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オープンイノベーションプログラム『OKINAWA Co-Creation Lab.2025』DEMODAYをレポート!―― “沖縄モデル”創出へ、10の共創プロジェクトを紹介

オープンイノベーションプログラム『OKINAWA Co-Creation Lab.2025』DEMODAYをレポート!―― “沖縄モデル”創出へ、10の共創プロジェクトを紹介

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沖縄県では、県内企業等の高度化を目的に、県内企業と全国のデジタル等の技術・サービスを持つ企業との協働・共創による新規事業創出を支援する「沖縄県オープンイノベーション創出支援事業」を推進している。その中核プログラムが『OKINAWA Co-Creation Lab.』だ。本プログラムは、県内企業とパートナー企業による新規事業創出の支援を行う「補助事業」と、県内企業と県内外企業がオープンイノベーションを通じてゼロから事業を創出する「協働・共創事業」の2事業で構成される。今年度も両事業から5プロジェクトずつ、計10の共創プロジェクトが採択され、約半年間にわたりビジネスモデルの設計やPoC、実証を重ねてきた。

その成果を発表する『OKINAWA Co-Creation Lab. 2025 DEMODAY』が、2026年2月10日、那覇のテンブスホールにて開催された。当日は、各プロジェクトによるピッチに加え、県内企業によるトークセッションが行われた。本記事では、「補助事業」「協働・共創事業」全10チームのピッチの内容と、トークセッションの模様を紹介する。

▲沖縄県内だけではなく県外からも参加者が集まり、会場は熱気に包まれた。

【開会あいさつ】 地域課題から世界へ。沖縄モデル創出への期待

開会にあたり、沖縄県 商工労働部 ITイノベーション推進課 課長の東盛舞子氏が登壇した。令和7年度の入域観光客数が過去最高を記録するなど明るい兆しが見える一方で、労働力不足や物価高騰といった厳しい経営環境が続いている。

東盛氏は、「その打開策の一つとして、県でオープンイノベーション創出支援事業を推進している」と説明した。本事業は、県内企業がデジタル等の技術・サービスを持つ県内外企業と協働・共創し、オープンイノベーションによる革新的なビジネス創出を通じて、企業の高度化を図るものだ。

今年度はブライダル、通信、農業、福祉介護など多様な業種が参画している。半年間の成果発表とリアルな挑戦の共有に期待を寄せ、関係者への謝意とともに開会を宣言した。

▲沖縄県 商工労働部 ITイノベーション推進課 課長 東盛舞子氏

【CO-CREATION PITCH(補助事業)】

既存パートナーと挑む社会実装フェーズへ。5チームが成果を披露

――CO-CREATION PITCHの前半では、「補助事業」に採択された5チームが登壇した。本事業は、すでにパートナー企業との連携体制を構築したうえでエントリーし、補助金を活用して新規事業の実証・社会実装を加速させるプログラムである。以下、ピッチ順にその内容を紹介する。

●株式会社yokatta × 株式会社LOCALPLAY

発表タイトル:感謝の気持ちを伝えるyokattaのマチナカ展開

イベントやコミュニティの場で、登壇者の話に心を動かされながらも、その場で「よかった」という感想を伝えられずに終わることがある。yokattaは、そうした体験に着目し、メッセージとオンラインチップで感謝を届けられるアプリ「yokatta」を展開してきた。それを、飲食店や宿泊施設など日常のサービス現場へ広げるべく連携したのが、沖縄市コザで宿泊施設やコミュニティスペースを運営し、商店街ネットワークと現場視点のUX設計に強みを持つLOCALPLAYである。

両社は、イベント仕様だった「yokatta」を店舗向けに再設計し、スタッフ登録や利用状況を店舗側が管理できる機能を共同で開発した。さらに、導入時の導線設計や利用促進の方法についても現場で検証を重ねた。

