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ビジネスのルールを一新する「サーキュラー・エコノミー」を解説。日本の現状と5つのビジネスモデルとは?

ビジネスのルールを一新する「サーキュラー・エコノミー」を解説。日本の現状と5つのビジネスモデルとは?

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約250年続く資本主義の中で最大の革命と言われる「サーキュラー・エコノミー」が注目を集めています。海外では既にサーキュラー・エコノミーのための規制も設けられており、これからビジネスのルールは大きく変わっていくでしょう。これまで「地球環境への配慮」は、余裕のある大企業の責務だという風潮がありましたが、これからは違います。地球環境への配慮なくしてビジネスの成功はないと言えるでしょう。

この記事ではサーキュラー・エコノミーについて、その概念や今の時代に求められている背景、実現するためのビジネスモデルを紹介していきます。

リニアエコノミーとリサイクリングエコノミー

サーキュラー・エコノミーについて紹介する前に、まずは従来の経済システムである「リニア(一方通行)エコノミー」について紹介しましょう。リニアエコノミーとは簡単に説明すると「take(原材料の採掘)」「make(製品の製造)」「waste(消費、廃棄)」の直線型の経済システムです。私達がこれまで目にしてきたシステムなので、想像に難くないでしょう。いわば「使い捨て」型の消費モデルといいます。

WWFの試算によれば、現在の人類に消費の大きさは地球の生産量に対して1.7倍に値します。オーバーしている消費分は森や海などでの乱獲や、大量の二酸化炭素を排出することで、未来から先借りしていると言えるでしょう。この状態が続けば、2030年に地球2つ分の資源が必要になると言われています(※)。

※WWFジャパン「なぜ環境問題に取り組むのか」より

 その反省を踏まえて、廃棄を少しでも減らそうという考えのもとに生まれたのが「リサイクリングエコノミー」です。日本でも2000年頃ころから「循環型社会形成推進基本法」に基づく「3R(リデュース、リユース、リサイクル)」活動が広く認知されるようになりました。しかし、リサイクリングエコノミーは「廃棄物の有効活用」を目的にしていることから、廃棄物の発生を前提としています。そのためリニアエコノミーよりは環境に優しいとは言え、リニアエコノミーの延長と言えるでしょう。地球が抱える課題を根本的に解決するには至りません。

サーキュラー・エコノミーとは

「大量生産・大量消費・大量廃棄」を特徴とするリニアエコノミーとは違い、今地球にある資源を循環させて利益を生むのが「サーキュラー・エコノミー」の概念です。オランダ政府によればリニアエコノミー、リサイクルエコノミーと比較して、次のような図でサーキュラー・エコノミーは表されます。

※出典:Circular Economy Lab JAPAN「サーキュラーエコノミーとは」

持続的な循環を生み出すため、サーキュラー・エコノミーは次の3つの原則のうえに成り立っています。 

①廃棄物と汚染を生み出さないデザイン(設計)を行う

②製品と原料を使い続ける

③自然のシステムを再生する

これら3つの原則を実現するためのモデルが「バタフライダイアグラム」と呼ばれる次の図です。 

※出典:サーキュラーエコノミー・ジャパン設立記念カンファレンス 先行事例から学ぶ日本での可能性

注目すべきは左右に広がる2つの輪。右側は石油や鉄鉱石といった枯渇性資源の循環を表し、左側は植物や魚といった再生可能な資源の循環を表しています。それぞれできるだけ内側のサイクルで循環させることが望ましいとされています。例えば右側の技術的サイクルであれば、できるだけ修理やメンテナンスで長く使うことが望ましく、次がリユース、再分配、それでもダメなら部品に分解して再度製品を作り直します。原料に戻してから製品を作り直すのにも資源や労働力を使うため、最後の手段として捉えています。

また、生物的サイクルは永続的なリサイクルができないため、技術的サイクルとは違い最後は土に戻す、もしくはバイオマスに変えるのが理想的なサイクルです。土やバイオマスにすることで新たなエネルギーとして次の植物や活動に繋がっていきます。アクセンチュアによれば、これらのサーキュラー・エコノミーの活動は「2030年までに新たに4.5兆もの利益を生み出せる」とされています。そのため、世界中の国家や企業が先陣を切ってリーダーシップをとろうとしており、多くの国がサーキュラー・エコノミーを政策に取り入れようとしているのです。

日本におけるサーキュラー・エコノミー

海外ではサーキュラー・エコノミーの概念が浸透し始めています。例えばドイツでは、再生プラスチックが10%以上使用されているICT機器でなければ、公共調達の対象にならないなどの政策もあるほどです。一方で日本ではサーキュラー・エコノミーはどれくらい広がっているのでしょうか。結論から言えば、日本はサーキュラー・エコノミーの後進国と言わざるを得ません。その要因について見ていきましょう。

●3Rとサーキュラー・エコノミーを混同している

日本は環境に優しい社会モデルだとイメージを持つ方もいますが、その理由は日本が「リサイクリングエコノミー」の先進国だからです。日本の3Rの技術は世界でもトップクラスで、リサイクルの概念は日本の社会にも根付いています。しかし、先述したように3Rは環境問題の根本的な解決策としては不十分です。3Rを徹底しているという安心感が、日本がサーキュラー・エコノミー後進国だと気づきにくい要因の一つだと言えるでしょう。

