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産学官連携による変形型月面ロボット“SORA-Q”が内閣総理大臣賞を受賞!――「第7回 日本オープンイノベーション大賞」で選ばれた15の取り組みとは?

産学官連携による変形型月面ロボット“SORA-Q”が内閣総理大臣賞を受賞!――「第7回 日本オープンイノベーション大賞」で選ばれた15の取り組みとは?

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2025年2月、内閣府は「第7回 日本オープンイノベーション大賞」の受賞者を発表。今回は、内閣総理大臣賞を始めとする13の賞が15の取組・プロジェクトに対して授与された。同賞は日本のオープンイノベーションをさらに推進させるために、内閣府が主導。今後のロールモデルとして期待される先導性や独創性の高い取り組みを称えるものだ。

2018年度より開始された「日本オープンイノベーション大賞」は、オープンイノベーションの取り組みの中で、模範となるようなもの、社会インパクトの大きいもの、持続可能性のあるものについて、担当分野ごとの大臣賞、経済団体、学術団体の会長賞の表彰をすると共に、各賞の中で最も優れたものを内閣総理大臣賞として表彰している。

【表彰の種類】

内閣総理大臣賞、科学技術政策担当大臣賞、総務大臣賞、文部科学大臣賞、厚生労働大臣賞、農林水産大臣賞、経済産業大臣賞、国土交通大臣賞、環境大臣賞、スポーツ庁長官賞、日本経済団体連合会会長賞、日本学術会議会長賞、選考委員会特別賞

――本記事では、内閣総理大臣賞及び各賞の受賞プロジェクトについて紹介していく。

※画像出典:内閣府HP/第7回日本オープンイノベーション大賞 表彰式

月面ロボットSORA-Qの開発プロジェクトが、『内閣総理大臣賞』を受賞

「第7回日本オープンイノベーション大賞」のうち、最も優れたものとして表彰される内閣総理大臣賞は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学の4者で共同開発した変形型月面ロボット(Lunar Excursion Vehicle 2(LEV-2)、愛称「SORA-Q」、以下「LEV-2」)が受賞した。

タカラトミーの玩具技術、同志社大学の小型ロボット開発技術、および、ソニーのIoTデバイス・イメージセンサ・画像処理技術をJAXAが有する宇宙関連技術と融合。超小型・軽量にも関わらず、月面を安定的に走行して自律制御で動作できるロボットLEV-2を開発したことが、オープンイノベーションによる成果として評価され、今回の受賞に至った。

▲取り組みの概要

第7回 日本オープンイノベーション大賞 受賞取組・プロジェクト一覧

「第7回 日本オープンイノベーション大賞」では、13の賞が15の取組・プロジェクトに対して授与された。

内閣総理大臣賞は上記した通りだが、その他にも多岐にわたる取り組みが高い評価を得ており、以下にその概要を紹介していく。

なお、各取り組みの詳細や受賞ポイントなどは、「日本オープンイノベーション大賞」のWebサイトにも掲載されている。あわせてご覧いただきたい。

■内閣総理大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

産学官連携による日本初・世界最小の月面ロボットSORA-Qの開発

<内容>

宇宙探査技術の革新・地上産業の振興を目指すJAXAによるオープンイノベーションの取組み「宇宙探査イノベーションハブ」にて産学官連携の共同研究を実施し、日本初の月面着陸に成功した小型月着陸実証機SLIMに搭載の世界最小・最軽量の月面ロボット「SORA-Q」を開発。

<効果>

「SORA-Q」を開発し、世界初の完全自律制御による月面探査、SLIMの着陸状態や周辺環境が分かる画像の送信を達成し日本初の月面着陸ミッションに貢献。地上ビジネスへの展開として民生デバイス(SPRESENSE)の信頼性アピールやSORA-Qの玩具の製作・発売も実施。

