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約30名が参加、事業創出の新潮流「エフェクチュエーションワークショップ(前編)」に密着!【横浜オープンイノベーション・プロジェクト】第三弾イベントレポート

約30名が参加、事業創出の新潮流「エフェクチュエーションワークショップ(前編)」に密着!【横浜オープンイノベーション・プロジェクト】第三弾イベントレポート

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2022年5月、イノベーション都市・横浜を掲げ、領域越境(クロスオーバー)をさらに加速する試みとして、横浜2大学(横浜国立大学・横浜市立大学)の最先端研究ラボを中核として始動した「横浜オープンイノベーション・プロジェクト」。真鍋誠司氏(横浜国⽴⼤学 経営学部⻑・教授)と芦澤美智⼦氏(横浜市⽴⼤学 国際商学部 准教授)が共同プロジェクトリーダーを務め、2022年5月にはキックオフイベントを開催。「オープンイノベーション活用の最新潮流」の紹介や共創型新規事業創出プログラム(体験版)が行われた第2弾イベントを経て、去る6月21日、第3弾イベントとなる「エフェクチュエーションワークショップ(前半)」が行われた。

開催場所は、前回に引き続き、京セラみなとみらいリサーチセンターのなかにある、60度円形プレゼンテーションスペースが特徴的な共創スペース「INNOVATION SQUARE」だ。

イベント当日、会場には横浜に事業所を置く大企業から、約30名の新規事業担当者が集結。7チームに分かれ「エフェクチュエーションワークショップ」(前編)に取り組んだ。TOMORUBA編集部は、このワークショップに密着し、当日の模様をイベントレポートとしてお届けする。

※エフェクチュエーション理論(Effectuation Theory):成功を収めている起業家に共通する思考プロセスや行動様式の調査研究によって導き出された意思決定の理論。インド出身の経営学者 サラス・サラスバシー教授によって体系化された。「目標主導型」ではなく「手段主導型」で周囲を巻き込みながら、コントロール可能な目的を紡ぎ、徐々に目的を拡げ未来を切り開いていくことが特徴。

「心の中に色々なものを着火していきたい」――プロジェクトリーダー・芦澤氏

イベントの冒頭、横浜オープンイノベーション・プロジェクトのプロジェクトリーダーを務める芦澤氏が登壇。今回のエフェクチュエーションワークショップを通じて「みなさんの心の中に、色々なものを着火していきたい」と参加者に呼びかけた。


ワークショップの進行は、起業家や企業を対象にイノベーション創出を支援するアクセラレーター、株式会社スケールアウト(Scale Out)が担当。同社で共同代表を務める飯野将人氏(オンライン参加)と山形啓二郎氏(リアル参加)が挨拶を行った。

挨拶のなかで山形氏は、オープンイノベーションは「会社の立場だけで参加すると、うまくいかない」と指摘。会社の立ち位置を最優先にして議論を開始した結果、何も始まらずに時間だけが経過して、終わってしまうことが多々あるという。こうなることを回避するためには、「参加者が当事者意識を持つことが大事だ」と強調。今回のワークショップは、共創プロジェクトや新規事業創出に、個人の当事者意識を持ち込む方法が学べるものだと説明した。


▲山形氏はアメリカの西海岸から帰国したばかり。「横浜で皆さんと一緒に取り組めることを楽しみにしている」と期待を込めた。

事業創出の新潮流「エフェクチュエーション ワークショップ」に密着

続いて、ワークショップの進行を担当する、株式会社スケールアウト ユニゾンリーダー 絹川 輝和氏が登壇。――「エフェクチュエーション」とは何なのか。絹川氏によると、昨今、イノベーション・アントレプレナーシップ界隈で注目されている手法だという。本ワークショップは、エフェクチュエーションについて、「講義」ではなくワークショップでの「体験」を通じて、理解を深めるものであることが説明された。


■自己紹介とアイスブレイク

ワークショップはまず自己紹介からスタート。ビジネス関連イベントでの自己紹介といえば、たいていの場合、自分が所属する企業や担当業務、専門領域などを手短に共有して終わることが多い。しかし、本ワークショップでは、一般的な自己紹介にプラスして、2つの条件が設けられた。

