オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集など、特許庁がベンチャーエコシステム活性化に向けた3つの知的財産コンテンツを発表!
破壊的イノベーションにより産業の新陳代謝を促し、大企業・中堅企業との連携によるオープンイノベーションの牽引役となることが期待されているベンチャー企業(スタートアップ)。
ベンチャー企業にとっては、革新的な技術・アイディア自体が財産となるため、権利化・ノウハウ化やライセンスなどの方針や体制を整備する「知財戦略」に意識して取り組むことが求められる一方で、創業前に知財戦略を構築しているベンチャー企業は約2割に留まる(※)など、その意識が十分に浸透しているとは言えない状況だ。
※出典:平成29年度特許庁産業財産権制度問題調査研究「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究」
また、大企業・中堅企業とベンチャー企業とのオープンイノベーションを円滑に進めるためには、協業で生まれた知財の帰属など知財の取り扱いが重要となる。――そこで、特許庁ではベンチャーエコシステムの活性化に向けて、次のように3つの観点で有用な情報をとりまとめたコンテンツを公表した。
(1)国内外ベンチャー企業の知財戦略事例集“IP Strategies for Startups”
(2)オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集“IP Open Innovation”
(3)知財デュー・デリジェンスの標準手順書“SKIPDD”
以下では、この3つのコンテンツの概要について紹介していく。
3つの知財コンテンツの概要とは?
(1)国内外ベンチャー企業の知財戦略事例集 “IP Strategies for Startups”
http://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_01_1.pdf
“IP Strategies for Startups”では、国内10社、海外8社(イスラエル、ドイツ、シンガポール、中国)のベンチャー企業の事業方針と知財戦略、外部専門家との連携体制、知財の活用事例などを紹介している。
取り上げられているのは、国内ベンチャー10社(カブク/One Tap BUY/セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ/ディジタルメディアプロフェッショナル/FLOSFIA/Spiber/マイクロ波化学/ファンペップ/ユニバーサルビュー/ペプチドリーム)に加えて、海外ベンチャー8社(イスラエル/ドイツ/シンガポール/中国)の事例だ。
たとえば、カブクの事例紹介ページには、下記のように具体的な「活動体制」などが記されている。国内外の多くのケースが紹介されているので、ベンチャー企業にとっては有益な情報源になるだろう。
(2)オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集 “IP Open Innovation”
http://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_02_1.pdf
大企業・中堅企業がベンチャー企業とオープンイノベーションを進める上で生じる課題とその対応策について、協業の目的に応じた類型化と各プロセスの進め方、知財部門の役割や協業で生まれた知財の取り扱いなどが紹介されているのが、“IP Open Innovation”だ。
この“IP Open Innovation”では、大企業×ベンチャー企業のオープンイノベーションを「パートナーシップ型」、「コミット型」、「共生型」といった3つに類型。
さらに、オープンイノベーションの推進体制を以下のように図式化。各社の取り組み事例コラムなども挟みながらオープンイノベーションのスキームを紹介しているので、非常に分かりやすい資料となっている。
(3)知財デュー・デリジェンスの標準手順書 ”SKIPDD”
http://www.jpo.go.jp/sesaku/kigyo_chizai/files/startup/h29_03_1.pdf
ベンチャー企業への出資や事業提携、M&Aを検討する際に行われる、知財の観点からの対象会社のリスク評価及び価値評価(知財デュー・デリジェンス)の標準手順書(SOP)として、基本的なプロセスやポイントを紹介しているのが、”SKIPDD”(Standard Knowledge for Intellectual Property Due Diligence)だ。
デュー・デリジェンス総論から、手順の各プロセスについての解説までが詳細に記されていることに加え、調査項目一覧表も付記されている。デュー・デリジェンスの実践資料として、大いに有用となるだろう。