<応募機関>

(国研)宇宙航空研究開発機構、(株)タカラトミー、ソニーグループ(株)、(学)同志社大学

■科学技術政策担当大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

デジタル社会を支える安全な次世代無線LANローミング基盤の国際共同開発と事業創出・社会実装

<内容>

東北大学の研究室発のプロジェクトとして、公衆無線LANの安全性・利便性の向上に興味を持つ通信事業者やベンダの開発者に参画を呼び掛けてオープンな開発コミュニティを形成し、技術開発と運用を推進(2024年4月一般社団法人無線認証連携協会を設立) 。

<効果>

大手3社を含む10事業者と4大学がプロジェクトに参画 (2023年度末実績)。また、自治体主導の公衆無線LANシステムとして、7つの自治体がCityroam導入済み、全国200か所以上に基地局 (設置済み)、東京都に1,300か所以上(2025年度整備見込み)。

<応募機関>

(大)東北大学、(株) グローバルサイト、(株) Local24、(学)札幌学院大学

■総務大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

官民連携オープンイノベーションによる自動運転車向け合流支援情報提供システムの開発

<内容>

国土技術政策総合研究所(以下、国総研)が自動車メーカー等30社との共同研究を主催し、自動運転車の本線合流を道路側からの情報提供により支援する「合流支援情報提供システム」(以下、本システム)を開発。道路や車種を問わない広範な実装を可能とした。

<効果>

国総研と30社の参加機関(参加者165名)の連携により、開発の成果公表(73件)を経て本シス

テムを5年で実用化、現在6箇所で本システムを整備中。また、本案件がモデルとなり、国総研の技術協力のもと、4社で本システムの開発が継続されている。

<応募機関>

国土交通省国土技術政策総合研究所

■文部科学大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

老舗粘土メーカーと大学との連携で誕生した革新的3次元細胞培養技術の開発

<内容>

クニミネ工業㈱と大阪大学との連携、そして AMED 生命科学・創薬研究支援基盤事業(BINDS)を活用することで、合成粘土を用いた新規な 3 次元培養法を開発し、試薬化・販売することによる普及活動を開始。

<効果>

3次元培養にかかるコストを従来法の半分以下にし、スフェロイド形成までの培養期間も短縮。2024年5月からの販売において、開始1か月半で5件の受注。今後のPR活動によって普及を目指し、3年以内に年間200件を目指す。

<応募機関>

クニミネ工業(株)、(大)大阪大学

■厚生労働大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

AIを用いた胎児不整脈診断支援システムの開発 -胎児不整脈の診断を早く、正確に-

<内容>

国立循環器病研究センターとカナデビア株式会社の協働により、胎児心不全の原因となる頻度の高い疾患の一つである胎児不整脈(赤ちゃんが母親の胎内にいる間に発症する不整脈)の診断を簡便に行える、世界初のAI を用いた胎児不整脈診断支援システムを開発。

<効果>

すべての種類の胎児不整脈を簡便な超音波断面の動画のみで診断支援することができる世界初のシステムのプロトタイプが2024年に完成済み。社会実装のため、2024 年内に医師主導治験を開始し、2026 年までに薬事申請を予定している。

<応募機関>

(独)国立循環器病研究センター、カナデビア(株)

■農林水産大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

食品の安全性確保と食品ロス削減に向けたMALDI-TOF MS微生物同定コンソーシアム活動

<内容>

九州産業大学を中核とし、国内の主要食品企業・分析機関等が参加して、MALDI-TOF MS質量スペクトルライブラリーの拡充による食品微生物の同定精度向上を目的としたコンソーシアムを2019年に設立(参加機関数:25機関)。食品の品質向上と食品ロス削減に向けて取り組む。

<効果>

微生物質量スペクトルデータ新規登録1997データ(2024年6月時点)、危害微生物生育・制御情報数150菌種以上1367 データ、食中毒菌16菌種(2024年6月時点)等

<応募機関>

(学)九州産業大学、(一財)日本食品分析センター、(株)明治 、アサヒ飲料(株)、(大)九州大学大学院

■経済産業大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

HVC KYOTO(Healthcare Venture Conference KYOTO)

