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“KDDI∞Labo賞”は深層学習・機械学習のアラヤが受賞!――5G時代の共創を加速させる「MUGENLABO DAY 2019」レポート<前編>

“KDDI∞Labo賞”は深層学習・機械学習のアラヤが受賞!――5G時代の共創を加速させる「MUGENLABO DAY 2019」レポート<前編>

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新しいサービスを推進するスタートアップとともに、各業種において豊富なアセットやノウハウを有するパートナー連合と連携して、社会にインパクトのある新たな事業の共創を目指す事業共創プラットフォーム「KDDI ∞ Labo」は、3/26に「MUGENLABO DAY 2019」を開催した。

5G時代の新たな価値創造というテーマで、「XR」「ロボティクス」「ドローン」「IoT」「ビッグデータ/AI/ブロックチェーン」「その他ITサービス」の分野から選び抜かれたスタートアップ企業7社のプレゼンテーションが行われたほか、オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」とのコラボレーションによる新企画「Innovation Gateway」が実施された。同企画はこれまでにないピッチプログラムで、審査員がその場で出資・事業共創(PoC)・面談を決定する。この日は、一般公募77社の中から、書類選考を通過した8社がピッチに挑み、熱弁を振るった。

「MUGENLABO DAY 2019」の模様を、前後編の2回にわたり紹介していく。

「世界が変わり、ビジネスモデルも変わる」――KDDI社長・髙橋氏

冒頭、KDDI 代表取締役社長 髙橋誠氏が挨拶。「5G時代になり、世の中が変わろうとしている。ビジネスモデルも大きく変化すると予想される。スタートアップの方々は、ぜひ大企業に新しいアイデアを持ち込んでほしい。そして新しいビジネスを共に創り上げたい」と熱意を語った。また、今後さらにオープンイノベーションを積極的に取り組むことを強調。その表れの一つとして、この4月からKDDIのオープンイノベーションの取り組みが社長直下の組織に変更されることが伝えられた。

この後、採択チーム7社のプレゼンテーションが行われ、“KDDI ∞ Labo賞”と来場者の投票で決める“オーディエンス賞”の発表があった。各ピッチの模様は以下にお伝えしていく。なお、審査員は、以下の5名が務めた。

<審査員>

■KDDI株式会社 新規ビジネス推進本部長 塚田俊文氏

■グローバル・ブレイン株式会社 代表取締役社長 百合本安彦氏 

■ヤフー株式会社 Yahoo!アカデミア学長 KDDI∞Labo社外アドバイザー 伊藤羊一氏

■株式会社mediba  代表取締役社長 江幡智広氏

■株式会社エウレカ founder エンゼル投資家 赤坂優氏

採択されたスタートアップ7社が熱弁を振るう。

■株式会社アラヤ (ARAYA) 代表取締役CEO 金井良太氏

5G時代になりAIが人間のような賢さを持つと考えている同社では、この1年間、KDDIと共同でエッジデバイス(IoT)と「自律化AI」の開発に取り組んだ。エッジデバイスの領域ではディープラーニングを活用して誰でもVtuberになれる技術を目指した。ディープラーニングは「重たい」技術だが、スマホを使って誰でも使えるようにしたいという。

また、これからのAIの進化には「自律性の獲得」が重要と強調する。同社の圧縮技術を用いて、リアルタイムでの画像認識を実現。ドローンに搭載して実証実験などを行った。金井氏は、人工知能の次に「人工意識」を創造したいと述べる。「AIのディープラーニングがさまざまな機器に組み込まれ、自ら動き出す。そんな世界を作りたい」と熱意を見せた。

■株式会社Momo 代表取締役CEO 大津真人氏

同社はIoT汎用プラットフォーム「Palette IoT」の開発・提供している。IoTは幅広い分野での活用が見込まれ、例えば、積雪量のリアルタイムでの予測、波の高低予測、建設現場で危険予測などを可能にする。一方で、こうしたことを行うのにはさまざまな技術が必要とされ、複数の企業に業務を依頼しなければならない。また、量産に多大なコストがかかるのも現在の課題の一つと指摘する。

こうした中、一気通貫でIoT化実現するのが同社の「Palette IoT」だ。KDDI∞ラボでは、JAと共に農業用IoTソリューションを1カ月で開発した実績を持つ。コストも現行のものから10分の1に削減したという。同社は高コストになりがちなIoTを変え、広く一般に普及させたいと強調。「世界のIoTを変える可能性を持っている」と力を込めた。

