POLA | “異質なもの”の掛け合わせで新たな「パーソナライズ」を生むアイデアソン開催
「最上のものを、一人ひとりにあったお手入れとともに、直接お手渡ししたい」という想いから、1929年に創業され今年で90周年を迎えるポーラ。全国にショップを展開して顧客接点の創出に努め、文字通り一人ひとりに商品やサービスを“手渡し”してきた。2016年にはリブランディングを行い、自社の独自価値を「Science. Art. Love.」を再定義。企業間のコラボレーションイベントなど、他者・他社とのつながりによって生まれる新たな体験価値や可能性の創出にも取り組んでいる。
そのポーラが、外部共創の取り組みを活発化すべく、”Next Personalization”をテーマにしたアイデアソン「POLA BUSINESS BUILD」を6月14日(金)・15日(土)の日程で開催する。
「アイデアを出すだけではなく、事業化を見据える」ことを強く意識した今回のアイデアソンの特徴や魅力、提供リソースなどについて、事務局を担う市場接点開発部の4名に話を聞いた。
■POLA BUSINESS BUILD開催概要(TECH PLAY SHIBUYA)
・2019/6/14(金)13:00~18:00
・2019/6/15(土)10:00~19:00
https://eiicon.net/about/pola-businessbuild/
■株式会社ポーラ 市場接点開発部 接点開発チーム チームリーダー 福地智也氏<写真左>
2003年入社。人事や地方拠点など様々な部署で経験を積む中で、ポーラはもっと外部との共創を深めることでさらに可能性が広がるのではという考えに至る。それが今回のアイデアソンの背景となっている。2018年に創設された市場接点開発部のリーダーに就任。顧客接点創出のためのイベントなど、全社を巻き込んだ取り組みを手がけている。
■株式会社ポーラ 市場接点開発部 接点開発チーム 田中美帆氏<写真左から2番目>
2009年入社。以前はマーケティング部門にて、ポーラの魅力を潜在顧客に伝える初期コミュニケーションを担っていた。市場接点開発部では、プロダクトイベントなどを手がけている。
■株式会社ポーラ 市場接点開発部 接点開発チーム 溝口翼氏<写真右から2番目>
2014年入社。昨年までは静岡にて販売店の担当として顧客接点の創出などに取り組む。市場接点開発部では、LINE公式アカウントの提案や、潜在顧客に対するアプローチ法についての企画などに携わっている。
■株式会社ポーラ 市場接点開発部 接点開発チーム 菅原福太郎氏<写真右>
2018年入社。新卒入社時から市場接点開発部に配属。海外でのイベントやコミュニケーション企画を主体に、様々な企画に関わっている。
外部共創により、新しい発見や驚きを創出していきたい
――アイデアソン「POLA BUSINESS BUILD」を開催するにあたり、貴社が外部共創に取り組む意思決定をした背景についてお聞かせください。
田中氏 : 当社は2029年に創業100周年を迎えます。そこに向けた『2029年長期ビジョン』では、「Special One『伝統×革新』による『驚きと感動』で、互いを高め合う関係へ」を、ありたい姿として掲げています。そのためには、社内だけではなく様々な外部パートナーとの共創が必要だと考えています。
2016年にリブランディングを行い、新たに「Science. Art. Love.」をブランドメッセージに定め、「Sense & Innovation」を社員の行動スローガンに設定しました。
しかし創業以来90年築き上げてきたリソースを、顧客文脈や社会文脈に変えていくことの難しさを感じています。そこで、今回のアイデアソンでは、「こんな見え方があるのか」という外部からの新たな視点や魅力の掘り起こしができると嬉しいですね。
福地氏 : 化粧品業界はインバウンド需要で活況ではあるものの、その追い風がいつまでも続くわけではありません。今、化粧品会社に必要な視点は、単に化粧品を製造販売するだけではなく、お客様一人ひとりを輝かせるために、幸せにするために何ができるかということです。
そのためには、自社以外のアイデアやリソースを広く求めていく時だということで、今回アイデアソンを開催することとなりました。外部パートナーの方々と新しい発見・驚き・感動を一緒に創出していけたらと思っています。
――皆さんは2018年に創設された「市場接点開発部」のご所属ですが、この部署はどのようなミッションがあるのでしょうか。
福地氏 : 当社が現在抱えている課題の1つは、ショップへの来店ハードルが高いと感じているお客さまが一定数存在することです。そこをクリアするためのイベントなどを各ショップで行っていました。
