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【ICTスタートアップリーグ特集 #6:コクリエ】シート型センサ「iSheet」がまちを可視化する。コクリエが叶える未来型のまちづくりとは

【ICTスタートアップリーグ特集 #6:コクリエ】シート型センサ「iSheet」がまちを可視化する。コクリエが叶える未来型のまちづくりとは

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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「共創の場」を提供するプログラムだ。

このプログラムでは総務省事業による研究開発費の支援や伴走支援に加え、メディアとも連携を行い、スタートアップを応援する人を増やすことで、事業の成長加速と地域活性にもつなげるエコシステムとしても展開していく。

そこでTOMORUBAでは、ICTスタートアップリーグの採択スタートアップにフォーカスした特集記事を掲載している。今回は、超軽量多機能型のシート型センサシステム「iSheet」を開発する株式会社コクリエを取り上げる(※2024年4月、コクリエを母体にした株式会社HAKATTEを設立予定)。

独自技術を駆使した「iSheet」を用いることで、どのようなことが実現できるのか。「iSheet」の特徴や強みと共に、今後の事業の展望について、開発者の鶴田氏に話を聞いた。

▲株式会社コクリエ 鶴田 修一 氏

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<スタートアップ解説員の「ココに注目!」>

■眞田幸剛(株式会社eiicon TOMORUBA編集長)

・最先端の材料技術と情報処理技術を組み合わせた、超軽量多機能型のシート型センサシステム「iSheet」を開発しています。2024年4月にはコクリエを母体に、先端技術やまちづくりなどのバックボーンを持つ4人が集い「株式会社HAKATTE」が設立される予定です。

・食品用ラップフィルムよりも薄くすることができるという「iSheet」の特性を活かし、これまでデータが取れなかったような場所(橋梁、トンネル、水道管など)からもデータを取得することができるとのこと。同社は、そのように新たに取得されたデータをまちづくりに活かすことを構想しています。「トップダウンが当たり前だったまちづくりが、ボトムアップでも行われるようになる」という大きな未来を描く注目のスタートアップです!

次の世代に良いバトンをつなげるために

――まずは、起業した経緯を教えてください。

鶴田氏 : 大学で研究したことを社会で活かしたいというのが、直接的なきっかけです。起業というと強烈な使命感に突き動かされることも多いと考えられますが、コクリエを母体に2024年4月に設立する「HAKATTE」にはそうした側面はあまりありません。私を含めた創業メンバーの4人が自分たちの研究は社会にどんな貢献ができるかという観点で話し合い、今回の起業に至ったのです。

――鶴田さんは大学卒業後、経済産業省やリクルートキャリアなどでご活躍されています。官公庁や民間企業での経験も、起業に影響してるでしょうか。

鶴田氏 : 密接な関係はないと思います。ただこれまでのキャリアの中で、「自分に何ができるか」「何をすれば次の世代に良いバトンをつなげるか」ということを考え続けてきました。そのことが、起業のモチベーションにはなっていますね。

――貴社にはどのようなバックボーンの方たちが集まっていますか。その中で、鶴田さんの役割をご紹介いただければと思います。

鶴田氏 : 大学でフレキシブルエレクトロニクスやプリンテッドエレクトロニクス、AIを研究していたメンバーや、民間企業などで経営やM&A、まちづくりに携わってきたメンバーが集まっています。その中で、私はCTOに着任する予定です。

薄くて軽い基盤の上にセンサを載せ、あらゆるものの見える化を図る

――鶴田さんは大学でどのような研究を行ってきたのでしょうか。

鶴田氏 : 印刷技術を用いて、薄くて軽い基盤の上にセンサや電子回路、素子などを形成するプリンテッドエレクトロニクスの研究に携わっていました。プリンテッドエレクトロニクスは、その特性から製品の薄型・軽量化・低コスト化が期待されている技術です。