北海道・すすきのや沖縄・コザのバーで実証を行った結果、実際にチップが発生し、スタッフが顧客から「ありがとう」のメッセージを受け取る機会が生まれた。一方で、顧客の自発的な利用をどう促すかという課題も共有された。両社は今後も改善を重ねながら、感謝が循環する仕組みを街中へと実装していく方針を示した。

●学校法人大庭学園 × 株式会社FROGS × 星槎国際高等学校

発表タイトル:未来創造型ハイブリッド高校『Ooba FROGS Innovation高等学院(仮称)』の設立

長年、福祉人材育成を担ってきた大庭学園は、少子化や留学生比率の増加といった環境変化により、従来型の教育モデルの限界に直面していた。そこで共創したのが、アントレプレナーシップ教育を長年実践してきたFROGSと、共生社会の実現を掲げ約7,400名が在籍する通信制高校を展開する星槎国際高等学校である。

3者は、未来創造型ハイブリッド高校『Ooba FROGS Innovation高等学院(仮称)』の設立を目指す。掲げたのは、「高校は準備期間ではなく、好きなことを社会につなげる3年間にする」という新しい価値観だ。通信制高校に通う生徒が約30万人、10人に1人に広がるなか、「自由だが放置されるのは不安」という生徒や保護者の声を受け止め、徹底した伴走型メンタリングとプロジェクト型学習を軸に据えた。

補助事業期間中には、3つのポリシー策定や1年次カリキュラムの具体化、制度設計の整理を完了し、2027年4月開校に向けた設計フェーズを終えた。アントレプレナーシップを育み、社会と接続する学びを実装する通信制高校として、沖縄発の新たな教育モデルを創出していく。

●テックベジタス株式会社 × シナプテック合同会社

発表タイトル:agrinexを活用した機能拡張モデル第1弾の実証事業

クラウド型農業プラットフォーム「agrinex」を開発・提供するテックベジタスと、気象データ活用やアプリ開発を強みとするシナプテックは、露地栽培の現場課題に挑む。背景にあるのは、天候に左右される農作業計画の不確実性だ。

そこで開発されたのが、農家向けアプリ「agrinex農業革命」に追加実装された日程管理機能「はたさくりつ」である。圃場ごとのピンポイント天気予報や3日間予報を表示し、作業をリスト形式で簡易入力できる設計とした。気象予報士や農家の協力を得た実証実験では、入力の継続や翌日の段取りのしやすさが確認され、雨天時の計画修正に要する時間削減といった定性的成果も得られた。

また、シナプテックの技術により外部サービス連携の基盤を整備し、拡張性も確保した。共創を通じて見えたのは、農家の“勘”を否定するのではなく、裏付ける仕組みの重要性だ。今後はさらなる外部パートナーとの連携を進め、農業サービス提供のスピードを高めていくという。

●株式会社琉球新報社 × 新光産業株式会社

発表タイトル:中小企業が変わる!共創知で実現するジェンダー平等促進アプリ

沖縄SDGsプロジェクト(OSP)を推進する琉球新報社と、電気設備資材卸売を本業としながら社内改革で成果を上げてきた新光産業が挑んだのは、県内中小企業におけるジェンダー平等推進を後押しする仕組みづくりだ。管理職の女性比率は依然として低く、育休や配置に関する無意識のバイアスも根強い。そのなかで新光産業はジェンダー平等を軸に働き方改革を進め、3年以内離職率ゼロ、売上1.5倍という実績を生み出してきた。この実践知を広げたいという思いが、共創の出発点となった。

沖縄発、中小企業から変わるジェンダー平等モデルの確立を目指すべく、当初は対話を促すアプリ開発を構想していたが、率直な意見交換の熱量はアプリでは再現が難しいと判明。そこで方向転換し、エンターテイメントで地域活性を手がけるFUN SPIRITSと「転生・なりきりゲーム」というエンタメ性を取り入れた対話ツールをプロトタイプとして開発した。立場を越えて本音を語れる設計は、テストプレイでも有効性を確認したという。今後は没入感の向上や研修プログラム化、価格設計を検討していく。