●日本のリサイクルは地球に優しくない

日本では、厳密なゴミの仕分けルールと、優れたごみ焼却炉の燃焼技術から、ゴミを燃やした熱をエネルギーとして使う「サーマルリサイクル(熱回収)」が主流になっています。エネルギー量の高いプラスチックを燃やすことで、電力会社で発生する温室効果ガスを減らし、埋め立てゴミが低減させるなどのメリットがあります。しかしその一方で、地球温暖化に影響のある温室効果ガスを発生させ、燃焼後に残る灰には強い毒性があるといったデメリットも。そのため海外では、サーマルリサイクルをそもそもリサイクルとして見なしていません。海外では燃やさずに再生利用する「マテリアルリサイクル」や化学物質レベルに変換して再利用する「ケミカルリサイクル」が主流になりつつあります。

●消費者の意識

海外でサーキュラー・エコノミーが普及している理由の一つに、消費者の環境意識が高いことが挙げられます。例えばEUではNGOが環境に負荷をかける企業にプレッシャーを与え、それに対して消費者による不買運動が起きました。つまり、海外では環境問題に配慮していることは、ビジネス的にも大きな差別化ポイントになるのです。それに比べて日本では不買運動が起きるほど環境問題への意識は高くありません。企業が環境問題に配慮しても、ビジネス的なメリットにならないことも、日本でサーキュラー・エコノミーが普及しない要因の一つと言えるでしょう。

 

サーキュラー・エコノミー型の5つのビジネスモデル

日本では環境の配慮とビジネスの成長は二者択一で捉えられることもあります。しかし、アクセンチュアによれば、サーキュラー・エコノミーを実用レベルのビジネスモデルに落とし込むことで、経済的な成長にも繋がるとされています。アクセンチュアが資源効率性を上げている120社以上の企業を分析して特定したのが、次の5つのビジネスモデルです。

●再生型サプライ

再生型サプライとは、リサイクルや生物分解が可能な原材料の製品や、繰り返し再生し続ける100%再生可能な製品を作ることを指します。例えばサステナブルな繊維を開発する企業などが該当します。海外ではサステナブルな生産にこだわるアパレルブランドも多く、環境に優しい素材を開発することは大きな競合優位性になるのです。

●回収とリサイクル

不要になった資源を回収し、リサイクルすることで無駄を減らすことです。日本でも使い終わった商品を回収してリサイクルする企業が多いため、イメージしやすいでしょう。

●製品寿命の延長

高品質で耐久性に優れた製品づくりや、中古品の修繕や再販を通じて、製品の耐用年数の延長によって価値を生み出す考え方です。スウェーデンでは政府が修理代にかかる付加価値税の引き下げを検討するなど、国家が主体となってサーキュラー・エコノミーを推進しています。同国には、自社が販売したジーンズの修繕を無償で行うジーンズメーカーもあります。

●シェアリング・プラットフォーム

使われていない資源を他者と共有する考え方。日本でもAirbnbやUberが進出したことにより「シェアリング・エコノミー」の考え方が広く普及しました。今では様々な遊休資源をシェアするサービスが誕生しています。

●サービスとしての製品

これまで売り切りだった製品を従量課金制のようなサービス型に切り替える考え方です。

SaaSを始めとする「○aaS」系のサービスやサステナブルサービスなどが当てはまります。海外では車の走行距離に応じて使用量を払うタイヤや、明るさに応じて料金を払う照明サービスが誕生しています。

日本におけるサーキュラー・エコノミーの導入事例

海外に比べて遅れをとっている日本のサーキュラー・エコノミー事情ですが、中にはいち早くサーキュラー・エコノミーをビジネスに取り入れている企業もあります。最後にサーキュラー・エコノミーの推進を目的としたプラットフォーム「CE100(サーキュラー・エコノミー100)」に参加している日本企業2社を紹介します。

●ブリヂストン

タイヤメーカーのブリヂストンは、原材料使用量の削減に加えて、原材料の再生使用や再利用を推進しています。具体的には、すり減ったタイヤの表面(トレッド)を張り替えて再利用する「リトレッドタイヤ」の普及に世界各地で取り組んでおり、現在使用量を削減して廃タイヤの削減に貢献。リトレッドタイヤを使ってビジネスモデルも刷新し、これまでのタイヤの単品販売から、タイヤのメンテンナンスを組み合わせた「エコバリューパック」を展開しました。月額定額でタイヤ関連業務をブリヂストンが一括管理することで、顧客からも高い評価を得ています。

※出典:株式会社ブリヂストン 企業サイト・CSR/Environment(環境)|資源を大切に使う「アクション2:資源を循環させる&効率よく活用する」

●三菱ケミカルホールディングス

三菱ケミカルホールディングスは「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」を意味する「KAITEKI経営」をコンセプトに掲げています。その一環としてサーキュラー・エコノミーを重要な戦略と位置づけており、製造プロセス(原料調達~加工)から製品使用後に至るまで、資源を有効利用する取り組みを推進しています。2020年2月には社内にサーキュラー・エコノミー推進部を設け、グローバルな視点・規模で、サーキュラーエコノミーに関連するソリューションの提案と事業化を始めました。今後はアカデミアやスタートアップなどと積極的に連携しながら、サーキュラー・エコノミーの実現を進めていくようです。

※出典:株式会社三菱ケミカルホールディングス 企業サイト オンラインKAITEKIレポート2019「KAITEKI拡がる」

 

編集後記

日本では環境への配慮がビジネス的に大きな差別化には繋がりませんが、世界レベルで見れば環境への配慮は最低限の条件になりつつあります。これからは環境に優しくない素材を使う製品や、無駄を生み出すビジネスが大きな成功を収めることはまずないでしょう。世界を舞台にするビジネスだけでなく、日本市場をターゲットにするにしても、これからは環境への配慮は欠かせません。

(eiicon編集部 鈴木光平)

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