【『陸王』で学ぶ“企業連携の成功と失敗”などケーススタディを解説】 特許庁が『知財を使った企業連携4つのポイント』を紹介するパンフレットを公開!
2018年6月、特許庁はオープンイノベーション・企業連携における知的財産の管理や取引契約に係るリスクをケーススタディで解説したパンフレットを作成・公表した。
【知財を使った企業連携4つのポイント】というタイトルが付けられている同パンフレットは、他の企業と連携する際に起こりがちな典型的な失敗事例とその予防策を知財の側面から解説し、知財管理や契約の勘所について紹介している。主な読者ターゲットとなるのは、「これから企業連携に取り組もうとしている」/「取り組み始めた企業で、知財契約のリスクに気づいていない」/「漠然とした不安がある企業」といった方々だ。
企業連携の失敗要因のひとつに知財リスクがある
顧客ニーズの多様化や製品の短命化など、市場の変化の早さに対応するため、オープンイノベーションに取り組むことの重要性が高まっている。政府はオープンイノベーションを推進するための様々な施策を打ち出している一方で、企業連携に伴うリスクについては、十分に認識されていないのが実情だ。企業連携に伴うリスクのひとつに知財リスクがある。
例えば、共同研究開発の際に自社の重要な営業秘密が紛れ込んで意図せずに流出してしまったらーー、あるいはライセンス契約を締結しても期待した対価が得られなかったらーー、せっかくの優良な連携事案もその勢いを失い、革新的な技術の事業化(収益化)は達成することができない。
事例に基づき、失敗しないためのポイントを解説
そこで同パンフレットでは、実例を基に作成した失敗事例を用いて、知財リスクを分かりやすく解説。そのリスクを回避するためのポイントを示している。また昨年にTVドラマ化された小説『陸王』(池井戸潤著/集英社刊)から「企業連携の成功と失敗」を知財の切り口で解説したコラムも掲載している点も特徴的だ。
なお、同パンフレットは具体的に以下のような章立てで構成されている。
●『陸王』で学ぶ企業連携の成功と失敗
●CASE01 秘密情報管理の失敗
●CASE02 秘密保持契約の失敗
●CASE03 共同開発契約の失敗
●CASE04 ライセンス契約の失敗
「CASE01 秘密情報管理の失敗」では、①保有する情報を洗い出す~②レベルに応じた管理方法を決める~③社内で共有する、という秘密情報管理の3ステップを実例と共に紹介。社内の情報を整理し、秘密レベルに応じた管理方法を実践する方法について解説している。
「CASE02 秘密保持契約の失敗」では、NDAに「秘密情報を相手方に提供する際には秘密である旨の表示をすべきこと」が規定されていたが、うっかりしてこの表示をすることなくサンプルを提供してしまったという失敗事例を紹介。そこから、NDAの作成・運用のポイントについて解説している。
また、「CASE03 共同開発契約の失敗」では、共同開発終了後に、共同開発時に提供したノウハウを基礎とした特許を出願されてしまったという失敗事例を紹介。自社情報を保護しつつ連携のメリットを生み出すためのポイントについて解説している。
最後に、「CASE04 ライセンス契約の失敗」では、帳簿閲覧権や監査権がない特許ライセンス契約を締結してしまい、特許使用料をごまかされていると疑っているが、確認する術がなく、疑心暗鬼に陥っているという失敗事例を紹介。リターンを適切に確保するというライセンス契約のポイントについて解説している。
CASE01~04で紹介されている事例は、企業連携する際に発生する可能性の高いリスクであり、失敗だ。オープンイノベーションをおこす際に、まずここでつまずいてしまう例も少なくない。これから企業連携に着手しようと考えているオープンイノベーション/新規事業担当者にとって、手に取りやすい資料となっているので、まずは同パンフレットを一読してみてはいかがだろうか。知財リスク等に関して、さらに詳しく知りたい方に向けた相談窓口なども紹介されているので、そちらもぜひ活用してほしい。
なお、同パンフレットは、全国47都道府県に設置しているINPIT(工業所有権情報・研修館)知財総合支援窓口にて配布。下記URLからもダウンロードすることが可能だ。
http://www.meti.go.jp/press/2018/06/20180618002/20180618002.html