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【富士通アクセラレータプログラム 第6期募集開始!】~共創事例インタビュー!株式会社BIT×富士通の共創のカタチ~

【富士通アクセラレータプログラム 第6期募集開始!】~共創事例インタビュー!株式会社BIT×富士通の共創のカタチ~

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スタートアップ企業との共創を積極的に進めている富士通。互いの強みを活かして新たなビジネスを創出するアクセラレータプログラムは、早くも6期目の募集がスタートしようとしている。 数ある共創の中から、今回は株式会社BITとの協業を取り上げる。

BITは、自動ネイルプリントサービス「INAIL」(アイネイル)を展開するスタートアップだ。第4期アクセラレータプログラムへの参加が縁となって富士通ビー・エス・シーとの連携を深め、4月には神戸市のイベントで、実証実験を実施。商用展開に向けて着々と取り組みを進めている。 

一見まったく異なる領域でビジネスを展開する両社が、どのような共創をしているのか。富士通のアクセラレータプログラムの特徴とは。BIT木下氏と、富士通ビー・エス・シー小町氏、そしてアクセラレータプログラムを運営する松尾氏に話を伺った。 

▲株式会社BIT 代表取締役社長 木下靖堂氏

▲写真左/富士通株式会社 マーケティング戦略本部 ビジネス開発統括部 ベンチャー協業推進部 松尾圭祐氏 

▲写真右/株式会社富士通ビー・エス・シー 小町昂平氏

第4期富士通アクセラレータプログラムをきっかけに、協業をスタート

――自動ネイルプリンター「INAIL」を手掛けていらっしゃるBITさんですが、まずは簡単に事業内容やビジョンについてお話しいただけますでしょうか。

BIT 木下氏 : 日本国内のネイル市場は20年ほど前から右肩上がりの成長を続け、現在2400億円ほどです。まだマーケットとしてポテンシャルはあると思うのですが、昨今は頭打ちの状況にあり突破口が求められています。また、技術を持ったネイリストによる施術の良さは当然あるものの、アート工程には時間がかかるため、忙しい女性がネイルサロンに通う時間を捻出しにくいという現状もあります。そこで当社は、ネイルアート工程を自動化し施術時間を大幅に短縮できる「INAIL」を開発しました。2017年1月に立ち上げ、現在は美容系サロンを中心にサービスを展開しています。

――BITさんと富士通ビー・エス・シーさんとの協業は、第4期アクセラレータプログラムがきっかけでスタートしたそうですね。BITさんが一見「畑違い」とも思える富士通のアクセラレータプログラムに応募した理由は何だったのでしょうか?

BIT 木下氏 : 当社のビジネスは、プリンター端末を販売して終わりではありません。将来的な展開として、爪にプリントするデータを流通させるマーケットを創っていきたいと考えています。その際、クラウドなどデータをシームレスに配信する仕組みが不可欠です。富士通さんであればそういったリソースをお持ちですし、様々なスタートアップとの協業も進めていらっしゃるので、様々な可能性を探ることができそうだと思い応募を決めました。

――富士通ビー・エス・シーさんとしては、どんなミッションを持ってアクセラレータプログラムに参画されたのでしょうか?

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : 当社はシステムインテグレーションをメインに事業を展開していますが、これからの時代は、顧客からの要望にあわせたものをただ作るだけでなく、世の中の動きに合わせてサービスをデザインして発信していくことも必要です。今まで自社が取り組んでいない分野でも新たなサービスを作るには、その分野の知見や技術をお持ちのベンチャーさんと協業するのがいいのではないかと考え、アクセラレータプログラムへの参画を始めました。

――富士通グループ企業と、美容業界にサービスを展開するスタートアップ、かなり意外な組み合わせにも見えます。協業に至った背景とは?