それを集約し、全社的な視点から顧客接点づくりを行うために2018年にスタートしたのが、私たち市場接点開発部です。イベントだけではなく、LINE公式アカウントなど、ポーラのショップや様々な部署を巻き込んで企画を推進していく“ハブ”としての役割を担っています。
▲全国47都道府県、670店におよぶサロン型ショップ「POLA THE BEAUTY」
3つの募集テーマ「タッチポイント」「顧客体験」「美容×○○」
――今回、募集テーマとして3つ掲げていらっしゃいます。その3つに至った背景について聞かせてください。
福地氏 : 先ほど来店ハードルについてお話をしましたが、これはブランドの課題と捉えています。これまでブランドと接点のなかったお客さまとのコミュニケーションがもっと新しいアプローチで必要だと感じています。今回のアイデアソンにより、「ポーラのショップに行くとこんな素晴らしい体験ができる」など、お客さま一人ひとりにポーラの新しい魅力を作ったり伝えたりするアイデアをいただけたらと思います。――これが”Next Personalization”を掲げ、「タッチポイント」「顧客体験」という3つのテーマに設定した理由です。
また、ポーラがこれまで培ってきた伝統や現在取り組んでいる様々なプロジェクトや活動をもっと世の中に広め知っていただきたいという想いもあります。
創業90年、ポーラにしかできないこと、ポーラだから成し遂げられたことがあるからこそ、ここまでお客さまのご支持をいただいているはずです。そこで「美容×○○」というテーマで、化粧品という枠にとらわれず様々な視点からポーラブランドを捉えなおし、他のリソースを掛け合わせることでより魅力を高め、新たなお客さまとの出会いにつなげたいと考えています。
――来店ハードルの話がありましたが、どのくらいの年齢層をターゲットにしていらっしゃるのでしょうか。
溝口氏 : 従来は、年齢層が高めというイメージがありましたが、現在は20代~30代の方々にもポーラを知っていただき、ショップに足を運んでいただきたいです。
――例えば、どんな技術やサービス、アイデアを期待していますか?
菅原氏 : 海外に目を向けると、中国ではデジタル化が進展しており、様々なことをスマートフォンで解決することができます。日本でも着実にその流れが来ている今、テクノロジーという切り口だけでは他とは差別化ができないと考えています。ポーラのアイデンティティの一つとして、センス・アートがあります。デジタルやテックに限らずアナログでも、もっと感性を刺激するアプローチがあるといいのではないかとチームで話をしていました。
福地氏 : 当社は地方にショップを多数展開しており、日本全国につながりがあります。例えば観光や食など、地方のリソースとポーラの共創により生まれるシナジーも興味深いですね。
――溝口さんは、昨年まで静岡拠点にいらっしゃったそうですが、地方のリソースとはどんなものがあるでしょうか。
溝口氏 : 地方には観光や食といったコンテンツ性の高い魅力があり、地元に強いメディアがあります。そして、全国のポーラのショップオーナーやビューティーディレクターは個人事業主であり、地域コミュニティの関わりも強いです。そうしたところからコラボレーションが進むと、良いものが生まれるのではないかと思います。
全国展開するショップ、そして独自の“肌のビッグデータ”など、魅力的なリソース
――貴社と共創する上でのメリットや、活用できるリソースについてお聞かせください。
溝口氏 : まずは先ほどからお話をしていますが、全国に展開するショップ網です。全国4万5000人に及ぶビューティーディレクターとの連携体制を築くことが可能です。世の中に対するインパクトの大きさについて、魅力を感じていただけると思います。
田中氏 : また、ポーラには健康食品やエステ、ホテルのアメニティなど、幅広い商材があります。その豊富なラインナップを活かしたトータルな提案力があります。そして、メルセデス・ベンツや蔦屋書店など、様々な企業とのコラボレーション活動を実施した実績もあります。
福地氏 : “肌のビッグデータ”もポーラの大きな特徴です。全国47都道府県、16歳以上の日本女性の肌、累計約1800万件の肌データが蓄積されています。しかも1日平均3000件もの新しいデータが追加されており、常に進化を続けているのです。ここから、郵便番号レベルの細分化された地域の気象環境や生活習慣の違いで傾向を割り出し、現在の肌状態から未来の肌を予測することができます。
この“肌のビッグデータ”と、日本気象協会の気象データとの連携による美容アドバイスサイト「美肌予報」や、肌をとりまく環境と肌の状態を都道府県別にランキング化した「美肌県グランプリ」といったコンテンツも運営しています。