●一般社団法人BowL × 株式会社LX DESIGN

発表タイトル:複業先生®を活用した教員のメンタルヘルス予防支援

全国で精神疾患による教員の休職者数は過去最多の7,119人(令和5年度)、特に沖縄では休職率が全国平均の約2倍にのぼる。こうした状況に対し、沖縄でメンタルヘルスの総合支援を行うBowLと、外部人材を学校に届ける「複業先生®」を展開するLX DESIGNがタッグを組んだ。

両社は「心のゆとり」と「時間のゆとり」を掛け合わせることで、教員が自分らしく働き続けられる環境づくりを目指し、「自分の取扱説明書プログラム」を開発した。自己理解やストレスの捉え方を整理し、セルフケアの方法を身につける内容だ。2025年度は複数校で実施し、研修提供人数は239人に達したという。アンケートではセルフケア意識の向上が確認された一方、個別面談希望は2人にとどまり、忙しさゆえに「自分のための時間」を確保しにくい現実も浮き彫りになった。

共創を通じて見えたのは、単発研修ではなく、組織文化や働き方まで含めたエコシステム構築の必要性である。今後は自治体と連携した実証を進め、「ゆとりを個人任せにしない」仕組みづくりへと展開していく。

【CO-CREATION PITCH(協働・共創事業)】

県内企業が発信したテーマに全国から手が挙がり、共創へ進んだ5プロジェクト

――CO-CREATION PITCH後半では、「協働・共創事業」に採択された5チームが登壇した。本事業は、沖縄県内企業が自社の課題や挑戦したいテーマを広く公開し、それに共感した全国の企業・スタートアップとマッチング。対話と検証を重ねながら、事業を共に構築していくプログラムである。募集による出会いから、事業構想の設計、PoC実施までを短期間で走り切った5プロジェクトの成果を、ピッチ順に紹介する。

●沖縄セルラー電話株式会社 × 富士フイルムイメージングシステムズ株式会社

発表タイトル:子育て世代のライフスタイルを豊かにする新たなサービス・コミュニティ開発

県民の約50%が利用する通信インフラ企業・沖縄セルラー電話と、写真を通じて家族の幸福を届けてきた富士フイルムイメージングシステムズが取り組むのは、子育て世代向けの新たな体験価値創出だ。

写真は大量に撮るが整理できない、容量が足りない、家族共有が面倒――背景にあるのは、スマホカメラの進化という“豊かさ”の裏にある課題である。そこで両社は、auショップというリアル拠点と、富士フイルムの高品質なフォトソリューションを掛け合わせ、写真を“飾る・振り返る”体験へ昇華させるモデルを構想した。

まずは沖縄セルラー電話のイベントでフレームフィッティング体験会を実施し、コンシェルジュが写真選びを伴走するワークショップを展開する。さらに直営店舗では、機種変更時の待ち時間を活用した写真プリント・フレーム販売の実証も行い、満足度や購買率の変化を検証する。将来的にはオリジナル商品の開発やサブスクリプション型サービスも視野に入れる。撮りっぱなしの写真を、家族の絆を深める“体験”へ。沖縄発の共創が、新たな通信の価値を描き始めている。

●株式会社りゅう × 有限会社石垣コミュニティーエフエム

発表タイトル:沖縄の感性とデータで共創する、新たな沖縄観光の未来価値の実現

AI開発を手がけるりゅうと、石垣島でコミュニティ放送局を運営する石垣コミュニティーエフエムが挑むのは、AIラジオによる“聴くスマートシティ”の実装だ。観光客が求める情報は、単なる検索結果ではなく、その土地の空気や温度を感じられる体験へと変わりつつある。

