
膝下動脈疾患に革新をもたらす──脚の末梢動脈疾患(PAD)治療に挑む医療機器スタートアップ、Global VascularがシリーズBで10億円を調達し、累計調達額は27.7億円に到達
脚の末梢動脈疾患(PAD)治療に挑む医療機器スタートアップ、Global Vascular株式会社は、シリーズBラウンドにて総額10億円の資金調達を実施。累計調達額は27.7億円に到達した。出資には、Diamond Medino Capital、三菱UFJキャピタル、三井住友信託銀行、三井住友海上キャピタル、メディキット、ファストトラックイニシアティブ、東京理科大学イノベーション・キャピタルなどが参画した。
世界初の技術基盤──フッ素添加DLCと一貫開発体制
Global Vascularの競争力の源泉は、Hasebe Research Groupによる長年の研究成果である「フッ素添加ダイヤモンドライクカーボン(F-DLC)コーティング」技術。これは、生体適合性に優れたバイオマテリアルであり、NiTi製ステント表面にコーティングすることで、異物反応を極小化する。構造設計からカテーテル設計、薬剤溶出層の最適化に至るまで、医師と技術者の協働による一気通貫の開発体制を築いている点も、他社にはない大きな強みである。
調達した資金は、国内における探索的・検証的治験の実施、製造プロセスの最適化と量産体制の構築、米国市場に向けた薬事対応・申請準備に充てられる。特に注目されるのは、BTK(Below-the-Knee)領域に対応する薬剤溶出性ステント(DES)の開発である。BioStealth™ステントと呼ばれる本製品は、生体との異物反応を最小化し、長期的な血管開存性と高い安全性を両立する革新的技術だ。
膝下PADという未踏の領域へ──2億人の患者に新たな選択肢を
PAD患者は世界に2億人以上存在し、なかでも膝下動脈は治療の難易度が高い“未踏領域”とされてきた。Global Vascularは、同領域に対応できる世界初の超薄型・拡張性ステントの開発により、再閉塞リスクの高い患者に対して有効な治療選択肢を提供しようとしている。
出資各社からは「異例のスピードでGLP試験を完了し、治験フェーズに到達した点が圧巻」(Diamond Medino Capital)、「アンメットメディカルニーズに応える革新」(三菱UFJキャピタル)など高い評価が寄せられている。特に、実用化に向けた開発力と事業推進力、そして医療現場との接続性が評価され、継続的なフォローオン出資にもつながっている。
「歩ける未来」のために──代表メッセージと今後の展望
代表取締役CEO・尾藤氏とCTO・前川氏は、「前例にない壁を越えてきたチームが、今後も技術と連携で治療困難領域に挑み続ける」と意欲を示す。すでに米国での非臨床試験を完了し、今後は日本での治験開始、2027年の薬事承認取得を目指している。
設立からわずか3年足らずで国内外の注目を集めるGlobal Vascular。歩行に困難を抱える患者に“当たり前の日常”を取り戻す未来を見据え、グローバル展開を本格化させている。
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(TOMORUBA編集部)