
避難所入所受付のデジタル化で90%の時間削減を実現——神戸市とバカンが実証実験を実施
近年、地震や豪雨などの自然災害が増加する中、避難所の円滑な運営が求められている。その課題の一つが、避難所入所時の混雑だ。災害時には多くの住民が一斉に避難所へ向かい、受付手続きに時間がかかることで混乱を招くことが少なくない。こうした状況を改善するため、株式会社バカン(以下、バカン)と兵庫県神戸市は、避難所入所受付のデジタル化に関する実証実験を実施した。


デジタル化による入所受付時間の大幅削減
今回の実証実験は、2025年2月8日に神戸市立渚中学校にて行われ、灘区・中央区在住の住民が参加。従来、紙の避難者カードへの記入による受付は1人あたり1分19秒を要していたが、デジタル化の導入により、以下のように大幅な時間短縮が確認された。
アプリ(tami tami)を活用したQRコード登録:7秒
WEBフォームによる入力:16秒
マイナンバーカードリーダーによる登録:16秒
これにより、最大で約90%の時間削減が実現可能であることが証明された。迅速な受付が可能になれば、避難所内の混雑緩和につながるだけでなく、避難者名簿の作成もスムーズに行うことが可能だ。
デジタル化の評価と住民の反応
実証実験後、避難者役として参加した48人を対象にアンケートを実施したところ、デジタル受付の利便性に対する高い評価が得られ、この結果からも、住民にとってデジタル化が有効な手段であることが確認できた。
マイナンバーカードリーダーを利用した受付:88.6%が「スムーズ」と回答
アプリを利用した受付:83.9%が「スムーズ」と回答
今回の実証実験では、バカンが提供する避難所マネジメントシステムが活用された。このシステムには以下のような機能が統合されている。これにより、避難所の運営をより効率的かつ円滑に進めることができる。
避難所入所手続きの簡素化
避難者が事前に基本情報を登録し、QRコードを読み取るだけで入所受付が完了。
リアルタイム混雑情報の可視化
避難所の混雑状況を「VACAN Maps」を通じてリアルタイムで配信。住民は混雑の少ない避難所を選択可能。
避難所の管理機能「VACAN Console」
避難者数の自動集計により、職員の作業負担を軽減。
今後の展望
バカンは今後、避難所運営のさらなるデジタル化を推進し、入所管理機能の高度化や、物資の必要量予測、外部システムとの連携を視野に入れた機能追加を計画している。また、災害時の活用にとどまらず、日常の公共施設予約や地域コミュニティの活性化にもつなげる「フェーズフリー活用」を目指し、多くの自治体との連携を進めていく方針だ。
今回の神戸市での実証実験は、避難所の受付業務の効率化だけでなく、混雑を解消し、よりスムーズな避難を実現する可能性を示している。デジタル技術を活用することで、災害時の混乱を最小限に抑え、安全で迅速な避難所運営が可能となる。今後、こうした取り組みが全国の自治体へと広がることで、より安心できる避難環境の構築が期待される。
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)