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : そうですね、実は正直なところ、美容やネイルというのは当初全く想定していませんでした。しかしネイルプリンターはネットワークに繋がっており、IoTデバイスと捉えることができます。当社のIoTやAIの技術と、「INAIL」を組み合わせれば、何か新しいことや面白いことができるのではないか。そう考えたことが協業のきっかけです。先ほど木下さんがおっしゃったデータマーケットという世界はあり得るなと思いましたし、当社としてもデータマーケットのプラットフォーマーになろうという意識もありました。

一度暗礁に乗り上げたが、あきらめずに検討を続け突破口を見出す

――2017年の秋に協業が決まり、そこから検討活動をスタートさせていったとのこと。業界も規模も全く異なる両社ですが、スムーズでしたか?

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : 最初は暗中模索の状態でしたね。ネイルプリンターがそれほど流通していない中でデータマーケットを作っても意味がないので、まずはネイルプリンターが広く使われるにはどうすればいいのかを考えていきました。そこで着目したのが、セルフネイルです。富士通のITテクノロジーを用いて、プロの手を借りずに自分で下処理からアートまで行うことができるようになればいいのでは、と考えて社内の女性を対象にPoCを行いました。しかし感触があまりよくなくて……。

――それはなぜですか?

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : セルフネイルは、プロの施術と比較するとやはり見劣りします。ネイルはおしゃれの一環ですから、やはり仕上がりが良くなければなりません。そこを考えると、セルフネイルで広めていくのは難しいのではないかという結論になり、一時暗礁に乗り上げたんです。

BIT 木下氏 :  それが昨年末ですね。しかしそれで終わりにしたくないという想いが両社にもあり、年明けに一旦仕切り直しをして続けていこうということになりました。

――仕切り直しをして、どのような出口が見えてきたのでしょう?

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : まず、3Dプリンターのように個人や企業が持っているデータ設計図をオープンにして流通させることができれば、世の中に広く受け入れられるのではないかと考えました。ただ、その段階ではどんなビジネスモデルにしていくかまでは思い至らなかったんです。そんな時に、事務局の松尾さんから「ライセンスビジネスにフォーカスすると良いのでは?」と提案をもらいました。

富士通 松尾氏 : デザイナーさんが作るネイルのデザインだけではなく、キャラクターデザインなど、企業や個人が保有するデジタルコンテンツを流通させるプラットフォームを作ることができたら面白いな、と考えたんです。

BIT 木下氏 : 当初はネイルにフォーカスしたマーケットプレイスを考えていたのですが、富士通さんとディスカッションする中で、より抽象化して、コンテンツやデータの流通と捉えると、可能性がぐんと広がると感じました。

――最初に壁にぶつかった段階で諦めず、続けていったことが素晴らしいと思います。

富士通 松尾氏 : そうなんですよ。大抵、協業検討を始めて数カ月で行き詰ると、みんな諦めてしまうんです。しかしこの場合は両社とも、「やりたいと言ったからには小さくても良いのでアウトプットを出そう」と、チャレンジする意欲を見せてくださった。事務局としても非常に嬉しかったですね。

「INAIL」によるネイルアートを、実際に体験!

――それが、4月に神戸で行われたイベント「078(ゼロ・ナナ・ハチ)Kobe」での実証実験に繋がっていくのですね。

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : そうですね。078Kobeは市民参加型イベントのため、一般のお客様が多くご来場されました。そこで、企業・自治体・個人が持つコンテンツを利用したネイルサービスを来場者の方に体験していただき、コンテンツを利用したサービスの消費者ニーズを検証していきました。

――今回、実際に「INAIL」を体験しながら、小町さんと木下さんに解説していただこうと思います。

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : まずはスマートフォンの専用アプリで、好きなデザインを選択・購入します(画像①)。そして、購入したデータを「INAIL」に転送します。

▲画像①

BIT 木下氏 : 爪に下処理を行った後(画像②)、転送したデザインデータを「INAIL」で自動プリントします(画像③~④)。爪の位置や形を自動認識し、指1本に対して15秒という短い時間でネイルアートを施すことができます(画像⑤)。下処理と仕上げを含めて5分程度ですね。

▲画像②

▲画像③

▲画像④

▲画像⑤

――本当にあっという間ですね!しかも、プロのネイリストさんでも難しい精緻なデザインができるんですね。実際、イベントでの感触はいかがでしたか?

