じ東芝のプログラムで採択されているフューチャーロケットさんなどと、ifLinkの様々なサービスのアイデアを実装し、ウェビナーでお話をしました。

※ifLink Open Community 2021 Winter Festivalのダイジェスト動画はこちらからご覧いただけます。

・オープニングDAY https://www.youtube.com/watch?v=RKMkCmlmGI4

・フィナーレDAY https://www.youtube.com/watch?v=mgp_xezLT68

今後も目指す方向は変わらず、ifLinkオープンコミュニティの会員企業と共にIoTの民主化に向けた活動を続けていきたいと思っています。


――最後に、改めて「TOSHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM」の魅力と、第2期の応募を検討している企業に向けたメッセージをお願いします。

conect.plus 坂井氏 : これからのビジネスはIoTに限らず、様々なレイヤーと技術で構成されていくと思います。一社単独でのサービス構築・推進は、困難になっていくでしょう。その中で、東芝オープンイノベーションプログラム、そしてifLinkオープンコミュニティには、各社がそれぞれ違う強みを持ちながらも、同じ課題や目指す社会を共有し、立場を超えて共創できることが魅力です。

私たちもIoTの民主化に向け、東芝さんをはじめコミュニティのメンバーと強い仲間意識を感じています。そういった活動にご一緒いただける企業と出会えることが楽しみです。

取材後記

共創がスタートして1年足らずだが、実証実験がスタートしていたり、コミュニティ内で複数の協業が生まれていたりと、東芝とスタートアップとの信頼関係や「本気度」が見えるインタビューだった。スタートアップにとっては、府中事業所の広大な実証実験のフィールドや、ifLinkコミュニティのような同じ未来図を描く同志が多く集まる場にアクセスできることは、非常に魅力的ではないだろうか。

「TOSHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM 2021」は、参加者を募集中であり、4月13日(火)にはプログラム説明会が開催される。東芝グループとの共創に興味を持つ方は、ぜひ応募をお勧めしたい。

※「TOSHIBA OPEN INNOVATION PROGRAM 2021」の詳細は以下をご確認ください。

https://event.samurai-incubate.asia/toshiba-oip2021/ 

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵)

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