Helical Fusion、シリーズBで約27億円調達 最終実証装置「Helix HARUKA」建設が本格化
フュージョンエネルギーの実用化を目指すスタートアップ、株式会社Helical Fusionは、シリーズBラウンドの1stクローズにおいて約27億円の資金調達を実施した。東京都の補助事業なども含めた累計調達額は約98億円に到達。これにより、同社の中核プロジェクト「ヘリックス計画(Helix Program)」における最終実証装置「Helix HARUKA」の建設を大きく前進させた。
本ラウンドには、ニチアス、長谷虎グループ、瀬野汽船、イークラウドNEXT、鴻池運輸、三谷産業などが参画。中でも複数企業は「公式パートナー」として開発にも関与し、単なる資金提供にとどまらない事業連携型の投資体制が特徴となっている。
「日本にもうひとつ太陽を」――実用発電に向けたヘリックス計画
Helical Fusionは、日本で約70年にわたり蓄積されてきた研究成果を基盤に、ヘリカル型核融合炉の開発を進める企業だ。同社が掲げる「ヘリックス計画」は、2030年代中の実用発電の実現を目標とする国家規模の挑戦である。
現在は、岐阜県土岐市にある核融合科学研究所の敷地内にて、最終実証装置「Helix HARUKA」の建設が進行中。すでに詳細設計に基づく実機建設フェーズに入っている点は、核融合スタートアップの中でも先進的な取り組みといえる。
さらにその先には、発電初号機「Helix KANATA」による世界初の実用発電を見据える。高温超伝導マグネットやブランケット兼ダイバータといった重要技術の開発も並行して進められており、個別実証から統合実証へと段階的に進化している。
商用化の壁を越える「三要件」への挑戦
核融合発電を単なる実験段階から商用インフラへと昇華させるには、①長時間安定稼働を可能にする「定常運転」、②外部へ電力供給が可能な「正味発電」、③メンテナンス性を担保する「保守性」の要件を満たす必要がある。
ヘリックス計画は、この三要件を前提に設計段階から逆算したアプローチを採用している点が特徴だ。実験炉ではなく“発電所”として成立させるための設計思想が、他の研究プロジェクトとの差別化要因となっている。
産業横断の共創体制が開発を加速
今回の資金調達において特筆すべきは、参画企業との連携の深さである。たとえば鴻池運輸は、将来的に冷凍・冷蔵倉庫の電力源として核融合エネルギーを活用する可能性に言及。物流インフラと次世代エネルギーの接続という新たな価値創出が期待されている。
また、三谷産業は「どの核融合ベンチャーが正解かではなく、Helical Fusionを選んだことを正解にする」とコメントし、長期的な協働姿勢を強調。さらにイークラウドNEXTを通じて個人投資家の参加も広がっており、国家的テーマへの資金参加の裾野が拡大している点も注目される。
国家戦略として加速するフュージョンエネルギー
核融合エネルギーを巡っては、日本政府も支援を強化している。2030年代の発電実証を目指すロードマップが示され、関連予算の拡充や専門部署の設置など、政策面での後押しが進む。背景には、世界的な電力需要の増大とエネルギー安全保障への懸念がある。
CO2を排出せず、燃料も海水由来で調達可能な核融合は、持続可能かつ安定的なエネルギー源として期待が高い。市場規模は2050年までに数百兆円規模に拡大するとの試算もあり、日本発の次世代産業としてのポテンシャルも大きい。
「産業をつくる」スタートアップへ
Helical Fusionの代表取締役CEOである田口昂哉氏は、「日本にもうひとつ太陽をつくろう」というスローガンのもと、同プロジェクトを“国全体の挑戦”と位置づける。今回の資金調達は、単なる開発資金の確保ではなく、産業化に向けた共創基盤の拡張といえる。
核融合という未踏領域において、同社はすでに実証装置の建設段階に突入している。研究から産業へ――。その転換点に立つHelical Fusionの動向は、日本のエネルギー政策、ひいては産業構造そのものに影響を与える可能性を秘めている。
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(TOMORUBA編集部)