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三菱電機の協創パートナー募集開始ーFA分野に特化したアクセラで、世界の製造業をアップデートする

三菱電機の協創パートナー募集開始ーFA分野に特化したアクセラで、世界の製造業をアップデートする

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日本が提唱する、未来社会のかたち「Society 5.0」。革新的な情報技術の活用により、一人ひとりが快適で、活躍できる社会の実現を目指すこの構想において、とりわけ製造業への期待は大きい。

国内産業の競争力強化、人手不足の解消、多様化する消費者のニーズといった、現在の日本に山積する課題の解決には、ものづくり分野における技術革新、新たな価値提供を通じた「社会システムの最適化」が必要不可欠なのだ。

2019年、三菱電機株式会社(以下、三菱電機)は、株式会社グロービス(以下、グロービス)と共同して、FA(ファクトリーオートメーション)分野における新規事業創出を目指すアクセラレーションプログラムを創設。国内スタートアップから事業アイデアを募り、未来社会の礎となる革新的技術の協創に取り組んでいる。

「MITSUBISHI ELECTRIC ACCELERATION 2020-2021」では、以下の4つのテーマで事業アイデアを募集。約半年間に渡る書類選考、インキュベーション、審査会等を通じてパートナー企業を採択する予定だ。


そこで今回は、三菱電機におけるFA事業の中核拠点である名古屋製作所で、「MITSUBISHI ELECTRIC ACCELERATION 2020-2021」の内容を取材。

プログラムを主導する「事業戦略プロジェクトグループ」のマネージャー・髙田志郎氏のほか、2019年度のプログラムで採択された株式会社HACARUS(以下、ハカルス)の代表・藤原健真氏、株式会社ムセンコネクト(以下、ムセンコネクト)の代表・水野剛氏にも話を伺い、三菱電機における協創の実態に迫った。


【写真左】 三菱電機株式会社 名古屋製作所 事業戦略プロジェクトグループ グループマネージャー髙田志郎氏

【写真中】 株式会社HACARUS 代表取締役CEO 藤原健真氏

【写真右】 株式会社ムセンコネクト 代表取締役CEO 水野剛氏

強みは「現場の近さ」。三菱電機が世界に誇る「名古屋製作所」が協創に見出した可能性

――まずは髙田さんがマネージャーを務めている事業戦略プロジェクトグループについて教えてください。

三菱電機・髙田氏 : 事業戦略プロジェクトグループは、2018年4月に、名古屋製作所内の14のビジネスユニット(BU)を横断する組織として設立されました。もともと、名古屋製作所は社内で「母なる名古屋製作所」と呼ばれており、新製品を開発して他の工場に移管したり、三菱電機のものづくりの基盤となるFAの技術を多数開発したりしてきました。

しかし、近年の世界全体における技術革新の流れは極めて早く、そのなかで名古屋製作所もさらに事業を加速させる必要があります。そこで、これまで独立性が高かったBU間を連携させ、新たな事業を生み出す役割を、事業戦略プロジェクトグループが担っています。


▲三菱電機株式会社 名古屋製作所 事業戦略プロジェクトグループ グループマネージャー髙田志郎氏

1986年、三菱電機入社。2018年より、事業戦略プロジェクトグループのマネージャーに就任し、名古屋製作所における新規事業創出の取り組みを主導している。

――そうした”横連携”の促進を目的に発足された組織が、アクセラレーションプログラムをスタートさせたのはなぜでしょうか。

三菱電機・髙田氏 : 事業を加速させるうえで組織間の連携は必要不可欠ですが、一方で、そうした自前主義だけでは、現在の激変する市場環境を乗り切ることはできないのも事実です。

近年は、「Society 5.0」に象徴されるように、AI、IoT技術の産業利用が高い注目を集めています。さらに最近では、コロナ禍の影響により、製造業の現場における自動化のニーズが急激に高まっています。こうした時代の動きとニーズの変化に追いつき、さらにその将来像を描きながら、先進的な製品やソリューションをご提案していくためには、スピード感があり、高い情報感度を持ったスタートアップさんとの協創が欠かせません。

ちょうど、そんなことを思案していた昨年に、グロービスさんからアクセラレーションプログラムの開催をご提案頂きました。初めての試みということもあり不案内な領域ではあったのですが、「これは一度やってみる価値はあるのではないか」と思い、実施を決定しました。

――三菱電機のアクセラレーションプログラムの強みについて教えてください。

三菱電機・髙田氏 : 「広範な販売網」と「現場の近さ」は大きな強みだと自負しています。名古屋製作所では、毎年1,000万台以上のFA製品を世界94カ国の製造業のお客様にお届けしています。こうしたグローバルかつ広範囲な販売網は、スタートアップの皆様にとっても魅力的に映るのではないかと思います。

