IJTTと横浜国立大学、相模湾で藻場再生実証を拡大 城ヶ島・真鶴海域に新たな実験区を設置、磯焼け対策の実装を目指す
自動車部品などの製造を手がける 株式会社IJTT と 横浜国立大学 は、相模湾における藻場再生技術の実証研究を加速させるため、新たな実験区を設置した。2月12日に神奈川県三浦市の 城ヶ島 海域、2月16日に 真鶴 海域において追加設置を行い、海藻の生育環境回復に向けた実証を本格化させる。
両者は2025年7月から、神奈川県の「まち・ひと・しごと創生基金 科学技術政策大綱推進事業」の一環として、 相模湾 の藻場再生をテーマとした研究を進めてきた。今回の追加設置は、前回の実証で得られた知見を踏まえ、より実践的な再生モデルの構築を目指す取り組みとなる。
深刻化する磯焼け問題、藻場再生は地域の重要課題
相模湾では近年、海水温の上昇や藻食生物の増加、海水の貧栄養化などの影響により、海藻が減少・消失する「磯焼け」が深刻化している。藻場は魚介類の産卵・生育環境として水産資源を支えるだけでなく、海洋が二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン」機能を担う重要な生態系である。そのため藻場の回復は、漁業資源の保全だけでなく気候変動対策の観点からも重要視されている。
こうした課題に対し、IJTTと横浜国立大学は産学連携の枠組みで研究を推進。科学的データに基づいた藻場再生手法を確立し、将来的な社会実装につなげることを目標としている。
鉱さい素材ブロックで海藻の着生・成長を検証
今回設置された実験区では、海藻の着生や成長を促進する基盤素材の効果を比較検証する。具体的には、城ヶ島と真鶴の同一地点に、形状の異なる3種類の資材を設置した。
比較対象となる資材は、
鉱さいブロック
ミネラル添加鉱さいブロック
通常のコンクリートプレート
の3種類。対象とする海藻は、冬に生育期を迎える褐藻類「カジメ」である。
IJTTが提供する鉱さい素材ブロックは、鋳造工程で発生する副産物を再資源化したものだ。海域環境に応じた形状や重量設計が施されており、海藻の付着性や無機栄養塩の溶出効果を検証することで、藻場再生の基盤資材としての可能性を評価する。
一方、横浜国立大学は海域環境の調査や海藻の生育分析、ウニなどの食害生物の影響評価を継続的に実施。海洋生態系のデータを蓄積し、藻場再生モデルの科学的検証を進める。
産学連携で社会実装へ ブルーカーボン創出も視野
今後は長期的なモニタリングを通じて、設置した基盤素材の効果や海藻の成長状況を継続的に評価していく予定だ。研究成果は相模湾における最適な藻場再生手法の確立に活用されるほか、他地域への展開やブルーカーボンクレジット創出など、社会実装につながる可能性も期待されている。
IJTTは、鋳造工程から生じる鉱さいを環境負荷の低い形で再資源化する技術開発を進めてきた。今回の取り組みは、同社が推進する資源循環型ものづくりの一環であり、将来的には港湾資材などへの応用も視野に入れている。
一方、横浜国立大学は地域連携推進機構や臨海環境センターなどを中心に、自治体や地域団体、企業と連携した研究体制を構築。教育と実践研究を組み合わせることで、持続可能な地域づくりと次世代の環境人材育成の両立を目指す。
産業界の素材技術と大学の海洋研究を融合した今回の取り組みは、磯焼けという沿岸地域の課題解決に向けた新たなアプローチとして注目されそうだ。
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(TOMORUBA編集部)