<内容>

ヘルスケア領域で革新的な技術を持つ国内外のスタートアップと、オープンイノベーションに積極的な国内外の事業会社・VC等からなるHVCパートナー(以下、パートナー)が集まるイノベーションプラットフォームを形成し、日本でのヘルスケアイノベーションエコシステムの形成を支援。

<効果>

2016年からの過去9年間で174 件(創業前の案件含、2024年度含)のスタートアップを採択し、事業会社・ベンチャーキャピタル等とのパートナーシップを136件組成することで、スタートアップとパートナーとのビジネスマッチングを575件実施し、事業成長に寄与。

<応募機関>

京都リサーチパーク(株) 、(独)日本貿易振興機構、京都府、京都市

■国土交通大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

奄美大島瀬戸内町におけるドローンを活用した平時有事対応住民向けサービス

<内容>

2023年、日本航空と奄美大島瀬戸内町がドローンの運航会社「奄美アイランドドローン株式会社(AID)」を設立し、ドローン技術を活用した住民向け行政サービスを2024年2月に開始。地理的条件により瀬戸内町が有する物資輸送や医療支援、通信環境といったインフラ課題に対応。

<効果>

ドローン運航就航率71%(運航便数17便/運航予定便数24便)、町営船欠航時ドローン就航率50%(運航便数1便/町営船欠航時ドローン運航予定便数2便)地元人材によるラストワンマイルの輸送・操縦者の養成も実施。

<応募機関>

日本航空(株) 、瀬戸内町、奄美アイランドドローン(株) 、(国研)防災科学技術研究所、(大)筑波大学計算科学研究センター

■環境大臣賞

<取組・プロジェクト名称>

超低炭素型コンクリートを社会実装するための木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発

<内容>

大学・製造業・建設業・木質バイオマス発電事業者が共同し、今後排出の増大が予想される木質バイオマス燃焼灰の類型化・その未燃炭素と重金属を除去する装置の開発を行い、普通コンクリートに比べてCO2排出量を60%以上削減する、超低炭素型コンクリートの製造を実現。

<効果>

・普通コンクリートに対してCO2排出量を62.5%削減する超低炭素コンクリートを開発

・木質バイオマス燃焼灰の2026年の予想排出量82万tのうち、17万tの有効利用方法の確立

・9,000t/年の改質処理を可能にする実機プラントを設計

<応募機関>

(大)北九州市立大学、(大)京都大学、西松建設(株) 、日本アイリッヒ(株) 、響灘エネルギーパーク(合)

■スポーツ庁長官賞

<取組・プロジェクト名称>

住友生命と PREVENT による『新結合型オープンイノベーション』の取組み

<内容>

住友生命は住友生命「Vitality」を中心としたWaaSエコシステムを展開、PREVENT社は生活習慣病の重症化予防に特化したサービスを提供。互いの強みを「新結合」したオープンイノベーションでビジネス展開し、両社サービスを組み合わせた MVM モデルは鹿嶋市で社会実装した。

<効果>

鹿嶋市で社会実施した MVM モデルについては下記の効果が確認されている。

・Vitality:3 か月のプログラム実施により 1 日の平均歩数が約 1,000 歩増加

・Mystar:BMI・血圧・血糖値・脂質等、生活習慣病にかかる数値の改善

<応募機関>

住友生命保険(相)

■日本経済団体連合会会長賞

<取組・プロジェクト名称>

起業家を生み、事業を創り出す、進化する大企業発オープンイノベーション「docomo STARTUP」

<内容>

「docomo STARTUP」は、社員が誰でも挑戦可能であり、アイデア創出から事業拡大まで一貫した支援を行うプログラム。会社設立後もドコモグループが資金や人材拡充、販売チャネル設計などを支援。1年間で6社が独立し、5社が経済産業省の出向起業補助金に採択された。

<効果>

開始1年目にて、起業家候補794名の誕生と事業提案が573件あり、結果スピンオフ 1 社、スピンアウト 5 社が独立。2001 年からの旧来の社内ベンチャー制度で 8 社起業・継続 4 社に対し、オープンイノベーションによる事業創出拡大及び社内起業家育成の大きな成果を挙げている。