1つは「実は~」からはじまる、プライベートな情報を盛り込むこと。もうひとつは、呼んでほしいニックネームを伝えることだ。絹川氏はサンプルとして自身を例に挙げ、「大阪から東京までヒッチハイクで帰ったことがある」という経験を披露。また、「てるくん」と呼んでほしいと伝えた。


▲約30名が7つのチームに分かれ、自己紹介とアイスブレイクを開始。参加者が“ビジネスシーンでの顔”に加え、“プライベートでの顔”をチームメンバーに共有した。

■「願望」の棚卸し

続いてのワークは「願望」の棚卸しだ。「願望」とは簡単に言うと「好き・嫌い」のことで、自分の軸となる価値観のようなものだと絹川氏は説明する。ここでは、過去の経験などを振り返りながら、「願望」を書き出しチームで共有する。


▲黄色いポストイットに「願望」を書き出し、チームメンバーに背景を含めて説明する。


▲ポストイットには、「釣りを楽しみたい」「趣味のアカペラにもっと時間を使いたい」「南国に行きたい」「VTuberになりたい」「無人島キャンプ」といった趣味に関する願望、「納得のできない仕事は受けたくない」「誰でも同じアウトプットになるような仕事は嫌だ」「ムダな会議には出たくない」といった仕事に関する願望など、さまざまな願望が書き出された。

■「宝もの」の棚卸し

次のワークは「宝もの」の棚卸しである。ここでいう「宝もの」とは、各自の ①知っていること(知識)と、②知っている人(人脈)のことを指す。いずれも、「今すぐ活用できること」がポイントだと絹川氏は説明する。これらをポストイットに書き出して、チームメンバーに共有する。


▲「クラウドファンディングの流れが分かる」「工業デザインのことなら全般的に知っている」「MaaS関連のトレンドに詳しい」「SIerとしての業界知識がある」「組み込みリストの作り方が分かる」など、多彩な知識が披露された。


▲仕事を通じて得たものだけではなく、「日曜大工が得意」「みなとみらい周辺に詳しい」「楽しいラグビーの観戦方法」「トロンボーンの演奏の仕方」など、プライベートで得た知識もシェアされ、「すごい」と驚きの声があがる場面も。


▲人脈については、会社の同僚や上司、学生時代からの知人、親族・友人など、参加者と近い関係にある人物が紹介された。


▲徐々に場の緊張がほぐれ、参加者同士が打ち解けていく様子が印象的だった。

■「願望」の絞り込み、「宝もの」の紐づけ

「願望」と「宝もの」が出そろったところで、「願望」と「宝もの」を紐づけていく。「願望」の想い・動機の強さに注目しながら関連しそうな宝ものを選んでいく。


▲想いや動機の強さを選択基準にする機会はそう多くないため、議論が膠着しそうな場面だが、どのチームも円滑に選抜が進んだ。


▲選んだ5つの「願望」に対し、チーム内で保有する「宝もの」(知識や人脈)を紐づけていく。

■アイデア・実現シートの作成

一日目の最後のワークは、「願望」と紐づけした「宝もの」をチームで眺めながら、自分たちのリソースを起点にコントロールが効いて実現できそうなアイデアを考える。そして、そのアイデアを「アイデア実現シート」を使いながら可視化していく。

アイデア・実現シートは、スケールアウト社独自のフレームワークで、「アイデア名とステートメント」、「3コマ漫画」、「活用する自分たちの手札=リソース」が表現できるように構成されている。シートをまとめ、チームで叶えたい「願望」を分かりやすく言語化し、既出の「宝もの」を有効活用しながら、実現に向けた道筋を立てていき、特段背伸びせずとも自分たちを起点に新しい目的が紡げるという自己効力感を醸成していく。



▲「便利なキャンプ道具」「地元Vtuber」「人と自然の調和を学ぶ街」「寺子屋」など、メンバーの「願望」をもとに、アイデアのキーワードが続々と生成される。チームメンバーから「おもしろそう」「実現したい」との声も。