また、名古屋製作所には14のBUだけでなく、各BUに紐づいた開発・設計・製造等の部署も設置されています。また、FA統合ソリューション「e-F@ctory」の推進も担っています。こうした「現場の近さ」は協創を進めるうえで非常に有効です。

例えば、名古屋製作所には実に多彩な製造設備が設けられており、そこで製造する製品も、月産数十台から数十万台のものまで多様です。今回のプログラムでは、これらの充実した施設や設備を活用した開発ができるため、事業アイデアを実現しやすい環境があると思います。

事実、現在、昨年のプログラム採択企業の皆様と実証実験を進めているところですが、それぞれの企業が持つ技術に適した環境で、精度の高い実験を行うことができています。

【ハカルス】生産現場の自動化を促進する独自の軽量AIの実証フィールドは名古屋製作所

昨年船出した三菱電機のアクセラレーションプログラム。そこで採択された企業との協創は、現在どのような経過に至っているのか。そこで昨年の採択企業2社にもインタビューを実施。1社目は「AI技術を活用した生産現場自動化ソリューションの創出」というテーマでプログラムを勝ち残ったAIスタートアップの株式会社HACARUSだ。


▲株式会社HACARUS 代表取締役CEO 藤原健真氏

――ハカルスが昨年、プログラムに応募した経緯を教えてください。

ハカルス・藤原氏 : 当社は製造業向けのAIソリューションを開発するスタートアップで、以前から製造業の事業会社が開催するアクセラレーションプログラムへの応募を検討していました。そんなときに三菱電機さんがプログラムを主催するのを知って、「これしかない!」と思ったのが応募のきっかけです。

AIのソフトウェアを製造現場に実装するためには、データを収集するセンサーや、プログラムを物理運動に変換するアクチュエータ等、数々のハードが必要になるんですが、三菱電機さんはそれらが全て揃っていました。充実した開発環境に惹かれての応募でしたね。

――その後、「AI技術を活用した生産現場自動化ソリューションの創出」というテーマでプログラムを採択されています。このテーマに至った経緯について教えてください。

ハカルス・藤原氏 : ハカルスはAIスタートアップですが、一方で、三菱電機さんも当然AIの研究はされているので、事業としてバッテイングする部分が出てきます。なので、三菱電機さんがまだAIで解決されていない分野で、かつ、製品に付加価値を与えられるソリューションという軸でテーマを絞り、現在の内容に至りました。

三菱電機・髙田氏 : ハカルスさん独自の軽量AIを、我々の製品と掛け合わせることで、さらなる付加価値や製品としての競争力が生まれるとにらんでいます。

AIのディープラーニングは一時、急速に流行した技術ですが、膨大な計算資源を必要とするためFAの領域で実用化するには、まだまだ壁が高いです。その点、ハカルスさんのソリューションは非常に斬新で、魅力的な事業アイデアでした。

――2020年1月の採択から現在まで、具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか。

ハカルス・藤原氏 : 数ヶ月ほど前から実証実験をスタートさせています。まだ詳細はお話しできませんが、私としては良い結果が出せていると思っていますし、もし実証実験が成功すれば、競争力の高い製品が必ず生まれるという確信も得られています。

現在は実装のフェーズなのですが、今後はお客様や三菱電機さんの社内で実際に使っていただいて、製品にどれくらいの付加価値があるのかを見極めていこうと考えています。


――現在までの取り組みを振り返って、三菱電機のアクセラレーションプログラムの魅力は何だと思いますか。

ハカルス・藤原氏 : やはり「現場」ですね。製造現場が同じ所内にあることによるメリットは非常に大きいです。例えば、私たちとの協創のなかでも、共有したソフトウェアを翌日には実際の製造現場で試していただき、すぐにフィードバックが返ってきたということがありました。このスピード感は、規模の大きな現場を持ってらっしゃる三菱電機さんでなければ実現できないのではないでしょうか。

また、プログラムを主導する事業戦略プロジェクトグループの皆さんの行動力も魅力のひとつです。大企業や製造業という分野には、どうしても旧態依然としたイメージがあります。しかし、私は皆さんにお会いして、そのイメージが一変しました。「新しいものを産み出そう!」という意気込みでプログラムに取り組んでらっしゃるんですね。

そのため、これまで製造業に関わったことのないスタートアップの方々でも評価されやすい環境だと思います。今年のプログラムには、様々な技術を持つスタートアップにドアをノックしていただきたいですね。