そこで構想されたのが、リスナーのリクエストや地域データをAIが解析し、台本生成からナレーションまでを自動で行う番組生成プラットフォーム「LGR(Listener Generated Radio)」だ。りゅうのAI駆動開発の技術力と、FMいしがきが持つ地域ネットワークと情報資産を掛け合わせ、ラジオ局を“地域データハブ”へ進化させる構想である。

プロトタイプでは、キーワードや時間帯を入力すると数分で番組が生成される仕組みを実証した。従来は企画から制作まで1時間以上を要していたショート番組が、数分で完成し、制作業務は約75%削減されたという。今後は石垣島のデータを学習させ、「世界一、石垣島に強いAI」として平時は観光ガイド、有事は防災インフラを目指していく。

●Digital Halusa協同組合 × 株式会社TR2

発表タイトル:世界初!!持続型ロゲイニングで、農業・文化体験を通し、沖縄マスターを増やしていく「はるまーい」プロジェクト

農家ネットワークを持ち地域の現場実装を担うDigital Halusaと、富山県でロゲイニング事業を展開し地域周遊を設計するTR2は、農業や文化体験が単発で終わり再訪や関係人口の蓄積につながりにくいという課題に向き合う。両社は「ロゲイニング」というナビゲーションスポーツを起点に、農・食・文化を“線”でつなぐモデルを構想した。周遊→接触→学び→購買→再訪までを一体設計し、ロゲイニング×農業体験をWebアプリで実現する。

八重瀬町で実施したテストイベントでは、参加者9名全員がログインし、アプリ導線の成立を確認。体験価値の有効性も手応えを得たという。一方で、現場オペレーションや事前説明の重要性、ITリテラシーへの配慮など改善点も明確になった。

今後はイベントの単発開催ではなく、運営パッケージ化による横展開を目指す。レベニューシェア設計やサブスク、法人研修、スポンサー連携など収益モデルも構築。沖縄の“農”を地域の稼ぐ力へと転換する周遊経済装置として、共創は続いていく。

●社会福祉連携推進法人いーまーる × テオリア・テクノロジーズ株式会社

発表タイトル:伴走型業務支援 人とAIがつながる現場改善

沖縄の福祉をつなぎ、地域サービスの持続を目指すいーまーると、エーザイ100%子会社として医療・健康データを活用したAIサービスを展開するテオリア・テクノロジーズが挑んだテーマは、介護現場の“離職防止”と“組織改善”だ。

背景にあるのは、2040年問題に象徴される深刻な介護人材不足である。若手職員の離職理由には、人間関係や将来不安、指導のばらつきなどが挙げられ、現場も経営層も「困ったときに頼れる仕組み」と「状況を可視化する基盤」を求めていた。そこで両社は、テオリア社の在宅介護者支援AI「ヨルニモ」をベースに、介護専門職向けへカスタマイズし、約30名規模でPoCを開始した。

AIとの対話を通じてストレスを顕在化し、次の一手を提示できるかという仮説を検証中で、今後は経営者向け機能を拡張する。目指すのは、現場と意思決定者が同じデータを共有し、支援と学びが循環する“いーまーる(助け合い)型福祉”の実装だ。沖縄モデルを確立し、将来的には全国、さらには他業界への展開も視野に入れている。

●沖縄ワタベウェディング株式会社 × 株式会社ギフティ

発表タイトル:結婚式のその先も、家族の幸せに寄り添いつづけるパートナーへ

県内8拠点でリゾート挙式やフォトウェディングを展開する沖縄ワタベウェディングと、eギフトプラットフォーム事業を展開するギフティが見据えるのは、「結婚式後」の家族の未来だ。背景にあるのは、高まる離婚率と、その要因とされるコミュニケーション不足や経済不安だ。

両社は円満な家庭を継続するための「KIZUNA GIFT」プラットフォームにより、デジタルギフトの贈り合いを通じて家族間のコミュニケーションを促す。さらにライフプラン相談や生活関連サービスの提案を組み合わせることで、将来への不安を軽減する設計だ。