■TAAS株式会社 代表取締役兼CEO大越隆行氏

同社は機密文書を無料で処理する「Eポートデジタル」と銘打ったビジネスを手がけている。同社によれば、業界で初めてのサービス。従業員2000名を超える企業で月間36万円かかるとされる処理費用を無料で行うため、同社では、機密回収ボックスをメディア化、デジタルサイネージを2枚内装させている。これは世界でも類を見ない試みで、国際特許の取得を目指す。同事業は電通、アマナとの協業で進め、2カ月で121社からの申し込みがあり、今なお増え続けているとこのことだ。

これから直近1年で1000社までにしたいと語った。「マーケティングコストが処理コストになっているのは、とてももったいないこと。旧態依然の業界や古臭い業界を変え、3年で機密文書の業界でトッププレイヤーになる」と語った。

■株式会社ビビッドガーデン 代表取締役 CEO 秋元里奈氏

同社は、農家から直接、農産物を購入できるオンラインサービス「食べチョク」を運営している。同サービスでは、ユーザーは農家に注文を送ることができ、農家は朝取りの農産物を送る仕組みだ。サービスを生み出した背景には、秋元氏自身が農家の出身だったことがあるという。農業には、中間業者が多く、また、価格が一定で「こだわり」が反映されにくい側面がある。

こうした課題を間近で見てきた秋元氏は、生産者と消費者を直接結ぶことで、解決を図りたいと強調した。「食べチョク」には1年半で300件の農家が登録。KDDI ∞ Laboとの協業では、農家のデータを活用しながら、大丸松坂屋との連携や企業内マルシェの展開などを実現した。今後は飲食店や小売店との連携を目指し、「生産者が正当に評価される世界を実現したい」と伝えた。

■株式会社ヤマップ 代表取締役 春山慶彦氏

同社は、スマホの最大の可能性は「通信機器にGPSが付属していること」だと考えている。都会に暮らす人が使う便利な道具の枠を超えて、自然の中で命を守る道具になり得ると強調。その性質を最大限に活かし、携帯の電波が届かない山の中でも、現在地がわかるアプリ「YAMAP」を開発した。

同アプリはオフラインでも現在地がわかるのが大きな特徴で、登山、スキー、スノーボード、釣りなど、アウトドア全般で活用が見込まれる。現在までに、ダウンロードは120万件を超え、同社によれば国内No.1の「登山プラットフォームアプリ」ということだ。KDDI ∞ Laboでは、LPWAを活用した登山者の見守りサービスを手がけた。また、KDDI、ウェザーニュース、御殿場市と連携し、ドローンを使った山岳救助隊の実証実験を実施し、成功を収めた。同社は「最新のテクノロジーで登山をより安全に楽しめるものにし、日本を代表する文化にしたい」と決意を述べた。

■Telexistence株式会社 代表取締役CEO 富岡仁氏

同社は、インターネットとロボットで「人間の身体能力や存在感を拡張する」ことを目指している。同社の手がけるロボットは、VRとモーションセンサーを通じ、ロボットをより直感的にかつリアルタイムで操作することが可能だ。これに加え、触感が操作者にフィードバックされる。

同社では、ビジネスとして「遠距離」と「労働集約的で不定期」をキーワードとした展開を視野に入れる。これまでにKDDI、JTBと協業し、東京と小笠原諸島間でロボットの操作を行った。また、コンビニエンスストアの陳列業務についても、同社の技術「テレイクジスタンス」で自動化できると強調。同社のロボットは多数の関節を持ち、多様な動きを機械学習、模倣学習できるからだ。同社は「テレイクジスタンスにより身体を拡張し、AIで制御する世界を作りたい」と力を込めた。

■株式会社Synamon 代表取締役 武樋恒氏

同社は「VR技術が当たり前の世界」を目指している。VR技術でコミュニケーションを革新するというミッションを掲げ、ビジネスシーンで使える、アバターによるVRコミュニケーション、NEUTRANS BIZ(ニュートランスビズ)を提供。同社はVRならではコミュニケーションを実現することで新しい価値を生み出したいと語る。