【ムセンコネクト】三菱電機の魅力は『人』。協創チームと共にBluetooth技術で製造業の無線化に挑む

続いては、Bluetoothに特化した無線化支援サービスを提供する株式会社ムセンコネクトだ。同社の創業は2019年4月であり、プログラム応募時はまさに創業したばかりという状態。歩み出したばかりのスタートアップが、三菱電機との協創を実現させるまでの道のりを伺った。


▲株式会社ムセンコネクト 代表取締役CEO 水野剛氏

――ムセンコネクトが昨年、プログラムに応募した理由は何だったのでしょうか。

ムセンコネクト・水野氏 : 応募の動機は、私たちが提供するBluetoothに特化した無線化の技術が、社会にどれほど貢献できるのか、世の中にどれくらいのインパクトを残せるのかを試してみたかったというのが大きいです。

私たちはステートメントに「No Border」と掲げているのですが、そこには既定の枠組みにとらわれず、様々な境界線を乗り越えて成長していきたいという想いが込められています。そのため、自社の外に飛び出して、新たなビジネスの成果を生み出し、さらなる成長を実現するためには、アクセラレーションプログラムへの参加が必要だと。そんなときに三菱電機さんのプログラムを知って、応募を決めました。

――しかし、創業間もないなかで、プログラムに取り組む難しさはあったのではないでしょうか?なにかプログラムのなかで特に注力した点はありますか。

ムセンコネクト・水野氏 : 「協創の旗振り役は自分だ」という主体性を持ってプログラムにのぞんでいましたね。例えば、審査のプレゼン資料を作るのにも、他のスタートアップさんは三菱電機さんと共同で作成されていたようですが、ムセンコネクトは私が主体となって骨子をまとめて、三菱電機さんにフィードバックをもらいながら完成に近づけていきました。そのため、プレゼンにも一貫性のあるストーリーを持たせることができたのかなと思っています。

――三菱電機はムセンコネクトの、どのような点を評価したのでしょうか。

三菱電機・髙田氏 : まずは、FAにおける無線化は非常に将来性がある分野だという点です。現状、FAにおいては通信速度等の問題から、まだまだ有線による通信が主流です。しかし今後は5Gが広く普及し、必ず無線化の時代が到来します。そのときに、ムセンコネクトさんの技術が役に立つ局面が出てくるはずです。

また、事業とは別の話ですが、水野さんのポジティブな人柄も採択のひとつの要因だったと思います。もちろん事業アイデアはプログラムのなかで磨き上げていくのですが、協創を進めるなかで「やれそうだね!」という前向きな感情を両社で共有するのも大切なんですね。

水野さんはそうした雰囲気を醸し出していましたし、ムセンコネクトさんのチームは全チームの中でも一番の一体感がありました。最終の審査会でも参加企業で唯一、メンバー全員で同じTシャツを着て発表されていて、非常に印象的でした。


――そうした審査を経て、ムセンコネクトは「無線技術による生産現場改善ソリューションの創出」というテーマで採択されました。現在、協創の状況はいかがでしょうか。

ムセンコネクト・水野氏 : 途中、コロナ禍の影響もありましたが、それでも今年の8月までに計3回の実証実験を実施しています。外部環境が大きく変化しても、協創を力強く推進できたのは、ひとえに三菱電機さんのスピード感と豊富なリソースのおかげでしたね。

――では最後に、三菱電機のアクセラレーションプログラムの魅力について教えてください。

ムセンコネクト・水野氏 : 一言でいうと、髙田さんが率いている事業戦略プロジェクトグループの「人」だと思います。とにかく真剣にスタートアップに向き合って、話を聞いて、ボールを打ち返してくれる。

しかも、視点がマーケター的で、単に両社の技術を繋ぎ合わせるだけではなく、それによってどんな付加価値を生んで、どうやって市場に届けるかという点まで考えて、事業に伴走してくれる。こうしたサポートは、他のアクセラレーションプログラムではなかなか受けられないのではないでしょうか。

ですので、私たちのような、創業間もないスタートアップでも、「これがやりたい」というビジョンさえ明確に持っていれば、成果を出せる環境だと思います。今年のプログラムには、これまでの実績や年次に関わらず、多くのスタートアップに参加してほしいですね。

取材後記

1924年に設立され、今や世界のFA技術を支える三菱電機・名古屋製作所。開発・生産体制は世界に冠たるものであり、特に国内では類を見ない規模を誇っている。そんな場所を舞台として、事業のアイデアを育てていく経験は、何にも代えがたいはずだ。

「MITSUBISHI ELECTRIC ACCELERATION 2020-2021」のエントリーはすでに開始されている。今年も、日本のものづくりを明るい未来に導く、新たな事業が生まれることに期待したい。


(取材・編集:眞田幸剛、文:島袋龍太、撮影:齊木恵太)

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