ビジネスモデル構築には苦戦した。沖縄ワタベウェディングが独自にもつコンテンツをギフト化し、提供するだけでは収益性が限定的であるため、中長期的なビジネスモデルを構築することが課題だった。既存店で実施している対面型ライフプラン相談で保険商品など一定の成果が出ている実績を踏まえ、まずは認知と登録者獲得のため、公式LINEの登録者にデジタルギフトを贈呈する形式でのスモールスタートで実証を開始することとした。将来的には登録者への季節イベントに合わせたギフト提案や、教育資金・住宅ローンなどの情報提供へ拡張する見込みだという。結婚式で終わらない関係性を築き、家族の人生に寄り添い続ける存在を目指していく。

【トークセッション】 沖縄県内企業が語るオープンイノベーションの“リアル”

トークセッションでは、今年度の「補助事業」「協働・共創事業」に採択された県内企業(以下、「ホスト企業」という。)4社が登壇し、プログラム参加の背景や実践の苦労、組織の変化について語った。挑戦の裏側にあった葛藤や意思決定のリアルに焦点が当てられた。

<登壇者>

・磯健太氏(社会福祉連携推進法人いーまーる 理事)※協働・共創事業

・兼城駿一郎氏(株式会社yokatta 代表取締役)※補助事業

・新垣裕一氏(テックベジタス株式会社 CEO/Digital Halusa協同組合代表理事)※補助事業/協働・共創事業

・瑞慶村哲也氏(沖縄ワタベウェディング株式会社 事業開発部 部長)※協働・共創事業

●クローズドイノベーションの限界を越える「外部共創」

プログラム参加の背景について尋ねられた沖縄ワタベウェディングの瑞慶村氏は、社内での新規事業創出に閉塞感があったと振り返る。自社内でアイデアを出し合う“クローズド”な取り組みでは突破口が見えにくかったという。

昨年度の本プログラムのDEMODAYに参加し、登壇者の熱量に触れたことで「外部とつながることが突破口になる」と実感し、エントリーを決意したと語った。実際に30社近くと面談を重ねる中で、自社とは異なる業界の視点に触れられたことが大きな学びになったという。

●マイルストーンが生む実行力

プログラムを通じて生まれた変化について問われたyokattaの兼城氏は、「期限と伴走支援の存在」が事業を前進させたと語る。多拠点で事業を展開する中、自社の新規展開に十分な時間を割けるか不安もあったという。

しかし、メンタリングや中間発表といった節目があることで、自らを“やらざるを得ない環境”に置くことができたと振り返った。また、パートナーとの対話を通じて互いの理解を深めるプロセスそのものが価値であったとし、社内でもトップダウンだけでなくフラットな議論が増えたことを成果として挙げた。

●意思決定を支える“小さく始める実証”

複数法人を束ねる立場での挑戦について問われたいーまーるの磯氏は、「意思決定のスピードをどう担保するか」が課題だったと語る。5法人・50事業所以上、800名超の職員を抱える組織において、最初から全体を巻き込むのではなく、まずは30名規模での実証に絞った判断が転機となった。

小さく始めることでスピードと検証精度を両立できたという。職員が自ら関わる実証を通じて、「自分たちの取り組みが社会に広がるかもしれない」という当事者意識が芽生えた点も、組織にとっての変化であった。

●「ゆいまーる」とオープンイノベーションの親和性

オープンイノベーションへの期待について問われたテックベジタス株式会社 CEO/Digital Halusa協同組合代表理事の新垣氏は、農業の現場に根づく「ゆいまーる」(助け合い)の精神との親和性に言及した。農業は本来、一人では成り立たない営みであり、協働は前提条件であるという。

今回、新垣氏は補助事業と協働・共創事業の両方を経験したが、それぞれのパートナーとの共創を通じ、組合員の目の色が明らかに変わったと語る。また、『OKINAWA Co-Creation Lab.』のホスト企業同士のつながりにも触れた。共通の課題意識を持つ事業者が集う場であったからこそ、率直に弱みや悩みを共有できたことは、大きな価値だったという。