――なるほど。プリンテッドエレクトロニクスを研究してきたことが、ICTスタートアップリーグでテーマに掲げている「iSheet」につながるのですね。

鶴田氏 : はい。「iSheet」は超軽量多機能型のシート型センサシステムで、プリンテッドエレクトロニクスを応用しています。

▲要望にあわせて、厚さ・面積などさまざまな形状に変化させることができるという「iSheet」。鶴田氏が研究してきたプリンテッドエレクトロニクスが技術の基盤になっている。

――「iSheet」の技術的な優位性について、お聞かせください。

鶴田氏 : 通常、センサは堅い基盤の上に載せられます。例えば、スマートフォンを想像するとわかりやすいでしょう。スマートフォンの中にはたくさんのセンサが入っていますが、いずれも堅い基盤の上に載っています。

一方で、「iSheet」は場所を問いません。加工も簡単で、面積を広げることもできます。シートは耐久性や透明性、感度に優れ、圧力や電気抵抗、変異などを計測することが可能です。

――シートの厚さはどのくらいなのですか。

鶴田氏 : 厚さについては聞かれるのですが、さまざまな形状に変化させることが可能です。たとえば食品用ラップフィルムより薄くすることも、ノートの下敷きより厚くすることもできます。また、お伝えしているように面積を変えることができるので、「薄くて大きい」「厚くて小さい」といった形状にも対応でき、ニーズによって変幻自在といえます。

――「iSheet」はどのような活用を想定しているのでしょうか?

鶴田氏 : 広く捉えれば、まちづくりということになります。具体的には橋梁、トンネル、水道管などの分野と相性が良いと考えています。例えば、トンネルを掘る際に生じる地面沈下の計測や各種データ取得などに用いられます。そうしたインフラ領域のDXや構造物の老朽化問題にソリューションを提案することを目指しています。

――インフラ関連やゼネコンといった領域の企業などとの協業が考えられますね。将来的には、どのような展開を志向していますか。

鶴田氏 : 可能性の幅を随時、広げていきたいと考えています。インフラから離れた領域でいうと、例えば、物流分野にも「iSheet」の活用を試みています。HAKATTEには複数の領域の専門家が集まる予定ですので、さまざまなチャレンジを行うつもりです。

ただ、冒頭もお伝えしたように、次の世代へ良いバトンをつなぐことを軸としています。自分たちの技術で、より良い日本に貢献できればと思っています。

まちづくりのあり方を変えたい

――最後に中長期的なビジョンをご提示いただければと思います。

鶴田氏 : 少々大きな話かもしれませんが、「日本はこの先どうなるのか」ということがとても気になっています。まちづくりについて言及すると、現状はトップダウンで行われています。政府や自治体が、まちを作る場所、どんなまちにするかプランを立て、具体的に落とし込んでいきます。プランが決まったら、それに反することは難しい。要するに、トップが計画を立てて、予算の枠内で遂行されるものです。

しかし、「iSheet」を含め、新たな技術を用いてデータを取得すれば、「まちづくりのあり方を大きく変えることができる」「今までとは異なるまちづくりができる」と考えています。

地域の住民がデータを見ながら自らまちを管理するのが、私たちの目指したい世界観の一つです。肝心なのは、技術を使うことで住民たちのQCLを向上させることです。中長期的にはそこを目指したいと思っています。

取材後記

センサは世の中に多様な利便をもたらしている。至るところで活用されているが、必ずしもどこにでもあるというわけではない。堅い基盤の上に載せる必要があるからだ。そうした状況を大きく変える可能性を秘めているのが、「iSheet」だ。「iSheet」が世の中に広まることで、例えば、まちづくりにどんな変化をもたらすだろうか?同社の事業展開に注目していきたい。

※ICTスタートアップリーグの特集ページはコチラをご覧ください。

(編集:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士)

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  • 奥田文祥

    奥田文祥

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「競争の場」を提供するプログラムです。TOMORUBAではICTスタートアップリーグに参加しているスタートアップ各社の事業や取り組みを特集していきます。