また、アペックスというブランドは今年7月リニューアルをしますが、肌のビッグデータとAIを搭載した新技術によって862万通りのパーソナライズドスキンケアを提案します。肌のビッグデータ、分析力、そして全国のビューティディレクターによるパーソナルなケアアドバイス、これはポーラならではです。
――なぜ貴社は長年にわたり、こだわりをもって肌データの収集や活用を行っていらっしゃるのでしょうか。
田中氏 : 根底にあるのは、「最上のものを、一人ひとりにあったお手入れとともに、直接お手渡ししたい」という創業者の想いです。世の中のトレンドをつくるというよりは、個を大切にする。それがポーラの独自性であり、アイデンティティです。
“肌のビッグデータ”とは、ポーラのアイデンティティを体現するもの。お客さま一人ひとりが自分らしく、ベストな美しさを目指す道筋を共に伴走するパートナーでありたい。アイデアソンで設定している”Next Personalization”というテーマも、「一人ひとりに」という創業の理念がベースとなっています。
異質なもの同士の掛け合わせを、プロダクトだけではなくサービスにも広げたい
――ポーラのアイデンティティについて触れて頂きましたが、そのほかにもポーラの社内風土として大切にしていることはありますか。
福地氏 : 部署や役割に関わらず、社内の中でも新しいコト・モノに積極的に取り組んでいる風土があります。今回の企画では、あまり「この分野」と決めず、幅広い方々との色んな掛け合わせができればと考えています。
田中氏 : ポーラでは新しい取り組みを渇望していますし、実現しようという意識がとても強いです。突拍子もない掛け合わせ、異質なモノ同士の掛け合わせ、大歓迎です。驚きや感動が生まれるような新たな試みにチャレンジしていきたいです。
――田中さんから「異質なもの同士の掛け合わせ歓迎」という話がありましたが、これまでの実例はどのようなものがありますか?
福地氏 : たとえば、ベースメークブランド「ディエム クルール」のカラーブレンドファンデーションは、点描画に着想を得た商品です。これは、アート×化粧品ですね。シワを改善する薬用化粧品「リンクルショット メディカル セラム」も、発想の転換から生まれたものです。
▲ベースメークブランド「ディエム クルール」
田中氏 : 人の掛け合わせもそうですね。「同質な人同士の間では、新しいものは生まれない」という考えもあり、まったく異質な相手との共創を歓迎しています。
福地氏 : 異質な何かを掛け合わせて、新しい着眼点を生み出し、そこからプロダクトを生み出す。これはポーラの得意分野といえます。しかし、プロダクトベースではかなりの事例があるものの、サービスベースで考えるとあまりないと思います。
溝口氏 : そこが課題であり、これからの可能性を秘めているかもしれないですね。サービス創出への取り組みは、今回のアイデアソンを機にぜひ進めていきたいですね。
事業化を本気で目指すアイデアソンに
――最後に、今回のアイデアソンへの期待や、応募企業に向けてのメッセージをお願いします。
福地氏 : アイデアだけを出すアイデアソンにしようとは考えていません。実際に自分たちのアイデアを実現して、それが全国に広がり、誰かの価値観を変え、世の中に影響を与えてくという意識を強く持っています。そこにやりがいを感じ、一緒に走っていける方にぜひご応募いただきたいです。一緒にチャレンジを楽しんでいただける相手であれば、当社のリソースを活用して、実現につなげられると思っています。
今回、異質なアイデアやプロダクト、サービスとの掛け合わせはもちろん、人との関わりも楽しんでいきたいですね。仕事でしか磨かれない人間力というものがあると、個人的に考えています。このアイデアソンで、今まで接したことのない人同士の掛け合わせを通じて、互いの可能性を広げていきたいと思います。
取材後記
いま、“パーソナライズ”は、化粧品業界のみならず、様々な分野でホットなキーワードだ。各社テクノロジーを活用した取り組みが行われているが、全国に展開される地域密着型のショップ、そして30年前から現在も蓄積し続けている“肌のビッグデータ”を持つポーラこそ、パーソナライズのトップランナーではないだろうか。リアルな顧客接点と、膨大かつ詳細なデータと分析力。この宝の山とも言えるリソースに、無限の可能性を感じる。「どんな掛け合わせも大歓迎」と言うように、分野を問わず、広く共創相手を求めているため、興味を持った方はぜひ応募を勧めたい。
■POLA BUSINESS BUILD開催概要(TECH PLAY SHIBUYA)
・2019/6/14(金)13:00~18:00
・2019/6/15(土)10:00~19:00
https://eiicon.net/about/pola-businessbuild/
(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)