【コメンテーター講評】 情熱を絶やさず、沖縄発イノベーションを加速せよ

最後に、DEMODAYに参加した以下のコメンテーター5名による講評が行われた。

<コメンテーター>

・大西克典氏(株式会社うむさんラボ Chief Investment Officer)

・岡洋氏(Spiral Innovation Partners株式会社 General Partner)

・鈴木圭三氏(内閣府沖縄総合事務局 経済産業部 地域経済課 産業政策係長)

・常盤木龍治氏(株式会社EBILAB取締役ファウンダー CTO CSO/岡野バルブ製造株式会社 取締役 軍師DX推進本部長/パラレルキャリアエバンジェリスト)

・伊藤達彰氏(株式会社eiicon 執行役員 地域イノベーション推進本部 本部長)

大西氏は、短期間でプロダクトやサービスを磨き上げた実行力を高く評価した。「ホスト企業とパートナー企業が、対等な関係性のもとで互いを高め合っていた点が印象的だった」と語った。共創の成果をできるだけ早く市場へ展開することへの期待を寄せ、「沖縄にいる立場として伴走支援も惜しまない」とエールを送った。

岡氏は各プロジェクトの着実な進捗に手応えを示した。一方で、「継続的な事業へと発展させるためには、顧客像や中長期戦略をさらに具体化する必要がある」と指摘した。そして「情熱を持続させるための仕組みづくりこそが次の鍵であり、沖縄全体で支援できる体制を整えたい」と述べ、全国・社会に広がるサービス誕生への期待を示した。

鈴木氏は、本事業を推進する意義を「既存の延長線上にない価値を創出する手法を普及させることにある」と語り、「半年間での成果だけで完結するものではなく、この先にどれだけ飛躍できるかが重要だ」と強調した。そしてここから世に出るサービスがロールモデルとなることへの期待を示し、行政としても継続的に支援していく姿勢を示した。

常盤木氏は、「挑戦に必要なのは精神力と巻き込む力であり、遠慮せず遠心力を働かせるべきだ」と語った。オープンイノベーションは失敗とピボットの連続であり、より大胆に、より本気で事業を立ち上げる覚悟を促す。そして「原点となる“なぜこの事業をやるのか”を問い続けることが、沖縄の持つエネルギーを事業に転換する鍵になる」と述べた。

閉会にあたり伊藤氏は、沖縄の課題に真正面から向き合う事業群の質の高さに言及し、「ここから沖縄モデルを日本、そして世界へ」と期待を寄せた。すぐに成果が出るものばかりではないが、挑戦そのものと、今回築かれたネットワークが次の種を生む。「同じ想いを持つ者同士がつながり続けることが、新たな共創を生み出す原動力になる」と締めくくった。

取材後記

10のプロジェクトのピッチとトークセッションを通じて印象的だったのは、沖縄が抱える課題から目を逸らさずに事業を構想している点である。少子化や人材不足、農業の担い手減少、地域コミュニティの希薄化、家族関係の変化など、いずれも簡単に解決できるテーマではない。それでも登壇者たちは理想論ではなく、事業モデルやPoCの設計、資金繰りの葛藤といったリアルを率直に語った。

また、トークセッションの登壇者たちからは、『OKINAWA Co-Creation Lab.』への参加を検討している企業に対して、「忙しい人こそ参加すべき」「やらない後悔より、やって得る学びを」といったメッセージが送られた。また、懇親会やメンタリングの場を通じて生まれた県内企業の横のつながりも、このプログラムの大きな価値だという。採択事業者同士が課題を開示し合い、次の共創の芽を探る姿は、まさに“ゆいまーる”の現代的なかたちといえる。沖縄発の挑戦が、ここからどのように市場へ、そして県外・海外へと広がっていくのか。その行方を引き続き追っていきたい。

(編集:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:齊木恵太)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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