――この日のワークショップは、アイデア・実現シートの骨組みが完成したところで終了。次回7月7日に第4回に続くという。

最後に絹川氏は、ここで体験したことが、エフェクチュエーション理論の「Bird in Hand(手中の鳥)」に該当することを明かした。「Bird in Hand」とは、通常だと目的・ゴールを起点にはじめるところを、手段を起点にはじめる方法なのだという。



「カオスからの積み上げが、興味深かった」――参加者コメント

ワークショップを終え、再び壇上に立ったプロジェクトリーダーの芦澤氏が、参加者に対して従来の手法との相違点や、体験してみての感想を聞いたところ、次のような声が寄せられた。

「製品開発を担当しているが、今までのアイデア出しだと、『どういうところにいる、どういうお客さまに対して売るのか』という姿勢で考えてきた。しかし今回の場合は、チームメンバーの経験や持っているもの、人脈などをすべて組み合わせるという方法だった。『これとこれが繋がる』という過程がおもしろかった」(飲料メーカー・社員)

「今までのワークショップの多くは、ある目的を持って目的を達成しようというものだった。今回はそうではなくて、カオスの状態から積み上げる。アンラーニングに近い感覚があった」(プラントメーカー・社員)

「これまでのワークショップでは、『誰が何に困っているか』という“負”から考えることが多かった。今回は『何がしたい』『どんなことができるか』から作りあげる点が、従来と違って興味深かった」(鉄道会社・社員)

これらの感想に対し、芦澤氏も同調する形で「従来のアイデア出しは、ペインポイントに強く意識づけられて進んできた経緯がある」と話す。加えて「シーズとニーズの組み合わせで、何かを生み出そうという世界観だった」と振り返る。

そのうえで、「このエフェクチュエーション理論は、新しい流れとして世界的に大きなうねりが来ているもの」だと説明。非常に意義のある大きな流れのなかに、初期の段階で関わっていることに対し、誇りと楽しさを感じてほしいと伝えた。


オンラインで参加した株式会社スケールアウト・共同代表の飯野氏は、感想のなかに、「カオスから紡いでいくという意見があったが、まさにそれが今回体験してほしかったことだ」とコメント。こういった異業種の交じり合うアイデア出しの場では、アイデアが出てこないことが多々あるが、エフェクチュエーション理論を用いることで、そうした「心理的な壁を下げていきたい」と話し、ワークショップを締めくくった。



▲プロジェクトリーダーの真鍋氏より、参加者の所属企業からドリンクの提供があったことが伝えられた。参加者らはワークショップ終了後も机を囲んで歓談。“YOKOHAMA CROSS OVER(YOXO)”に表現されるとおり、横浜を中心に活動する人たちがつながり、何かを生み出そうとしている様子がうかがえた。


取材後記

「目標主導型」ではなく「手段主導型」で周囲を巻き込みながら、コントロール可能な目的を紡ぎ、徐々に目的を拡げ未来を切り開いていくエフェクチュエーションという手法。ワークショップを取材するなかで驚かされたのは、参加者の持つ「宝もの」の豊富さだ。ビジネスに限定せずプライベートで得た知識・人脈も含めると、想像より遥かに広がりのある「宝もの」が隠されていることが分かった。こうした身近にある「宝もの」を掘り起こせば、「願望」を叶える事業創出に向かううえで、力強い推進力になりそうだ。

エフェクチュエーションワークショップ(後半)となる第4回イベントは、7月7日に開催。各チームからどのようなアイデアが発表されるのだろうか?――当日の模様は、後日イベントレポートとして紹介する。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:加藤武俊)


■連載一覧

第1回:横浜に事業所を置く大企業の新規事業担当者が集結!―「大学のスター研究者を中心とした実践的なつながり」から新たな価値の創出を目指す【横浜オープンイノベーション・プロジェクト】のキックオフイベントを密着レポート!

第2回:新規事業担当者がオープンイノベーションを「体感」!先駆者たちから共創を学ぶ――【横浜オープンイノベーション・プロジェクト】第二弾イベントをレポート!

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