東北大発スタートアップNanoFrontier、約1.5億円を調達 PFAS即時検出技術を軸に、研究開発拠点設置と量産体制構築へ
有機ナノ粒子化技術を用いて、複数の機能性材料を横断的に開発・製造するNanoFrontier株式会社は、2025年10月に第三者割当増資により約1.5億円の資金調達を完了した。同ラウンドには、株式会社ジェネシア・ベンチャーズ、アニマルスピリッツ合同会社、モバイル・インターネットキャピタル株式会社、日東紡績株式会社が参加。さらに、経済産業省の「Go-Tech事業」など総額1億円超の公的研究費も確保しており、東北大学発のディープテックの社会実装を加速する。
東北大学内に研究開発拠点を新設、量産体制へ移行
今回調達した資金は、東北大学内での研究開発拠点設立および機能性有機ナノ粒子の量産体制構築に投じられる。特に、規制強化が進むPFAS(有機フッ素化合物)など有害物質の現場即時検出を可能にする「呈色型ナノ色素試薬」のPoCを推進。装置レス・高速判定という特徴を持ち、既存の分析装置(LC-MS/MSなど)との補完的な利用を想定する。
併せて、ナノ粒子の連続量産装置開発やロット管理基準の標準化を進め、産業供給レベルでの再現性・品質保証体制を確立する。また研究開発自動化に向け、ロボティクスやデータ駆動型材料探索も取り入れ、試作から量産までのリードタイム短縮を実現する計画だ。
多領域で応用可能なナノ材料として期待
NanoFrontierの技術は、PFAS検査以外にも幅広い産業活用が見込まれている。
想定領域は以下の通り:
レアメタルフリー蓄電池材料
データセンター向け高熱伝導冷却液
水素輸送の効率を高める触媒・熱伝導フィラー
副作用低減に寄与するキャリアフリー型ドラッグデリバリー
顧客企業向けに、受託製造・共同開発・技術ライセンスなど柔軟な事業スキームも準備している。
投資家からも期待の声
ジェネシア・ベンチャーズの鈴木氏は、「特定PFAS規制や水資源保全が世界的課題となる中、NanoFrontierの技術は社会実装面で極めて大きな価値を持つ」とコメント。
また、日東紡績株式会社 執行役 技術開発本部長 中村幸一氏は、「長期的技術支援を通じ、国内外市場での成長を共に実現したい」と語った。
NanoFrontierの代表取締役の井上氏は「大学発研究を、現場で使われる製品へと橋渡しするフェーズに入った。PFAS検出の社会実装を起点に、量産・品質・自動化・採用を同時に進め、仙台から世界のイノベーションに貢献したい。」と述べている。
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)