29社327名を対象に、ビジネスシーンで実証実験を行ったところ、9割以上からポジティブな評価を得た。グループインタビュー、コワーキングスペース、社内研修などで使いたいとの声が多く上がったという。4月には、新バージョンをKDDIと協業提供する予定。また、KDDI、三井不動産設立のファンドから出資が決定されている。同社は「5G時代のコミュニケーションサービスを普及させていく」と熱意を見た。

”KDDI ∞ Labo賞“はアラヤ。ゲストスタートアップ4社によるプレゼンテーションも。

この後、審査員5名による審査の合間にゲストスタートアップ4社によるプレゼンテーションが行われた。登壇企業と概要は以下の通りだ。

■ナオライ株式会社(広島県)

同社は日本酒の価値を再提示しようというスタートアップ。広島県がレモンの生産量日本一ということからスパークリングレモン酒「MIKADO LEMON」を開発している。酒樽のあり方を変え、無名の地元、三門島を世界的にも著名にしたいという。日本酒のマーケットはこの30年で4分の一に衰退している。この状況に一石を投じるため、「浄酎」というまったく新しい日本酒原料の酒を開発するなどしている。

■staywish(沖縄県)

同社は、街と旅行者をつなぎ、商圏を地域に広げるインバウンドのアプリを開発する。同アプリでは、宿泊施設を利用すると、地域の見所がレコメンドされる。従来は宿泊施設一カ所で提供されていたサービスを地域に広げ、地域の資産をあぶり出しながら経済圏を創ることを構想する。なお、アプリではさまざまサービスをキャッシュレスで利用できる。マーケットが確立されていない旅ナカで展開し、台湾、アジアにも広げていくと強調した。

■株式会社 OZ Links(富山県)

同社は「平面ホテル化構想」を掲げ、宿、アパレル、コンサルを展開している。明治5年の宿を改装して、レンタルスペース、音楽のイベント、蚤の市、フラワーアレンジメント教室など開催。365日使えるようにした。合わせて、同社の宿は周辺のレストランや酒蔵、土産店に送客という機能を持つ。また、着物をアップサイクルして2018年5月にtadasというブランドを誕生させたほか、富山県の県産品を海外に市場展開するコンサルも手がけている。

■株式会社プレースホルダ(東京都)

同社はキッズ・ファミリー向けテーマパークを全国の商業施設に展開している。いわば、「デジタル版のテーマパーク」で現在、全国4カ所に展開し、2018年7月には常設型の一号店をオープンさせた。これまでに有料チケット12万枚を販売した実績を持つ。同社は「既存の遊具をテクノロジーでアップデートする」ことを目指し、遊びを通じ、子どもと、親、友人、知人とのつながりを生み出したいと話す。なお、同社はKDDI ∞ Laboのバーチャルピッチグランプリで優勝した。

この後、各賞の発表があった。”KDDI ∞ Labo賞”は、独自性、市場性、完成度、プログラム期間中の取り組み内容の観点で評価。また、来場者が各社のピッチを聞き、ワクワクした企業に対して投票を行い、最も投票数が多い企業に対して”オーディエンス賞”を授与した。

◆オーディエンス賞

株式会社ビビットガーデン

◆KDDI ∞ Labo賞

株式会社アラヤ

KDDI ∞ Laboの活動方針を発表。「5Gプログラム」をスタート。

KDDI ∞ Labo長である中馬氏から今後の方針が発表された。2011年に始まった∞ラボはこの8年で採択企業が66社になり、事業提携は60件を超えた。2018年には「VRのピッチイベント」を実施。同氏によれば、世界で初めてのバーチャルピッチとのことだ。

2019年で期待を込めるのはやはり5G。3G・4Gを経て人と人がマルチにつながったが、今後は、「リアルの社会とつながる」と伝え、「久しぶりにパラダイムシフトが起こる予感がする」と期待を表した。ビジネスについても、これまで別個に存在していたネットとリアルが「融合」すると推測。5Gが触媒となりスタートアップと大企業が融合すると伝える。

同氏は「本日、"5G時代の新たな体験価値の創出"をテーマとした5Gプログラムをスタートする。これからは緩やかな連携でも一対一でもない。大企業のアセットを複数で提供する」と決意を語った。5Gプログラムは、KDDIを含む計32社と"パートナー連合との実証実験"をゴールにスタートアップによる事業共創を推進していくという。

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明日掲載する「MUGENLABO DAY 2019」レポート<後編>では、第2部で開催された「eiicon」とのコラボレーションによる新企画「Innovation Gateway」の模様をお伝えしていく。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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