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : 約200人の方に体験をしていただきました。「INAIL」で元々展開しているネイルデザインに加えて、神戸市のキャラクターやロゴなど通常はネイルにあまり使用しないデザインも多く選ばれていました。意外だったのは、利用者の3分の1が男性だったことです。イベントというオープンな雰囲気と、キャラクターがプリントできるという珍しさもあったのだと思いますが、プリントできるコンテンツを広げることにより、ユーザー層も大きく広がるのではないかという可能性を感じました。

BIT 木下氏 : 通常、ネイルは女性がメインターゲットで、身だしなみや美しさのために行うことがほとんどです。しかしそこにキャラクターやイベントといった要素を加えることによって、新たなターゲットや楽しみ方が創出できることが分かりました。これは大きな収穫ですね。

――今後の展開としてはどのように考えていらっしゃいますか?

BIT 木下氏 : ネイルプリンターを用いたネイルサービスの市場は、まだ黎明期です。今後も当社としては、美容系サロンの展開を中心にマーケットを広げていくことが前提としてあります。一方で富士通さんとの協業で見えてきたように、コンテンツを持つ企業と掛け合わせることで、新たな付加価値を持ったサービスを提供できると考えています。例えば、アパレルブランドの新作ワンピースに合わせたデザインのネイルがその場でできるなど、可能性は広がりますよね。

富士通ビー・エス・シー 小町氏 : そうですね。アパレルはもちろん、アミューズメントやスポーツ、地方創生イベントなど、コンテンツを持つ相手と多様なコラボレーションができるはずです。今後も富士通フォーラムといった展示会で幅広い業種のお客様に見ていただき、事業化に繋げていけたらと思っています。

確固たる強みと意思を持つスタートアップと、新たな世界を作りたい

――木下さんが今回の協業を通して感じたことや、スタートアップとして富士通のアクセラレータプログラムに参加するメリットを教えてください。

BIT 木下氏 : どんな相手と組むにしても、曖昧なまま成果が出ることはありえません。互いにリソースやコストを割く中で、「こんなことをしたい」「これはできない」など遠慮せず言いたいことをはっきり言うことが重要だと思います。その点で、今回の場合は事務局の松尾さんが間に入り、コミュニケーションを取りやすい環境を整えてくださいました。最初から腹を割って話せたことが、今に繋がっていると思います。また、協業が始まってから3カ月後にDemo dayがあるのですが、期限に固執しすぎず、その後も協業を続けていけたことは私たちにとって良かったことですね。

富士通 松尾氏 : スタートアップの方から「他のアクセラレータではマッチングして終わり、Demo dayの後はご自由に、というケースが多い。富士通はしつこく続けてくれるのが良い」と言われて衝撃を受けたことがあります。知らない相手と出会って短いスパンの中で同じ目線になるって、そう簡単なことではないですよね。生きるか死ぬかの世界にいるスタートアップと、すぐ倒れることはない大企業、全然違う目線ですから。そうした中で、一緒に「世界最高を目指そう」と走っていく雰囲気や環境を作っていくことを、事務局としても大切にしています。

――粘り強くサポートしていくことが、富士通さんの特徴なのですね。これから第6期の募集が始まりますが、どんなスタートアップと協業したいと考えていらっしゃいますか?

富士通 松尾氏 : 「自分たちはここに自信がある」と明確に言い切れるスタートアップの方に来ていただきたいと思っています。実際に木下さんから応募いただいた時、事業があまりに富士通のポートフォリオとかけ離れていたため、最初は「うちでは難しいだろう」と思っていたんですよ。 しかし蓋を開けてみたら、木下さんの「美容業界でテクノロジーを活用していく」という信念と「ナンバーワンでありたい」という強い意志に惹かれて、富士通ビー・エス・シー以外の部署からも協業したいと手が挙がりました。特に今回の組み合わせで生まれる事業は、ナンバーワンというよりオンリーワン。一見異なる業域であっても、確固たる強みと意思を持った方々と一緒に、新しい世界を作っていきたいですね。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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  • 吉田功

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