
海洋環境の再生に挑む新たな試み――香川県三豊市で新技術実証試験を開始
近年、世界的に海洋環境の悪化が深刻化している。藻場や海草が広がる沿岸部は「海のゆりかご」として多くの海洋生物の住処となり、さらにブルーカーボンの観点からも重要な役割を果たす。しかし、海水温の上昇や栄養塩の変化により、沿岸環境の悪化が進んでいるのが現状だ。
このような課題に対し、大建工業株式会社、株式会社リバネス、大成生コン株式会社の3社が共同で、新たな海洋再生資材の開発に取り組んでいる。そして2025年1月、香川県三豊市の海域において実証試験を開始した。
今回開発された海洋再生資材と実証実験の目的
今回開発された海洋再生資材は、海藻類の繁茂を促進する着生基盤としての機能を持つものだ。自然由来の素材を原料とし、環境への負荷を抑えながらも、海洋生態系の回復を目指している。
2025年1月21日、三豊市の海域に複数種類の試験材を設置。この試験では、どの構造や成分が最も効果的に海藻の増殖を促すのかを検証する。設置後のモニタリングは大成生コンが担当し、データを収集・分析。将来的な資材の改良や実用化に向けた基礎データを得ることが目的となる。
本取組は、大建工業とリバネスが2023年度から進めていた新規事業探索の一環として始まった。そこに、三豊市で沿岸再生に取り組む大成生コンが2024年夏に参画。さらに、詫間漁業協同組合や三豊市の協力を得て、実証試験の実施に至った。
各関係機関のコメント
大建工業株式会社
「建材事業を主軸としてきた当社にとって、海洋再生資材の開発は新たな挑戦です。これまで培ってきた素材開発技術を活かし、生態系の回復に貢献できる資材の研究開発を進めてまいります」
株式会社リバネス
「科学技術の力で海洋環境を回復させる本開発・実証は、まさに推し進めるべき取り組みです。今後も多様な知識と技術を集め、海の豊かさを取り戻す活動を進めていきます」
大成生コン株式会社
「瀬戸内海の環境悪化を前に、地域企業として何かできることはないかと考えていたところ、本取組へのお誘いをいただきました。異なる技術や知見を持つ企業と協力し、新たな解決策を模索していきます」
三豊市
「地域の海洋環境を守るため、この取組がスタートしたことを嬉しく思います。実証試験が成功し、この技術が全国に広がることを期待しています」
詫間漁業協同組合
「かつて豊かだった瀬戸内海を取り戻したい。その想いで本取組に参加しました。豊かな海の恵みを次世代に引き継ぐため、今後も協力を続けていきます」
今後の展望――持続可能な海洋環境の実現に向けて
本実証試験は、単なる技術検証にとどまらず、企業・自治体・漁業者が連携し、海洋環境の再生を目指すモデルケースともいえる。今後の進捗次第では、全国の沿岸地域へと広がる可能性もある。海洋環境の回復に向けたこの一歩が、持続可能な未来の海を創る礎となることを期待したい。
関連リンク:プレスリリース
(TOMORUBA編集部)