摂南大学×住友ベークライト、哺乳センシングデバイスで「BabyTech® Awards 2025-26」大賞受賞 “吸う力”の可視化で育児不安を軽減する産学医連携
摂南大学理工学部電気電子工学科の西恵理准教授と、住友ベークライト株式会社が共同研究により開発した「哺乳センシングデバイス・システム」が、国内最大級のベビーテックアワード「BabyTech® Awards 2025-26」の授乳と食事部門において最高賞である「大賞」を受賞した。
本システムは、赤ちゃんが母乳を飲む際の「吸う力(吸てつ力)」を数値化することで授乳状況を可視化する技術。摂南大学のセンシング技術、住友ベークライトの素材・製造技術、さらに慶應義塾大学医学部小児科学教室による医学的監修を組み合わせた産学医連携プロジェクトとして開発された。科学的根拠に基づいた新しい育児支援のアプローチとして、親子の心理的安全性を高める点が評価された。
赤ちゃんの「吸う力」を可視化する新しい育児支援
授乳は育児の中でも多くの保護者が不安を抱えるテーマの一つだ。赤ちゃんが十分に母乳を飲めているのか、発育に問題はないのかといった判断は、これまで助産師や母親の経験や感覚に依存する部分が大きかった。
今回開発された哺乳センシングデバイスは、新開発のセンサデバイスを用いて赤ちゃんの吸てつ状態を測定し、数値として可視化する仕組みを持つ。これにより、主観的な判断に頼っていた授乳指導を、データに基づく客観的な支援へと進化させることを目指す。
審査委員からは、「哺乳に難しさを抱える赤ちゃんの課題解決に有用であり、『吸う力』という発育の根幹から子育てを考える視点が優れている」と評価され、育児の悩みに対する新しい開発アプローチとして将来性も高く評価された。
独自素材と精密センシングで乳児の哺乳行動を計測
本デバイスの特徴の一つは、住友ベークライトの独自素材であるシリコーンゴム「DuraQ®導電ペースト」を採用した柔軟な構造にある。柔らかく安全性の高い素材により、赤ちゃんにとって自然で快適な装着感を実現しながら、安定した波形データの取得を可能にしている。
測定は助産師が手に装着する形で行う。センサーが付いた小指部分を赤ちゃんの口内に入れることで、乳児が本来持つ原始反応である「吸てつ反射」を計測する仕組みだ。
2つのフォースセンサを用いることで、舌の力による「吸う力」だけでなく、舌の動きや運動性も含めた多角的な評価が可能となる。これにより、乳児ごとの飲み方の特徴や発達の個性を客観的に把握できるという。
授乳データとチェックシートを統合した支援ソフト
システムはデバイスだけでなく、授乳状況を総合的に評価するためのPCソフトウェアも開発されている。
デバイスで取得した測定データと、母親や助産師による授乳チェックシートの情報を統合し、授乳状況を多角的に把握できる仕組みを構築。助産師はデータを見ながら具体的なアドバイスを行うことができ、より精度の高い授乳支援につながると期待されている。
医学的エビデンスで示された育児支援効果
慶應義塾大学医学部小児科学教室の監修のもと実施された調査では、本デバイスを授乳指導に活用することで、通常の指導に比べて保護者の「授乳への自信度」が約30%向上したことが確認された。
授乳状況を客観的に理解できることで、保護者の不安が軽減され、育児に対する心理的安全性の向上にも寄与する可能性が示された。母乳育児指導の現場において、有効な支援ツールとなることが期待されている。
個人の育児経験から生まれた研究テーマ
開発を主導した摂南大学理工学部の西恵理准教授は、今回の受賞について次のようにコメントしている。
「私自身が授乳期の悩みに直面し、『解決策を形にしたい』と考えたことが本デバイスの着想でした。約10年前に研究を始め、5年前から住友ベークライトとの共同研究がスタートしました。多くの被験者とそのご家族の協力、そして企業の技術力に支えられ、今回の受賞につながりました。」
西准教授は低消費電力かつ高感度な光・電子デバイスの研究を専門とし、2015年から乳児の哺乳行動を定量化する研究に取り組んできた。今回の成果は、工学技術を育児支援やヘルスケア分野へ社会実装する取り組みの一つとなる。
産学医の連携によって生まれた本システムは、授乳という身近で重要な行為を科学的に支援する新たな育児テクノロジーとして、今後の普及と発展が期待される。
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(TOMORUBA編集部)