<応募機関>

(株)NTT ドコモ、(株)SUPERNOVA、(株)RePlayce

■日本学術会議会長賞

<取組・プロジェクト名称>

医療現場の革新へ!医師の働き方改革を目指す医療大規模言語モデルの研究開発と実用化

<内容>

医師の労働時間規制への対応に向け、東北大学病院と NECの強みを活かした連携により日本語の医療分野で実用可能な大規模言語モデル(LLM)の研究開発に成功。東北大学病院にて医療文書作成時間の半減を実証し“国内初”の医療 LLM 搭載カルテの製品化を実現。

<効果>

2024 年 4 月に本技術を搭載した国内初の医療 LLM搭載カルテの製品販売を開始。2024 年 3 月のプレスリリース以後、医療・ヘルスケア関連の様々なステークホルダーより多くの反響あり。300 床以上の大病院 5 施設と実証済、20 施設と商談中。

<応募機関>

日本電気(株)、(大)東北大学病院

■選考委員会特別賞① ※全3プロジェクトが受賞

<取組・プロジェクト名称>

県立高校発!地域を巻き込むオープンイノベーション いちご「ベリーツ」品質・等級判定 AI プロジェクト

<内容>

大分県立大分東高等学校(東高校)が農業 DX(AI 活用)の知識を生かし、大分県のブランドいちご「ベリーツ」の品質・等級判定における課題解決のため、ハイパーネットワーク社会研究所の支援のもと、地元農家やJAと連携して進行しているプロジェクト。

<効果>

ベリーツの品質・等級判定システムを完成させ、以下の効果を創出する。

(製品の現場本格投入から5年以内目標)

①選果作業の負担軽減 ②選果場の人材育成 ③判定精度向上による売上UP

<応募機関>

(公財)ハイパーネットワーク社会研究所、 大分県立大分東高等学校、(学)善広学園 IVY大分高度コンピュータ専門学校、FIGグループ(株)CAOS、ファブラボ大分

■選考委員会特別賞②

<取組・プロジェクト名称>

日本と地球低軌道を繋ぐエコシステム構築 -宇宙往還機 Dream Chaser の大分空港着陸に向けて-

<内容>

日本航空をはじめとする7 社は、宇宙往還機 Dream Chaser® の活用検討に向けたパートナーシップ契約を締結しており、各社連携のもと、大分空港を Dream Chaser® のアジア拠点として活用することを目指し、実現に向けた取組を推進している。

<効果>

宇宙往還機の打上、宇宙ステーションへの輸送、再突入、宇宙港着陸、次回打上場所への輸送等によりエコシステムが確立し、観光、教育、雇用創出、物流、建設、人工衛星製造などの経済波及効果が見込まれる。(日本全体 3,500 億円、大分県内 350 億円)

<応募機関>

日本航空(株)、兼松(株)、大分県、(株)三菱UFJ銀行、東京海上日動火災保険(株) 、 Sierra Space Corporation、(一社)Space Port Japan

■選考委員会特別賞③

<取組・プロジェクト名称>

IoTデバイスを活用した高齢者の健康支援モデル構築に向けた取り組み

<内容>

本プロジェクトは、「行政×学術機関×企業」の3者がタッグを組み、高齢者の健康寿命延伸および国の社会保障費(主に介護費)抑制を目的として、IoT デバイス(アプリ)を活用した高齢者に対する新たな運動・栄養指導モデルを確立する取り組み。

<効果>

地域住民 31 名に対して IoT デバイスおよびサービスの提供を約4か月にわたり実施。健康に関する意識改善に一定の効果が確認でき、各種数値の変化(握力 10%アップ、位相角 10%アップ)等の効果も確認できた。

<応募機関>

アフラック生命保険(株)、アフラックデジタルサービス(株)、(大)福井大学、福井県若狭町

関連リンク:プレスリリース

(TOMORUBA編集部) 

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  • 川島大倫

    川島大倫

    • フリーランス
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